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[政治]ニュース トピック:主張
【主張】外交・安全保障 防衛相発言では国守れぬ
野田佳彦内閣にとって外交・安全保障の最大の課題は、前・元政権下で空洞化が進んだ日米同盟の立て直しである。
中でも、米軍普天間飛行場の移設を現行計画に基づいて速やかに実現することが急務といえる。これなしには日本を含むアジア太平洋の米軍再編が完了せず、同盟の実効性が確保できないからだ。「軸となるのは日米関係」と明言した野田首相には、日米基軸を言葉でなく行動で実証してもらいたい。
野田首相が就任直後にオバマ米大統領と電話会談し、今月下旬の国連総会出席を機に日米首脳会談を申し入れるなどの意欲を示したのは当然といえる。
にもかかわらず、内閣に起用した玄葉光一郎外相、一川保夫防衛相はいずれも外交・安保の知見や経験が白紙に近いとされ、「同盟最優先」の布陣とはいい難い。
とりわけ一川氏が「安保に関しては素人だが、これが本当のシビリアンコントロール(文民統制)だ」と放言したことには、耳を疑わざるを得ない。
文民統制とは、国家の戦略的意思決定を職業軍人でなく文民政治指導者が負う民主主義の基本だ。その責任も重い。見識や経験の不足を謙虚に反省するならいざしらず、これでは責任放棄の開き直りとしか聞こえまい。
文民統制の意味や重責をよく理解しない大臣の下で、果たして国家と国民の安全が守られるのかどうか。中露や北朝鮮などの周辺国に再びつけ込まれる恐れがないのか。野田首相は更迭も含めて布陣を真剣に見直すべきだ。
今年6月に開かれた外務・防衛閣僚級の日米安全保障協議委員会(2プラス2)では、現行の普天間移設計画の再確認に加え、南シナ海や尖閣諸島を含む東シナ海などでの中国海軍の強引な権益拡大に明確な懸念が示された。
北朝鮮の核・ミサイル開発や挑発行動も収まらず、日本の安全保障環境は着実に悪化している。米軍再編と同盟強化が急がれるのはそのためでもある。新閣僚らは肝に銘じなければならない。
玄葉外相は会見で「アジア太平洋40億人の内需は日本の内需」と語った。環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への前向きな姿勢は評価したい。だが、それも日米同盟の基盤固めが大前提だ。その上で日中、日露、日韓関係などにしっかり向き合ってほしい。
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