フリーペーパーの発行やライブハウスの運営などを通して九州の音楽シーンを盛り上げ、昨年11月に子宮頸(けい)がんのため38歳で亡くなった福岡市のミュージシャン、藤井よしえさん(本名・野海(のうみ)芳江)の遺作アルバム「life」が、家族や音楽仲間たちによって完成した。15日に全国発売される。3日には同市で発売記念のイベントがある。
グラフィックデザイナーでもあった藤井さんは、1997年から音楽を専門にした月刊のフリーペーパー「TIME MARKET」を発行。ライブも多数企画する一方、自身もロックバンド「ガロリンズ」や「ノウミヨシエバンド」などで活躍した。
昨年1月、がんと診断されたのをきっかけに、アルバムづくりを開始。「いろんな人に曲を提供してもらい、1曲1曲一緒に作りたい」と音楽仲間の支援を受けながら、制作を進めていた。
夫の野海順治さん(37)によると、藤井さんは亡くなる直前まで「早く作らなきゃ。間に合わないかも」と心を傾けていたという。野海さんは藤井さんの思いを継ぎ、今年2月から本格的に制作を再開。藤井さんが歌を録音できなかった数曲は、野海さんや仲間たちが代わりに歌い、一人娘のはるねちゃん(7)もピアノやコーラスで参加した。
「素敵(すてき)な時間を作るよ/私がいないと 恋しいと思ってほしい」(「sweet wind」)-遺作アルバムの12曲には、ささやかな幸せや感謝の心がちりばめられている。「気軽に聴いてもらえるような、すごくいい作品。ちゃんとよしえのアルバムになったと思う」と野海さん。
発売記念イベントは、藤井さんの誕生日にあたる3日の午後7時から、福岡市中央区清川のカフェ「gigi」で。仲間が集まり、トークやライブを行う。アルバムも先行発売する予定。入場料千円(別途ドリンク代が必要)。アルバムは2100円。タイムマーケット=092(522)1740。
=2011/09/02付 西日本新聞朝刊=