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'11/9/3

ウィキリークス、情報提供者名まで暴露

 約25万件の米外交公電を独自に入手し、インターネット上でさみだれ式に公開してきた内部告発サイト「ウィキリークス」が3日までに、未公開分の全量公開に踏み切った。「小出し」にしていた従来のやり方を転換した背景には、不注意から未公開分がネット上に流出、非公開にしておく意味がなくなったとの事情がある。しかし、今回は情報提供者の実名を伏せるなどの編集が行われておらず、米政府や人権団体は猛反発。かつて協力関係にあった欧米メディアも厳しく批判、決別の姿勢を示している。

 ▽「情報テロ」

 米政府は当初から「個人の安全と国家安全保障に脅威を与える」(ヌランド国務省報道官)と外交公電の公開を非難してきた。

 当面の懸念は、公電に記載された情報提供者の安全の確保。米紙ニューヨーク・タイムズによると、イラン政府に敵対的な情報源として公電に登場したイラン人は、米政府の支援を得て米国に脱出したという。今後の外交活動に与える影響も議論されている。

 共和党のミラー下院議員は「米国民とその仲間の命を危険にさらすテロ行為」だとウィキリークスを糾弾。なぜ「犯罪行為」をやめさせ、裁きにかけないのかとオバマ政権にも矛先を向けた。

 ウィキリークスと協力し、昨秋の外交公電公開などで共同歩調を取ったニューヨーク・タイムズや英紙ガーディアン、フランス紙ルモンドなど欧米の五つのメディアも今回「(個人名削除などの)編集がされていない外交公電を公開するという決定を非難する」との共同声明を発表した。

 既にガーディアンとニューヨーク・タイムズはウィキリークスと関係が悪化しているが、他のメディアもたもとを分かった形。既存メディアと協力して存在感を高めるウィキリークスの戦略は転換点を迎えそうだ。

 ▽不注意

 ネット技術に詳しいメンバーが集まるウィキリークスが、なぜこんな情報流出を起こしたのか。

 ウィキリークスの声明やニューヨーク・タイムズなどによると、ウィキリークス側は昨年、ガーディアン記者に公電データを渡す際、パスワードがないと読めないように暗号化。その後、暗号化されたデータのコピーをウェブサイトからアクセス可能なサイバー空間に保存した。

 ところが、ガーディアン記者が今年出版した本の中に、パスワードをそのまま記した部分があった。暗号化されたデータを解く「鍵」に当たるパスワードが公になったことで、第三者がパスワードを使ってデータにアクセスし、ネットに公電が出回った。

 流出を受け、ウィキリークスは米当局に情報源保護の対応を促すため接触するという異例の対応をした。ウィキリークスの声明によると、創始者アサンジ容疑者は国務省の法務担当者と電話で75分間話し、電話では言えない話があるとして面会を求めたが、断られたという。(ニューヨーク、ワシントン共同=沢康臣、有田司)




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