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[17882] ガンダムSEED(オリキャラ憑依 習作)
Name: you◆1e728d9d ID:9de9fa1c
Date: 2010/04/03 23:44
(劇場版ガンダムダブルオーか)

20代半ばと思われる青年が二次小説をネットで閲覧していると、劇場版ガンダムダ
ブルオーの情報についてサイトの管理者が語っている日記があった。

(ダブルオーか、少なくともシードディスティニーよりかは楽しめた作品だな。…そういえばシードの劇場版てどうなったんだっけ?)

青年がgo*g**で検索し、検索結果の中からいくつかのサイトを選び、閲覧していった。

(監督が仕事できないため延期か?、もう負債はヤメロ、etcetc。めちゃくちゃたたかれてるな。まあ原作があれだったからな、ディスティニーなんて最後はグダグダだったしなぁ)

PCを閉じ、風呂に入ったら寝るかぁなどと思いつつ青年はガンダムシードのことを記憶の片隅に追いやった。




!!-!、!!-!

(サイレンの音がうるさい)

翌日青年はアパートの周囲が喧騒としていてうるさかったためが目を覚ました。

(そういえば今日は4月1日か。三年前は緊張しながら入社式に出たんだよなぁ)

青年が思い出を振り返りつつ、顔を洗おうと起きると、

「は?」

と声をあげてしまう。

自分の部屋とは全く違う、SFにでも出てくるかのような部屋に青年はいた。

今は未だ知らないが青年はガンダムシードのCEにいた。















あれから青年は部屋の外に出た。

アパートの外はどう見ても21世紀の町ではない。社会人になってから自分が暮らし始めた町の景色はみじんもなかった。
近所の住民(どう見ても日本人じゃない)がいたため話かけようとすると、向こう
から話しかけてきた。

「君、大丈夫か」

「ぁええと、一体何が?」

混乱しながら、自分に何が起きたのかという質問をしたのだが、住民は今何が起こ
っているかの説明を求めたと解釈した。

「わからない!深夜にザフトによる攻撃があったそうなのだが、何か関係している
のだろうか?」

(は?ザフトってシードの?この人は何を言っているんだ?極度のアニオタか?)

「ラジオもテレビもつながらないんだ。くそっ!どうなっているんだ!」

住民が憤っているのを見つめながら、青年はぼうっとしてしまう。

(朝、起きたら、知らない部屋にいて、しかもあった人がザフトなど口走っている
。これは夢か?)

青年が頬をつねろうとしたとき、上空のヘリから、声が響いた。

「あわてないでください、現在、政府の発表ではザフトによる工作で発電所に障害
が発生しているとのことです。政府、軍が対応していますので、住民の皆さんは避
難所に集まり、政府からの指示を待っていてください。繰り返します…」













(ここはガンダムシードのコズミックイラの世界)

青年は、部屋から貴重品(と思われるもの)などを持ち出し、住民と一緒に避難所に
来ていた。そこで、一人ぼうっとしながら現在の状況を考えていた。

(現在、原作のエイプリルフールなんとか?ニュートロンジャマーが地上に打ち込
まれた日、俺はこの世界のショウヤ=ナカノ、日系人、職種はプログラマー、休日にはジャパニーズケンドーの練習を行い、市民の大会(日系の人や珍しさでケンドーをしている人のみの参加者が少数の大会)でも優勝している)

貴重品には仕事で使うメモ帳があり、中が日記になっていることに気づき、それを
読んでいく。

(ナチュラル。恋人はいない。友人は会社の同僚と、ケンドー仲間)

日記に書いてあることは自分が普段やっていることとほぼ同じだったので、ほんの
少しだけ顔に苦笑が浮かんだ。

(ほとんど俺と同じか、でもこの世界のプログラムなんてわからないし、貯金もあ
まりない。これからどうやって生きていけばいい?…つうか、こんな某監督が神の
世界で死にたくねぇよ!)

しかし、これからのことを考えると深刻になったしまう。なにせ、この世界は一般
人が大量に死亡する世界だ。エイプリルフールクライシスの影響で、地球人口が1
割は減ってしまうのだ。さらに種死でもコロニー落としがある。平和な日本で生き
てきたショウヤにとってこの世界は地獄だ。

(食いっぱぐれがないのは、軍に入ること。それしか仕事なさそうだ。避難民の面
倒をみるのもいいが、要はボランティアだし、仕事などではないだろう。戦後はどうする?軍は死ぬ確率は一番大きいがうまくすれば戦後の面倒もある程度見れくれるか?次は避難民として生活すること。しかし、今の状況では難民生活もきつい。治安は最悪だろうし、戦後プログラマーとして技術系の会社にはいるなんてのは絶対無理。つまり…)

ショウヤにとって苦渋の判断だが、これから生きていくための道は一つしかなかっ
た。

(軍に入るしかないのか。んでディスティニーで反ロゴス派に所属して終戦。給料
をもらって、後はその時考えるかね………しかし不安だこの世界、人物の大半があ
れだし、いやここはもう現実だし奴の加護もないはず?…大丈夫…かなぁ?だけど
生きていくには、こうするしかない、いやしかし、ああでも…。でも死にたくねぇ
、これがUCならまだしも、CEでみじめに死ぬなんて絶対に嫌だ!原作を崩壊させてでも生き抜いてやる!)

だらだらと考え込みながら、それでもこの世界とある人物への反骨心でこの世界で生き抜くことをショウヤは決意した。




[17882] 2話
Name: you◆1e728d9d ID:9de9fa1c
Date: 2010/04/04 23:51
地球連合とザフトの戦争、誰もが疑わなかった地球連合の勝利、しかし予想に反し、戦線は膠着状態、ややザフトが優勢になっていた。Nジャマーにより、無線誘導や長距離のレーダーが使用できなくなり、有視界戦が主になることによって、MSは一騎当千とまでいかなくとも、圧倒的物量をもつ地球軍を次々と蹂躙していった。

MSはNジャマー影響下にない状態でも、MA3機ないし5機の戦力になる。その上Nジャマーで有視界戦になるとさら戦力が増す。Nジャマー影響下にない状態でも、対艦戦においてもMSは驚異的な力を発揮する。

ザフトのエースの1人、ラウ・ル・クルーゼは世界樹攻防戦ではMA37機・戦艦6隻を撃破しているほどだ。

圧倒的に兵器の質が違うため、連合は水面下でMSの開発に着手していた。











あれから、ぐだぐだになりながらもショウヤが軍に入って、約半年が経った。

ジャパニーズケンドーによって鍛えられた体のおかげか何とか厳しい訓練を潜り抜けた。

志願した際の身体能力や適正試験で、ショウヤはMSにおける適正が並みのコーディネーターを超えていため(ボーナス補正とでもいうのだろうか。ラウ・ル・クルーゼばりの空間把握能力を有していた。)MS開発に携わることになった。

これは、ナチュラルが開発したMSでコーディネーターを打倒するという狂信的なブルーコスモス思想が蔓延していたため、ナチュラルでありながら並みのコーディネーターを超えるショウヤにMSのテストパイロットをさせようとある人物が命じたためだ。

これを聞いたショウヤは原作にかかわるのか…と気落ちしていまい、栄光あるテストパイロットになれるのに変な奴だと、周囲からは思われていた。



C.E.71年1月25日
現在、ショウヤはロールアウトしたMSを受領するためヘリオポリスに来ていた。しかし、原作でヘリオポリスでG強奪があるのを知っていたショウヤは気が気でなかった。

(何も対策ができなかった。権限があれば強奪を阻止できたかもしれないのに。なにか変な発言をしたら、最悪スパイだと思われてしまうし…はぁ。なんで俺がこんな目にあわなければならないんだ。畜生)

原作開始が近付くにつれて、ショウヤはため息をつくことが多くなっていった。同じGに乗ることが決まっている同僚たちからは変な奴だと認識されていた。ちなみにパイロットは誰がどのGに乗るかは全く決まっていない。というかテストパイロットなので、そのまま実戦には出ない。そのため、同僚たちというかG開発に携わっている大西洋連邦兵はGがロールアウトしたことにより気が緩んでいた。

(これじゃぁG強奪も成功するよなぁ。上からしてヘリオポリスなら安全だと慢心してるし、もうだめダメだろこれ)









MSの受領まで時間があり、ヘリオポリス内での休暇が許されていたショウヤがヘリオポリスを散策しながら、原作のことが思い浮かびため息をついていたとき、突如衝撃が襲った。

(これは…原作開始か!?)

原作が始まったと判断したショウヤは、近くの車を借り、Gがあるモルゲンレーテへ急いだ。

モルゲンレーテに到着したショウヤは非常通路を使い機密ブロックへ向かった。

(イージス強奪だけでも阻止する!)

デュエル、バスター、ブリッツはどうにもならない。原作通りならイージスとストライクはまだ残っているはずだと考え、ショウヤは目標をイージス強奪阻止に定めた。

全力で走り、道が開けていた場所に出ると、長い髪の整備服を着ている女性がザフト兵と銃撃戦をしているところを目にする。

(間に合ったか!)

ショウヤがほっとしたのもつかの間、無常にもイージスはアスランと思われる、赤いザフト兵に奪われてしまっていた。

魔乳、失礼…マリューとキラがストライクに乗り込むのを見て、ショウヤは遅かったと気落ちするが、すぐにそんなことをしている場合じゃないと焦った。

なぜなら、この辺りは原作で爆発に巻き込まれるからだ。

(やべえ詰んだ!死ぬ?くそ!こんな世界で死にたくねえ!)

ショウヤは某神を呪い、生き抜いてやると反骨精神を高ぶらせた。
そのとき、ショウヤの目にイージスが映った。

(2機目のイージス?原作にはなかったぞ!でもこれで!)

ショウヤはすぐさまイージスに飛び移った。

何とかコックピットに潜り込むと、ハッチを閉め、OSを起動させる。

General
Unilateral
Neuro-Link
Dispersive
Autonomic
Maneuver
Synthesis
System

GUNDAM、ガンダム。

元の世界においてSFでは欠かせないアニメの金字塔、ガンダム。
ただの凡人だった自分があのガンダムに乗っていることにショウヤは不思議な感慨と感動を受け、クスッと笑みを浮かべた。
そして目を閉じ、この激動の1年を数瞬で思い返し、死んでたまるかと覚悟を込めて叫んだ。

「ショウヤ=ナカノ!イージス出る!」

(恥ずかしいけど爽快感あるし、癖になりそうだ)

ショウヤがイージスで空中に上げると、イージスとジン、ストライクがカメラに映る。

ショウヤはストライクへ向けて通信を行なった。

「こちらショウヤ=ナカノ少尉!ストライク応答してください!」

G強奪を知っていたショウヤはGのマニュアルを頭に叩き込んでいた。また仮想シミュレータで今のOSでも十二分に性能を引き出すことはできないが、ほかのテストパイロットと違い戦闘がこなせる。

イージスが飛び去っていき、ジンが76mm重突撃機銃でストライクに攻撃しているを見て、兵装選択を立ちあげながら通信を試みた。

「…こ…ら………ク!。こちらストライク!マリュー=ラミアス大尉です!少尉!ジンの対応をお願いします!」

ショウヤが並みのコーディネーターを超えるMS適正とGでの戦闘をこなせることを知っているマリューはGとショウヤならジンを撃破できると思い、ショウヤに命令した。

「了解!」

ショウヤもジンがGに驚いてあっけなく撃破されたのを原作で知っていたため(実はエース級である黄昏の魔弾だとは知らない。)一気にジンを落とそうとし、兵装選択を行おうとする。が、


(このイージス、サーベルがねぇ!)

イージスは、原作では両腕両脚にビームサーベルを発生させれたはずなのだが、ショウヤの乗っているイージスには両腕にアーム内蔵ビームガンとなっていた。他にはイーゲルシュテルンしかない。ただのバルカンのイーゲルシュテルンではジンは落とせない。シールドも装備しているが、そもそも武器ではない。
ショウヤはいくら戦闘中とはいえ、中立の都市でビームを打ち込むほど、狂ってはいない。最悪の場合は使用も辞さないが。

(なら、原作通りに進ませればいい!)

「大尉!兵装がビームガンしかない!ヘリオポリス内でこの装備はまずい!ストライクのアーマーシュナイダーを!」

時間を稼げばOSを改良したキラがアーマーシュナイダーでどうにかすると考え、マリューに伝えると同時に、スラスターの出力を最大にし、ジンに向けて突進させた。

「このぉ!」

ジンが反応できず、イージスのシールドを前面にした突進を受け、態勢を崩してしまう。

ショウヤも思っていた以上の衝撃で初の実戦であることを思い出し、一瞬躊躇してしまう。その数瞬でジンは態勢を立て直し、重斬刀を装備して斬りかかったきた。

PS装甲があるため重斬刀ではダメージが与えらえないが、間接部などを狙えば破壊することもできる。ショウヤはスラスターを使い、斬撃をかわす。

「こいつ!どうなっている!これが本当にナチュラルの反応なのか!」

ミゲル・アイマンは専用機ではないとはいえ、エース級である自らの操縦に対応できるGの反応に驚愕していた。

「まさか!裏切りが乗っているのか!?」

何度、斬撃を繰り出しても、回避されてしまうため、コーディネーターがパイロットなのでは思い始めた。

ショウヤが時間を稼いでいる間に、キラはOSの改良を終えていた。

「いくら戦闘ができたって、武装がなければ時間の問題だろうが!落ちろ!」

Gは武器を持っていないため、攻めれば落とせると思い、左手に76mm重突撃機銃を、右手に重斬刀を装備し、イージスに向け発砲しながらミゲルのジンが突撃をする。

カメラに映った友人たちの安全のためにも、キラは雄叫びをあげ、アマーシュナイダーを両手に装備し、スラスターを使い、ジンへ突撃した。

「こんなところで、やめろぉ!」

ショウヤのイージスに完全に気を取られていたミゲルは不意を突かれ、両腕の間接部へアマーシュナイダーを刺されてしまう。

「くそ!」

毒づきながら、ミゲルはすばやく機体の診断を行うが、両腕は完全に死んでいた。

「くぅ!この借りは必ず返すぞ!ナチュラル!」

下等なナチュラルにしてやられ、屈辱から捨て台詞が出る。脱出しようと機体を自爆させようとするが、

「隙ありぃ!」

ショウヤのイージスがジンのコックピットを殴りつける。

「うわぁ!」

脱出しようとしていたミゲルは急激な振動を受け、自爆コードの作動に失敗してしまう。しかし緊急脱出コードは正常に打ち込んでしまい、コックピットからミゲルは排出されてしまう。

「俺が、ジンを捕獲された!?くそぉ!覚えていろ赤いの!」

ミゲルは屈辱と怒りに打ち震えながら、ヘリオポリスをを離脱していった。

(初陣は何とか生き残ったか。ジンも捕獲できたし、ふっ、勝ったな)

ショウヤは初陣を生き残ったうえ、ジンも捕獲できたからか、調子に乗って、某指令の真似をしていた。

しかし、ショウヤは知らない。原作では、ナチュラルのGと油断してキラにあっけなく落とされた黄昏の魔弾が、アークエンジェルに猛攻を加えることを。そしてこの世界にショウヤという異物が入り込んでしまったため、原作が崩壊していくことを、ショウヤは今はまだ知らない。



[17882] 3話
Name: you◆1e728d9d ID:9de9fa1c
Date: 2010/05/01 20:07
あらすじ

CEの世界、エイプリルフールクライシスの真っ最中に迷い込んだショウヤ=ナカノ(

中野翔也)は生活のため軍に入隊する。
並みはずれたMS適正を買われ、Gのテストパイロットに選ばれるも、原作のG強奪を

阻止できなかった。モルゲンレーテ機密ブロックが爆発する際に、偶然目にした2機

目のイージスに乗り、黄昏の魔弾が乗っていたジンをストライクとともに捕獲した









初陣を見事勝利で飾ったショウヤは浮かれていたが、気絶しているマリューをスト

ライクからキラが運びだそうとしているのを目にし、気を引き締めた。

(まだ、戦闘は終わっていない。というかこれから追撃戦を受けるんだ。浮かれてい

る場合じゃない。)

「すぅ…はぁー」

ハッチを開き、深呼吸をすると、ショウヤはストライクのほうへ歩き出した。

「ああ~…少年達?すまないが大尉、その女性の手当てをしたいのだが?」

ショウヤはキラとその友人たちがマリューの手当ての指示を出すため、声をかけた



「わかりました。どうすればいいんですか?」

メガネをかけた少年、サイ・アーガイルが指示を仰ぐ。

「俺が彼女を見ているから、水と包帯などを調達してくれ。できれば何か食べるも

のなども頼む。それとこのMSのパーツを載せている車があるのだがそれも頼む。」

(イージスは被弾こそしていないため、数分だけは戦闘が可能だ。仮面の奴は何とか

なる。問題はそのあとだ。ヘリオポリス崩壊阻止できるかなぁ?まず無理だな。抵

抗すれば、仮面ならヘリオポリスごとMSなどを破壊して、責任を連合に押しつける

ぐらいするだろうしな。とりあえず水と長持ちする食料はできるだけ確保したほう

がいいな。アークエンジェルが出てきたらコンビニなどから持っていこう…泥棒に

なるが、非常時だ、しかたない)

マリューの怪我を看ながら、ショウヤはこれからの方針を決める。

マリューの傷は、銃弾が貫通しているため、道具もないので止血するぐらいでいい

だろう。と判断する。

その後、ランチャーストライカーを載せた車をキラ達が運転してきたので、ストラ

イクに装着し、そのあとはアークエンジェルへの通信を指示していると、マリュー

が目を覚ました。

「ここは?」

「ヘリオポリスです。ジンとの戦闘の際に、G強奪の際に受けた傷で大尉は気絶して

いました」

「そう…。Gはどうなったの?状況について詳しくお願い」

「ストライク、イージス?は無事ですが、それ以外は全て奪取されました。現在バ

ッテリの切れたストライクへストライカーパックを装着しています。完了後アーク

エンジェルへの通信を試みます。あと、先ほどのジンは捕獲することができました



少し呆としていたマリューだが状況を思い出し、ショウヤに詳しい説明を求める。

「軍人さーん。これでいいですかぁ!」

ある程度の説明が終わると、ランチャーストライカーの装着が完了したことをトー

ル・ケーニッヒが伝える。

「彼らは?」

「ヘリオポリスの市民です。人手が足りないので、手伝ってもらってます」

「ヘリオポリスの市民!?」

マリューは銃を引き抜くと、マリューの看護をしていたミリアリアへ向けた。

「動かないで!それは連合の機密よ。降りてきなさい!」

キラ達が一列に並ばせ、マリューは詰問した。

「君たちの名前は?」

「キラ・ヤマト」

「サイ・アーガイル」

「トール・ケーニッヒ」

「ミリアリア・ハウ」

「カズイ・バスカーク」

(そういえば原作キャラのフルネームなんて、主役級しか覚えてないな)

いきなり状況が変わったことにショウヤは少々現実逃避していた。

「君たちを拘束します」

「なっ、なんだよそれはぁ!」

マリューが機密を知ったキラ達を拘束しようとするが、

(彼らはヘリオポリスの市民だし、連合に治外法権などはないし、後で問題にされる

のもあれだしな、ここは一肌脱ぐか)

原作でマリューがヘリオポリスの市民を拘束するのは無理があると作者は思う。ヘ

リオポリス崩壊で保護したことになっていたが、一歩間違えば拉致になっていたは

ずだ。ショウヤは穏便にことをおさめるための算段を素早く考えた。

「大尉。彼らを拘束する権利は自分たちにありません。Gもザフトに強奪されてしま

いましたし、ここは彼らを一時的に保護することにすればよいのでは?」

「…そうね。もう敵国へGが渡った今、機密も何もないし。Gの詳細情報もオーブに

は渡っているはずだしね」

状況を再確認し、マリューは気落ちしながら、銃をしまう。

「え~と。どういうことですか?」

サイがショウヤに尋ねる。自分達に銃を向けた人物より、助け舟を出したショウヤ

のほうが質問しやすいと無意識に判断しているのだろう。

「あ~、君たちの安全のためにも、今は我々の指示に従ってくれということだ。拘

束されるのとほぼ状況は変わらないが、安全が確認されしだい、要はザフトの撤退

の確認と、オーブの責任者が来たら、君たちをオーブに引き渡す。どちらにせよザ

フトの攻撃は終わっていないだろうから、安全のために我々とともに行動してくれ



頭を掻きながら、ショウヤは答える。

「…わかりました。どちらにせよ、身の安全のためにはあなたたちと行動を共にし

なければならないようですね。今から空きのあるシェルターを探して避難するのも

無理そうですし」

「まぁ、そういことだ。俺はショウヤ=ナカノ、連合の少尉だ」

「私はマリュー=ラミアス、連合の大尉よ。君たちごめんなさいね、我々には連合

の兵士としての義務があるのよ」

先ほど銃を向けたことを申し訳なさそうにマリューが謝る。

「いえ、まぁ事情が事情ですし。それよりこれからどうすんですか?」

「少尉。アークエンジェルへの通信は?」

「まだしていません」

キラが答える。

「ならキラ君、ストライクでアークエンジェルへ通信を試してみて、少尉はイージ

スをお願い」

(まてよ?、いくら協力してもらうからといって、キラだけがストライクに乗って

いるのはまずいだろ!それに原作でもなんか問題視されていたような?)

「わかりました。ですが大尉もストライクに搭乗したほうがよいのでは?協力して

もらうからといって彼だけがストライクに乗っている状況はまずいと思います」

「…そう、ね。そうしたほうがいいか。君たちは車でいつでも避難できるようにし

ておいて」

(ブルーコスモスと聞いていたけど、頼りになるわ、彼)

実はショウヤは本来Gのテストパイロットになる予定ではなかった。しかしブルーコ

スモスの肝入りでテストパイロットとしてねじ込まれた。そのためショウヤはブル

ーコスモス派閥所属とされていた。ハルバートンの派閥に所属し、さらにハルバー

トンを上司として尊敬しているマリューは、試作イージスを急遽組み上げることに

なり作業が増えたこともあったので、ショウヤのことをよく思っていなかった。し

かし、この状況ではGでの戦闘も行えることもあって頼りになると感じていた。




「こちらストライク!アークエンジェル!応答を願います!」

キラとマリューはストライクに乗り、アークエンジェルへ通信を試みていた。

「………こ…ら…………ク……ジェ…」

通信が届いた瞬間、爆音とともにヘリオポリスが揺れた。

試作イージスに乗っているショウヤはシグーとメビウス・ゼロを確認すると、スト

ライクへ向けて通信を行なった。

「こちら試作イージス、敵機を確認、迎撃に移る!」

そして、シグーへ向けてスラスターを最大にし、一気に接近しようとする。

現在試作イージスには捕獲したジンの持っていた重斬刀と76mm重突撃機銃を装備し

ていた。76mm重突撃機銃は残弾数が少なかったが、接近戦を得意としているショウ

ヤはないよりマシと割り切っていた。
また、空中にいるシグーへはビームガンによる射撃は、地上よりは心情的にも行い

やすいが、バッテリの容量からして使用することは難しい。
よって武装は捕獲ジンのものしかない。

ムウ・ラ・フラガの乗るメビウス・ゼロの唯一残った武装、対装甲リニアガンの銃

身がシグーの持っている重斬刀により斬り裂かれた。

これで邪魔ものはいなくなるとばかりにとどめを刺そうするが、ショウヤの接近を

知らせるアラームに気づき、すぐさま回避行動を取った。

次の瞬間、試作イージスの機動力、出力を生かした斬撃が先ほどまでいたシグーの

空間を切り裂いた。

「これが連合のGか、その性能見せてもらうぞ!」

クルーゼは武装のなくなったメビウス・ゼロを見向きもせず、銃弾を補充し、試作

イージスとの交戦に移る。

試作イージスはバッテリーの残りが少ないため、数分しか戦えない。その上、シグ

ーの動きは異常とも思えるほどで、残弾の少ない76mm重突撃機銃ではシグーを沈黙

させられるほど命中させることは難しい。

ショウヤは無謀だが唯一の対抗策として、シールドを盾に何度も突撃、斬撃を繰り

返す。

シグーの放った銃弾は幾度も命中するのだが、すべてシールドに阻まれる。

「シールドの強度までも違うのか」

シグーの装備している28mmバルカンシステム内装防盾とは比べ物にならない強度を

誇るシールドに驚きながら、クルーゼは一定の距離をとりながら、試作イージスへ

76mm重突撃機銃を発砲する。イージスが射撃を行わない、行えないのを見抜いたの

だ。

一方じり貧のショウヤだが、シグーと戦っているとまるで、敵の動きがあらかじめ

わかっているかのように感じる、異常な第6感を発揮し始めていた。

(なんだ?この感覚は?原作の空間認識能力か?俺に主人公補正があるとでもいうの

か!?)

驚きながらも、ショウヤは戦闘に集中し、その感覚を自らのものにしていく。

またクルーゼもショウヤの進化に近い成長を感じていた。

(奴はこの戦いで成長している。私とムウに勝るとも劣らぬ程の空間認識能力を持つ

者がいるとは!)

「ふっ!面白い!」

クルーゼはこの敵に興味をもち、敵の得意であるだろう接近戦を挑んだ。

(くそ、SEEDの原作でのラスボス、めちゃくちゃ強い!っていうか死ぬ!くそっ!こ

いつはミゲルなんてモブとは違う!)

シグーの繰り出す斬撃を、試作イージスは胸部などのスラスターを使い後方へ回避

する、背部スラスターを全開、ショウヤは急激なGに襲われながらも斬撃を放つが、

シグーは斬撃の初動をシールド妨害し、蹴りを放ち、試作イージスの態勢を崩す。

反動でシグーも態勢を崩す。

「やる!」

「これがザフトのエースか!」

距離をとり、態勢を整えながら、たがいに称賛する。そしてさらに再度両者が攻撃

に移ろうとした瞬間、試作イージスの装甲が灰色に変化してしまう。バッテリが切

れたのだ。

「しまった!フェイズシフトダウン!」

「これで幕切れか。君はおもしろい奴だが、ここで!」

クルーゼはとどめを刺そうと、コックピットへ突きを放とうとするが、
下から発射された膨大な熱量の熱線によりシグーの左腕が燃え尽きる。

「何だと!」

クルーゼは驚きからストライクに目を見張った。

ショウヤの危機をみて、キラが320mm超高インパルス砲アグニを放ったのだ。

アグニはそのままコロニーの外壁を融解し、穴をあけた。

穴から空気が大量に漏れ、シェルターの危険レベルが最大まで引きあがり、コロニ

ー外部へ射出されてしまう。

「ああっ!」

キラはそれをみてショックを受ける、この惨状を起こしたのはキラ自身なのだ。

「MSにここまでの火力を持たせるとはな」

クルーゼはシグーの損傷から、二つのMSを落とすことは難しいと考えるが、せめて1

機だけでも、と混乱に乗じて試作イージスへ向けて攻撃を加えようとした。


ショウヤはバクンバクンと跳ねる心臓の音を聞きながら、それを見ていた。

しかし、激しい爆音とともにその黒煙が発生し、シグーは態勢を崩す。その中から

白い足のついたような戦艦、アークエンジェルが現れる。

クルーゼは悪化した状況を確認すると、すぐさまヘリオポリスを離脱していく。

「はぁはぁ、たすかった、のか?」

ショウヤは荒々しく息を吐きながらつぶやいた。




[17882] 4話
Name: you◆1e728d9d ID:9de9fa1c
Date: 2010/05/01 20:08
あらすじ

CEの世界、エイプリルフールクライシスの真っ最中に迷い込んだショウヤ=ナカノ(中野翔也)は生活のため軍に入隊する。
並みはずれたMS適正を買われ、Gのテストパイロットに選ばれるも、原作のG強奪を阻止できなかった。仮面の男ラウ・ル・クルーゼとの死闘においてフェイズシフトダウンにより絶体絶命となるが、キラ・ヤマトのストライクとアークエンジェルに助けられ、九死に一生を得た。














キラ達とマリューを先にアークエンジェルへ行かせ、ショウヤは深呼吸をして自らを落ち着かせた。

「ふぅー(吸ってー)はぁ(吐いてー)、ふぅー(吸ってー)はぁ(吐いてー)」

(もう少しで死ぬところだった。これが実戦、戦争をしているんだこの世界は、そして俺も)


顔を両手でパンッとたたき気合を入れる。

(まだ戦闘は終わっていない!絶対に生き残る!そしてクルーゼ、次は負けない!おまえは俺が倒す。この世界のためとか平和のためじゃない、これは俺の意地だ!あんな原作が崩壊しようが構わない!絶対勝つ!)

元の世界でショウヤは負けず嫌いだった。
元の世界では剣道の大会で、全国レベルの選手に数十秒で負けてしまったことがある。人一倍練習してきたことが一瞬で消えてしまった。あきらめる、ショックを受けて剣道をやめる人もいるだろうが、翔也は猛練習の行い、雪辱を果たしたことがある。自分が好きな剣道だけは誰にも負けたくないという思いが高校時代のショウヤにはあった。大学でも続けていたが、就職などで忙しくなると、竹刀を振る時間が少なくなっていき、社会人になると、土日しか竹刀を振ることがなくなった。
その負けず嫌いがMS戦でも発揮されてしまうほどにショウヤはMSに魅了されていた。
非常時の突貫訓練は最低限の座学と身体能力の向上以外は、MSでのシミュレーションにつぎ込まれた。最初はとても戦闘ができるとは言えない操縦技術だったが、
四苦八苦しながらも、生きるためという理由で必死に訓練を行い、MSの操縦技術がうまくなっていくうちに、ショウヤはMSに魅了されてしまった。今では、生きるためにMSの訓練を行うというよりMSに乗るために生きているのではないかというほどに。
シミュレーションで仮想標的のジンを落としたときは、ガッツポーズをあげたほどだ。
負けは死を意味することもあるが、それ以上にショウヤはMS戦ではだれにも負けたくないと心の底で思っていた。それだけのプライドが無意識に根づいていた。
戦士の資質があると言えるが、それだけにこだわるようでは軍人としては失格だ。何もなせず死ぬのか、良き戦士で終わるのか、良き軍人で終わるのか、それとも両方を兼ねそろえる兵(つわもの)になるのか、これは今のショウヤでは未熟すぎてわからない。

(これは余談だが、訓練と同時にOSの改良が行われていたため、原作よりもナチュラル用OSは改良され、MS適正値が高ければ訓練しだいで戦闘ができるほどにはナチュラル用OSが完成している。)



雪辱を誓い、ショウヤは試作イージスをアークエンジェルに着艦させる。
そして試作イージスから降りると、キラ達がなにやらもめていた。

フラガがキラにコーディネーターかどうか確認したところ、キラがコーディネーターだと発言したことで、連合兵がキラに銃を向けた。そのことをキラの友人たちが連合兵に食ってかかったのだ。

「銃を下ろしなさい」

マリューが、有無を言わせない語調で言った。この場にいる階級では最高の位を持っているマリューの命令に、一瞬の逡巡の後に連合兵がたちに銃を下ろした。

「ラミアス大尉、これはいったい?……」

ナタル・バジルール少尉がキラとマリューを見比べて問う。

「そう驚くこともないでしょう? ヘリオポリスは中立国のコロニーですもの。戦火に巻き込まれるのが嫌でここに移ったコーディネーターがいたとしても不思議じゃないわ。そうよね、キラ君」

「はい、僕は一世代目ですし」

マリューの言葉に、キラはつぶやくように発言する。
この騒ぎの元凶となる発言をしたムウ・ラ・フラガ大尉は決まり悪そうに口を開く。

「いや、悪かったな、とんだ騒ぎにしちまって。俺はただ聞きたかっただけなんだよね」

フラガは苦笑して頭を掻き、ストライクを見上げ、愚痴る。

「ここに来るまでの道中、これのパイロットになるはずだった連中のシミュレーションを結構見てきたが、ヤツら、ノロクサ動かすにも四苦八苦してたぜ。まぁ例外もいたがね、なぁスーパールーキー」

フランクにショウヤへ目を向けて問う。

「フラガ大尉無事だったんですね。それともうルーキーではなくなりますよ。実戦を経験しまたし、まだ戦闘は続くでしょうから」

ショウヤはアークエンジェルの護衛艦に乗ってヘリオポリスに来たとき、フラガに直接会ったことはない。
しかしムウ達MAのパイロットたちは、シミュレータでGを自由自在に動かしていたショウヤを知っており、そのときムウがスーパールーキーと呼んでいたのだ。

(ちょっと軽い感じがするが、歴戦の戦士のような雰囲気が漂っているし、いい男だなムウ・ラ・フラガ。原作だと不死身にされてたが、この世界ではどうなんだろうか?)

ショウヤは原作での不死身っぷりを思い出しながら、ムウのパイロットしての強さを感じ取った。

「まぁ、ね。俺以外は全滅しちまったよ。それと俺からすればまだまだひよっこさ、スーパールーキー」

フラガは肩をすくめながら、自嘲した。すると少し湿っぽい雰囲気になるが、それを吹き飛ばすようにショウヤをからかう。

「さて。俺がいうのもなんだけど、これからのことを決めたほうがいいんじゃない?あのシグーに乗ってんのはクルーゼだ、奴はしつこいぜぇ」

「しかし、艦長達以下士官は全滅です。階級から言って責任者はラミアス大尉とフラガ大尉になります」

その言葉にフラガは驚く

「おいおい、まじかよ。…んじゃまぁ会議でもすっか。少年たちにはどっかで休んでもらばいいか」

「そうですね。生き残っている下士官はブリッジへ」

いきなり責任者になってしまったマリューは内心憂鬱になりながらも、現状打破のため、方針を決めるためブリッジにてミーティングを行うことにした。








「奴のことだ撤退はまずない。すぐにでも、まあ3時間以降後ぐらいか、攻撃があると思ったほうがいいな」

ミーティングが始まり次第ムウが発言する。

「そう仮定して動いたほうがいいですね」

マリューが肯定する。

「とりあえず、MSの補給はしておこう、後物資もできるだけ詰みこむ」

「ラミアス大尉、試作イージスには俺が乗ります。マニュアルなどがあると助かるんですが」

ショウヤは原作5機のGについてはマニュアルなどでスペックなどを把握していたが、試作イージスという機体のことは知らなかった。PS装甲があるが、奪取されたGが出てたら試作イージスの性能を発揮できなければ苦戦することは必至だ。マニュアルとシミュレーターでの訓練は欠かせない。

「用意させるわ。ナカノ少尉は少しでも休息を取っておいて」

「了解」

「それとストライクのことなんだけど…」

マリュー言いづらそうにしながらも発言した。

「キラ君に協力してもらましょう」

「っ。彼はコーディネーターですよ!フラガ大尉が乗れば」

堅い性格のナタルは非常時とはいえコーディネーターがストライクに乗ることを嫌った。

「無茶いうなよ。のろくさ出てって的になれっての?長期間訓練すれば俺でも戦闘はできるようになるが、この短時間じゃ無理だ。」

ムウは自分が不慣れなMSに乗って戦闘をしているところを想像し、嫌そうな顔する。MSのパイロットとしての素質も高いムウなら訓練すれば戦闘を行えるレベルになるが、圧倒的に時間が足りない。

(ふつうは機密であるGに中立国のとはいえコーディネーターを乗せないよなぁ。原作知識があるからこの意見には賛成だけどね)

「自分はラミアス大尉に賛成です。コーディネーターの彼は、適正がずば抜けていたのもあるのでしょうがMSの訓練をせずにGで戦闘ができた、ならばMSの訓練をしているザフトにもまた可能だと思います」

(少しシャアのパクリっぽいセリフだなこれ)

「おい、それってGが」

「4機のうち1、2機は出てくる可能性があります。そうなれば戦力的にきついです」

「はぁ。わかりました。キラ君にストライクに乗ってもらいましょう。キラ君は私が説得します。私はMSの補給、調整の指揮をします。バジルール少尉はアークエンジェルの設定などの指揮をお願い、わからないことがあったら質問して。フラガ大尉は物資の積み込みをお願いします。ナカノ少尉は試作イージスの調整をお願い。各自適宜に休憩をとってください。では作業をお願いします。」

マリューの号令で、それぞれは作業を開始した。








ショウヤはマリューから渡された試作イージスのマニュアルを読んでいた。

GAT-X302-C 試作イージスカスタム
GAT-X301で、MAからMSへの変形をテスト、GAT-X302ではMSからMAへの変形をテストし、GAT-X303で変形機構の強度不足を補い、イージス完成。
強度不足で変形中に分解したGAT-X301とGAT-X302のパーツを使用しGAT-X302-Cとして完成。変形機構、580mm複列位相エネルギー砲「スキュラ」、両腕・両脚のクローを発振源とするビームサーベルを排除し、スラスターの増設を行い、6機のGのなかで最高の機動性を得ることに成功した。また地上でも短時間ではあるが航空能力を得ている。

OSはナチュラル初のMSパイロットであるショウヤ・ナカノ少尉のデータを元に改良を加えたものを使用している。

武装は、
75mm対空自動バルカン砲塔システム イーゲルシュテルン
両腕の射程が短いが連射性能が高い、ビームガン
正規イージスにも使用されている、60mm高エネルギービームライフル。腰の後ろにマウント可能。これは別のGのビームライフルでも併用可能。
アンチビームシールド
7.39m熱振動刀、コテツ 2本 腰左右にマウント可能
となっている。

高機動の接近~中距離戦を得意とする。
コテツは宇宙でしか作成できない特殊な金属を使用している。そのためPS装甲やアンチビームシールドすら斬り裂くことが可能、またストライクの対艦刀とは違い片手でも使用可能。モーションはナカノ少尉が訓練で使用していたジンのデータを流用している。



このスペックからするとほぼショウヤ専用機といえるものになっている。

(専用機は男のロマン、汎用機は漢のロマンと言われているが、実戦に出る身だと専用機のほうがいいな、スペック高いし、自分の扱いやすいようチューンされているし)

などと思いながら、試作イージスのスペックなどを頭に入れていく。

(少しシミュレータで訓練と調整、その後で休憩をとるか、さすがに疲れたし)

高いMS適正を持っているが、体力、筋力などの身体能力はただのナチュラルと変わりがないショウヤは、自分の思っている以上に体力を消耗していた。

開いている士官用の部屋に入ると、ベッドに倒れすぐさま眠りに就いた。




[17882] 5話
Name: you◆1e728d9d ID:9de9fa1c
Date: 2010/04/24 20:11
あらすじ

CEの世界、エイプリルフールクライシスの真っ最中に迷い込んだショウヤ=ナカノ(中野翔也)は生活のため軍に入隊する。
並みはずれたMS適正を買われ、Gのテストパイロットに選ばれるも、原作のG強奪を阻止できなかった。仮面の男ラウ・ル・クルーゼとの死闘においてフェイズシフトダウンにより絶体絶命となるが、キラ・ヤマトのストライクとアークエンジェルに助けられ、九死に一生を得た。しかし、新たな危機が迫っていた。













ショウヤは思っていた以上に疲労していたのか、熟睡してしまっていた。ショウヤ
が起きると、ムウがミーティングで言っていた3時間が過ぎていた。

(思っていた以上に疲れていたのか。起きて、ブリッジに行くとするか)

ノビをしてすると、ベストの状態ではないが、それでも仮眠をとる前に比べて身体
が楽になっていた。

(飲み物がほしいな)

と思いながら、ショウヤは備え付けの家具や通信用のモニタ、コンソールなど以外
何もない部屋から出ていった。













ショウヤがブリッジに上がると、ヘリオポリス組が連合の制服を着てレクチャーを
受けていた。

(キラの説得は終わったてことか。ならもうすぐ戦闘か)

「遅れてすみません」

ショウヤは敬礼しながら、遅刻したことを詫びた。

「いえ、初の実戦、それもMSでですから疲れていたのでしょう。気にしないで」

マリューは気にせず、敬礼を返した。ショウヤがヘリオポリス組を見ていたため、
経緯を説明する。

「キラ君がMSに乗って戦闘を行うのに、何もしないでいるのは少しでも助けになり

たいということで、志願してくれたのよ、彼らは」

(その結果がよりキラを戦争に巻き込むことになるんだが、人手が足りない現状ではしょうがない、か。それに友達思いではあるんだよなぁ)

「そう、ですか。実際に人手が足りなさすぎますし、いいのではないでしょうか。

戦時の特例徴用、事態が落ち着いたら除隊ってところですかね」

「そうなるわね。ここまで非常手段を取ったし、何としても生き残らないといけな
いわ。少尉には苦労をかけるけどMS戦は任せるます」

マリューが実戦でのショウヤを知っているため、頼りにする。

「おいおい、それを言われたら俺の立つ瀬がないじゃないの」

ムウが大げさに肩を落としながらいう。もうすぐ戦闘が始まると確信しているムウ
は演技して場の雰囲気を明るくする。それにショウヤも乗る。

「いえいえ、頼りにしてますよ先輩」

「おっ、言うねぇ」

ヘリオポリス組が含み笑いをしていると、アラートがけたたましく鳴り響いた。

「レーダーに感あり、MSが接近中です!数は不明です!」

「第一戦闘態勢へ!対MS戦闘準備!フラガ大尉!ナカノ少尉!」

マリューが矢継ぎ早に指示する。

「了解!」

ショウヤがブリッジを走って出ていく。

ムウは、整備班にメビウス・ゼロの修理具合を聞くが、無情にも間に合わなかった
ようだ。

「駄目だ!出られん!」

「大尉はCICを、バジルール少尉はその統括を!」

「了解です!」

戦闘が、始まる。














ショウヤは格納庫につくと、整備班がGoサインを出す。

「少尉!補給は完了してます、いけますよ!」

「わかった!」

試作イージスに急いで乗り込む。

OSを立ち上げ、出撃シークエンスに入る。

(キラにアドバイスしておくか。気休めだし、普通なら俺もアドバイスされる側なんだけどねぇ)

通信を開き、キラへつないだ。

「キラ・ヤマト」

「はっはい、ナカノ少尉」

試作イージスの通信用のモニタに緊張した顔のキラが映った。

(緊張していな、無理はないか。俺もかなり緊張している)

「協力感謝する。おまえはまず生き残ることを第一に行動しろ。敵MSの周りをうろ
ついているだけでも助かるんだ。無理はするなよ」

「了解です」

「スタンバイ完了、試作イージス発進どうぞ!」

(ヘリオポリス崩壊………この戦力なら止められるか?最善を尽くすのみ、だな)

オペレーターをしているミリアリアの声に、ショウヤは気合を入れるように叫んだ


「ショウヤ・ナカノ!試作イージス出る!」

イージスが発進し、フェイズシフトを展開する。

「続いて、ストライクスタンバイ、ストライカーパックはソードを装備します」

(装備は、ソードストライカーか、あんなことにはならないよな)

キラは非常事態とはいえ、自分の行いがコロニーの外壁に穴をあけたことを思い出
し恐怖した。そして、ソードならあのようなことはならないと自分に言い聞かせた


「スタンバイ完了、キラ!気をつけてね!ストライク発進どうぞ!」

「ミリアリア、ありがとう。キラ・ヤマト!ストライク行きます!」

ストライクが発進し、フェイズシフトを展開すると、敵が視認距離に入った。




アークエンジェルのブリッジでは、敵を確認しカメラに移されると同時に驚いた声
で報告される。

「敵はジン3、シグー1、イージスです!」

それを聞いたマリューは、驚く。

「ナカノ少尉が言っていたとおりね、奪ったGをもう投入してくるなんて!。Gはナ
カノ少尉に対応させて!」

「了解!少尉はGの対応を優先してください!」


「了解!」

ショウヤはミリアリアの声に返答した。

(間違いなくパイロットはアスラン・ザラ。主役キャラだが、俺は連合の兵士だ。
連合、いや大西洋連利の利益のためなら原作崩壊も辞さない!クルーゼとの戦いで
得た力と迷いのあるアスラン・ザラならここで退場させることも可能なはずだ!討
たせてもらぞ!)

ショウヤがアスランへ向かって、突撃しようとすると猛烈な勢いでシグーが突っ込
んできた。

「くそ、クルーゼか!」

なんとシグーは右手にビームサーベルを、左手にアンチビームシールドを装備して
いた。よく見ると、ケーブルが腕につながっており、そこからエネルギーを得てい
るのだろう。ショウヤはそれに気づき、毒づく。

「くそっ!原作より状況が悪化している!?」

一瞬ショックを受けるが、今は原作を考えている場合ではないとコテツの熱振動を
発生させ、接近戦を挑む。

シグーの上から振りおろした斬撃をシールドで受け止め、すぐさま胴の型で斬撃を
放つ。それをシグーがシールドで防ぎ、互いにしのぎを削る。

実体剣が特殊な金属でできているコテツやレーザー刃と実体剣が複合するシュベル
トゲベールはアンチビームシールドでも防げない。その結果としてシグーのアンチ
ビームシールドへコテツの刀身が少しずつ入り込んでいく。

「くそっ!」

シグーのパイロット、ミゲル・アイマンは限界に達したシールドを破棄すると76mm重突撃機銃を左手に装備させる。試作イージスはそのままシールドを両断し、シグーに向かっていく。

「落ちろー!」

ショウヤはコテツで突き、斬り、払いを次々に放つ、しかしシグーは紙一重だがな
んとかかわしつつ76mm重突撃機銃を放ち牽制を行う。

「ちぃ!こいつ、やはり強い!クルーゼ隊長と言うだけのことはある!」

雪辱に燃えるミゲルは、クルーゼに無理を言いシグーで出撃することを打診したの
だが、なんとクルーゼが了承したのだ。そしてクルーゼは、試作イージスのパイロ
ットはザフトのエースに勝るとも劣らぬ実力があると言ったのだ。半信半疑だった
ミゲルだが、試作イージスと戦いその言葉が嘘ではなかったことを確信した。

試作イージスがやや優勢に戦闘を進めていた。そしてショウヤはシグーから来るプ
レッシャーに違和感を感じていた。

(おかしい、クルーゼはもっと強かったはずだ。だがあのシグーからはクルーゼほどのプレッシャーを感じない、あれのパイロットはクルーゼではない?)

「ならば!」

ショウヤはクルーゼという原作でも化け物クラスの空間認識能力と一種の予知能力
をもつ強敵との戦いで高いレベルの空間認識能力と予知能力を開花させていた。今
は集中しなければ使いこなすことができないが、戦闘状態でも短時間なら可能だ。
数瞬目を閉じ、集中する。目を開くと敵の動きが数秒先までわかるのを感じる。

「一気に終わらせてやる!」

ショウヤは勝負をつけようと突撃した。






一方、キラはイージスと対峙していた。

「お前がなぜこんなものに乗っている?!」

アスランは混乱しながらも、問い詰める。

「僕はただ、友達を助けたかっただけだ!君たちがヘリオポリスに来なければこん
なことにはならなかった!それに君だって戦争はいやだって言っていたじゃないか
!」

「地球軍の兵器を作っていたんだぞ!ここは!……血のバレンタインで母も死んだ
。だから俺は、」

アスランは、戦闘中であることも忘れキラとの会話に集中していた。まさか敵機と
通信をしているとは思わず、精彩を欠くイージスにジンのパイロットが援護に来る



「何をやっているアスラン!」

ジンはバルルス改特火重粒子砲をストライクに向けて放つ。

「くっ」

アスランと同じく会話に集中していたキラは不意を突いたこの攻撃を機体を上昇さ
せることで何とかかわす。

これを見たジンのパイロットはチャンスだと思い、突撃するとともにアスランに援
護を頼む。

「突撃する!回りこめ!アスラン!」

アスランがこの指示に無意識に従い、ストライクの背後へ回り込もうとする。キラ
の注意がイージスへ向いたところで、ジンは至近距離からバルルス改特火重粒子砲
を放った。

しかし、ストライクはパンツァーアイゼンの本体キャニスター、アンチビームシー
ルド部分でこれを防ぎ、ジンに突撃した。

「なにぃ!」

まさか、バルルス改特火重粒子砲が防がれるとは全く予想していなかったジンのパ
イロットは驚いて、致命的な隙をさらした。

「うわぁー!」

キラは人を殺すことなど全く考えず、恐怖から逃れるため、反射的にジンをシュベルトゲベールで両断した。

「オロールゥー!」

「あっ、ああ!」

アスランはジンのパイロットの名を叫んだ。キラはその声で人を殺してしまったの
だと、頭の中が理解してしまう。しかし、心はそれを理解できず、うめき声を上げ
る。

だが、キラが完全に人を殺したのだと理解する前に、残っていたジンのミサイルが
ヘリオポリスの支柱を破壊してしまった。そして支柱を失ったヘリオポリスはブロ
ックごとに次々にばらけていき崩壊していく。













ヘリオポリスが崩壊する直前、ショウヤとミゲルの戦いの行方はほぼ決まっていた


シグーのビームサーベルは試作イージスのABシールド(ここからは略すことにします)で防げるが、試作イージスのコテツはシグーには防げない。

ゆえにシグーは距離をとるしかないのだが、空間認識能力を最大限に発揮したショ
ウヤは、ミゲルの逃げる方向を感じ取り、距離を離さずに得意な接近戦で一方的に
攻撃を加えていた。

そして次第にシグーは回避行動すらも取れず、76mm重突撃機銃を切り裂かれてしまう。ミゲルの死は着実に迫っていた。

「これでとどめだ!

ショウヤは、シールドを全面に展開し、Bサーベルを防げるようにしながら、スラスターを全開にして、コテツで突きを放とうと突撃する。

「くそっ!」

しかし、ここで運が味方した。

後数秒もあればシグーはコテツにコックピットを貫かれていただろうが、ショウヤ
がとどめを刺そうとした瞬間、ヘリオポリスの崩壊が始まってしまったのだ。

頭上から、落ちてきたプレートが試作イージスの進路を邪魔してしまい、そのまま
シグーは退却していく。

追うとするが、ヘリオポリスが崩壊していきそれどころではなくなる。

ヘリオポリスが崩壊していく。

「ヘリオポリスが、崩壊していく………」

呆然としながら、アークエンジェルに向かおうとしていたショウヤはストライクが
崩壊に巻き込まれ、アークエンジェルとは離れた方向のコロニー外部へ流されるの
を見て、崩壊していくヘリオポリスに巻き込まれ、流されながらも救出に向かった。



[17882] 6話
Name: you◆1e728d9d ID:9de9fa1c
Date: 2010/05/01 20:08
あらすじ

CEの世界、エイプリルフールクライシスの真っ最中に迷い込んだショウヤ=ナカノ(中野翔也)は生活のため軍に入隊した。
Gを受領するためヘリオポリスに来たが、ザフトによるヘリオポリス襲撃とG強奪に巻き込まれてしまった。
試作イージスに乗り、ザフトと死闘を繰り広げるが、ジンの攻撃によりヘリオポリスは崩壊してしまった。














(密約に近いものとはいえ、ヘリオポリスでGの開発をしていた連合の軍人としてザフトの攻撃によるヘリオポリス崩壊は防がなきゃならないことだ。原作通りではなくなっているとはいえ、原作ではジンのミサイルが原因でヘリオポリスが崩壊した。………つまり、シグーを短期間で落とした後に、ジンを落とすのでなく、シグーのパイロットがクルーゼではないと気づいた時点でジンを先にたたくべきだった。これは俺のミスだ………)

良くも悪くも元の世界の日本で育ったショウヤはニュートラルというか主義主張が薄いのだ。原作は気に入らないが、だからと言って原作キャラ、いやこの世界に生きている人達が気に入らないわけではないし、俺が原作を変えてやるよ!などと思いあがっているわけでもない。軍人という仕事、命令で敵であるザフトを討ち、民間人を守る。生活のためにそれをただこなすだけだ。だが、任務に失敗したら落ち込むし、知り合った戦友が死ねば感傷的になってしまう。

「くそぅ……」

優先順位を間違えなかったら、ヘリオポリス崩壊を防げたかもしれないとショウヤは気づき、落ち込む。アークエンジェルは守れたが、ヘリオポリスを守ることはできなかった。それも自分に力がなかったせいで、だ。あと少しでも自身に力があればヘリオポリス崩壊は防げた。

(俺'ショウヤ=ナカノ'は原作に登場していない。この世界に紛れ込んだMS操縦がうまいだけのナチュラルだ。流されるまま大西洋連邦の兵士になった。ブルーコスモスのように狂信的だが明確な目標があるわけじゃないし、絶対に原作を変えてやる!だなんても思ってもいない。でも俺は自分の力が足りなかったせいで後悔したくない。そんな理由で強くなることはいけないことなんだろうか?俺は……)

世界を平和にする、だれかの仇を取る、そんな大きい目標や夢があるわけでもない、ただ自分のしたことに責任を持ちたい、後悔したくない。普通の人(凡人)の考えかもしれない、しかしショウヤは強くなりたい、強くなるという意思を持った。

クルーゼとの戦いに敗れたショウヤが雪辱を誓ったことが戦士としての目覚だった。防げたかもしれないヘリオポリス崩壊は兵士として、そして人間としての強さを得るきっかけになったということだろう。

だがショウヤは知らない、この世界がどれだけ危ういバランスで成り立っているかを、そして'ショウヤ'という異物がこの世界に与える影響がどれだけのものになるのかを、ショウヤは未だ知らない。










ストライクを発見したと同時に、ナタルからの通信が届いた。

「こちらアークエンジェル!イージス!ストライク!応答を!」

「こちら、イージス、ナカノ少尉。ストライクは前方に確認している。ストライクをつれてアークエンジェルへ戻ります」

「了解した」

通信を切ると、ストライクへ接触した状態で通信する。

「キラ・ヤマト!生きているか!」

(特に損害はないし、大丈夫だろうな。……でも、原作はあまり当てにしないほうがいいかもしれない)

シグーが襲ってきたことを考えると、原作は参考程度に考えたほうがよいとショウヤは判断した。

「こちらキラ・ヤマトです!ストライクに損傷はほとんどありません。僕も大丈夫です。ナカノ少尉」

何度か通信を行っているとキラから返答が返ってきた。

「わかった。アークエンジェルへ戻るぞ、キラ」

「わかりました。…っ!あれは」

イージスとストライクがアークエンジェルへ向かって移動していたところ、キラが破損している緊急避難用ポッドを発見した。

「ナカノ少尉、破損している緊急避難用ポッドを発見しました。あのっどうしますか?」

ショウヤにどうするかとキラが不安そうに確認する。できればアークエンジェルで収容してほしいが、ショウヤ達軍人が駄目だと言ってしまえばポッドが破損しているまま放置することになる。戦闘中でもあるため、断られる可能性が高いと思っているのだろう。

(一応中立国の市民だし、政治的なことを考えれば、助けるべきだろう。オーブの連合への心象も避難民が無事生還すれば、よくなるはずだ。原作では全員死亡してしまったが、何とかするしかない。低軌道?会戦だったか?…奥の手をとっておけば何とかなるか?)

ショウヤはこの時、対MS戦での秘策を編み出した。これからの激戦、追撃してくるだろうGやシグー相手に伏線を張り、試作イージスで情報が渡らなければ有効である奥の手を。それは絶大な効果を発揮することになる。

「発見した以上見捨てるわけにもいかないだろう。アークエンジェルへ収容する。キラ、お前が持っていけ」

「わかりました」

ほっとした表情で答えるキラ。




数分後、二人はアークエンジェルに帰艦しようとしたが、ポッドのことをナタルに咎められた。

「ナカノ少尉!この艦は大西洋連邦の機密です。その上戦闘中なのですよ!避難民の受け入れなど認められません!」

「ポッドは損傷している。ザフトの攻撃で崩壊したヘリオポリスの市民を助けるのは連合の利にもなる。ポッドの収容をお願いする」

「しかし!すぐに救援艦が来るはずです!」

ショウヤとナタルが通信でもめているのを艦橋にいたマリューが仲裁する。

「バジルール少尉。何をもめているの?」

「はっ。ナカノ少尉達が損傷している避難ポッドを発見し、収容しようとしているのですが」

「…いいわ。許可して」

マリューは未だ危機的状況にあるため、無駄なことで時間を取りたくないと考え、収容を許可した。

「しかし」

「今はそんなことに時間を取られたくないのよ」

「わかりました」

ナタルは渋々従う。

「ナカノ少尉。収容を許可する」

「了解。キラ先にアークエンジェルへ」

「わかりました」

「バジルール少尉、副艦長として避難民へ現在の状況などの説明をお願いできるかしら。あとフラガ大尉もお願いできますか?」

「了~解」

「…了解です」

フラガは気安く返答し、ナタルは不承不承だが従う。
軍人の家系でお嬢様であり、優秀な軍人であろうとするナタルはいささか堅いというか思考が柔軟ではないのだろう。経験を積めば、いずれは戦艦の艦長としてもやっていけるだろうが、今は士官学校を首席で卒業した優秀なひよっこなのだ。また、マリューも技術将校なのであって、戦艦の指揮などは士官学校時代でかじった程度の経験しかないのだ。先ほどの避難民の収容はこの後のことを考えるのにいっぱいで、MSパイロットの意見をそのまま通してしまったのだろう。

(やれやれ。こりゃうまくフォローするしかないか)

フラガは軽薄そうな感じを装っているが、今大戦においては歴戦の戦士だ。ブリッジ要員は実戦を経験していない新人ばかりなうえ、位の高い技術将校が艦長で士官学校を首席で卒業した優秀な新人が副艦長、この二人はこれからも方針の違いでもめるだろうと確信し、第八艦隊と合流するまで、自分がフォローをするしかないと考えた。

そのころショウヤは、

(…ナチュラルなのに美人すぎるだろ、あの二人。それに尻ごみもせずに会話できるなんて元の世界にいたころじゃ絶対出来なかっただろうなぁ。軍人口調も訓練当初はなれなかったが、今ではこの口調が素になってしまって矯正できないし)

戦闘とシリアルになっていた疲れからか、少々現実逃避していた。












「それじゃ開けますぜ!」

整備兵を統括するコジロー・マードックがポッドの扉を開く。

中からはまず男性が出てきて、安全だとわかると次々に人が出てきた。

避難民の数は百人に満たないといったところだ。

中には幼児を連れている母親もいる。

(こんなにも避難民がいるのか。原作ではどうだったんだろう?)

ナタルが避難民達に状況を説明していると、ヘリオポリス組が格納庫に入ってきた。確率的にはものすごい小さいが、彼らの家族や知人が存在するかもしれないし、今はブリッジにいても役に立たないので、格納庫へ来ることをマリューが許したんだろうとショウヤは判断する。

「サイ! サイ・アーガイルでしょ?」

ポッドを出て、デッキに集められていた避難民の中からヘリオポリス組の方へ飛び出してきたのは、桜色のワンピースを身に着けた赤毛の少女、フレイ・アルスターだ。

「フ、フレイ?」

ヘリオポリス組が驚いている。キラはサイと抱き合うフレイを見て、切なそうな顔をする。

(ああ、そういえばキラってフレイが好きだったんだっけ。フレイ・アルスターか。原作だとラストで死んだんだよなぁ。父親、アルスター事務次官が生存していれば軍に入ることもキラを利用することもなく、一般市民として生きていくだろうし、後々のためにも何とか頑張ってみますかね。しかし、彼女なんか気になるというか。好みのタイプとかそういうのじゃなくて、なんだろう、なんか存在感が他の人とは微妙に違う感じがする)

ショウヤはムウを見てみるが、ムウもショウヤと同じ何かを感じているのかフレイを少し真剣な目で見ていた。

ショウヤがフレイについて考えている内に、避難民達はとりあえず現状を認識し、ひとまず居住区で休んでもらうことになった。
彼らをヘリオポリス組と一部の兵が先導していった。

「さて、俺達はブリッジに行くか。今後の対応を考えなきゃならんだろうしな」

ムウがショウヤと避難民のいた辺りから戻ってきたナタルに指示を出す。

「そうですね。パイロットスーツを着替えたかったんですけど、後にします」

ショウヤは汗を掻いているし、パイロットスーツは少々動きづらいので、制服に着替えたかったが会議をするといっても少しの間のことだし、我慢することにした。

「…今後の対応…」

ナタルは今後の対応について考えているようだ。

ムウがショウヤにいろいろ質問している後ろをナタルがついてく形で、ブリッジへ向かった。








「艦長、私はアルテミスへの入港を具申致します」

ブリッジにて会議が始まり、マリューが意見はあるかと聞いたところ、ナタルが手を挙げ発言する。

「アルテミス?光波防御帯を使用したアルテミスの傘と呼ばれる絶対に近い防御を誇るユーラシアの軍事要塞ね?」

解説しながら確認するマリュー。技術将校としてのマリューは優秀だ。機密であるGの開発において現場をまとめてる立場であったことからもそれをうかがえる。原作ではずっと艦長をしていたがあれは間違いだと思う。

「事態は、ユーラシアにも理解してもらえるものと思います」

友軍であるユーラシア連邦の軍事要塞で光波防御帯を使用しているアルテミスならばそのまま月本部から援軍が来るまでかくまってもらえばよいし、ザフトも補給を受ける必要があるため、補給を受け、できれば避難民を引き取ってもらい、高速艦であるアークエンジェルの最大船速で月基地まで急げばよい、ナタルはそう考えていた。

しかしムウとマリューは不安そうに眉をひそめた。

アークエンジェルは大西洋連邦の機密なのだ。プラントとの戦争で今は同盟を結んでいるがユーラシア連邦は大西洋連邦と並ぶほどの地球では最大勢力だ。
光波防御帯はユーラシア連邦独自の技術で、プラントでさえもこの技術は未だ実用ができないものだ。それほどの国が大西洋連邦の機密であるGとアークエンジェルが鴨が葱をしょってくるのに何も行動を起こさないはずがない。さらにアークエンジェルは公式では大西洋連邦の所属艦にまだなっていない、今は所属不明艦になる。最悪の事態も考えておかなければならない。

「現状ではなるべく戦闘は避け、アルテミスに入って補給を受け、月本部との連絡を図るのが、最も現実的な策かと思います」

(ブリッツなら奇襲は可能だ、シグーもいるし最悪落とされるかもしれない。アルテミスへ行くのはまずい。原作通り切り抜けられるかわからない、ならば…)

ショウヤは原作知識と、現状でブリッツのミラージュコロイドがあるため間違いなく奇襲はあると判断し、より最善を考え発言する。

「アルテミスの傘はブリッツなら奇襲が可能だと思います。それを考えるとアルテミスは危険だと思いますが」

「っ!そうか!ミラージュコロイド!」

この中で誰よりもGの性能を知っているマリューは気づいたようだ。

「ミラージュコロイド?それはどういう機能なのですか?」

ナタルはGのスペックの詳細を知らないのだ。いやアークエンジェルの中では、マリューとショウヤ以外はだれも知らないだろう。

「ニュートロンジャマーを無効化するための研究で発見された大西洋連邦の新技術、可視光線や赤外線を含む電磁波を遮断する特殊なコロイド状の微粒子のことをそう呼ぶのよ。このコロイドを磁場で物体表面に定着させることで、電磁的・光学的にほぼ完璧な迷彩を施すことが可能なステルス機能、見えなくなる、まぁ透明人間みたいなものね。もっともいろいろ制約があるのだけど、それでもアルテミスを攻略するのならブリッツがあれば容易になるわ」

ミラージュコロイドは現在黒色の物質のみ光学的に迷彩を施すことができる。また、スラスターを使用すれば、熱を感知され場所を特定されるし、一定以上の速度を出せばミラージュコロイドの定着ができなくなる。戦闘では、多弾頭ミサイルや弾幕を張れば対応できるが、アルテミスへの奇襲となるとどこからくるかわからないため、完全に不意を突かれてしまう。

「透明人間って、すごい技術だな。それも今じゃザフトの手の中か」

ムウが純粋に驚くが、すでにザフトの手にあることを思い出し、驚きが落ち込みに変わる。

「そんな機能があるとは…」

ナタルも今までの戦術にはない兵器に驚きが隠せない。

「イージスを実戦で使用していたことから、ザフトはGを投入することにためらわないでしょう。アルテミスで補給中にブリッツで奇襲されたら、この艦は優先的に落とされる可能性が高い。自分は、デブリ帯に紛れて敵の目をごまかしつつ、月本部を目指す方法を推します。このまま大気圏へ突入しアラスカに降りる方法もありますが、これは危険すぎます」

ショウヤは何とかアルテミス入港を防ぐよう、発言した。

「確かに、それならばナカノ少尉の案が一番かも」

「後は、アークエンジェルは高速艦、なら最短ルートを全速で突っ切るか、だな」

ムウがもう一つの案をあげる。

「時間がかかるがデブリ帯に紛れて危険をなくすか、危険を承知で最短ルートを全速で突っ切るか。どちらをとっても結局同じぐらいのリスクね」

マリューが今後の方針についてのまとめにかかる。

(戦闘するならデブリはいやなんだが。試作イージスの高機動を活かせない)

ショウヤはデブリ帯での訓練はしていないため、デブリでの戦闘は遠慮したいと考えていた。

「さて、どうする艦長?」

「はぁ、そうですね。ヘリオポリスで食料や水などの物資は出来る限り詰みこんだので、物資には余裕があります。反面、Gの予備パーツは少ししかないし、ミサイルなども同じです、時間がかかっても危険の少ないデブリ帯に逃げ込みましょう。問題はどうやってそこまでいくか、ね」

艦長と言われ、重責を感じてしまい、ため息をつきながらもマリューは可能な限り安全な案を選択した。しかし次なる困難が待っていた。逃げる方向を決めても、この宙域からの脱出方法を考えなければならないのだ。

この宙域には間違いなくナスカ級とローレシア級が網を張っている。選択を間違えれば、挟撃されてしまう可能性がある。

「…デコイを発射と同時にメインエンジンを始動させ一度だけ噴射、艦の方向をデブリ帯に向け、後は慣性に任せて移動する。このような方法はどうでしょう」

ナタルは少し考えると、案を出す。

「サイレント・ランか。それしか手はなさそうだなぁ」

ムウはこれ以外に方法はないと判断する。

「そうね。その方法で行きましょう。ナカノ少尉は何かある?」

マリューがショウヤに質問する。

(原作とは違う方針になったが、ラウ・ル・クルーゼならこちらの意図を読みそうだ。二次創作ではラスボスとしては不満だととか言われていたが、普通に強いよクルーゼは。あれがプロヴィデンスに乗ったら、まず勝てない。今回のことは根拠がないし、原作だとこれも新しい策で切り抜けるはずだ。誰も言わなかったら、俺が言えばいい)

ショウヤはクルーゼを高く評価していた。それゆえ、原作と違う方針を取っても包囲されるだろうと感じていた。そしてそれはいずれ現実のものとなる。

「この方法でいいと思います」

「なら決定ね。ナタル指示をお願い」

「了解です」

「艦尾ミサイル発射管全門にデコイを装填、発射と同時にメインエンジン始動、デブリ帯に向けて転換しスラスター噴射後メインエンジンを停止。ノイマン少尉、タイミングを誤るなよ」

「了解です」

ナタルの指示の元、サイレントランが決行された。ノイマン少尉はうまくデブリ帯へと方向転換できたようだ。

(原作でもそうだったが、この艦のクルーは優秀だ)

ショウヤは実際にクルーがアークエンジェルを動かしているのを見て、改めてクルーの優秀さを感じた。

「では、ナカノ少尉は休息を取って、その後で試作イージスの調整をお願い。フラガ大尉のゼロは?」

「現在急ピッチで修理中。戦闘が起きる前に直りゃいいんだが、これは整備班に期待するしかない」

「そうですか、なら、ストライクの調整はキラ君に任せますので、大尉がついていてください。機密ですし、誰かが見ている必要があります。それとキラ君を連れてくるついでにヘリオポリスの学生たちをそろそろブリッジに来るよう伝言をお願いします」

「わかった。それぐらいしかできることがないしな」

フラガはメビウス・ゼロが修理中の今、自分ができることはないとわかっているため、雑用みたいなものだが快く了承する。

「ではクルーは各自で適宜休憩を取ってください。無事デブリ帯に逃げ込めば、ある程度の危険がなくなるはずです。それまで頑張ってください」

マリューが会議をしめ、各員それぞれの作業へと移っていく。

(さて、着替えて少し休憩するか)

ショウヤはブリッジを出て行こうとするが、ムウに呼び止められる。

「ナカノ少尉、途中まで一緒に行こうぜ」

「わかりました」




「にしても、すご奴だよおまえは。あのシグーを圧倒してたからな」

ブリッジを出て、歩いているとムウが話してきた。コミュニケーションを取ると同時にショウヤを人となりを見るつもりなのだ。

「さっきの戦闘ではクルーゼがパイロットではなかったんですよ」

「たしかに奴にしては動きが鈍く感じたな。でもなんでそんなことがわかるんだ?」

「最初にクルーゼと戦闘したとき、動きがわかるというか感じるというか不思議な感覚を感じるようになりまして、それにプレッシャーというか存在感を感じたんですが、さっきの戦闘では存在感がなかったというかあっても最初のよりも小さいと感じて、直観的にクルーゼではないと思ったんですよ」

「なるほどね、お前も俺やクルーゼと同じ能力を、それもほぼ同等のレベルで持っているってことか」

ムウはショウヤの能力が潜在的に自分と同等のレベルであることを感じた。

「それって、ガンバレルを使用するのに必要な才能のことですか?」

(原作だとこの能力を持っているやつは少数しかいないはずだった。フラガ、モーガン、ラウ、プレア、コートニーだったか?ディスティニーでのキラは設定ミスだとしか思えないがね。それ以外でも、微弱な程度ならキラ、劾、カナードも持ってるんだったか?アストレイは立ち読みで流した程度しか知らないし他にもいるのか?そういえば、ヘリオポリスにあるアストレイのこと忘れてた!…まあいいや、どこにあるかわからないし、この状況じゃ探索する時間もないしな)

ショウヤは原作知識から高いレベルの空間認識能力を持っているキャラを思い浮かべる。そしてアストレイのことを思い出したが、現在の状況ではなにもできないと判断し、忘れることにした。

ディスティニーでのキラは本当に意味不明な強さだった。種なしではプロヴィデンスのドラグーン相手にギリギリで勝利したが、レジェンドの改良型ドラグーン相手では全くの無傷。被弾率の高さはフリーダムの性能と汎用機相手だからだろ、なんでキラの被弾率の低さがが神業的になっているのか、種死は設定がむちゃくちゃだ。無印は敵がみんな意味不明な狂人だったが、シナリオはそれなりでまぁなんとか楽しめられる。ストライクフリーダムは核融合路がハイパーデュートリオン(デュートリオン+核分裂炉)に設定が変更されたし、ディスティニーは途中でハイパーデュートリオンなのにエネルギー切れを起こしている。これ以外でも設定の矛盾をこのSSではどうしようと作者は悩んでいる。

「そうだ、特殊な空間認識能力と言われている。これはコーディネイトできない才能だ。ナチュラルもコーディネイターも偶然でしかこの力を得られない。まぁ親がこの力を持っていると高い確率で子供も持っているらしいが」

「なるほど。しかし便利な力ですよね、これは。MSでの戦闘ではすごい役に立ちますよ」

「まあなあ、俺もこの力がなけりゃエンデュミオンで死んでただろうなぁ」

「ひどかったらしいですね。ゼロパイロットがほとんど全滅したって聞きましたよ」

「ゼロは微弱だが空間認識能力をもっている奴を優先的に載せてたが、ほとんど実戦経験がない奴でなぁ。それでも通常のメビウスとは比べ物にならないほどの強さだった。1機で通常のジン1機を相手に互角の戦いをしていたしな。それが災いしてザフトのエース級率いる精鋭部隊から集中攻撃を喰らって、結果全滅さ。その時のザフトのエースの1人がクルーゼだった、で俺はあいつとの戦いで能力がある程度強くなった。もしかしたらこの能力を持っているやつどうしで戦えば、能力が強く鳴るのかもしれないな」

「なるほど、それはあるかもしれないですね」

「おっと、俺はこっちだ。俺は格納庫でキラを見ているから、休んだらお前も格納庫に来てくれ、じゃあな」

ムウは軽く手をあげショウヤにあいさつし、別の道へ移動していった。

(さて、着替えて、炭酸なんかの飲み物でリフレッシュするか。こういうときは炭酸系の飲料を飲むに決まってる)

ショウヤは、炭酸系の飲料にこだわりながら、気を緩めていった。



[17882] 7話
Name: you◆1e728d9d ID:9de9fa1c
Date: 2010/05/01 20:41
あらすじ

CEの世界、エイプリルフールクライシスの真っ最中に迷い込んだショウヤ=ナカノ(中野翔也)は生活のため軍に入隊した。
Gを受領するためヘリオポリスに来たが、ザフトによるヘリオポリス襲撃とG強奪に巻き込まれてしまった。
試作イージスに乗り、ザフトと死闘を繰り広げるが、ジンの攻撃によりヘリオポリスは崩壊してしまった。
サイレント・ランを決行するアークエンジェル。
ひとたびの休息を取るショウヤだが、次なる戦いはすぐそばまで迫っていた。









ショウヤは炭酸飲料で気分をリフレッシュした後、パイロットスーツを脱ぎ、シャワーを浴びた。その後、戦闘することになるだろうことから消化しやすいものを胃に入れた後、格納庫で試作イージスの調整を行うことにした。

前回の戦いで使用したのは、イーゲルシュテルンとコテツ、ABシールドなので、武装面では心配はいらない。また、推進剤もすでに補給された後だった。

ショウヤはOSを立ち上げ、システムチェックを行うが異状はなかった。

キラがどうしているか確認するためストライクの方へ向かおうとしたが、ブリッジから呼び出しがかかった。

「ナカノ少尉、至急ブリッジまで来てください」

「了解」

手早く返答しブリッジへ急ぐ。

コックピットから出ると、ムウとキラもブリッジへ行こうとしていたので、ショウヤは一緒に行こうと声をかけた。

「フラガ大尉、キラ・ヤマト。二人もブリッジへ?」

「ああ。たぶん、クルーゼに網を張られたんだろうな」

「でしょうね。確実に戦闘になりますね」

「だな。ゼロも直ったし、次は俺も出られる」

「ナカノ少尉、試作イージスの調整は済んだんですか?」

「ああ、ちょうど終わったところだ。ストライクはストライカーシステムがあるし、君が書き換えたOSもあってストライクの調整は時間がかかったんだろう」

「そうですね。ストライカーシステムは戦闘中でも装備を換装できますが、OSを書き換えたせいでシステムが少しおかしかったんで修正してました。完全に調整できたと思うんですけど、実際に換装してみないとわからないですね」

「Gは実戦証明したが、ストライカーパックの換装は実戦証明ができていないからなぁ。実際に戦闘しながら行うわけにもいかないしな」

「弾幕を張れば、なんとか換装もできるかもしれないな。キラ、バッテリの消費には常に気をつけろよ。無茶なことを言ってるが言わないで死ぬよりましだ」

「はい。戦闘をするのは嫌ですけど僕だって死にたくないですから」

「OK。それぐらい言えれば上等だ。ショウヤも後輩の指導が様になってるぜ。さて、後は対応についてだな。ブリッジに急ぐぞ」

フラガに続いてショウヤとキラはブリッジへ移動していった。




















それからショウヤはブリッジで原作とほぼ同じシーンを見ることとなった。

前方にナスカ級、後方からローラシア級が接近中。これに対し、MS発進と同時にフラガがゼロで発進し、デブリに紛れ、ナスカ級を奇襲。Gはその間アークエンジェルの護りとして敵MSと交戦する。フラガがナスカ級を奇襲すると同時に、可能ならば対要塞砲であるローエングリン(陽電子砲)をナスカ級へ発射する。そして最大船速で宙域を離脱する。

フラガの提案にブリッジで反対するものはおらず、この作戦に賛成したため、この作戦が行われることになった。
フラガはメビウス・ゼロでクルーゼが乗るシグーに惨敗を喫したが、この作戦の立案で歴戦の戦士であり、地球連合がプロバカンダに利用したとはいえ、エンデュミオンの鷹の異名で呼ばれているだけはあると、クルーに知らしめた。

そしてショウヤ達パイロットはパイロット用のロッカールームでパイロットスーツに着替えていた。

全員が着替え終わると、フラガが軽いミーティングを行うと言い、作戦の概要を確認する。

「まず、試作イージスとゼロが、最後にストライクがエールストライカーで出撃する。俺はデブリにまぎれて移動しナスカ級を奇襲する。その間、二人は敵MSからアークエンジェルを守る。俺が奇襲を行うとほぼ同時にアークエンジェルがローエングリンをナスカ級へ発射。ローエングリン発射前は特に敵MSに気をつけろよ。そしてアークエンジェルが最大船速でデブリ帯に潜り込む。アークエンジェルから離れすぎるなよ。以上だ」

「了解」

「了解です」

「よしっ。んじゃ行くか。死ぬなよ」

最後に真剣にそう言うとフラガは立ち上がり、格納庫へ移動する。ショウヤとキラも気を引き締めてそれについていく。







(さてGは全機出てくるだろうし、あのシグーも来るだろう、数ではこちらが不利か。一定の距離をとりつつ、バッテリーの消費に気をつけながら回避、ABシールドで防御しつつライフルで攻撃がセオリーか。…いや戦闘はそれほど長く続かないだろう、なら空間認識能力をフルに活かし電撃的にバスターもしくはブリッツに接近しコテツで一当てする。…できるか?)

「試作イージス、スタンバイ完了、進路クリア発進どうぞ!」

(迷っている暇はない、か。覚悟を決める!)

手の震えを、操縦管をギュッと握ることで抑える。

「ショウヤ=ナカノ、試作イージス、出る!」

ショウヤの試作イージスが発進、ほぼ同時にゼロが反対側から発進。そしてストライクが発進する。

「メビウス・ゼロ、スタンバイ完了、進路クリア発進どうぞ!」

「ムウ・ラ・フラガ、ゼロ、出る!」

「ストライク、スタンバイ完了、進路クリア発進どうぞ!」

「キラ・ヤマト、ストライク!行きます!」

各機が発進と同時に敵MSも発進してくる。奪われたGが4機とシグーが一機、計5機だ。

アークエンジェルブリッジで、マリューは覚悟していたが敵がすべてのGを投入してきたことにいら立ちながらも、対策を大声で命じる。

「いくらGとはいえ、被弾すればバッテリーを消耗するし、バリアントなら直撃すれば無事ではすまないわ!ミサイルで回避行動をとらせたところにバリアントを撃って!ゴッドフリートは入射角が狭いわ、前面に来た敵を集中して撃って!」

やつぎ早に言った言葉をナタルは確実に実行するよう、クルーへ指示を出す。これが艦隊行動などなら艦長としての職務をマリューは果たせないかもしれないが、Gとアークエンジェルの性能をこの艦の誰よりも知っているマリューが艦長となっているため、対策がすぐに出てくる。通常の戦艦に慣れすぎたり、マニュアル通りの艦長よりこの時の対応はとてもうまくいっていた。

敵MSは艦尾ミサイル発射管ヘルダートから16発ものミサイルを同時に放たれ、バラバラに回避行動をとる。

原作とは違い、シグーに乗ったミゲルがこの小隊の隊長をしているため、ミゲルから指示が出る。シグーはデュエルを強奪した際に予備部品として接収したBライフルとBサーベル、ABシールドを装備している。

「ディアッカはあの足つきをやれ、ニコルはその援護を、アスランは青い奴、俺とイザークで赤い奴だ」

「了ー解。まぁこの機体なら対艦戦か」

「了解です」

「了解だ。ミゲルでさえ苦戦した奴か、相手にとって不足はない!」

「…了解した」

(キラ、お前がなんで地球軍にいるんだ。くそっ)

アスラン以外はミゲルの指示を受け、戦闘に集中していくが、アスランは返事こそしたものの頭のなかはキラのことでいっぱいで、戦闘に集中できていない。

その後、バラバラになったため一瞬遅れて発射されたバリアントを難なく回避して、それぞれの標的に向かっていった。

ショウヤは向かってくる2機を確認し、奇襲に出ることを決める。

(タイミングは、膠着状態になって敵が焦れたとき、もしくは今、この瞬間!)

試作イージスは右手にコテツを装備し、ABシールドでコックピットを守りつつスラスターを全開にして、バスターへ全速力で向かっていった。

「何!?」

シグーとデュエルはビームライフルを放つが、試作イージスはABシールドをうまく使い防御し、その間もスピードが緩まることもなかった。シグーとデュエルを追い抜き、バスターに接近していく。

「ディアッカ!赤い奴が!」

ニコルがバスターの援護に出る。

「くそ!いきなり突っ込んできやがった!」

バスターもアークエンジェルへ狙いを定めていたため、不意を突かれたことになり迎撃が遅れる。

「このぉ!」

ブリッツがレーザーを放つが、ABシールドに阻まれ全く効果が出ない。いやABシールドは確実にダメージを負っていっている。このような無茶をしていればいずれABシールドは破壊されてしまうだろう。

しかし、この突撃はザフト側が全く予測していないことだったため、成果を上げてしまう。

(いける!)

試作イージスはコテツでブリッツへ胴の型で斬撃を放とうとする。

「くっ!こいつ!」

ニコルは回避できないと判断し、攻盾システムトリケロスのABシールド部分で防御する。しかし試作イージスのコテツはトリケロスに喰い込んでいく。

「避けろ!ニコル!」

ミゲルからの通信に反射的に反応し、機体前面にある全てのスラスターを噴かし、急速後退しようとする。

しかしブリッツが回避行動をとった瞬間、攻盾兵器は横に真っ二つに切り裂かれ、さらに右腕も肘のあたりで切り裂かれてしまう。

ブリッツの主武装である右腕に装備していたトリケロスをブリッツは失ってしまった。

「もらった!」

ショウヤはとどめをさそうとするが、

「やらせるかよ!」

バスターが94mm火力線と350mmガンランチャーを連結させ精密狙撃モードでビームを放つ。

「ちぃ!」

試作イージスは態勢を変え、ABシールドで防ぐが、短時間でビームを受けすぎたのとバスターの最大火力を受けてしまい、ABシールドがあと数発しかビームを防げなくなるほどの損傷を受ける。

(奇襲は成功、ブリッツは無力化した。あとは時間を稼ぐだけだ!…あれは、そうだ!)

ショウヤはコテツを腰部にマウントさせるとトリケロスからブリッツの右腕を取り払い試作イージスの右腕に装備させる。

切り裂いた部分はランサーダートがある部分だったので、レーザーライフルとBサーベルは使用できるのだ。一応シールドとしても使えないこともない。

攻盾兵器を装備した瞬間、警報音は鳴り響く。シグーとデュエルがアークエンジェルからの攻撃の中から逃げ出し、試作イージスへ接近し、照準を試作イージスへと合わせたのだ。

(ここは逃げる!)

ショウヤはこの数に囲まれるのは危険だと判断し、アークエンジェルの前方へ向かって逃げていく。

ブリッジでは試作イージスが突撃したときはクルー全員が何を!と思ったのだが、

「戦闘開始開始早々ブリッツを無力するなんて、すごい…」

マリューが独り言のようにつぶやく。他のクルーも同様の思いで画面を見ている。

「はっ!、試作イージス、包囲されかけています!」

しかし、すぐに試作イージスの危機が告げられる。

「援護して、ナタル!」

マリューはナタルに指示を頼む。

「はっ!コリントス全門装填!左舷側はシグーとデュエルへ発射、回避したところを狙ってバリアントを撃て!右舷後方側はバスターへ発射、シグーとデュエルがゴッドフリートの入射角に入ってきたら、ゴッドフリートの照準を敵MSへ合わせろ!Gを優先して狙え!」

ミサイル発射後、バリアントの照準を試作イージスを追いかける2機へ向けるが、

「調子に乗るな!」

バスターへ放たれたミサイルはバスターがミサイルを放ち迎撃される、そしてバスターは94mm火力線と350mmガンランチャーを通常モードに切り離し、アークエンジェルへ連射する。

「くぅ!」

アークエンジェルに目立った損害はないが、クルーはその衝撃を受け、試作イージスの援護が遅れてしまう。

その中で一人ナタルは試作イージスの逃げる方向から、ショウヤの思惑を見抜き、瞬時の戦術を思考、判断し命令を下す。

「ゴッドフリードの照準をデュエルに向けろ!敵MSが照準に入った瞬間に撃て!よーく狙えよ!」

幾度も照準され警報音がずっと鳴り響いたままだが、ショウヤは逃げることに集中してアークエンジェル前面へ向かって必死に逃げていく。

「一気に追い込むぞ!イザーク!」

「了解!ナチュラルごときが!ー」

二手にわかれてBライフルからビームをほぼ交互に放つシグーとデュエル。

「くそっ!」

試作イージスはどちらか一方ならかわせるが、違う角度から時間差で放たれているため、どちらかをABシールドで防がなければならない。シグーのビームはかわし、デュエルからのビームは機体を向けてABシールドで防ぐ。

しかし、これで急速に向きを変更したため、態勢が崩れる。勝負に出たのかシグーがバッテリを気にせずビームを連射する。数発をかわすがABシールドで受けてしまう試作イージス。

試作イージスがシグーの攻撃で釘づけになっている隙にデュエルが右手装備をBサーベルに持ち替え、試作イージスに向かって突撃していく。

「くそっ!いい連携だ!」

ショウヤが自らを追い込んでいく連携を称賛する。接近するデュエルへ向かってレーザーライフルを放とうとした瞬間、試作イージスのABシールドが破壊されてしまう。シグーのBライフル連射を受けて耐久力が限界を超えたのだ。

「しまった!」

その上、ABシールドが破壊された際の衝撃で態勢を崩してしまう。シグーからのビームを緊急回避するが、絶好の隙をデュエルにさらしてしまう。

「もらったー!」

「ちぃ!」

ショウヤは右手にあるトリケロスで防ごうとしたその瞬間、極大のビームがデュエルに放たれた。

「何ぃ!」

デュエルは何とか回避するが右腕を完全に消失してしまう。その間に試作イージスは態勢を整えており、左手にBライフルを装備していた。

そして、シグーの攻撃をトリケロスで防ぎながらデュエルに向かってBライフルを放つ。

(危なかったがこれでこちらが有利になる)

ショウヤは逃げながら、敵を自分に集中させゴッドフリートの射程範囲に誘導していたのだ。3機が自分に向かってくれば、アークエンジェルの援護をフルに活かし、態勢を整えられる。しかしバスターがアークエンジェルを攻撃すれば、ゴッドフリート以外の武装では短時間なら拮抗し、こちらの援護はできない。しかし、前面にあるゴッドフリートはバスターの位置と入射角の問題からバスターへ放てないため、シグーやデュエルを射程範囲まで誘導していた。アークエンジェルは少しずつだが移動しているため、移動できるかわからなかったが、何とか間に合ったようだ。

ショウヤは知らないがナタルがショウヤの思惑を見抜いたため、ゴッドフリートをオートではなくマニュアルで狙い放った。そのせいでショウヤはピンチになるのだが、その分命中率が上がり、デュエルは一転してピンチに追い込まれた。ピンチになったのはいきなり奇襲をかけたショウヤが悪いのだ。状況を考えてのことだったが、ブリッジに通信を入れ作戦を伝えるべきだった。

しかし、その甲斐あって、確実にアークエンジェルは有利になっていた。

「バッテリーがやばい!」

シグーはBライフルを連射していたためバッテリが危険域に突入していた。シグーのバッテリはGの新型バッテリより性能が悪い。そのために短時間の戦闘でもバッテリー切れを起こしてしまったのだ。

「ちぃ!ここは引くしかない…くそっ!イザーク!バッテリーがやばい!俺は撤退する!ディアッカ!このMSの足止めをしろ!イザークはアスランの援護を!足つきをここで落とすのは無理だ!ここは敵戦力の削減を狙え!どちらかのMSだけでも落とすんだ!」

「わかった!」

「くっ、覚えていろ!赤いの!」

試作イージスに向かってバスターが急速接近し、その後一定の距離をとりながら砲撃する。試作イージスはビームを優先的に避けるが、ガンランチャーより放たれた散弾が当たってしまう。

「!通常のシールドなしでバスターとは相性が悪すぎる!」

完全に試作イージスに狙いを定めたバスターは持っている火力をすべて投入した。
試作イージスは、ビームを避けて、致命傷は避けているが、散弾としてばらまかれる実体弾のいくつかを当たってしまいバッテリが減っていく。激しい動きをしていたこともあって、ビーム、レーザーを放ちすぎればすぐにでもバッテリが危険域になるだろう。

しかしバスターの無差別的な攻撃は味方にも当たってしまう可能性が高い、そのためミゲルはイージスへの援護をイザークへ命じていた。

試作イージスはバスターの猛攻に耐えながら、なんとか反撃しようとするが、バスターの猛攻の前に釘づけにされる。

アークエンジェルは援護しようとするが、試作イージスが激しい動きで攻撃を避けているので射線軸に入ってくる時もあるため、下手に撃てば試作イージスに当たってしまうので援護できない。

そしてバスターも無限にバッテリー、砲弾があるわけではなく、急速に消耗している。この2機は完全に膠着状態に陥っていく。



歯がゆい思いで二つのMS戦を見ているアークエンジェルに、ムウからの連絡が来たる。

「フラガ大尉より入電!我、奇襲に成功せざり!我、奇襲に成功せざり!です!」

「機を逃さず追撃します!ローエングリン展開、前方のナスカ級へ照準!」

「ローエングリン展開!照準、合わせ」

「ローエングリン!、てぇーー!!!」

マリューの指示のもとローエングリンが放たれる。

ナスカ級はクルーゼの指示で回避を行うが、左舷に命中し、戦闘に支障が出るほどの被害を受けてしまう。

「撤退する!アスラン達を呼び戻せ!」

(ムウめやってくれる!それにこちらのMSの相手をしているのは彼か、ふっ、彼なら私の憎しみを存分に受け止めてくれるだろう。いずれ相まみえる時が楽しみだ)

クルーゼは仮面の下でムウにたいして憎々しげに顔をゆがめると、次にはいずれ自らに至るほどの才能を秘めたショウヤとの邂逅を想い、不敵に笑った。









一方ストライクは発進したあと、イージスとの交戦になった。

アスランは通信でキラの説得を試みていた。

「キラ!またそんなものに乗って!お前は何をしているのか分かっているのか!」

「君こそ!ヘリオポリスが崩壊したのは君達のせいじゃないか!」

「あれは!地球連合に協力してこんなものを作っていたからだ!」

「だからって!こんなことまでしていいと思っているの!」

互いに牽制にしかならない程度にBライフルを放ちながら、二人は言葉をぶつけあっていた。

キラはヘリオポリスが崩壊したことを責め、アスランはもともとの責任は地球連合に協力したヘリオポリスにあると反論する。

「結局、血のバレンタインと同じことをしているじゃないか!」

「非武装のコロニーを核兵器で攻撃するのとは理由が違う!」

「僕たちからすれば同じことだ!」

通信で言葉をぶつけながら、照準こそはずしているものの戦闘をしているとわかる程度には戦闘をしていた。アスランは熱くなりながらもストライクをアークエンジェルからやや離れた位置に誘導していき、アークエンジェルがこちらへの支援を行えないようにして戦闘を行っている。

「キラ!地球連合はコーディネイターの敵なんだぞ!お前は利用されているだけだ!」

「アスラン!地球連合と戦争しているのは仕方ないかもしれない、でもヘリオポリスを崩壊させるなんて間違っている!それにオーブにだってコーディネイターが住んでいるんだ!」

互いに主張を全く譲らないず、熱くなっていく二人。

(こうなれば、手足をつぶしてMSごと捕獲して連れていく!)

(このままアスランを引きつけておけば、後は少尉達が何とかしてくれる!)

アスランは、キラを傷つけずザフトへ連れていくため、わざとはずしていた照準を頭部や手足に限定し、Bライフルを放っていく。しかし素人とは思えない操縦でキラは回避とシールドを使いわけて致命傷を受けない。

(アスランは頭部や手足を狙っている!なら僕も!)

それどころかキラもアスランと同じように頭部や手足を狙ってBライフル放つ。

訓練を受けていたアスランに分があるものの、キラも負けていない、二人の勝負は全く互角でただただバッテリーが無駄に減っていく。

(このままではどちらのバッテリーが切れる、キラも同じだろう、ならば!)

アスランはBライフルでの射撃を少なくし、回避、防御を優先しつつ、牽制として放つイーゲルシュテルンでストライクのバッテリーを少しでも消耗させる作戦にでた。

戦闘で熱くなっているキラはその狙いに気づかず、今までと同じペースでBライフルを放っていく。

(このままいけば、先に青い奴のバッテリーが切れる。その時捕獲する!)

アスランの思惑通りに戦闘が進み、このままならストライクは確実に捕獲できるだろうはずだった。しかし…

「アスラン!何をやっている!さっさとこのMSを落とすぞ!」

イザークが最悪のタイミングで来てしまったのだ。

「イザーク!」

デュエルはシールドを捨て、左手にBライフルを持たせる。そしてストライクへBライフルを放つ。

「デュエル!くそ!」

キラは焦り、回避、防御に専念していく。

それを見たアスランは援護に来たイザークが自分の邪魔をしに来たとしか思えなくなる。

(イザークの奴!俺の邪魔をしにきたとしか思えない!)

それはある意味正しかった。イザークが来なければ、命令では撃墜だったので命令違反になるが、アスランは私情が理由だがストライクの捕獲に成功していただろう。ストライクの換装システムは少数精鋭のザフトにとって研究の価値があるものだ。それを捕獲したアスランは命令違反を超える結果を出したとして親の圧力もあり、おとがめなしになる。アスラン自身もキラのことがなければ優秀なザフト兵としていずれはエースとして活躍していただろう。

イザークはこの時アスランのザフトエースとしての人生を狂わせたと言ってもよいだろう。

右手を失い、また今までにない強敵との戦いで興奮しているイザークは、ストライクへ執拗な攻撃をかけ、そのプレッシャーでキラの精神とストライクを追い込んでいく。

「くそう!このままじゃ!」

キラの焦りが言葉としてはせられたそのとき、ローラシア級から撤退信号が発せられた。

「ヴェサリウスが被弾!俺達に撤退命令!」

「イザーク!撤退命令だ!引くぞ!」

これでキラを死なせずに済むとアスランは撤退を促す。

「うるさい!これだけの戦力で一機も落とせずに逃げることができるか!」

しかしイザークはなおもストライクへ攻撃を行う。

「イザーク!」

アスランが非難の声をあげたその時、ストライクの装甲が灰色に変わる。

「バッテリー切れ!しまった!」

キラは慌てるがもう遅かった。しかし同時にデュエルの装甲も灰色に変わる。

「なにぃ!バッテリー切れだと!」

ストライクを落とすことに躍起になっているイザークはバッテリーの残量に気づかなかったのだ。

(キラ!これなら!)

それを見たアスランはチャンスとばかりに、MA形態へ変形しストライクへ突撃する。

そして、手足であった部分4本のクローでストライクを拘束し、ローラシア級へ撤退していく。

「捕獲された!?」

「キラ、このままお前を連れていく」

「ふざけるな!僕はザフトなんかにはいかない!」

「おまえの言うとおりヘリオポリスはやりすぎたかもしれない…でも血のバレンタインを起こした地球連合は許せない。あの攻撃で母も死んだ…だから俺は…」

そのときイージスのコックピットにアラームが響く。ナスカ級への奇襲を成功させ、アークエンジェルへ戻ってきたムウがMAの移動速度を活かし、急速にイージスへ接近していた。

「坊主とストライクは返してもらうぜ!」

ムウはわざと甘い照準でリニアカノンを放ち、それを避けたイージスへストライクへ当たらないようにガンバレルで一斉攻撃した。

「うわぁ!」

その衝撃で、イージスの拘束が解けストライクを離してしまう。

「アークエンジェルへ前方でランチャーストライカーに換装する!?」

キラはムウからの指示を受け、必死の思いでストライクを移動させる。

しかし、それをデュエルが追いかける。

「バッテリーがなくてもこの装備なら!」

デュエルのBライフルにグレネードランチャーが付いている。バッテリーがなくともストライクなら落とせると判断し、イザークは追撃する。

「キラ!」

アスランもイージスでストライクを追いかけようとする。

「おおっと!お前の相手は俺だ!」

しかしムウがゼロでそれを阻止する。

「邪魔をするな!」

アスランはゼロへ攻撃を加えるが、ムウは巧みに回避しつつ、ガンバレルとリニアカノンを命中させていく。焦っているアスランは精彩を欠き、直撃をいくつも喰らってしまう。そしてみるみる内にイージスのバッテリーが減っていく。

「ランチャーストライカー!射出!」

ストライクが指定ポイントまで来るとナタルの指示で、ランチャーストライカーがアークエンジェルから射出される。

「これで…落ちろ!」

それを見たイザークはちゃんとばかりに、狙いをしっかりつけてグレネードランチャーを放つ。

「間に合え!」

発射された弾薬はあと少しで換装をしているストライクへ当たり、周囲が爆発で見えなくなる。アークエンジェルクルーやムウ、アスラン、イザークが注目する。

「やったか!?」

イザークは手ごたえありと、判断しようとした瞬間、強烈な熱線が爆風を切り裂く、デュエルへ発せられた。

「何!」

命中こそしなかったものの、イザークは驚く。

爆風の中から、巨大な砲を抱いたストライクが現れる。その装甲はトリコロールカラーになっている。

「うわー!」

死ぬ寸前だったキラは恐慌を起こし、アグニを狙いをつけず連射する。

「イザーク!撤退するんだ!このままじゃ!」

「くそ!わかった!」

アスランからの通信に応えると、イザークはめちゃくちゃに放たれるアグニに注意しながら撤退していく。それを援護するアスラン。

アークエンジェルからやや離れて戦闘していたバスターも途中で合流する。

バスターの装甲は灰色になっている。

「ディアッカ、無事だったか」

「ああ。あの赤い奴、接近されたらやばいが距離を取って砲撃に徹すれば、そこまでじゃない」

「そうか…」

イザークは何も話さず、そのまま3機のGは撤退していった。

ショウヤはPSダウンした試作イージスでそれを見送っていた。

(敵MSが増えていたが、なんとかなったか。とりあえずアークエンジェルに戻ろう。キラにも伝えておくか)

敵MSが一定以上の距離を離脱したのを確認するとアークエンジェルへ帰艦していく。同時にキラへ通信を行う。

「キラ。キラ・ヤマト戦闘は終わった戻るぞ」

ストライクへ戻るよう通信するがキラは答えない。

(気絶しているのか?仕方ない連れてもどるか。そういえば原作だと呆然自失状態になっていたし、ここでもそうなんだろうな。無理もない、俺だって今になってまた手が震えてるし、少し漏らしたし…)

ショウヤは冷静になるとなんだか恥ずかしいが、それだけの激戦だったと自身を納得させ、試作イージスでストライクを牽引してアークエンジェルへ戻っていった。




着艦後、ショウヤはMSが固定され整備班が集まってくるのをしり目に試作イージスから降りると、ストライクへ近づく。

「どうした?」

先に戻ってきていたムウが話しかけてくる。

「気絶かなんかしてるみたいで」

ストライクのコックピットを手動で開ける。

キラは操縦管を握ったまま荒い呼吸しながら固まっていた。

「キラ、戦闘は終わったぞ、俺達は生きてる」

ショウヤは話しかけながら、コックピットに乗り込み、キラの型に手を乗せ、ゆする。

「僕…生きてるんですよね?」

キラは我に返り、ショウヤに問う。

「ああ、作戦は成功、俺達は生きてる。よくやったよおまえは」

「生きてる、僕は生きてる」

「とりあえず、ストライクから降りるぞ」

「はい、わかりました」

二人はストライクから降りる。

そこには、いつの間にか整備班が集まっていた。

「無事で何よりですぜ、少尉」

指示を出していたマードックがショウヤに話しかけてくる。

「辛勝といったところですけどね」

「終わり良ければすべてよしですぜ。そんで、試作イージス持ってきているブリッツの装備なんですがどうします?」

「余裕があれば一応修理しておいてくれないか。シールドにもなるし、バッテリー消費の少ないレーザーライフルも結構使えるし」

「了解です。一応ストライクと試作イージスのコテツ以外の予備パーツは一通り揃ってますからね、何とかやってみますぜ」

「頼む」

「何?、ブリッツの装備って?」

ムウの疑問にマードックが答える。

「ああ、少尉が戦闘中にブリッツの右腕を切り落として装備を奪ったんですが、それをどうしようか思いましてねぇ」

「ブリッツって…奪われたGの一機だろ、すごいじゃないか!」

「実際すごかったですぜ少尉は?」

「そんなに褒めないでくれ、照れる」

(自分がここまで強くなるなんて思わなかった。それにまだまだ伸びしろがある。俺はもっと強くなる。…キラにシミュレーターで訓練に付き合ってもらうか、俺もキラも強くなれるし、一石二鳥だ)

「俺もうかうかしてられないな」

ムウは一瞬真剣な顔をして言う。

「大尉はまだまだ現役ですぜ。MAでGを相手にできるうですから、相当なもんですよ」

(できるだけMSでの訓練をすればMSさえあればフラガ大尉なら乗れるのでは?MSは…小破したジンを修理して、装備はGの予備とガンバレル、は無理か?、OSとその他システムは試作イージスを元にキラに改修してもらえば、うまくいけばMSに乗れるんじゃないか?…後で相談してみるか)

「とり合えず着替えませんか?

「そうだな、その後ブリッジで報告だな」

「はい、キラ、もう大丈夫か?」

「はい。落ち着きました」

「んじゃ、俺達は行くわ」

「お疲れです」

ショウヤ達は疲労した身体でパイロット用のロッカールームへ向かっていった。



[17882] 8話
Name: you◆cf6d9fbb ID:32692406
Date: 2010/11/28 01:26
戦闘が終わり、ブリッジで会議が行われ、予定通りアークエンジェルはエンジンの出力を一定まで落としデブリ帯を月本部へ向かうことになった。

現在、MSパイロットなので特にすることがない(試作イージスの調整は完了している)ショウヤはマードック軍曹にジンにBライフルとABシールド、ガンバレルを使用できるように改造できるか相談することにした。

(できれば戦力アップにつながるんだけどなぁ、やっぱりガンバレルは無理かな?)

「マードック軍曹、MSのことで相談したいことがあるんだがいいか?」

「いいですぜ、整備は完了しましたからな、後することと言ったら備品チェックの最終確認ぐらいです。」

「そうか。助かる。あの捕獲したジンなんだが、BライフルとABシールド、ガンバレルを使用できるように改造できるか?」

「…そりゃまたとんでもない相談ですな。…BライフルとABシールドならできるでしょうな、あのシグーと同じようにすりゃいいだけですからね。アグニならアークエンジェルからエネルギーを調達すれば使用可能ですし、マイダスメッサーや対艦バルカンも装備は可能です。ガンバレルは調べてみなけりゃわかりません。どちらにせよOSの調整が必要になりますぜ」

「OSの改修はキラに頼む。試作イージスのOSをもとにすればフラガ大尉ならMSでの戦闘もできるはずだ。まずはこのことを艦長とフラガ大尉に相談しに行く、ついてきてくれ」

「わかりやした」







「なんか相談したいことがあるって聞いたが何だ?」

ムウを相談したいことがあるからブリッジに来てくれと呼び出し、フラガがブリッジに来るとショウヤはマリュー達にジンの改造について話した。

「捕獲したジンについてですが、OSを試作イージスのOSに換えて、Gの装備を使用できるように改造したいのです」

「ジンを?」

「はい、マードック軍曹、改造について説明してくれ」

「了解です。まず、壊れている箇所、コックピット回りですな、これを修理する。Gの予備部品を流用すれば大丈夫です。次に先ほどの戦闘で出てきたシグーと同じようにBライフルとBサーベル、ABシールドを使用できるようにする。装備はGの予備パーツを使用する。ラミアス大尉も知っての通り、少尉の試作イージスのために予算が増えましたからな、そのため予備パーツ自体はそれなりの数があり、ヘリオポリスで無事なものはすべて回収しましたから予備パーツの数は問題ありませんぜ。それにブリッツのトリケロスがありますからね、あれならABシールドも兼ねることができますし」

「そうだったわね、そのおかげでスケジュールが…」

マリューはただでさえ詰まっていたスケジュールがさらに過密になったことを思い出してしまった。やっと休める日が来ると思ったら、ザフトの襲撃により戦艦の艦長をする羽目になったことを思い、マリューは切実に思った。

(いい加減休みがほしいわ…だいたいアラスカ本部は…ぶつぶつ……ぶつぶつ…)

「パイロットはどうすんだ?」

「フラガ大尉に頑張ってもらうしかないですね。訓練はGのシミュレータを使用すれば大丈夫でしょう。ジンの改造が完了し、大尉がMSに乗れるようになったら、ゼロのガンバレルをジンに付けられるか試したいのですが」

「マジかよ!?改造もだが、こんな短期間でMSの操縦ができるようになると思うか?」

「大丈夫です、俺がアドバイスしますから、最低ラインとしてアークエンジェル付近で援護射撃ができるぐらいのレベルになればいいです。この程度ならフラガ大尉ならすぐにでもクリアできます。要はABシールドで防御しながらBライフルを撃っているだけでいいんです、Bライフルなら当たればほぼ一撃で敵機を撃破できますから。Bライフルの登場で装甲がほとんど意味をなさなくなってしまいましたからね、ABシールドを装備していないMSならMSで固定砲台となっているだけでも脅威になります」

「たしかにGの装備は火力が異常なほどすごいからな。それなら俺でもできるか…よし、わかった。ゼロももうガンバレルのパーツがなくて修理できないしな、あと一度くらいしか出撃できないし、やれるだけやってみるか」

もともとヘリオポリスにはGのパーツしかなかったのだ。ムウの乗っていた艦は撃沈していたため、ただでさえ特殊なメビウス・ゼロの予備部品はアークエンジェルには存在していない。今のゼロは余っていたGの部品などを流用しただけの継ぎ接ぎな状態だ。

(だからハルバートン提督も…ぶつぶつ)

マリューはいまだに心の中で文句を言っていた。

「ラミアス大尉?」

ショウヤは様子のおかしいマリューに話しかけた。

「…っは、んんっ、ガンバレルを装備?…できるかしら?」

マリューは我に返ると、咳払いをしてごまかし、そのまま何事もなかったように話しだした。

「全くわかりませんな、とりあえずジンの修理、改造をしつつ平行してガンバレルの装着は調査する。装着が可能なら試してみる。こんなとこでしょう」

(あの修羅場はつらかったしなぁ、ラミアス大尉、本当にお疲れさんでした)

マードックは話をしながら、心の中でマリューをねぎらった。

「それとOSですが、ジンのFCSなどを改修する必要があり、キラ・ヤマトに手伝ってもらいたいのですが」

「キラ君に?…仕方がないわね。わかりました、ジンの修理、改造を許可します。マードック軍曹、作業の総括をお願いします」

「了解ですぜ」

「あのっ!」

マリューがジンの改造について許可したとき、ヘリオポリス組、トールから声が上がった。

「OSについてですが、俺達も手伝えると思います」

「…そうか、あなた達はあのモルゲンレーテの学生だったわね、その年で飛び級してるほど優秀なのよね、キラ君のおかげですっかり忘れていたわ。ならあなた達はOSの改修作業を担当して、マードック軍曹、この子たちの面倒をお願い」

「わかりやした」

「んじゃあ、俺達はシミュレーターで頑張ってくるわ」

「わかりました。大尉、無理はしないようにお願いします」

「わーてるって、安心しろ」

ムウに何かあったとき、この艦の最高責任者としての重責がマリュー一人にのしかかる。そのためマリューは無意識にムウを頼っていた。ムウもそれを感じているのか、力強く応える。

(なるほど、原作でこのカップリングになったのも頷ける。マリューはその重責から、同じ階級のムウを無意識、おそらく後々意識的に頼る、ムウもマリュー程の美人+ナイスバディから頼られたら…まぁ、落ちるよなぁ。というかあの肢体は反則だろ、コーディネイター?何それ?見たいな感じ、バルトフェルドもくっつかなかったが運命の序盤では落とされてみたいたし)

ショウヤは二人を見て、少しほのぼのしながら原作に納得していた。
















それから数時間で、ジンの修理、改造、OSの改修は完了した。

Gで殴りつけたためにコックピット内部の一部が破損し、OSへ命令が伝わらなくなっていただけだったため修理はすぐに完了した。

ジンは腰の右側にケーブルをつないだBライフルをマウントし、右肩にコンボウェポンポッドを、左肩にマイダスメッサーを、左手にABシールドを装備している。

右手でBライフルを持ち、接近されたらコンボウェポンポッドで迎撃、右手にマイダスメッサーを持ち替え短いがサーベルとして攻撃する。

マイダスメッサーはエネルギーを内部バッテリから供給できるので、Bサーベルにケーブルをつなぐよりはこちらの方がよいと判断されたために装備することになった。

OSは試作イージスのものとストライカーシステムから必要な装備のものを組み合わせ、一部を改修した。

ガンバレルの装備については、装着し使用することは可能になるだろうが時間がかかる、またパーツほとんどないことが判明したため見送られた。

ジンにガンバレルを搭載することは可能だが、使用するためのシステムをMS用に再設計しなければならない。またシステムが複雑で、特殊な空間認識能力を持つパイロットそれぞれ用に調整もしなければならない。

これはいくらキラでもあまりに時間がかかるため、ガンバレル装備は見送られた。

現在、ムウはこれらの装備を使用しての戦闘に慣熟するため、シミュレーターで訓練している。

ショウヤはムウに操縦方法などをレクチャーした後、キラと入れ替わりシミュレーターで訓練していたが、シミュレーターのAIは何をしてくるかわからない人の動きまでは再現できないため、ショウヤは自身のさらなる戦闘技術向上とキラの戦闘技術向上を兼ねて、キラとシミュレーターで対戦することにした。

ショウヤは月本部に着くまで、戦闘がないとは限らない、もしもに備えMSに慣れる必要があるとキラを論理的に諭し、また頭を下げて頼んだ。

キラはまたアスランと戦うことになるかも知れないと憂鬱に思ったが、前回の戦闘ではもう少しで死ぬところだったため、自身が生きるため、そして友達のためにも今できること、強くなることを決意し、ショウヤの頼みを承知した。

「じゃあ始めるぞ」

「はい、こっちは準備OKです」

「よし、いくぞ!」

試作イージスとストライク(エール装備)は射程外に配置して設定してある。

始まりの相図とともに両機はBライフルを右手に装備して接近していく。

互いにBライフルを撃ちながら接近していく、MSのポテンシャルがほぼ同等で、ショウヤは空間認識能力を、キラはスーパーコーディネイターとしての能力を持っているため、そして実戦経験では二人とも同じレベルなので、Bライフルの撃ち合いでは決定打に欠ける。そのため両者とも接近戦へ持ち込もうとしていた。

(さすが主人公だ。いくらスーパーコーディネイターだからって、これを見て素人なんて誰も思わないだろうな)

(ナカノ少尉、とてもナチュラルとは思えない)

互いに隙をみてはBライフルを撃つが、シールドで防がれるか、かわさせれてしまう。そうしていくうちに距離が近づいていく。

(だが、接近戦では負けん!)

ショウヤはBライフルを腰へマウントし、左腰部のコテツを右手で握り熱振動を起こさせる。そして一気にトップスピードへ加速し、距離が近づいたところでシールドをストライクへ向かって投げる。

「うあ!」

キラはBライフルを反射的に放つが、飛んでくるBシールドに阻まれてしまう、さらに一瞬だけ試作イージスを見失ってしまう。

「もらったぁぁ!」

ショウヤは気合一閃、ストライクの抜刀術のように左下側からコテツを振り上げる。

「くぅぅ!」

キラは警報を確認した瞬間、ストライクを左側へスラスターを噴かした。そのおかげで、何とか撃破されることは免れたが、右腕が大破状態になってしまう。

「くそう!」

キラは、瞬時にシールドを破棄し、左手にBサーベルを持たせる。

(この状態でナカノ少尉相手に接近戦は無理だ!どうする!このままじゃ!)

(ここまで自分が強くなっているなんて…おかげで自信がついたよ、キラ・ヤマト。きっと原作通りお前はもっと強くなる。だが今回は俺の勝ちだ!)

ショウヤは左手にもコテツを持たせるとストライクへとどめを刺そうと高機動で接近する。

「もらった!」

(このままじゃ、また戦闘になったときに死んでしまう!)

キラは頭で何かがはじける感覚を受ける。すると瞬間的に打開策が思い浮かび、瞬時に実行する。

「ここで!」

キラをストライクをバク転させ、エールストライカー切り離し、その反動で少しだけ後方へ移動する。

「何!」

ショウヤは思ってもみないキラの行動に驚くが、十字に構えたコテツでエールストライカーを4つに分断する。エールストライカーは試作イージスの眼前で爆発し、ショウヤはストライクを見失う。

「ちぃ!ストライクは!」

ショウヤがストライクを確認しようと試作イージスを急上昇させるが、その隙にキラはストライクで爆発したエールを目標にしてBサーベルを突き出していた。

ストライクのBサーベルは試作イージスの腰部のやや下を突いたが、致命傷にはならなかった。

「やるなキラ!だがこれで!」

両脚が大破状態になると同時にショウヤは試作イージスのコテツでストライクのコックピットを貫いた。

ショウヤの勝利でシミュレータは終わった。








あれから何度かショウヤとキラが対戦を行ってからMSから降りると、フラガが待っていた。

「よぉ。おつかれお二人さん」

「フラガ大尉こそお疲れ様です」

「おつかれさまです」

「そろそろ飯時だし休憩しようぜ」

「そうですね。けっこうな時間訓練してましたからね。Gこそかかっていないから体力は大丈夫ですが、精神的に疲れましたね。キラはどんどん強くなっていきますから。こっちも気を抜けませんでしたし」

(さすがスーパーコーディネイター。学習能力が半端じゃない)

「そんなこと…結局ナカノ少尉には半分も勝てませんでしたし。ナカノ少尉は本当にナチュラルなんですか?コーディネイターと言ってもいいぐらいの強さでしたよ」

「俺はナチュラルだよ。検査でも遺伝子に手を入れた形跡は一切ないしな。コーディネイターはナチュラルの天才を人造的に産み出す技術だ。つまりナチュラルの天才とコーディネイターは同等。フラガ大尉や俺はその天才にカテゴリーされるんだろうな」

「とはいっても純粋な身体能力や知能ではコーディネイターに劣るんだがね。それよりまずは飯だ。腹へってしょうがねぇ」

三人は雑談を交わしながら、食堂へ移動していった。



[17882] 9話
Name: you◆cf6d9fbb ID:32692406
Date: 2010/12/01 19:50
三人は休憩後も集中的に訓練を行った。そしてショウヤは今の自分の弱点に気づいた。それは長時間の戦闘は行えないということだ。短期間ならザフトエースと同等に戦えるが、一定以上時間が経つと精神力の消耗が激しく、だんだんと空間認識能力と予知能力が発揮しなくなっていくのだ。

(これは実戦と訓練で空間認識能力と予知能力の使用に慣れていくしかないな。できれば実戦の方がいい。強敵と戦えば戦うほど俺は強くなっていく気がする。もっとも命がけになるだろうが、後の大規模な作戦や戦闘までにもっと強くならなければならない)

ショウヤは気づいていた。10の訓練より1の実戦の方が自分をより強くしてくれると。ショウヤは実戦に強い、それも異常なほどに、そのためショウヤは命をかけた実戦で自分自身がわかるほどの早さで強くなっている。危険を承知で実戦を重ね強くなることショウヤは決意した。

改造ジンでの戦闘(アークエンジェル付近でシールドを構えながらBライフルを討つ程度、機動戦は無理)にフラガが慣れ、シミュレータでショウヤ達と訓練を行おうとしたところ、ショウヤとフラガはマリューから収集がかけられた。

(なにがあったんだ?この時期はラクスとの遭遇か?でも時系列がわからん)

ショウヤは考えながら、ブリッジに行けばわかることかと結論をだし、ミーティングルームに急いだ。

ミーティングルームにはすでにマリュー、ナタルがいた。

「さて全員集まったわね。ではバジルール少尉お願い」

ショウヤ達が着席するとマリューが時間が惜しいとばかりに会議を始める。

「はい。先ほど、進路にプラントのものと思われる民間船を発見しました。そのため現在この艦はエンジンを停止しています。ここから距離はそれほど離れてはありませんが、デブリにまぎれているのでアークエンジェルが発見される可能性はありません、どう対応するかがこの会議の議題です」

(ラクス・クラインが乗っている船が落とされる前になるのか?どうする…船が落とされるのを待ち、それからラクスを保護し、その後の対応でラクスを返還させず月本部へ連れていく。これなら俺は上層部からさらに評価されるし、大西洋連邦は1つカード得られる。そして原作ラクスの行動がなくなる)

ショウヤはこれは原作介入の山場になるかもしれないと考え込む。

「プラントの民間船か。どういったタイプはわかるか?」

フラガがナタルに尋ねる。

「高級機ですので、おそらくVIP相応が乗っているものと思われます」

「なるほどね。…はぁどうするかねぇ。急ぐなら、進路からずらさせて、無視して出てく。最悪は民間船を落としていく。ザフトの追撃が追いついて来るかもしれないが、民間船がここからいなくなるまで待つ。これくらいだろ選択肢は」

フラガがマリューへ視線を向ける。

「そうですね。どうしましょうか?」

(ここはラクスを連れていくべきだろう。しかし民間船が沈まなかったらどうする?どう対応すればいいんだ)

「艦長!」

ショウヤがどうすればよいか悩んでいると、ブリッジから通信がかかった。

「どうしたの!?」

「前方にドレイク級を発見、照合したところユーラシア連邦所属の艦です!」

「わかったわ!すぐブリッジへ行きます。第二種戦闘配備をおねがい」

「俺とキラはMSで待機してます」

「ナカノ少尉!?」

「ユーラシア宇宙軍に人なし。地球連合所属ならいいですが、ユーラシア所属ということはこちらを口封じ、もしくはアークエンジェルを拿捕しようとするかもしれません。それとプラントの民間船は落とされる可能性が高いです」

ユーラシア宇宙軍にはこれといった人材がいない。ユーラシア宇宙軍は初期の大戦で有能な人材がことごとく戦死しており、一部では所属問わず民間船に海賊まがいの行為を働いている。その分陸軍にはいまだ優秀な将兵がそろっており、物量対質でザフトと一進一退の攻防を繰り広げているが。

初期の大戦で有能な人材が戦死したのは大西洋連邦も同じだが、知将と呼ばれるハルバートンが大西洋連邦に所属しており、大西洋連邦、地球連合の宇宙軍を機能させている。一部の上層部はハルバートンを嫌ってはいるがその有能さは評価しており、G開発の責任者であることからそれがうかがわれる。

(原作通りならあの民間船は落とされる。まあプラントに所属しているコーディネイターはどうなってもいいが、この船は沈めさせない。オーブのとはいえ避難民もいるしな)

ショウヤはこの世界では何が原因でこの戦争が起きたのか、コネを利用して知った知識や前の世界の知識をすり合わせて次のように判断していた。

子供に高い能力や美しい容姿を与えるため、禁止されているはずのコーディネイト技術を使用した。その結果大半のコーディネイターはその能力からナチュラルを見下した、また犯罪率が増加したが検挙率は下がっていき、コーディネイターへの心証は最悪のものとなっていった。

この問題を解決するため、国家の予算や各企業が大金を使用し建造したプラントの労働をコーディネイターの能力を基準とし、大半のコーディネイターがコーディネイターのみが住んでいるプラントに移住(申請と検査次第でコーディネイターも地球に住むことはできた。ナチュラルと結婚しているなどの人たちは地球在住)していくよう誘導した。事実上、コーディネイターをプラントへ隔離した。

ナチュラルには過酷な労働だがコーディネイターには可能と判断されたノルマがプラント市民(プラントの労働者として認識)には課せられた。プラントは環境改善のため称し自治権、貿易自主権の獲得を訴え、政治結社「黄道同盟」を結成する(その最終目的はメンバーそれぞれ。シーゲルならコーディネイターとナチュラルが共存、ただしコーディネイターの不当な労働は改善されるべき。パトリックならコーディネイターによるナチュラルの支配)が弾圧される。

ナチュラルはコーディネイターに支配されるべきだと主張するコーディネイター至上主義者(パトリック・ザラのような)がプラント市民に情報統制を敷いてプラント理事国への悪感情を増大させていった。

ナチュラルもコーディネイターの犯罪や個人の恨みなどをもつ人々がブルーコスモス過激派を形成し、プラントへテロ攻撃を行っていた。(問題のあるとされるコーディネイターがプラントに隔離されているため、地球在住のコーディネイターはブルーコスモス過激派以外にはそれほど悪感情はなかった)

しかしプラントへのテロが止まず、S2型インフルエンザの流行により、互いの憎悪は増していった。

プラント理事国はプラントへのテロ対策とプラントの情勢を鑑み、軍を派遣した。しかしプラント理事国への悪感情はとてつもなく高まっており、軍の派遣がコーディネイターを弾圧しようとするのが目的と判断され(実際にそれが目的の1つでもある)プラントはザフトを結成しMSによる武力行使へ。

国連による会話の場がもたれるがプラント側のテロで国連上層部は全滅。
血のバレンタインでユニウスセブンが崩壊。
地球連合が発足されザフトとの戦争状態へ。
そしてNJによる大量虐殺。

簡単な流れだがこの世界ではこのように歴史が流れている。よって結論としてはやや連合側が有利な立場(国連が話し合いによる解決を試みていた。またプラント建造の予算はすべて理事国持ちでまだ黒字にはなっていない)だが双方ともに非がある。それゆえ戦争以外での解決は無理なのだ。どちらかが完全に屈服、もしくは滅びるまで戦い続けるだろう。

しかし連合では諸々の検査などで問題がないとされたコーディネイターがいろいろな義務はあれど連合各国や中立国に所属できるが、プラントはナチュラルを完全に排斥している。またナチュラルはコーディネイターを産み出せるがその逆はできないためプラントのコーディネイターに未来はないとショウヤは判断していた。

「わかりました。私たちはブリッジへ」

「交渉なら俺もいた方がよさそうだな。エンデュミオンの鷹として知られているかもしれないしな」

「了解です」

それぞれの持ち場へ急いで移動していった。












「ナカノ少尉!一体何があったんですか!?」

キラはパイロットスーツに着替えてストライクで待機という連絡を受け、ストライクの前でショウヤを

待っていた。ショウヤが現れるなり、問い詰める。

「プラントの民間船を進路に発見。その後ろにユーラシア宇宙軍所属の艦を発見。ユーラシア宇宙軍の中には海賊行為を働いているところがある。もしそうなら民間船と揉める。最悪の場合アークエンジェルが発見されるかもしれない。もし発見されたら未だ大西洋連邦に所属していないことになっているこの艦が攻撃されるかもしれない。そのための第二種戦闘配備だ。キラはストライクの中で待機してくれ」

「っ!わかりました」

(どうして味方のはずのユーラシア連邦が敵になるんだ!?)

天然で世間ずれしており、まだ現実の汚さを知らないキラはこの事態に憤るが、緊急事態だということはわかっているため、ショウヤの指示通りストライクに乗り込んだ。

ショウヤも試作イージスに乗り込んだ。そして試作イージスの中でマリューとドレイク級の艦長の会話を通信見ていた。

どうやらドレイク級が民間船を威嚇射撃したところ、デブリに当たり、アークエンジェルが発見されてしまったらしい。そのためこちらが大西洋連邦所属だと説明しているところだ。民間船はエンジン部を損傷しているらしい。

「この艦は現在、特殊任務に就いているため、貴艦へ説明する権利、義務がありません。そこを通していただきたいのですが」

「しかし、連合のデータベースには存在していませんねぇ。大西洋連邦所属だという証拠があるんですかねぇ」

「それは、特殊任務ですので説明できません」

「話になりませんなぁ。ではそちらの艦を調べさせていただきたいですねぇ」

「それは認められません。貴艦にはその権限がありません」

「………わかりました。では無力化してからじっくりと調べさせていただきましょう」

ドレイク級の艦長はいやらしい笑みを浮かべて、通信を切った。

「民間船が撃ち落とされました!ドレイク級よりMA発進!数…12!こちらへ向かってきます!」

ブリッジから緊迫した声で伝えられる。

「ひどい…」

ヘリオポリス組はそれを爆発した民間船を見て、憤った。

「緊急避難と判断し、ドレイク級を撃ちます!ナカノ少尉!キラ君!発進をお願い!フラガ大尉はすぐにジンで発進を!」

マリューから通信で伝えられる。

「了解!」

そしてすぐに発進準備が整えられた。

「試作イージス、スタンバイ完了、進路クリア発進どうぞ!」

「ショウヤ=ナカノ、試作イージス、出る!」

「ストライクはエールを装備します、スタンバイ完了、進路クリア発進どうぞ!」

「キラ・ヤマト、ストライク!いきます!」

試作イージスとストライクがアークエンジェルから発進する。MA-メビウス(通常の装備)がこちらに向かってくるのを確認し、ショウヤはキラに戦闘の指示を出す。

「キラ、メビウスはこちらを傷つける装備を持っていない。数は多いが、焦らず確実に落としていけ。ただしアークエンジェルには近づけさせるな。万一のこともある」

「了解」

(やっぱりこの世界は腐ってる!いや、もともとこういう奴らは前の世界でもいたんだろうな。…撃ってきたのあんたたちだ。反撃する権利が俺にはある。悪いがここで死んでもらう)

(また戦闘か。でもMSはいないし、死にそうになるなんてことはないよね。この艦には大切な友達がいるんだ。だから、あなたたちを撃ちます!)

ショウヤとキラは戦闘に集中していく。

並みのナチュラルの反応はコーディネイターと比べると遅く、またMAは回避運動が単調だ、実戦回数ではユーラシア宇宙軍もショウヤ達と同じぐらいだろうが、Gやエース級という強敵との戦いで鍛えられたショウヤとキラの敵ではなかった。二人は次々とMAを落としていく。

「ショウヤ!ここは俺とキラに任せてドレイク級を!民間船の残骸の陰になってアークエンジェルでは落としにくい!」

メビウスの数が半分ほどになったころ、改造ジンで出てきたフラガが通信で伝えてくる。

「了解!」

フラガが慣れないMSでもメビウスを撃ち落としたことを確認し、ショウヤは試作イージスを急加速させた。

試作イージスは現在存在するGの中では短距離の機動力が最も高い。MAでは急な方向転換ができないため一度振り切られると追いつけなくなる。

「落とせ!あの赤いMSを落とせぇ!」

戦況が最悪の事態になっていることを理解したドレイク級の艦長は血走った眼で命じる。

(おのれ!ジンがいるではないか!何が大西洋連邦だ!許さんぞ!)

ジンがいるためザフトだと思いドレイク級の艦長は出世のために味方を討とうとしたことなど忘れ毒づく。

アークエンジェルには連合の所属だという証拠がないがエンデュミオンの鷹がいるため連合所属なのは間違いない。それを確認しておきながら己の欲望のため戦争中の味方を討とうとした、また海賊行為を働いていたこの艦長とクルー立ちに女神が微笑むことはなかった。

「終わりだ」

NJにより誘導されないミサイルをらくらく回避し、艦橋に照準を合わせたショウヤは心を殺し、艦橋部分に向けてBライフルを撃った。

直後、ドレイク級は大爆発を起こす。

(これで奇代の殺人者か…しょうがないだろ俺やアークエンジェルのクルー、避難中の民間人が生きるためだ)

ショウヤは何十、何百という人間を殺しただろうことを恐怖する己の心を論理で封じた。

(…さて、戻るか)

アークエンジェルに戻ろうとしたところ、

ビー!ビー!

とレーダーに反応が出た。

「何だ?」

カメラで調べてみると、民間船とドレイク級の間の残骸が漂っている宙域に脱出ポッドが漂っていた。

(!!ラクスのこと忘れてた!あぶね~、これでラクス死んでたら、原作完全に崩壊で今後の予想すらつかなくなるところだった。それもたぶん悪い展開になるだろうな、カリスマと言うか崇拝?する偶像が連合に殺される、…ジェネシス作成が早まったりするんじゃないだろうか?………まあ助かったんだしいっか、うん、そういうことにしておこう(汗))

ショウヤは戦闘の余波でラクスのことを忘れていたことを一人言い訳していた。それと同時に大量殺人への恐怖が薄らいでいった。














ショウヤは脱出ポッドを持って、アークエンジェルに帰艦した。

その時ナタルとひと悶着があったのだが、ショウヤはプラントのVIPを保護できるとの利点で説得した。規則に堅く、今は柔軟な判断ができないナタルはそれでも納得していなさそうだったが、マリューが許可したため、仕方なく口を閉じた。

銃を持った兵士(数は少ないが衛兵や警備兵はアークエンジェルにいる)が脱出ポッドを取り囲み、整備兵が脱出ポッドの扉を開こうとパスをハッキングしていた。これはプラント製の脱出ポッドで連合のものとは規格が違ったためだ。

ショウヤやキラ、フラガはパイロットスーツのまま、ブリッジからこの艦の責任者として格納庫まで来ていたマリューのそばでそれを見ていた。

シュンという音がすると同時に扉が開く。

そこから出てきたのはピンク色の髪をした美少女だった。

(やはりラクス・クラインか。ピンクの髪って前の世界だとオタクだとか淫乱だとか言われていたが、これを見ると以外といけるかもなぁ。ははは、あははははは)

ピンクの長髪が光沢を放ち、さらりと流れるのをみてショウヤは現実逃避していた。

(…っていうかさ、なんでこっちを見てんのラクス・クライン!?)

ラクスはショウヤのいる方、正確にはショウヤをじっと見ながら、ショウヤの方へ宙をゆっくりと移動していた。ショウヤはじっとラクスに見つめられているため、心中で焦っていた。

(不思議な方、プラントのコーディネイターのような支配する対象とも違う、ナチュラルの弱い感覚とも違う、不思議な、まるでこの世のものとも思えない感じは一体何なのでしょうか?)

ラクスはショウヤが異世界から憑依した存在であることに違和感のような感覚を感じ、今まで会ったどの人間とも違う存在感に急速に魅かれていった。

(あそこにいる私と同等の存在感を持つ方も興味深いですが、この方は見ているだけで心臓がドキドキしてきますわ)

ラクスがショウヤにぶつかりそうになったので、ショウヤはラクスを抱きとめ着地させた。

(なんで俺の方に来るかなぁ。確か、原作だとキラの方だったよなぁ)

ショウヤはもうどうにでもな~れと投げやりになっていた。

「あの、お名前を聞かせていただけますか?」

「大西洋連邦所属ショウヤ・ナカノ少尉です。あなたの名前をうかがってもよろしいでしょうか?」

ラクスは自らがもつ異常な観察眼でショウヤを観察していた。平凡な日系の顔だが、ラクスにはその本質、異世界からの憑依者という異質が感じられた。

「わたくし、ラクス・クラインと申しますの」

「クラインってもしかてあのクラインか…マジかよ」

フラガがそれを聞き、あちゃーといった感じで額に手を当てる。

(この方なら私の中から孤独をなくしてくれるかもしれない)

ラクスは自らがこの世界では孤独であると感じていた。

強い意志を持った一部のコーディネイター以外はなぜか自らを崇拝するのだ。ゆえにプラントでラクスと対等な人間など会ったことがない。友達もいない、親しい人間は父だけ。婚約者とされているアスランとは結局はごっこ様なものでしかない。そんなところにショウヤが現れた。そしてラクスはその異に魅かれてしまった。

ショウヤの全く意識しないところで原作の崩壊がなされた。

(は?えっ?何なのこの展開?ドッキリか?)

原作が崩壊しているとは微塵に思わず、表面上はキリっとした表情だが心では完全に混乱しているショウヤだった。



[17882] 10話
Name: you◆cf6d9fbb ID:32692406
Date: 2010/12/03 05:54
「それで、どうしましょうか?」

マリューが投げやりに意見を求める。

「どうしましょう?って、とりあえず連れてって上の判断を求めるしかないでしょ」

肩をすくめ、こちらもだるそうにフラガが答える。

「正直、あんな少女を上に引き渡すのは心苦しいのだけどね」

あの少女をブルーコスモスが牛耳っている連合上層部に引き渡せば、その未来はお先真っ暗だと嫌でもわかり、マリューはため息をつく。

「しかし、クラインの娘です。本人の意思がどうあれ無関係でいられません」

緊急時だからと規則にゆるく、甘いマリューにナタルがかみつく。軍人らしい軍人という考えがあるナタルはマリューとは考えがかみ合わず、だんだんと余裕をなくしイラついているのだ。もっともこの非常時にはマリューのような柔軟、甘いともいえるがの判断は状況にかみ合っていたが。

「まあ、そうなんだけどね…」

マリューはナタルがイラついていつのを感じ、言葉を濁した。

「そ・れ・よ・り・も」

ニヤッとした笑みを浮かべ、フラガは放心しているショウヤの後ろから抱きつく。

「うわっ!フラガ大尉!?」

「プラントの歌姫様を一目惚れさせた感想はどうですか?色男さん?」

「ははは、嫌だなぁフラガ大尉。プラントの歌姫がナチュラルで連合軍人の俺に一目惚れなんてするはずがないでしょう?ははは…」

虚ろに笑いながらフラガに答えるショウヤ。

「いやぁ、あれはどうみても一目惚れだったでしょ。ねぇ艦長?」

フラガはマリューに同意を求める。

「ええ、あれは一目惚れね。バジルール少尉もそう思うでしょう?」

マリューはナタルに同意を求める。

「はい。あれは間違いなく一目惚れでしょう。私でもわかります」

お堅いナタルにまで同意され、勘違いだなどと現実逃避していたショウヤは、一目惚れ確定と結論をだされがっくりと頭を垂れる。

(どうしてこうなった)

ショウヤは先ほど起きたことを思い出す。










「ふう。とりあえずラクス?さん、詳しい事情と今後のことについて話したいのでついてきてもらえますか?」
    ・・・・ 
ラクス・クラインと名乗った少女に動揺していたマリューが、何とか心を立て直し、ラクスに言葉をかける。

「はい、わかりましたわ。エスコートは…ショウヤさんにお願いしたいのですけど」

なんとラクスはショウヤの右手を両手で握りしめながら、マリューに同意を求めたのだ。ちなみにピンク色のハロはショウヤの足元で「ハロハロ~」と音声を出しながら転がっていた。

「…わかりました。ナカノ少尉、エスコート役を命じます」

あまりの展開についていけなくなったマリューはさっさとこの場を離れたく、ショウヤに命令する。

「了解しました」

何が起きているのか理解できない(したくない)ショウヤは反射的に同意してしまう。

「では行きましょう」

マリューが歩いていき、その後ろをラクスの手を引く形でショウヤは付いていった。完全に放心しながら。






その後、ラクスから事情を聞き、連合の艦のため部屋に軟禁することになると伝えた。+ショウヤを監視役にしますとも。

それを聞いたラクスは満面の笑みで了承した。

ラクスを部屋まで連れて行こうとした際、ヘリオポリス組が部屋の外で盗み聞きしようとしていたので、ナタルがひとにらみし、ラクスを部屋に案内し、後でショウヤを監視として来させるとラクスに伝えたその際、「早く監視してくださいね」とラクスが笑顔でショウヤに言った。

放心中のショウヤは「善処します」と無意識で答えていた。

その後ラクスをどうするかの会議のためミーティングルームに戻った。

そしていまに至るというわけである。

「はぁ~、なんでこう次から次に問題が発生するのかしらね」

マリューがもういやと愚痴をこぼす。

「まぁ偶然運が悪かったってことで納得するしかないんじゃないの」

フラガもヘリオポリスからの出来事を思い出し、苦笑いする。

「この状況では誰でもそう思いますよ」

ショウヤをからかったことで少しは余裕と取り戻したナタルがマリューを気遣う。フラガはこのことを見こしてショウヤをからかったのだ。先ほどまでのギスギスした雰囲気は物の見事になくなっていた。

「ふう。とりあえずナカノ少尉、ラクスさんの監視役をお願い。訓練などを行いたい場合フラガ大尉、交代をお願いします。まぁあの子じゃ問題はまず起きないと思うけどね」

「了解しました」

「了~解」

ショウヤは気を入れ替えて答えた。

「んじゃ行こうか」

ショウヤとフラガは途中まで一緒に移動することになった。

ラクスのことは後で考えることにしてフラガにこの後のことを聞く。

「フラガ大尉はこの後どうするんですか?」

「俺はMA相手とはいえMSに乗っての初の実戦だったからなぁ、感覚を忘れないうちに訓練といきたいところだが、キラやヘリオポリスの学生と話してくるわ」

「…味方であるはずの連合、ユーラシア軍と戦いましたからね」

「ああ、あいつはいくらコーディネイターの中でも別格とはいえ民間人だ。間違いなく負担が大きい。こっちが手を貸してもらってるつうのに、あいつらが潰れるなんてことはあっちゃいけないだろ。まぁ緊急事態とはいえ戦わせている俺が言うのもなんだがね」

フラガは普段は軽薄そうな兄ちゃんといった感じだが、こういうフォローができるところがすごいのだ。MSでの戦闘能力ではショウヤに遠く及ばないが、こういう細かいところまで眼が届く。ショウヤは一人の大人としてフラガを尊敬していた。からかって来るところは遠慮してほしいが。

「まっ、お前もあんまり気にすんな。あの歌姫と接する機会なんて今だけだろ」

「だといいんですけどね」

(俺はあれが原作ヒロイン?だと知っているからなぁ。どうするかね、ひとまず冷静になって対応を考えるか)

「んじゃ俺は、あいつら連れてPXに行ってくるわ」

「わかりました。では」

フラガと別れたショウヤはラクスの対応についてを考えこむ。

(ラクスが俺に惚れる?………もしかしてこの世界の神の仕業か?しかし俺はナチュラルで連合軍人だし、プラントに味方しようなんて思わないぞ。だとすると………俺を連合にいさせなくするフラグか?………演技かもしれないし、とりあえずは様子見だな)

原作でラクスがどういう人物なのかわからない(黒幕説などあったため)ので、ショウヤはとりあえず保留にした。もっともかなりラクスを疑っていたが。

(それより今後のことだ。原作イベントとほぼ同時期だとすると先遣隊が来るはずだ。フレイ・アルスターの父親、名前は何だったか?お偉いさんが死ぬイベントか。これはどうする?回避するかしないか。する場合フレイは復讐を考えず、キラとヘリオポリス組が連合に志願しない。回避しないとキラは戦い続ける。そうするとキラは敵になるかもしれない。あれは意味不明なほど強くなるから回避するとしよう。そのためには、戦闘に介入する必要がある。MSが三機いるということと味方を見捨てるのかとマリューを説得する。もしだめなら命令無視してでも発進する。理由は味方を見捨てられないということにしておこう。原作通りナスカ級一隻なら追い返すことはできるだろう。次は、ラクス人質と返還、これはフレイ復讐フラグを折れば問題ない。もしもザフトの戦力が想定以上だった場合はどうしようもない。いずれ敵になるかもしれないが原作通りにしよう。まてよ………もしキラ達が志願しなかった場合は…デュエルに撃ち落とされる?しかしあれは偶然が重なった出来事だ…もしかしたら起きるかもしれないし、これは戦闘で何とかするしかないな、デュエルを落とすとかか?ここまでいくと原作崩壊に近いし、原作知識は役に立たなくなるな。原作崩壊したらMS戦で連合に貢献していこう。そのためにはもっと強くなる必要がある。…ははっ、前も同じようなことを思ったな。強くなる、当たり前だが難しいな)

ショウヤは原作知識が通用しなくなった後のことを思い、何度も強くなりたいと思ったことを思い出し、苦笑いした。

(前の世界でやっていた剣道だってインターハイ優勝とかできなかったしな。努力せず能力を得たコーディネイターが嫌われるわけだ。まぁ俺もこの世界ではMS戦のみだがありえないぐらい高い能力があるんだが)

そんなことを考えているうちにラクスが軟禁されている部屋に着いた。

「ラクス・クライン、ショウヤ・ナカノです。監視のため、部屋に入らせていただきますよ」

「はい、どうぞ」

ショウヤが解除キー(事前にマリューから聞いていた)を押すと、扉が開いた。

(たしかハロがハッキングできるんだっけ。理由もなく取り上げるわけにもいかないしな。普段は俺が監視して、戦闘中は誰かに監視を頼むか。フレイ嬢の件もあるしな)

ショウヤは原作でセキュリティが難なく破られていたことを思い出し、対策を思いつく。それはある意味現実逃避だった。なぜならラクスが部屋に入ってきたショウヤに抱きつく位の勢いで向かってきたからだ。

「おっと、危ないですよ」

抱きついてくる前に、なんとか止めるショウヤ。

「あら、ありがとうございます」

(残念ですわ)

笑顔で答えるが、内心では残念に思っているラクス。

(監視役って何すればいいんだ?っていうかラクスの応対が面倒くさいから俺に振っただけじゃないのか?)

マリューがいろいろあって面倒くさいからショウヤに監視役だなどと命じたことにようやく気がついたショウヤ。

「とりあえずこの部屋について御説明します。まずあちらが………」

いくら敵国のVIPとはいえ、これが捕虜の待遇なら高圧的に接すればよいのだが、あくまで保護を名目としているため、こういうところは真面目なショウヤはラクスに敬語で接していた。しかしラクスはもっとショウヤを身近に感じたいと思い、ある提案をする。

[ちなみにこの部屋は余っている高級士官用の部屋でトイレ、バスルーム、寝室、冷蔵庫付きにアークエンジェルのDBへのアクセスが可能だ。DBのアクセスは完全に使用できないようにされているが]

「よろしいですか?」

「なんでしょうか?」

「敬語ではなくプライベートで話しているように接していただけないでしょうか?ショウヤさんにそんな風に話されたらわたくし悲しいですわ」

(なんだかこちらを警戒しているようですし、まずは無理やりでも敬語をやめさせましょう)

天然と計算高さ(腹黒ともいう)が同居しているラクスは演技(悲しそうな表情)と本音(仲良くなりたい)半々で提案した。

(また難しいことを、このラクスは天然か腹黒(黒幕)か…どっちなんだろうか?)

ショウヤはさらにラクスが天然か腹黒か全く判断できず、さらに混乱し警戒してしまう。

「む~、ではこうしましょう。この部屋でショウヤさんと二人っきりのときだけはプライベートということでどうでしょう、それと名前は呼び捨てでお願いしますわ」

(なんだかさらに警戒されてますわ。でも敬語だけはやめて欲しいですわね。あと名前で呼び捨ては外せません)

ラクスはショウヤの軍人モードでも簡単な感情を読み取る。

「………わかりました。わかったよラクス。これでいいか?」

(ここはあきらめるか。それにこうして心を開いていると見せかければ、いつか隙がでるはずだ。それにしても異性とプライベートで話すって、学生以来だなぁ)

なまじ原作知識があるためあくまでラクスを疑いながらも隙を作るため、意図的に軍人モードをやめるショウヤ。そして異性とプライベートで話すなど久しぶりだと思いだした。

「はい!」

(むう、また警戒が強くなりましたわ。でもとりあえずは一歩進展ですわ)

めげないラクス。

「それでは、お話しましょう。そうですわ、自己紹介をしませんか?」

(互いのことを知ることで少しは警戒を解けるはず)

そしてさらにショウヤとの心の距離を詰めようとするラクス。

(自己紹介~?どうする?まあ話すことなんてほとんどないし、ってかこの世界に来てから訓練ばっかだっただしな)

「名前はナカノ・ショウヤ。ナチュラル。歳は今年で25歳になった。誕生日は7月24日。趣味はジャパニーズ剣道。軍に入ったのはAFC(エイプリルフールクライシス)が起きてから。一応連合のエリートということになるのかな、まあ即席のなんちゃって軍人なんだけどね。軍に入る前のことは聞かないで欲しいなぁ」

(この世界の自分は趣味も同じだったようだが思い出とかは違うだろうしな)

前の世界が少し懐かしくなり、しんみりした表情になるショウヤ。

(AFC以前のことは聞かないでほしい、この話題は地雷ですわね。気をつけませんと)

家族や友人、もしくは大事な人が亡くなったのかもしれないとラクスは思った、両者が思っていることは違うが意図は伝わったようだ。

「それでは次はわたくしの番ですわね。名前はラクス・クライン。今年で16歳になりましたわ。誕生日は2月5日。趣味は歌を歌うこと。あとはこのピンクちゃんと遊ぶことですわ。これは歌の講演会でスポンサーさんからもらいましたの。あとは一般の女性と同じ、着飾ったりすることも好きですわ」

(婚約者からもらったなんて、口が裂けても言えませんわ。恋仲になってから望まない婚約を強いられていると話ばいいかしら)

(いや、それってアスランからのプレゼントでしょ。ああ、そう言えばアスランはいくら気に入ってもらったからってハロばっかりプレゼントって、それはないよなぁ、もっとアクセサリーとか送れよ、誕生日に花束を歳をとるごとに一本増やすとかもあり?かなぁ)

ラクスが隠しておきたいと思っていることは原作知識を持っているショウヤからすればばればれだが、本当に意図するところは全く通じていなかった。

(この後は今日が誕生日だということで会話を膨らませようかしら)

「そういえば

きゅ~

「あっあら」

ラクスが次の話題へ会話を膨らませようとしたところ、ラクスのお腹の音が鳴った。一気に場が凍ってしまう。

(うう、恥ずかしいですわ。人前でこんなことは初めてですわ)

顔が紅潮していくラクス。

(あ~、ここはフォローしたほうがいいよな)

「ごめん、さっきの戦闘前から何も口にしてなくて、お腹すいたなぁ。ラクスはどう?」

「あら、そういえばわたくしもお腹がすきましたわ」

「それなら、持ってくるからこの部屋で一緒に食べよう。監視役だしね」

そう言ってショウヤは部屋を出ていく。

後に残されたラクスは、

「ふふふ、ふふふ、くすくすくすくす」

笑っていた。それは十中八九不気味に見えるだろう光景だった。

(嬉しい、楽しい、嬉しい!楽しい!、あの人を知るのが、あの人の心を図るのが、心の距離を縮めるのが!きっとこれが恋、恋なんてわたくしがするなんて絶対に無理だと思っていたのに、ふふふふふナカノ・ショウヤさん、わたくしをこんな気持ちにさせた代価必ず払っていただきますわ。そう)

「必ずあなたの心を射止めて見せますわ」

その眼は恋する乙女の眼であると同時に、獲物を追い詰める狩人の眼でもあった。










「うう」

ラクスが宣言したのほぼ同時期、ショウヤは背筋に冷たいものを感じぶるると震えた。

(ふう。会話するだけで疲れた。久しぶりに素の自分で話した気がする。でもなあ…素の口調ってどんなだったかわからなくなってるんだよなぁ。それに異性と会話するのも久しぶりだけど、社会人になってから女子高生ぐらいの年齢の子と話すのなんて初めてだぞ)

ショウヤはこの世界に来る前、社会人になってからの枯れた生活を思い出した。

(これで原作未登場のキャラでナチュラルとプライベートで話せたらなぁ。なんちゃってエリートだけどだからこそ近づき難いのか、積極的に話してくれる人(女性含む)はいなかったしなぁ。唯一仲がよくなったのはフラガ大尉だけだもんなぁ)

いつかは結婚とかして家庭を持ちたいなぁと夢見ていたことをショウヤは思い出した。

(まぁ、まずは戦争に集中するしかないか、それが終わったら、いい人を見つけよう。よし、まずは飯だな)

現時点ではラクスには全く脈がなかった。



[17882] 11話 上
Name: you◆cf6d9fbb ID:32692406
Date: 2010/12/05 08:11
食事を取りにPX(売店と食堂が一体になっているっぽいところ)に来たショウヤの眼に映ったのは、ヘリオポリスの避難民が、食事をとっているところだった。

混雑しており、入口には警備兵が陣取っているし、中では衛兵が避難民へ食事などの配布を行っているようだった。

(タイミング悪いな)

混雑している様子を見て、衛兵に話しかけるのをためらうが、ラクスが待っているし、待たせすぎたら何かされそうで怖いため、意を決して衛兵に話しかけようとしたその時、

「ショウヤ、どうした?」

フラガが話しかけてきた。

フラガの座っている席の近くにはキラとヘリオポリス組、フレイが座っていた。それぞれの前にお盆があるため、どうやら話しをするついでに食事をとっていたらしい。

(あれがフレイ・アルスターか。もうちょっと歳を取ればタイプだったかもしれないなぁ。しかし…なんか妙なんだよな彼女。こうなんか第六感に来るというか、何だろう?この感じは)

ショウヤはフレイに何かを感じたが、今は食事が先だと、心の奥にしまっておくことにした。

「フラガ大尉。お姫様の食事を取りに来ました。ついでに自分の分も」

少し距離が離れていたため、ショウヤは近くまで寄ってフラガに応えた。

「そうか。それなら俺が取ってきてやるよ」

面倒見のいいフラガは、先ほどからかった詫びも込めて食事を取りに衛兵のところまで移動していった。

(そう言えばヘリオポリス組とはゆっくり話をしたことがなかったな。ついでだし少し話をしてみるか)

ショウヤはとりあえずキラに話しかける。

「君達とはゆっくり話をする暇もなかったな。改めて、ショウヤ・ナカノだ。連合のMSのパイロットをやっている。いまさらだがよろしくな。それと手伝ってくれていることに礼を言っておくよ。ありがとう」

軽く頭を下げて言われ、どうしようかと顔を見合わせるヘリオポリス組。まとめ役のサイが言葉を返す。

「いや、こちらこそ、ヘリオポリスではありがとうございました」

「ああ」

妙にかしこまったヘリオポリス組を見てフレイは疑問に思い、口に出す。

「ヘリオポリスで何かあったの?」

「ああ、機密であるMSのことで拘束されそうになったときにかばってもらえたんだ。それにフレイが乗っていた脱出ポッドをアークエンジェルに収容するようにしてくれたのもナカノ少尉のおかげなんだ」

「そうだったんだ。ならお礼を言っておくわ。ありがと軍人さん」

(あくまで原作知識から考えて助けるよう判断したんだが、自分の汚れっぷりが眼にしみるなぁ)

なんだかんだでまだ純真な少年少女達を見て、自分が汚れていることを自覚してしまうショウヤ。

「あ~、仕事のうちだから気にするな」

ショウヤはつい照れくさくなりぶっきらぼうに言った。

「でも少尉ってすごいですよね。MSの戦闘であんなに強いんだもの」

ミリアリアは感心した表情で言う。

「そうだよなぁ。キラはコーディネイターだからまだわかるけど、ナチュラルであんなに強いんだもんなぁ」

カズイもまた同じように感心した表情で言った。

「えっ?ナチュラルなのにMSに乗れるの?」

「そうだぜ。少尉はナチュラルでMSに乗れるんだ。OSが完成がしていないから他の人では無理らしいんだけど」

フレイの疑問にトールが答える。

「へえすごいのね。でも少しわかる気がするわ。だってあなたってなんか普通の人とは違うっていうか、オーラ?みたいなものを感じるんだもの」

「っはは、オーラって」

フレイが言ったことがおかしかったのかサイが笑う。

「なによぉ。サイの馬鹿!」

フレイは機嫌を損ねたのか、ぷんぷんと怒った。

「悪い悪い」

「もう」

二人はいかにも恋人ですという雰囲気を出している。それを見ていたキラが妙に暗くなっていた。

(青春だねぇ)

「よおショウヤ。お待たせ」

しみじみと思っていたショウヤに二つのお盆を持っているフラガが声をかけた。

「フラガ大尉、ありがとうございます」

「いいって、面倒事押しつけようってんだからな」

「はぁ、そうでしたね。ああ、そう言えば大尉?あ~その替えの服や下着とかの手配ってどうするんですか?」

「あ~それも衛兵に頼んどくわ」

「わかりました。じゃあ自分はお姫様のところに行きます」

「んじゃぁな」

フラガ達と別れショウヤは再びラクスのところへ向かった。













「ラクス・クライン。食事を持ってきました。入りますよ」

一言告げ、部屋に入るショウヤ。ショウヤが部屋にはいいてくるなりパアっと顔が明るく笑顔になるラクス。

「お待ちしてましたわ」

お盆を置き、それぞれ対面する形に座った。

「じゃあ、食事にしよう」

「はい」

ショウヤは手を合わせいただきますと小さくつぶやき、食事を始めた。ラクスはそれを見て、真似をする。

(名前からして日系の方だとは思っておりましたが、どうやら文化も日本よりそうですわね。文化の違いで男女の仲が悪くなることもありますから、気をつけませんと)

もくもくと食べている二人。ショウヤは食事は静かに食べたいタイプなのだ。剣道を熱心に続けていたため、ショウヤは礼儀作法を気にかけている。

(どうやらショウヤさんは礼儀作法を気にかける人みたいですわね。ならわたくしも静かに食事をするべきなのでしょうが、これではいまいちムードに欠けますわね………!あら、いい考えが浮かびましたわ)

「ショウヤさん」

「何?」

「あ~ん」

(はぁぁぁ!?何ですかこれは?っえ、罰ゲームですか?意味わかんねぇよ!なんでこんなことが!)

「ショウヤさん、あ~ん」

プレッシャーをかけるようにラクスは再度甘い声をショウヤにかける。

(………断りたいんだけどなぁ、このプレッシャーは断れないというか、あっ、身体が勝手に)

「あっ、あ~ん」

ラクスから放たれた謎のプレッシャーに負け身体が勝手に反応し、ア~と口をあけ、パクっと食べた。

(何かに負けた気がする)

(何かに勝った気がしますわ。それでは追い打ちをかけましょうか)

恋に盲目になっているラクスは攻めの手を全く緩めなかった。

「ショウヤさん、お返しにそのおかずが食べたいですわ」

「これか?」

「はい」

(つまり、俺に食べさせろというのか)

にこっと笑ったラクスを見てその意図を悟ってしまったショウヤ。

(もうどうにでもな~れ)

ショウヤの眼が座り、覚悟を決めた。

「あ~ん」

「はい、あ~ん」

(ああ、幸せですわ、いずれは恋人になってこれを自然にこなせるようにしたいですわ)

ラクスは至福の笑顔で食事を続ける。

(ああ、何かに負けた、雰囲気に流された。俺ってヘタレなのかなぁ)

ショウヤはどんよりとした雰囲気で食事をつづけていた。





食事が終わり、ショウヤが持ってきたお茶で二人は一服していた。ショウヤはボケ~と無心になっていたが、ラクスは頭の中でどんな会話をしようかコーディネイターの頭脳をフル回転させていた。

(まずは、そうだわ、食事…好みの食べ物、そして料理ができる女性はどう思うか聞いてみましょう)

「ショウヤさん」

「何?」

「好みは食べ物は何ですか?私死んだ母が幼いころ作ってくれたシチューが好きですわ」

(ほとんど記憶にありませんけれど)

「ハンバーグに大根おろしと醤油をかけたもの、あと豆腐料理全般。まあ俺が知っているのは調べて自作する程度のものだけどね」

(やはり和風が好みと)

「ご自身で料理を作られるのですのね。では料理ができる女性はどう思いますか?」

「それはやっぱりいいなぁと思うよ。エプロンしている姿とかはいいねぇ」

(エプロンをしている女性…新妻…それは心躍りますわ!でも……わたくし、料理ができませんの。こればかりは要修行かしら。次は何を聞きましょう)

頭の中までピンクになっているラクス。ちなみにショウヤはこの時した会話をほとんど覚えていなかった。食事のときに起きたことで心がどこかに飛んでいたのであろう。

その後、フラガが衛兵(女性)を伴って、ラクスの着替えやらを持ってくるまでこやりとりは続いた。




























ショウヤはラクスとのやりとりでの気疲れを取るため熟睡していた。少し痛い頭をシャワーを浴びてすっきりさせると、MSの調整を行うため格納庫にやってきた。

ショウヤに気づいたのかマードックが声をかけてくる。

「少尉!お疲れです」

「マードック軍曹、お疲れ」

「坊主から聞きましたぜ、お姫さんのお守をしているって話じゃないですか」

「言わないでくれ…はぁ」

「ははは、少尉はおモテになるくせに女性の扱いがなっていませんなぁ」

「モテルって俺がか?」

「ええ、実際この艦の女性の大半はフラガ大尉かナカノ少尉に気があるとみていいでしょうな」

クルーはそれほどいないがそれでも数十人はいる。

「そんなに?」

「ええ、まぁ少尉はクールっていうかお堅いイメージがありますから、声をかけてくることは少ないでしょうが、なんといっても連合初のMSパイロットですからね、人気はあります」

(俺って、もてたのか。まぁパイロット、特にエースはモテルよなぁ。俺って連合のエースになるはずだしな、一応。でも付き合うとかは今は無理だ。そういうのは戦争が終わってからかな)

「まぁ、縁がいいんだけどね。それより試作イージスの調整を頼みたいんだが」

「おっ了解です。前回の戦闘では損傷はなかったですし、調整もほとんど必要はないと思いますぜ」

「わかった。一応確認してみる」

ショウヤは試作イージスに乗り込むと各設定を見直し、シミュレータを起動する。

(特に問題はないか)

「どうでした?」

マードックが試作イージスから降りてきたショウヤに確認する。

「問題なしだ」

「よし、これでMS全機問題なしと」

「フラガ大尉とキラの調整はもう終わっていたのか?」

「坊主は戦闘データからOSの調整もありましたから、戦闘後整備が終わったらすぐに調整してましたぜ。フラガ大尉はシミュレーションで訓練してましたんで、その後で」

「俺が最後だったか」

(ラクス相手で疲れてたんだよ)

「それより聞きましたか?先遣隊が近くまで来ているそうですぜ。連絡が取れたって話です」

「そうなのか、ブリッジで確認してみる」

「わかりやした。ああ、そうだトリケロスですが、シールド部分はGのシールドの補修用パーツを流用して直しておきましたぜ。スレイプニールがないんで少し大き目にしたのでシールドとしても使えるようになってますぜ」

「わかった。後で使用について考えてみる」

ショウヤはトリケロスの使用について考えながらブリッジまで移動していった。










ブリッジに入るとマリュー達、連合軍人のクルーのみがいた。

「ラミアス大尉、先遣隊から連絡がきたということですが」

「ナカノ少尉。ええ、後数時間で合流できるわ。これで少しは楽になるわね」

(襲撃は………、待てよ、アルテミスのことがない分少し移動した時間が早いのか。だとすると襲撃はないのか?……いや、一応すぐに対応できるようにはしておこう。油断は禁物だ。襲撃がなければフレイ復讐フラグをつぶせるし、襲撃があればアルスター事務次官を助けて俺の上への点数を上げる)

「…わかりました。では自分はお姫様のところにいます。何かあったら連絡をください」

「わかったわ…ああ、その、ラクスさんのことだけど、がんばってね」

自分が無茶ぶりしたことを自覚しているのか、気まずそうにショウヤを激励する。

「ええ、がんばりますよ」











ラクスと話しをしながら時間をつぶしていたショウヤだが、まもなく先遣隊と合流するので、ブリッジに上がってくれとの連絡を受け、ブリッジに来た。

ブリッジにはメインクルーとフラガ、ヘリオポリス組がいた。

「ショウヤ、お疲れ」

「お疲れ様です大尉」

フラガがあいさつしてきたのでショウヤもあいさつを返した。

「先遣隊と合流か、戦力はそうないが、これで少しは楽になるってもんだ」

「そうですね」

「ああ、このまま問題なく

フラガの言葉を遮る形でビー!ビー!と警告音が鳴った。

「どうしたの!?」

ブリッジは緊迫した雰囲気になり、マリューが確認する。

「これは……先遣隊の後方よりナスカ級一隻確認!こちらにまっすぐ向かってきます!早い!」

「なんですって!くっ、ここまで来て、ええい!総員第一種戦闘配備、モントゴメリに伝えて!」

アークエンジェルは最新鋭の艦だけあってNJ影響下でもレーダーの策敵範囲がかなり広い。先遣隊はいまだ確認すらできていないだろうことを考慮し、マリューは先遣隊の旗艦モントゴメリへ伝えるよう命じた。

「自分はMSの準備を行います」

マリューが通信で状況を伝えている時間も惜しいとショウヤはパイロットスーツを着替えにへ向かった。

「俺も行く!おい、キラを呼び出しておいてくれ!」

フラガもキラへの連絡をクルーへ頼み、ショウヤに続いた。

ブリッジの通信用画面にはモントゴメリの艦長が映っていた。

「この位置ではアークエンジェルも逃げられまい、総力を持って切り抜ける。各員奮闘を期待する」

モントゴメリの艦長は史実とは違い、総戦力で迎撃すると決定した。それはどのような結果になるのか…





ショウヤ達がそれぞれのMSへ乗り込み発進をしようというそのとき、ナスカ級からMSが発進した。

「熱紋照合…ジン3!シグーと思われる機体1!そして…X303イージスです!」

「イージスですって!まさかあのナスカ級!」

「くっ、こちらのGはイージスを優先的に狙うようにしろ!それと先遣隊のMAはイージスとは極力戦うなと伝えろ、MAでは歯が立たない!」

「了解!」

ナタルは瞬時に判断し指示する。

「まだ距離がある…ローエングリンは撃てる!?」

マリューは主砲でナスカ級を撃つことを思いつくが、

「駄目です。先遣隊が射線にいるため、撃てません!」

「くぅ、MSの働きに期待するしかないの!?MSを発進させて!」

「了解。MS各機、敵はナスカ級、ジン3、シグー1、イージスです!Gはイージスを優先的に狙ってください。試作イージス、カタパルト接続、発進スタンバイ、システムオールグリーン、進路クリア、試作イージス発進どうぞ!」

(敵の戦力が増えている!?これは俺がいることの影響か、ならその責任は取るさ!)

「ショウヤ・ナカノ、試作イージス、出る!」

ショウヤは敵戦力、シグーがいることを確認し、自らが存在することにより起きたことは自分で責任を取ると気負い、戦場へ向かって行った。

「キラ!先遣隊にはフレイのお父さんがいるんだ。頼む」

「わかった」

サイの通信にキラは一言返した。自らがすいているひとの父親、自らと結ばれることはないと知っているがそれでも好きな人のためにできることがしたいとキラは意気込む。

「続いて、ストライク、カタパルト接続、ストライカーパックはエールを装備します、システムオールグリーン、進路クリア、ストライク発進どうぞ!」

(でもそのためにはイージス、アスラン………また君と戦うことになるのか。僕はどうすればいいんだ)

「キラ・ヤマト!ストライク、行きます!」

目的のためにはアスランが乗っているだろうイージスと戦わなければならないことを思い、キラは心が乱れたまま戦場へ向かっていった。

「続いて、ジン、カタパルト接続、発進スタンバイ、システムオールグリーン、進路クリア、ジン発進どうぞ!」

(くそ、機動戦はまだ無理だってのに!)

「ムウ・ラ・フラガ!ジン、出るぞ!」

MSに乗れることは乗れるが、機動戦を行うことはできないフラガは無理を押して発進していった。







一方戦況は一機にザフト優勢になっていった。

イージスとシグーが遠距離からの砲撃で先遣隊の護衛艦、バーナードとローを文字通り瞬殺してしまったのだ。

(いい機体だ、シグーディープアームズ。ザラ国防委員長には無理を言ったが、持ってきてよかったよ)

シグーディープアームズ、シグーの火器試作型。シグーにザフト製BライフルとアンチBコーティング処理を施したシールド、ザフト製Bサーベル、そしてレールガン2門を装備した機体だ。全ての距離で戦える機体。もっともレールガンは両門合わせて6発と装弾数は少なく、ビーム兵器は連合製よりエネルギー効率が悪い。しかし総合力ではGに匹敵するだろう機体だ。

そして乗っているのはザフトのエース、ラウ・ル・クルーゼ。

(これならあの剣士とも戦える。くくく、さあ、私を楽しませてくれ!)

深い絶望の中に戦いへの歓びを見出したクルーゼは、その思いをこの世界の異分子へぶつけようとしていた。

「くそう、なんて強さだ、時間を稼ぐことすらできないのか」

戦局が開かれてすぐに護衛艦2隻を失い先遣隊は混乱していた。技量の低いパイロットが乗るMAは12機もいたがみるみる内に半分を切った。このままではアークエンジェルもまずいのではとモントゴメリの艦長は頭を抱えているジョージ・アルスターを横目に危惧していた。しかし、その予想を覆す光景が映し
出された。

「そこだ!」

その速度を活かし、戦場へ突入したショウヤはジンを撃ち落としたのだ。

「イージスはどこだ!」

ショウヤがこの戦場で一番厄介なMSを探すが、それを狙っているMSがいた。

「君の相手は私だよ!」

シグDから試作イージスにビームが放たれる。

「っち、イージスか?!」

ショウヤはそれを難なく防ぎ、ビームが放たれたことからイージスと思い込むが、

「シグー!?シグーのカスタム機か!、そして、この感じはラウ・ル・クルーゼ!」

シグーDを見ると一瞬動揺する、しかしシグーDからクルーゼの存在を感じ、すぐに冷静になる。

(クルーゼとカスタム機、これはまずいな)

「しかし、落として見せる!」

ショウヤは弱気をはじくように声を出し、試作イージスはシグーDへ向かっていく。

     (解り合おう)
「そうだ、 殺しあおう じゃないか!」

互いに高機動で移動しながらBライフルを撃ち合い、それを避ける、シールドで防ぐ。まったくの互角に見える。しかし、

(射撃は負けてる、機動戦も奴がやや上か!)

ショウヤは自らが負けていることを自覚していた。

シグーDは試作型のレールガンを装備しているのだ、これは装弾数と重量がネックになっている。シグーは機体が重くなっている。つまり機動性では試作イージスに負けているのだ。しかしシグーDと試作イージスは高機動戦で互角に戦っている。これはクルーゼの実力がショウヤより上だということに他ならない。

そして射撃に関しても、コックピット部分のみを狙うのではなく、シールドで防ぐ際に足や頭部などをわざと狙うときがあり、ショウヤを揺さぶってくるのだ。

(ならば、接近戦へ持ち込む!)

接近戦なら負けないとショウヤはシールドを盾に強引に接近戦へ持ち込む。この時は試作イージスの機動力とショウヤの敵へ接近する巧さが勝り、両者の距離が詰まる。

試作イージスはBライフルをマウントし、コテツを抜く。シグーDもBライフルをマウントし、Bサーベルを抜き、ビーム刃を伸ばす。

試作イージスは間合いを一気に詰め、コテツで斬撃を放つ。振り下ろし、横薙ぎ、切り上げを次々に放っていく。次第にシグーDは防戦一方となっていく。

「ちぃ!やるな!」

怒涛の連撃にシグーDが隙を見せる。

「そこだ!」

ショウヤはそれを見落とさず、試作イージスがコテツをシグーDに振り下ろした。

「だが、まだ甘い!」

クルーゼはシグーDにできた隙を理解しており、ショウヤがそれをついてくるのがわかっていた。シグーDは試作イージスが振り下ろそうとした右腕にシールドをぶつけ、そのまま押しつけたのだ。斬撃を防ぐため、シールドでコテツを防げば、コテツはAシールドだろうと斬ってしまうため、この様な手段で防いだのだ。タイミングが間違えば死を意味するが隙ができたところを狙ってきたため、タイミングが読みやすくなった、もちろん成功させたクルーゼの実力もあってのことだ。

「何!」

ショウヤは動揺し、一瞬判断が遅れる。

「どうだ!」

シグーDは逆に隙ができた試作イージスへ向かってBサーベルを振り下ろした。

「ならば!」

ショウヤは斬撃が来るのを感じた瞬間、防がれた方法と全く同じ方法を閃いた。そしてそれを反射的に実行した。試作イージスはシグーDが振り下ろそうとした右腕にシールドをぶつけ、そのまま押しつけたのだ。それは先ほどの焼き増しと言えるほど同じ行為だった。

「やるな!」

両者、どちらも武器を持つ腕が動かせない、レールガンは両肩についているが超接近戦のため放てない。

総合で勝っているクルーゼ、得意の接近戦で差を埋めようとし、なおかつ戦闘中に眼に見えるほど成長していくショウヤ。

「そうだ、君という灯が大きくなっていくのがわかる。君を成長させるのも、そして灯を消すのも私のものだ。誰にも譲らないさ!」

「俺は俺だ!お前の思惑なんて知らない!斬り捨てる!」

異常なまで認識能力が増大し、互いを理解していってしまう。

しかし互いにここが決戦の時ではないと理解してしまい、損傷してでも相手を倒すというほどの捨て身にはなれず、互いに隙を作ろうとするものの決定打に欠き、ショウヤとクルーゼの戦いは膠着状態になりつつあった。

(ジンは2機、フラガ大尉とアークエンジェルが応戦、これはこちらが優勢。モントゴメリはナスカ級を相手、ジンを攻撃する傍らアークエンジェルが援護をしているため互角。ストライクはイージスの相手、これは例によって互角。戦局はややこちらが有利、このままいけばナスカ級も撤退するはずだ。このままドローに持ち込む)



[17882] 11話 下
Name: you◆cf6d9fbb ID:32692406
Date: 2010/12/14 06:56
ショウヤ[試作イージス]がラウ[シグー]と戦っている宙域とはモントゴメリを挟む形で逆側の宙域でキラ[ストライク]がアスラン[イージス]と戦闘していた。

前回の戦闘とは違い、通信で話すことはしていないが、互いに相手が誰であるかを確信していたため、ショウヤ[試作イージス]とラウ[シグー]のような死闘とは違い、高機動戦だが命中率が全くない戦いであった。

キラは短期間だが訓練を積むことによって戦闘技術が幾分か上昇し、さらにストライクのOSを自分専用にカスタム化している。アスランはキラより経験があるが、イージスにそれほど慣れていないため、両者の実力はややアスランに優勢な形で拮抗している。

はたから見れば高機動戦のため命中率が悪く、互いに決定打に欠ける互角の戦いと見えるが、エースレベルのMSパイロットが見れば、互いが牽制をしているだけとわかる。

互いにエースになれる資質を持っているが、どちらも精神の状態が悪く、まるで作業をしているかのような戦闘だ。

(フレイのお父さんを助けるには、アスランを撃たなければないのか!?どうすればいいんだ!?)

キラは好きな娘の父親と幼馴染で親友であった少年、どちらかを切り捨てなければならない状況に。

(キラ、俺は…お前を撃たなければならないのか!?どうすればいいんだ!?)

所属する国や現在の友人、知り合いたちとアスランは幼馴染で親友であった少年、どちらかを切り捨てなければならない状況に。

互いに何かを切り捨てなければならない状況が二人から冷静さを奪っていき、二人は自分たち以外の状況を把握せず、ただBライフルを撃ちあっていく。

それはこの宙域の戦闘では、主力であるイージスを足止めできるため連合へ有利な形へ戦局を持っていった。














「機動戦は無理だが、Bライフルを撃つ程度ならできる!そこだ!」

ショウヤの死闘、キラの葛藤をよそ眼にフラガはジン二機を相手取り戦闘をしていた。

ザフトの主力MSが釘づけになっており、ジンでは互いの戦闘に介入しづらいほどの激戦のため、残ったMSを討とうとジンがフラガへと突撃してきたのだ。

「ジンを使用している!?裏切り者の分際でジンを使用するなど!」

ジンのパイロットは噂に聞く連合のコーディネイター、裏切り者と思い激昂する。

Gならば連合製のMSのためナチュラルが使用してもおかしくないが、ジンで戦闘ができるのはコーディネイターの証みたいなものである。それはコーディネイターとしてのプライドだと言ってもいい。それを怪我された怒りは判断力を奪う代わりに苛烈な攻性を与えた。

怒りからか、やや直線的な傾向で機銃でフラガを狙う2機のジン。

フラガは直線的になり軌道が読みやすくなっていくジンを、一方はBライフルで牽制し攻撃をさせず、一方は機銃をシールドで防いでいた。いくら猛攻しようとジンの装備ではカスタム・ジンには勝てない。

(やれる!このクルーゼのような奴じゃなければ、この装備ならなんとかなる)

その思いは集中力を高め、特殊な空間認識能力により相手の機動の先を読んでいく。

シールドで機銃が防がれていたジンがは弾切れになったのか重斬刀に持ち替え、ジン・カスタムへ突撃していく。

しかし、機動を読まれ、

「感じる、そこだ!」

カスタム・ジンがやや態勢を崩しながらも放ったBライフルの餌食となってしまう。

「裏切り者がぁ!」

残ったジンのパイロットは同僚を撃たれ、怒りのままカスタム・ジンへ突撃していく。

カスタム・ジンは態勢が崩れたところへ一気に距離を詰められるが、

「甘い!」

右肩のコンボウェポンポッドの対艦ミサイルを放つ。

「何!?」

ジンのパイロットは驚くが、しかし回避する。

「これで!」

しかし、回避する軌道を感じていたフラガはBライフルを放つ。

「うわぁぁぁぁ!!!」

カスタム・ジンの銃口から光が見えた瞬間、ジンのパイロットはコックピットの中で恐怖から反射的に手で身を守ったが、一瞬で蒸発し、この世から消えた。

「ふぅ~やったぜ」

MS対MSでの初戦闘でジンを2機も落としたフラガ。しかし緊張がとけ集中がやや切れてしまう。まずは状況を確認しようとアークエンジェルへ通信しようとしたその時、

「撤退か!?」

ヴェサリウスから信号弾が放たれ、イージス、シグーが撤退していく姿がカメラに映った。













MSが互いに死闘を繰り広げているとき、艦対戦が行われていた。

最後の護衛艦もナスカ級の主砲で沈み、モントゴメリがナスカ級ヴェサリウスに狙われていた。味方が前方にいるためアークエンジェルはアンチビーム爆雷や、ミサイルでモントゴメリ援護しながら射線を取るため移動していく。これはザフトが短期間にこの状況を打開しなければ連合が勝利(最低目標はアークエンジェルが生き残ること)することになる。それどころか撤退どころを間違えればザフトはここで全滅することになる。

ヴェサリウスの艦長アデスはじっとりと嫌な汗をかきながらも冷静に状況に対応していた。

しかし、ジン2機が撃墜されたことにより戦況が悪くなり、声を荒げ命令する。

「撤退する!信号弾を撃て!」

信号弾が放たれ、即座にイージスとシグーが撤退していく。

「撤退してくるMSを援護しろ!MSの着艦後宙域を最大船速で離脱するぞ!急げ!」









「撤退か、今日はここまでのようだな。次に会う時は私も機体性能を互角の機体にしておこう。その時は存分に死闘を楽しもうじゃないか」

ヴェサリウスからの信号弾を確認したクルーゼは仮面の下で歪んだ笑みを浮かべながら、試作イージスに背を向け一気に宙域を離れていく。一見すれば隙だらけだが、ショウヤはBライフルでシグーを狙おうとはしなかった。その余裕がなかったのだ。

クルーゼとの戦いはショウヤのパイロットとしての能力をレベルアップさせたが、体力、精神力をごっそりと奪っていったのだ。戦闘継続の限界を迎えており、むしろ助かったのはショウヤの方だった。

(助かった………機体が互角だったら間違いなく俺は死んでいたな。奴は死ぬことに恐怖してない、それどころか楽しんでいる、それが集中力となりあの能力、疑似ニュータイプとでもいうべきだろうか、それをさらに強くしている。この戦いで俺はまた強くなった。そしてもっと強くなれる…だが死を恐怖している俺が奴を倒すことができるのだろうか?)

はぁはぁと息が切れるほどに呼吸しながらも、この戦闘で手ごたえを感じ、自らの能力を自覚する。しかし強くなったことにより、クルーゼの強さを感じてしまいショウヤは弱気になった。ショウヤは究極的には死にたくないゆえに戦っているのだ。それゆえに自らではクルーゼを倒せないのでは?と思ってしまうのだ。

まだ戦闘は完了していないのにもかかわらず、ショウヤは考えごとをしてしまう。戦闘が終わりに近く、また疲労から気が緩んでいたのだ。しかし戦闘はまだ終わったわけではなかった。油断、それをショウヤは経験することなる。

「イージスも撤退か…これで」

撤退していくシグーとイージスを見て気を緩めるショウヤ。撤退を確認するまでは戦闘中だと、モントゴメリを護衛する形へ試作イージスを移動させる。

しかし、警戒のため試作イージスとモントゴメリをカメラに写していたイージスのコックピットでアスランはストレスが限界まで達し、怒りからキレてしまう。それはSEEDこそ発動させていないがアスランの実力を発揮させることになる。

「お前たちのせいで!キラは!俺は!」

瞬時にMA状態へ移行し、試作イージスへスキュラを放つ。射程範囲外からの砲撃なのだが、それを力技でカバーし、試作イージスへの直撃コースとなった。

「しまった!」

ショウヤがMA状態に変形するイージスを見た瞬間に反射的に操作し、試作イージスはとっさにシールドで防ぐ態勢になる。

シールドが焼けていき、熱量の限界になるが、何とか防ぐことに成功した。次の瞬間、アラームが響くと同時にシールドが砕ける。

「何ぃ!」

衝撃に耐え、カメラを見たショウヤ。しかしその瞬間背部から爆発を感知した。モントゴメリが撃墜されたのだ。

「一体なにがあったんだ…」

カメラにはMA状態で灰色になっているイージスと、シグーが撤退していく姿が映った。ショウヤは呆然とそれを見ていた。







モントゴメリが撃ち落とされる瞬間をアークエンジェルのブリッジクルーとそしてフレイは見ていた。ファザコン気味のフレイは心配のあまりブリッジへ乱入してきたのだ。

撤退していくシグーとイージスがカメラに写り、父が助かったのだ、と安堵していた瞬間、フレイの目の前でモントゴメリが爆散した。

「いやぁぁぁぁぁ!!!!」

フレイは父が死んだと理解した瞬間、絶叫を上げ、気絶した。サイが倒れたフレイを抱きとめ、衛生兵を呼ぼうとしている。

「サイ君、フレイさんをお願い。バジルール少尉、状況を確認して!」

マリューは混乱しながらも状況を確認する。

「…イージスが反転後、射程外からスキュラを試作イージスに。さらに射程外からシグーがレールガンを試作イージスに撃ちました。試作イージスはシールドが砕けましたが、射線がずれていたため衝撃で二射目の射線から外れました。しかし後ろのモントゴメリに当たり、モントゴメリは撃沈。生存は…まず無理でしょう」

「射程外から命中させるなんて…」

マリューは驚いている。しかしこれはパイロットの技量もそうだがそれ以上に運がよかっただけだ。しかしその運が何百と言う人を殺したのだから馬鹿にはできない。

「…MS着艦後、第一種戦闘配備を解除、警戒しつつ第八艦隊との合流場所へ進路をとってナスカ級がレーダーの範囲外へ出たら警戒を解除してそれぞれ適宜休憩して」

気落ちしながら命令を下すマリュー。

「ヘリオポリスの学生たちはフレイさんについていてあげて」

目の前で父親が死んだのだ。その原因の一端には自分たちの力不足があると感じ、マリューはフレイへ罪悪感を抱いた。もっともこれは戦場へ民間人が出てくること自体が問題でもあったのだが。

フレイがサイ達に連れられて出ていくのを正規のクルー達は落ちこみながら見ていた。まだ若いクルー達はこの艦を運用している中心である自分たちに力がないせいだと多かれ少なかれ感じていたのだ。原作ではアークエンジェルを見事に運用していたクルー達だが、それはこのような犠牲に責任を少しでも感じ、自分のため、そして友軍のために少しでもできることをと努力していった結果だったのだ。それはこの史実で同じだった。彼らは史実に負けない実力をつけていくことになる。

試作イージスをアークエンジェルに着艦させた後、ショウヤは落ちこんでいた。自らのミスのせいでモントゴメリが沈んだのに気が付いてしまったのだ。

(モントゴメリの前方に移動する!?そんなことすれば俺が攻撃されたらよけられない!だから少しはなれた宙域から、当たらなくてもいいからBライフルで余計な真似しないように牽制していればよかったんだ。モントゴメリが沈んだのは…俺のせいだ)

自らのミスで何百と言う人が死んでしまった。撃たれたから撃った、死にたくないから殺した。それとは違う責任感、罪悪感がショウヤを覆っていた。



[17882] 12話
Name: you◆0576a7d3 ID:bc36e14f
Date: 2011/07/11 11:53
ショウヤは落ち込みながらも、イージスから降りた。今のままではただ思考が散乱するだけと考え、まずは業務をこなし、その自室で考えることにした。

(このままだとただ時間を無駄にしてしまう。反省するなり落ち込むなりするのは後だ)

しかし、部屋に戻る前に、ヘリオポリス組に出会ってしまう。

「あんた、コーディネイターだからって、本気で戦っていなんでしょ!」

フレイの発言に傷つくキラ。

「違う。君の父、アルスター事務次官が死んだのは俺のせいだ」

キラが走りだして逃げ出そうとする前に、ショウヤは言った。

原作のことを考えての発言ではなく、自らの油断、ミスで友軍を死なせたことに対して、無意識に罰を求めていたからだ。

「ナカノ少尉」

 突然の発言にヘリオポリス組は驚く。

「なんでよ?だって……」

「俺が油断しなければ、死なずに済んだんだ。戦闘で疲れていたのもあるし、まだMSでの戦術が練られていないのもある。だが、最終的に俺が判断を誤らなければ、ああはならなかった」

「そんな……」

「だから、なじるなら、俺をなじれ、キラは確かに本気で戦えていないかもしれないが、民間人だから当たり前だ。いくら正当防衛でも積極的に人を殺そうとするのは、無理だろう。責められるべきは俺達、軍人だ」

「…私だって、わかってる。今は戦争中で、連合が不利だって、でも、だからってパパが……パパが…なんで死ななくちゃいけないのよ!?」

フレイもわかっているのだ。父を殺したのはザフトで、この艦にいる人間を責めるべきではないと、しかし、それでも、誰かに当たらなければ行けないほど、心が引き裂かれそうでつらいのだろう。

「ああ、自分達が不甲斐ないせいですまなかった」

「……ごめんなさい、軍人さんに当たって。悪いのは、ザフトなのよ……」

(ザフト、そうだ、ザフトがパパを殺したんだ……ザフトは許さない。でも、私には力がない……ナチュラルではコーディネイターに勝てない……待って、ナカノ少尉?はコーディネイターより強いって、なら、この人を目標にすれば私も……)

「すまなかったな。じゃあ俺は、まだ仕事があるから、これで。キラ、気にするな、アルスターさんもそれだけ参っていたんだろう。おまえは良くやっているよ。イージスだけでも足止めしてくれたんだ。それだけで助かってるよ」

「ありがとうございます」

(でも、僕は…)

キラは、フレイの言うとおり、アスランのことがあって本気では戦えていなかったのだ。しかし、本気で戦うということは、親友であったアスランのことを切り捨てるということだ。

アスランか、アークエンジェルの仲間たちか、どちらも選ぶことができなかった自分の迷いが、ジョージ・アルスターを殺したのだと、キラは思っていた。

それは小さいが確かに、ジョージ・アルスターが死んだ原因の一つだった。それがわかるゆえにキラは罪悪感を抱いてしまう。ショウヤはキラの思いを理解していたが、友軍が死んだ原因の一因が自らのミスだと思っているため、キラの罪悪感を消すことはできなかった。

「すまないが俺は部屋に戻る。ラクス嬢の監視、警護に戻らなくてはいけないからな」

「はい……」

(復讐する力を……)

自室へと戻っていくショウヤは、原作を知っていてなおフレイの心に芽生えた復讐心に気づくことはできなかった。
















 シャワーを浴び着替えたて、先ほどの戦闘に関する報告をマリューへと行い、ショウヤはラクスを軟禁している部屋へと向かった。

「ショウヤ・ナカノです。ラクス・クライン、部屋に入りますよ」

 一言断り、部屋に入ると、ラクスとショウヤの代わりにラクスの監視、警護をしていた女性の衛兵がいた。

「ショウヤさん。無事だったのですね」

「ええ、ラクスさん。警護ご苦労だった。通常の業務へ移ってくれ」

「はっ」

 戦闘という非常時のためにラクスの監視、警護をしていた女性の警備兵は敬礼をして部屋を出て行った。

「これでまた二人っきりですわね」

(嬉しいのですが、ショウヤさんの表情が暗い、先ほどの戦闘でなにかあったのでしょうか?心配ですわね、でもこれは同時にチャンスでもありますわ。ここでショウヤさんを慰めてあげれば、好感度が上がるかもしれません、慎重に話す必要がありますわね)

「どうかなさいましたの?」

優しく問いかけるラクス。その声はとても優しく、すべてを話してしまいそうな魔性があった。

(はぁ~。この際ラクスにでも話すか。さすがに詳しくは話せないが、気分転換にはなるだろ)

いつもなら原作を知っているがゆえにラクスを警戒するショウヤだが、先ほどの戦闘でのミスで落ち込んでいるため、警戒心が薄れていた。

「先ほどの戦闘で、自分のミスで友軍が目の前で撃たれね。さすがに堪えたよ」

「それは、お悔やみ申しますわ」

「もう済んだことだから、落ち込む暇があったら反省して、今後につなげなければとはわかっているんだけどね……」

「ショウヤさん、それがわかっているなら大丈夫ですわ。今はちょっと落ち込んでいるだけで、一眠りでもすればきっと前へ進むことができますわ」

「そうかな?」

「ええ、ショウヤさんなら大丈夫ですわ」

(何の根拠もないが、そう言われると、そんな気がしてくる……ラクスってなんというか、落ち込んでいるときとか男の慰め方がうまいよなぁ。原作でもニートキラを支えたりしてたし、種死だと戦争とかに巻き込まれなければ良妻賢母って感じで一生を過ごしたっぽいよなぁ。そう考えるとラクスとキラって原作の被害者だよなぁ)

ラクスの思惑は成功し、ショウヤはラクスへの警戒心を薄めていった。

(ふぅ。落ち込んでいても仕方ないか。原作からするとまだ戦闘があっただろうし、それにハルバートン准将が死ぬのはきつい。准将が死ねば原作のような予定調和がない限り最悪月基地が落とされて、宇宙の兵力がすべて潰されてしまうかもしれない。それに残った将兵が使えなさ過ぎる。勝てるものも勝てなくなりそうだ。盟主王が原作で指揮を取っていたのもそれが理由っぽい。NJCのおかげで核兵器で一気に侵攻したけど、この世界ではどうなるかわかったもんじゃないし、連合の勝利で戦争を終わらせるには……ってこんなことを考えていても一兵士の俺じゃあ意味がないな。俺にできることはとにかくMSで敵を討ちまくることぐらいか。そうすれば盟主王が何とかしてくれるだろ)

「ショウヤさん?」

「おっと、すみません、ちょっと考え事をしていました」

(それだけ気を許してくれているということなのでしょうが、いい気はしませんわ。でも何を考えていたのでしょうか?)

「何を考えていらしたの?」

「あ~、この戦争がどうすれば連合の勝利で終わるか、かな?」

(こんなことを話しても仕方ないんだけどなぁ)

そう思いながらもショウヤは素直に話した。いろいろあって疲れているショウヤは内心かなりハッチャていた。

(この話題、うまく使えば私を連合に売り込むと同時にショウヤさんの関心を引けるかもしれませんわ)

「連合の勝利で戦争が終わるか、ですの……。ですが、この戦争に落としどころがあると思いますか?和平はまず無理でしょう。それこそ文明が大きく衰退するような事態にならないと和平はありえないと思いますわ。次にどちらが勝っても、必ず遺恨は残ります。敵対勢力を全滅させるなども無理でしょうし、そもそも連合の勝利とはどのような状況を指すのでしょう」

(いきなりシリアスな雰囲気になったな。これが原作での意味不明なラクスのシリアスモードか?真意がわからないが話をしてみるか)

「連合の勝利、か。そういわれると難しい。まずはプラントの武装を解除させるほど、戦力を削ること。そして、プラントのコーディネイター至上主義派の壊滅、かな?」

「ですが、そう簡単にコーディネイター至上主義派が降伏をすると思いますか?彼らはそれこそ降伏するくらいならプラントを地球へ落とすこともするかもしれません」

(うまく会話を誘導するには、まずは…)

「それは、ありえそうですね…」

(実際に原作で起きたからなぁ。しかもアニメだとプラント、議長の支援で。まぁ後付設定で関与していないとかなってたけど)

「そうですわね。連合の勝利なら先ほどの条件は必須ですが、それとプラスして、プラントの穏健派をプラントの最大勢力にしなければいけませんわ。コーディネイター至上主義派を倒そうとしたところで、穏健派ごと特攻してしまえば、それこそ総力戦になり、勝利したとしてもおそらく文明が大きく衰退するような事態が訪れた後になると思いますわ。だから、最悪プラントを二つに割ること、これがなせないと和平も降伏もありえませんわ」

(私が穏健派と渡りをつけれる。または穏健派をまとめらるとなれば、私の聞いた通りのブルーコスモスの現盟主なら、きっと接触があるはず。そのときにショウヤさんをアピールできれば、もしかしたら…)

「それはまた、プラント側のラクスがそこまで言うとは……」

(これがラクスの本性?なのか。今までが演技?わからん……原作の設定でどっちも本性とか聞いたことがあるがそれっぽいな)

「確かに私はプラントに住んでいますし、故郷のようなもので愛着もありますが、今のプラントは、コーディネイター至上主義が蔓延し、ナチュラルに対する歪んだプライドを持ち、歪な社会を築いています。出生率の問題もクリアできず、婚姻統制もうまくいっていません。きっと戦争に勝っても自滅していくだけでしょう」

(そう、だからプラントとショウヤさん、私に支配されるべき生まれてきたような存在感を持つコーディネイターが作った歪な社会のプラントと、私が今まで感じたことのない存在感を持ち惹きつけてやまないつショウヤさん、どちらかを選ぶなら、私はショウヤさんを取る)

「たしかに、それは感じていた。プラントに未来はない、と。コーディネイターの未来と言うなら、別に連合や中立国に少数だがいるし、プラントの勝利=コーディネイターの勝利ではない」

(俺の結論と同じ、か。原作だとそれプラスあまりに非道な手段をとりすぎる連合も見限ったから種死のような終わり方、ラクスマンセー的になったのか?)

「ええ、そのとおりですわ。ですから、私としては連合の勝利=プラント穏健派の勝利にするべきだと思います。例えば……穏健派の亡命、とかはどう思います?」

(そう、ショウヤさんを結ばれるならまずは私が連合で一定の地位を得なければいけない。おそらくこの方は連合を裏切ることなどしませんから、私が連合、もしくは穏健派の代表的な地位にいなければならない。亡命ならうまくすればプラントの私のカリスマのような力の影響下にあるコーディネイターも連れて行ける。私がいれば彼らも御せるだろうし、この案なら、最高のタイミングで裏切れば連合の勝利へ一気に傾きます。それこそプラントが全くの無力になるほどに。もっとも保険も必要になりますが、連合に裏切られたら話しになりませんし)

「亡命、しかし歪んだプライドを持つプラントのコーディネイターがそんなことをすると思うか?ラクスのような達観した人間なんていないと思うが?」

(亡命?本気なのか?わからないが、うまくすればダークホースであるラクスを連合に引き入れることができるかもしれない。とはいってもラクスを御せる人間がこの世界にいるとは思えない。原作でもキラはなんか洗脳っていうか謎のカリスマの影響下だったし、まあ連合ならオーブのように乗っ取りに近いことは起きないと思うが)

「それは大丈夫だと思いますわ。ザフトが敗戦を重ねればプラント穏健派の中には、コーディネイター至上主義を見限って、少数であれどプラントの穏健派を生き残らせるために活動する人が必ず出てきます。今は連戦連勝しているから、プラント内でイケイケになっているだけですわ」

(それがコーディネイター至上主義派を勢いづかせている理由でもありますし。血のバレンタインもプラントが策謀をめぐらせた結果といえなくもないですし、真実に近いものを悟っている人達はこの戦争の無意味さを知っているはずですしね)

「そうなれば敗戦の理由を穏健派のせいにする可能性がある。そうなれば穏健派の一勢力が亡命することもあり得る、か?」

(アニメでもそういうシーンがあったしなぁ。あり得るかもしれない)

「可能性としてはありますわね。ふう、つい話し込んでしまいましたわね。休憩しませんか?」

「そうだな」

二人はお菓子やお茶で一服することにした。






後にショウヤは驚くことになる。このときのラクスの言葉が現実になることを、そして世界の状況を自らの望みに近いものにするラクスの力に。



[17882] 13話
Name: you◆0576a7d3 ID:600e2147
Date: 2011/07/11 11:53
(ラクス・クライン、か。アニメではよくわからないキャラだったが、現実になってもわからない少女だった)

カタカタとキーボードを動かし、試作イージスのチェックを行ないながらショウヤはラクスのことを考えていた。

(高いカリスマを持ち、社会の汚い部分を見てきたからかものすごく考え方が達観している。それこそ自分に危険が及ばなければ世界で紛争が

続いてもいいとすら考えている)

ラクスとの会話を思い出しながら、ショウヤはキーボードを動かし続ける。

(敵にしたら、原作と同じようにわけがわからない力が恐ろしいが、敵対しなければ何もしない、か。デュランダルってラクスが隠遁生活して

たのに暗殺とかしてたよなぁ。あれって余計なことだったのでは?)

『ピー!』

「おっと!」

考え事をしながらキーボードを動かしていたからか、ショウヤはチェックが終わったことに気が付かなかった。そのため、ビープ音が鳴りいき

なりのことにびくっと反応した。。

「特に問題はない、か。強いて言えば変形機構を無理やり改造したため一部のパーツの損耗が激しいことぐらい、か。実戦でのしかわからない

稼動データってやつか」

データを見ながら一人こちるショウヤ。しかしその損耗も後数回の戦闘は耐えられる。

「少尉!終わりましたかい!」

マードック軍曹がショウヤへと声をかける。

「ああ、特に問題はない。基地に着くまでは戦闘できるはずだ」

コックピットへと入ることができる高さで、またMSを固定しているブリッジへとコックピットから出て、マードックへと報告する。

「そうですかい。今回の戦闘で一番激しかったのは少尉ですし、今までの戦闘のこともありましたからね。一応今整備できるものはやっておき

ましたが、フレームの歪みとかは直せそうにないですぜ。ま、もう少しで基地へ着きますし、戦闘もあって1回あるかどうかってとこじゃない

ですかい?」

「そうだな。他の機体はどうだ?」

「問題なしですぜ。改造ジンもパーツはないですが、まだ数回は戦闘できますし。ストライクは消耗が噴射剤とバッテリー、シールドぐらいで

したから。それにしてもあの改造シグー、データを見せてもらいましたが、エースが乗ってたってのもありますが、かなりの機体でしたね。ザ

フト製BライフルにBシールド、そしてレールガンですか、連合製の劣化品って感じでしたがあれがすぐにでも量産されたらGでもかなりきつい

ですね」

「そうだな。だが、ザフトも早々新機体を量産できないさ。当分はジンや今までのMSが相手になるはずだ。それまでにデータを揃え、MSの戦術

を整えないとな」

「ま、少尉なら大丈夫ですぜ。あの改造シグーとの戦いはすごかったですからね。ありゃ~痺れましたぜ」

「そうか?」

(たしかに死闘だったが、まだ奴のほうが強い。もっと強くならなければ生き残れないし、友軍を助けることすらできない。余裕がない人間は

何をしても駄目になっていく。戦争中だから仕方ないが、それでも少しでも強さに貪欲にならないといけない)

ショウヤは強くなることへ執着し始めていた。それは自分を守るだけでなく、自らの力がないせいで死ぬ人を減らすためでもあった。自分を犠

牲にしても誰かを助けることなどはしないが、それでも助けられるものは助けたいと思っていた。軍事として甘い部分があるが、それは人とし

ては当然の考え方だった。もっとも上からの決定に逆らうほどの気概も持っていなかったが。

「とはいえ、まだまださ。もっと強くなれる。そのためには訓練あるのみ、か。フラガ大尉とキラはどうしている?」

「ああ、大尉が坊主を誘って、シミュレータで訓練してますぜ。少尉も参加するんで?」

「ああ、そうする。じゃあ軍曹、整備助かった」

「いえいえ」

ショウヤはフラガ達へと合流するため、宙を浮いて移動していった。















(さて、あの感覚を早くものにしなければな。擬似ニュータイプと言うべき能力。アレはもっと強く速く実戦で使用できるはずだ)

クルーゼとの戦いを思い出しながら、移動していくショウヤ。そんなショウヤへと近づく人影があった。

「軍人さん!話があるの!」

赤い髪の少女、フレイ・アルスター。彼女は何かを決意した表情でショウヤへと話しかけてきた。

(なんだろうか?原作ではこんなことなかったし、彼女は何を考えているんだろうか?)

疑問に思いながらも、彼女の父親が死んだのは自分のミスが原因と思っているショウヤは対応するつもりでいた。

「何か用かな?」

「……私をMSのパイロットにしてください!」

「………え?」

突然のことに固まってしまうショウヤ。

(ちょっと待て!原作ではこんなことなかったぞ!?どうしてこんなこと……そうか、原作だとコーディネイターに対抗できるのはコーディネ

イターと思いキラを利用しようとしたが、ここでは俺が、ナチュラルがMSを動かしている。たぶんフレイ・アルスターは復讐は自分の手でと考

えているんだろう)

呆然としながらもフレイの心理を見抜くショウヤ。

(…どうしようか?二次創作とかだと実は才能があるって、そういえば原作だと元々彼女はMSパイロットになる設定だったか?俺の一存では決

められない……まずはフラガ大尉に相談するか、ラミアス大尉はなんかストレスで胃痛になってるっぽいし、余計な負担はかけないほうがいい

か)

「それは軍人になるってことかな?」

「そうです!お願いします!」

頭を下げるフレイ。ショウヤは原作からこの少女にあまりいい気を持っていなかったが、復讐のためだろうが真剣になっているフレイを見て、

考えを改めた。

「とりあえず、フラガ大尉に相談してみよう。自分の一存じゃ決められない。いまから合流する予定だから一緒に来てくれ」

「わかりました」

ショウヤはフレイを連れ立ってシミュレータまで移動する。

(そういえばここは民間人が入れないはずだが、まぁいまは人手が足りないから警備もできていないのか?万が一があるし衛兵に言っておこう



ショウヤは後ろにフレイがついてきているのを感じながらそんなことを思った。






ショウヤがシミュレータに近づくと、二人は訓練を終わったのか一服していた。

「フラガ大尉、おはようございます」

「ショウヤか、よっす」

「ナカノ少尉、おはようございます。あれフレイ?」

フレイを見て驚くキラ。それはそうだ、フレイは結構わがままだし、ミリタリーマニアでもない。こんな場所には呼ばれてもそうそう来ないだ

ろう。

「大尉、ちょっと相談がありまして」

「その嬢ちゃんのことか」

当然フラガも気づく、というよりそれ以外に原因がない。

「はい。フレイ・アルスターがMSパイロットに志願したい、軍へ入隊する、と言ってます」

「それはまた…キラ、嬢ちゃんにシミュレータの使い方でも教えてやっていてくれ。遊び程度の難易度でいい」

フラガは二人をシミュレータに釘付けにしておき、少し離れた場所でショウヤ話し合うことにした。

『大尉。理由は復讐とかでしょうけど、ここで駄目となったら何をするかわかりませんし、どうしましょうか?理由もなく軟禁とかもできない

ですし』

『あ~、確かに騒動が起きそうだしなぁ……なら適正を調べて、適性があるなら訓練ってことでシミュレータの使用許可だけでもできるように

して、臨時での志願兵、ヘリオポリスの学生と同じようにしておくか。MSなんかも正式に入隊するまでは触れないように、だれかに面倒を見て

もらうか』

『それがいいですね』






二人がそんなことを話し合っていると時、キラとフレイはシミュレータの使い方について話していた。

「で、このペダルでブーストを使って、このペダルを同時に押せば、前へ移動できる……うん、そう、そんな感じ。そのとき操縦桿で左右への

方向転換ができるし、ペダルを素早く連続で踏めばレバーの方向へクイックブーストができる……あのさ、どうして志願なんてしたのか聞いて

いい?」

キラはためらいながらもフレイへ問いかけた。内向的なキラは社交的で活動的なフレイに憧れていた。そんなフレイが軍へ志願するなんて思わ

なかったのだろう。好きな娘だからこそ理由を聞きたかったのだ。

「……はっきり言えば復讐ね。パパを殺したザフトへの、ね」

(キラはナカノ少尉ほどではないけど強いって話だから、ちゃんと話して私の味方になってもらおう。今の私は無力すぎる。少しでも力を得る

にはキラにも協力してもらおう)

フレイは原作と違うが、同じようにキラを利用しようとしていた。もっともそれは原作のようにキラに対しての暗い感情からではなかったが。

「………」

キラは何も言えなかった。

(アスランもおばさんが血のバレンタインで殺されたから戦っているって言っていた。僕は何かを理不尽に失ったことなんてない。僕はこのま

ま戦ってもいいのかな……?)

そして、自らの戦う理由が守りたいという受身な思いゆえに戦うことに迷ってしまった。

「協力してくれない?なにも、私の言う通りに戦えとか言うんじゃなくて、私が強くなれるように協力してほしいの」

(戦いへの強い感情、か。フレイはやっぱり強いな。やっぱり僕はフレイが好きだ。憧れ程度かもしれないけど、好意がある。死んでほしくな

い……協力するぐらいならいいかな。それでフレイが死なないなら)

好意を抱いている少女が自分に協力して欲しいといっているのだ。恋愛経験の少ないキラはフレイへ協力することを決めてしまった。そしてこ

の理由は同時に戦う理由へとつながっていく、好きな娘を守るためにと。単純ゆえに強い思い。それはキラを成長させていくことになる。今は

まだ好きな娘が近くにいるだけでどきどきしている純情な少年だったが。

「うん、いいよ。MSの操縦方法もある程度はわかるし、ナカノ少尉とフラガ大尉のOSを改造して専用にOSを作れば操縦もできるようになると思

う」

「本当!?ならお願い!」

(う、近い。やっぱり可愛いよなフレイって)

ぐっと近づいて、少し陰のある笑顔をキラへと向けるフレイ。キラは顔を紅潮させてうなづいた。

そんな二人をデバガメするショウヤとムウ。

『なんか青春って感じじゃね?』

『うーん、フレイ・アルスターには恋人っていうか、親が決めた婚約者がいるって話なんですが』

『マジで!?』

『ええ、たしかサイ・アーガイル。ヘリオポリスの学生で眼鏡をかけていた少年ですよ』

『ああ、そういえばそんな雰囲気だったな。もしも嬢ちゃんがMSになれたら、この二人くっつくかもなぁ。戦場で一緒に戦うと絆みたいなもん

ができるしなぁ』

『それは、経験からですか?』

『まあ、な』

何かを思い出しているのか、遠い眼をするムウ。

『っと、それより、嬢ちゃんに簡易だが適正検査を受けてもらうか』

『そうですね』

このときばかりは戦いを忘れるような和気が生まれていた。いくら高い能力を持っていても常に戦いに気を張っていることなど人はできない。

ムウはそれを知っていた。

「嬢ちゃん、とりあえずだが、MSへの適正検査を受けて、適正があればシミュレータで訓練することは許可するってことにした」

「適正があれば基地に着いた時に正式に志願すればいい。このご時勢だから、MSパイロットで最新のシミュレータで訓練していたなら、はねら

れることもないはずだ」

「わかりました。早速検査をお願いします」

「よし、なら俺とキラが連れていくから、ショウヤはシミュレータで訓練していてくれ、俺達はさっきまでやってたからな」

「わかりました」

「んじゃ、二人とも行くぞ」

ムウ、二人を連れて移動していった。

(一体どうなるんだろうか?って難易度が最低のゲームみたいなもので、途中中断だが初めてでこの成績は……これはもしかしたらMS適正があ

るかもなぁ)

フレイのシミュレータの操作ログを見ると、かなり覚えが良かった。それこそかつてGのテストパイロットに選ばれた人間達よりも。



[17882] 14話
Name: you◆0576a7d3 ID:bc8fdcd0
Date: 2011/07/14 19:43
「適正検査の結果は問題なし、ですか」

「ああ、おまえさんほどではないが、Gのテストパイロット以上の適正はあるそうだ」

ショウヤとムウはフレイがキラに教えてもらいながら、シミュレータで訓練しているのを尻目に検査の結果についてを話していた。フレイのMS適正はショウヤほどではないものの、かなりの高さを示していた。もっとも簡易検査なのでしっかりと調べたら数値が前後するだろうが。

「これなら、間違いなくいずれは実戦に出れますね」

「そうだろうな。MSの完成とOSが向上しても兵士がいなけりゃどうにもならないからな。上も切羽詰ってきてるし、ま、志願兵だから普通に採用だろうな」

とは言っても現状ではただ適正が高いだけの少女だ。ナチュラルで最高クラスの値をたたき出したショウヤでさえ、半年ほどの訓練の末に今のような戦いができるようになったのだ。フレイが実戦に出るときは遠いだろう、はずなのだが。

「……今のアークエンジェルの状況なら、俺がゼロで出て、嬢ちゃんが改造したジンで出撃、甲板でBライフルで迎撃に専念させるなんてこともありうるかもな。そんなことはしたくないが、もしも戦力的にマジでやばくて嬢ちゃんが少しでもMSが動かせるなら、俺はそうするだろうな

。もっとももうすぐ第八艦隊と合流できるし、そんなことにはならんだろ。基地に着いたら、嬢ちゃんは新兵でどっかの養成所で訓練になるだろうし」

アークエンジェルに余裕があればその必要はないのだが、人手が足りなさ過ぎる状況ではたとえ出撃したら死ぬ確立が高くても、数秒、数分間でも時間が稼げるならフレイを出撃させるだろう。
人情的なフラガだが、最悪の可能性を考えそれを阻止できるなら軍人としてどのような手でも使う。現在の軍上層部は必要以上に腐敗しており、後先考えず目先の勝利のために犠牲を出す。しかしフラガは、犠牲を甘んじて受容するのではなく、心に刻みつけ足りない力を得ようと少しでも努力しようする。決して才能だけでエースとなったわけではない。

(原作以上に頼りになるなフラガ大尉。原作でのキラを殴ることもできないのは何だったんだ?)

目の前にいるフラガと原作でのフラガの違いを見せ付けられ、ショウヤはそんなことを思った。

「最悪の状況にならないのが一番ですし、俺達も訓練しましょうか」

「だな、俺がジンでもっとうまく戦えるなら、そんな事態にもならんしな」

二人は微々たる物だが、それでもしないよりはましと、フレイとキラが使っているのとは別のシュミレータを使用し、互いに切磋琢磨することにした。
















(フラガ大尉、戦闘機動が前よりかはそれなりに動けるようになってたな。何時の間にアレだけできるようになったんだろうか?OSのおかげと言うのもあるが、きっと見えないところで努力してたんだろうな)

やはり頼りになる。そんなことを思いながらショウヤはラクスを軟禁している部屋に向かっていた。

(しかし、キラとフレイがなんかいいコンビになってきている気がする)

いまだフレイに好意を抱いているのか、キラは熱心にフレイに操縦について教え、またOSの改修も行っているようだった。フレイも原作のようにキラへ暗い感情を持っていないのか、キラへほとんどわだかまりなく熱心に質問したりしている。その原動力が復讐とはいえ、原作のようになるよりはましなのか?とショウヤは思っていた。

(さて、今日のラクス嬢はどんな感じなんだろうか?いつものようなポワポワとしながらもなぜか寒気のする感じなのか、それとも前みたいにシリアスモードなのか。どっちかな?)

気が付いていないが、ショウヤは良くわからないラクスの人柄に警戒値を下げていた。
ラクスがこの世界では異端といえる存在であるショウヤに惹かれているように、ショウヤも原作を知っているが故に全く予測のつかない行動を

するラクスに現実感を感じ、それゆえに警戒心が解れていっていた。

『ラクス・クライン、ショウヤ・ナカノです入りますよ』

部屋の中へ通信を行い、了承を得てからショウヤは部屋に入った。

「あら、おはようございますショウヤさん」

ラクスは、連合の兵士に支給されている部屋着を着て、ソファに座って端末を利用して歌を聴いていた。ショウヤが来たため中断し、ヘッドフォンを外していた。
特に問題を起こさないため、現在ラクスは定期的に衛兵が見回りに来るのみで、監視はされていない。マリューが無駄な労力を使用したくない

ため、判断したそうだ。原作を知っているショウヤは仕方なくそれを認めていた。もっとも今のラクスはショウヤの不利になるようなことは絶対といえるほどにしないのだが、それはショウヤにはわからなかった。

「おはよう。ラクス。歌を聴いていたのか?まあ他にすることがないか。それとも歌姫としての力はいろいろな歌を聴いていたから得れたものなのかな?」

「そうですわね。幼いころ死んだ母が良く子守唄を聞かせてくれていたので、その影響でいつも歌を聞いていましたわね。だから歌を歌うことも、聴くことも好きですわ。ザフトのための広告である歌姫としてプラントに知らしめることになったのは残念ですが、同時に自分の歌がプラントの癒しになれば素敵なことだとも思いましたわね」

ショウヤもこのラクスに慣れてきたのか、普通に雑談を交わしていた。

「なるほど。今は戦時中だから歌とか文化的なものが衰退してしまっているし、戦争に利用されるだけだからなぁ。それでもラクスみたいな人間は世界に必要なんだろうな。戦争に終わったら文化的なものが残っていませんでした。なんて洒落にならない」

(アニメとかこっちじゃ全く見てないし、漫画とかラノベ、小説はどうなっているんだろうか?落ち着いたら端末で探してみよう。今はのめりこみそうだからやめておこう)

文化は大事だよなと思い、いつか平和になったら、休暇を取り、趣味に走ろう、とショウヤは決意した。

「そうですわね。芸術や音楽、テレビ番組、小説、漫画など、食事もそうですし、戦争で文化が失われるのは悲しいことですわね」

「食事かぁ、今はレーションも発達しているからもいいけどやっぱり天然物が食べたいねな。刺身とかもう全然食べていないなぁ」

前の世界で食べていた日本の食事を思いだし、懐かしむショウヤ。

「あら、そういえば、ショウヤさんは日系なのですね。第三次世界大戦で衰退し東アジア共和国の一員となってもあの国の食はすごいと聞きますわ。いつか行ってみたいですわ」

(もちろんショウヤさんと)

(うっ、なんだ悪寒がしたぞ)

「そうだな、旅行もしてみたいな。だけど戦争中だからどこも観光なんてできないし、どの勢力が勝っても戦後は観光とかできるような余裕はないだろうな。まあオーブくらいか?」

(でもあの国はなぁ、この御時勢でシビリアンコントロールが取れていないし、原作では意味不明な正義の味方みたいな国だったが、その成り立ちはこの世界だとひどいもんだ。あれなら東アジア共和国がずっと恨んでるわけだよ)

この世界でのオーブは、100年ほど前に起きた再構築戦争と呼ばれる第三次世界大戦による混乱の際に、日本や中国などのアジアの大国一部の人間が移民と証した逃亡、亡命を行った。その子孫達が住む国である。

移民した人間の中には政治家や資産家などが含まれており(亡命を主導した者達)、かなりの資産を持ち逃げしたとされている。再構築戦争終結後、東アジア共和国が経済においてユーラシア連邦、大西洋連邦に大きく離された原因でもあり、再構築戦争の終盤において中央アジア戦線に核が投下された遠因でもある。結果として核の投下が戦争の終結となったが。

さらに当時の混乱を利用し、戦後に特に罰せられることなくやり過ごしたのだ。そのため東アジア共和国ではオーブ=敵国だという認識がある。そんな国が中立なんていっても連合、特に東アジア共和国が認めるわけがない。あくまで自称中立の国なのだ。オーブは。

(正直、中の人的にも許せない。某党よりひどい奴らだ。確かに今住んでいる若い世代や戦後に移民した奴らは仕方ないところがあるが、それでも首長達は駄目だろ。あまりに東アジア共和国をなめすぎている。あれじゃあ中立なんて無理だろ、むしろ東アジア共和国を挑発しているとしか思えない)

日本人が、『戦争は昔のことだから関係ない』と言っているのと同じことをオーブの人間は言う。ただし日本と違うのは公式で非を認めていないし、何も賠償金などを払っていないのだ。
ユーラシア連邦、大西洋連邦は貿易に置いてかなりの金額を儲けさせてもらっているから、戦争前は気にしていなかった。それゆえ東アジア共和国は何も行動できなかったが、今の状況だとプラントに勝ったら、戦後に必ず東アジア共和国はオーブに攻め入るだろう。もしオーブが連合に参加していたならユーラシア連邦、大西洋連邦の圧力で、東アジア共和国の行動を制限できる。

(東アジア共和国も最終的には中国、日本、韓国が中心になって小国を無理やり併呑したし、ユーラシア連邦と大西洋連邦は仲が悪いし、この世界は問題だらけだ…いや元の世界でも問題はあったが日本が平和なだけだったのか、平和じゃなくなってようやくあの国のありがたみがわかるなぁ…)

(あ、あら?ショウヤさんが暗くなっていますわ…あ、日系人だからオーブのことは当然…わ、話題を変えませんと)

オーブという悪感情しか抱いていない国のことを考え、どんどん気が滅入ってくるショウヤ。そんなショウヤを見てラクスはなぜ気が滅入っているのかを正確に察した。

「そういえば、後、どれくらいで基地に着きますのかしら。私はその後で政治的な判断の元に引渡しなどされるのでしょうけど、その時はショウヤさんが護衛してくれるのかしら?」

(だと嬉しいのですけど、いえそうなるように責任者の方に言ってみましょうか?)

(はうっ!、また悪寒がしたぞ)

そんなラクスのたくらみにショウヤは悪寒を感じた。二人はショウヤがラクスの監視、護衛している時間、このようなやり取りを何度も繰り返していた。
















ショウヤがラクスと戯れ?ているとき、キラはフレイの訓練に付き合うため、シミュレータがある場所へ来ていた。時間より早く来たようだが、すぐにフレイと監督役のムウが来た。ものぐさのキラが時間より早く来た理由は云わずともわかるだろう。

「キラ、よろしくね」

そう言ったフレイの髪はなんと、ナタルのように短くなっていた。

「フレイ、その髪…」

ショートカットも似合ってるなぁなどと心の片隅で思いながら、キラは口をパクパクしていた。

「ああ、これ?体力を作るために走らないといけないし、筋トレもしないといけないから、邪魔になったから切ったのよ」

さばさばとした表情で言うフレイ。復讐と言う目標ができ、ある意味でフレイの心は表面上は安定していた。昔のフレイなら髪を切るなんてことは思わなかっただろう。

「んじゃ、キラ。ちょっとの間嬢ちゃんを見ていてくれ、俺は別のシミュレータを使ってるからな」

MSの教練マニュアルなど今は存在しないし、フレイは今はあくまで仮入隊的なもののため、ムウは自分の訓練を優先していた。

「わ、わかりました」

キラは髪を切ったフレイを見た衝撃から未だに立ち直っていないが、どもりながらも返事をした。

「それじゃ、さっさと始めましょ」

「わかった。まずはおさらいとして、昨日と同じ動かすことを復習して、それから機動戦は無理だから、ゆっくり動きながらでも的を撃つ練習をしよう」

「わかったわ」

フレイは意気揚々と、シミュレータでMSを動かしていく。まだまだぎこちないが、それでものろのろとだが思うように動くことはできていた。

(フレイ、なんとか落ち着いたみたいだ。動機は復讐だけど、落ち込んでいるよりはいいよね…でもサイとかはどうしたんだろう?もしかしたらフレイは何も言っていなのかな?後で聞いてみようかな?ああ、でも僕がそんなことを聞いてもいいのかな?どうしよう…)

そんなフレイを見ながらキラは悶々と悩んでいた。



[17882] 15話
Name: you◆0576a7d3 ID:222e9ea8
Date: 2011/09/02 19:12
『第二種戦闘配備発令。MSパイロットはブリッジへ集合してください』

先遣隊の全滅後、襲撃もなく、しばらくは移動だけの平穏が続いた。もうすぐ、第八艦隊と合流できるというタイミングで、ラクスの監視、護衛の任務を終えてシミュレータでフラガ、キラ、フレイとともに訓練を行っていたショウヤに通信が入った


(これは、原作同様イザークとかディアッカ達なのか?それ以外の敵なら楽なんだけどな)

今のGに乗ったショウヤはザフトのMSなら数十機に囲まれてたこ殴りにされない限りは勝てる。たとえGでも複数を相手にしなければ生き残る自信があった。この時ばかりは原作通りの展開がいいとショウヤは現金に思っていた。

(第八艦隊と合流すればおそらくラクスを連れて自分は月基地へ戻ることになるか、アークエンジェルに乗ったままアラスカへ直行か。そういえばハルバートンが原作通り死ぬのは大西洋連邦的にはまずいよなぁ。最終的にプラントに勝っても、ユーラシアと戦うことになったら、ハルバートンは必要だろ。さすがに原作通り死ぬのはまずい。いい案が思い浮かばないな……後で考えようは今は目の前のことに集中だ)

「ブリッジへ行くぞ。嬢ちゃんはここでシミュレータで訓練していてくれ、整備員から立ち入りを許可していない区画へ行かないように見張っていてもらうがね」

ショウヤが考え事をしている間にムウがキラ達へ指示を行う。さすがに今のフレイは問題を起こすようなことはしないだろう

と思いつつもムウは釘をさしておくことにした。最悪、原作でのサイのようにMSで無理やり出撃されるようなことがあるかもしれないからだ。

「わかりました」

もっとも今のフレイは余計なことを考える余裕がないほどに、シミュレータでの訓練に集中していた。そのためドサクサに紛れてブリッジに侵入するなど問題行動を起こすこなどフレイの頭の中には全くなかった。

「んじゃ俺達は、ブリッジへ行くぞ。キラも来い」

「は、はい。わかりました」

フレイを見ながらも返事をするキラ。

「では、いきましょうか」

目の前のことに集中すると結論を出し、ショウヤは先立って、ブリッジへと移動していった。

















「フラガ大尉」

「おつかれさん。それで何があったんだ?もうすぐ第八艦隊と合流だろう?」

「それが、ヘリオポリスのあのローラシア級が接近してきています。この角度からだと合流するまでに数分だけ接敵する可能性があります」

疲れた様子のマリューへムウが話しかけるのを尻目にショウヤは表示されたデータを見ていた。

(これはローラシア級、ヘリオポリスにいた艦か。やはり原作通り。つまり戦力はGが三機+シグーか……確か低軌道会戦だったか?あれに参加できるか不明だし、今まで温存していた手を使うか。引っかかっているはずだから一回なら絶対的に効果があるはずだ)

今までの戦いの中温存していた試作イージスの武器の封印をショウヤは解くことを決めた。

(あれなら、一瞬で一機は落とせるはずだ。むしろここでGを落とすか、そうすれば中破に近い損害を与えれば低軌道会戦は戦力で押せるかもしれない)

「さすがにここまで来てあきらめることはないだろう。たとえ数分とはいえ攻めてくるだろうな」

「私もそう思います。艦長、第一種戦闘配備を、MSパイロットも発進準備させましょう」

「…そうね。もう目の前に第八艦隊がいるのだもの。ここまで来て、落とされるわけにはいかないわ。総員、第一種戦闘配備!フラガ大尉。MSの指揮を頼みます。キラ君をはじめ、ヘリオポリスの学生達もここを凌げばオーブへ帰ることができるわ。がんばって!」

マリューの指揮の元、クルー達はそれぞれの仕事をし始めた。クルー達の顔は皆真剣だが、明るい。もうすぐ第八艦隊と合流できるのだ。先遣隊の全滅という絶望を眼にしてしまったが、第八艦隊という希望が見えてきたためだ。

「んじゃ、俺達はMSで発進準備だ。敵MS発進後こっちもすぐに出ることになるぞ。急ぐぞ」

「「了解」」










ショウヤ達が準備を整えたころ、ガモフからシグー、デュエル、バスター、ブリッツが発進しようとしていた。

「俺とイザーク、ニコルはMSの、ディアッカは足つきの相手だ。敵艦隊が近くにいるため時間は十分ほどしかないがMSを一機でも落とすことが目標だ」

「わかっている」

「了解だ」

「合流後、こちらも近くに来ているクルーゼ隊長とその援軍に合流して足つきを落とすのですよね」

「そうだ。あくまで本命は次の会戦だ。だが、俺達にもプライドがある。一機だけでも落とすぞ」

「「「了解!」」」

先輩であり、クルーゼ隊で二番目の実力者であり、赤服ではないものの二つ名を持つほどのミゲルの言葉に士気が上がり、ミゲル達は発進していった。











「敵MS発進を確認!」

「シグー、デュエル、バスター、ブリッツです!」

「この位置からじゃゴッドフリートは斜線が取れないわ!MSを発進させて!」

クルーからの報告にマリューは即座にMSの発進させる。

「イーゲルシュテルン起動!自動追尾で迎撃させろ!コリントス全門装填!敵MSの進行方向へ放て、回避しようとするMSへ右舷ヴァリアントを撃つ!ローラシア級はこの位置からではミサイルぐらいしか撃てないが注意しろ!」

ナタルの的確な指示の元、アークエンジェルは戦闘に突入していく。






「俺はアークエンジェルの甲板で迎撃する。ショウヤ、キラは敵MS一機と膠着状態へ持ち込め、もしも二機囲まれかけたら、すぐにアークエンジェルの傍に逃げて来い。十分ほど凌げば第八艦隊の勢力圏内だ。援軍を出してくれるだろうから敵も無理はしないだろう。なんとしても凌ぐぞ!」

「「了解!」」

そしてそれぞれMSへと乗り込んでいく。

「試作イージス、カタパルト接続、発進スタンバイ、システムオールグリーン、進路クリア、試作イージス発進どうぞ!」

MSに乗り込みOSを起動すると、ミリアリアのオペレーションの各自発進していく。

(発進後、こっちへ向かってくるMSへコテツを装備。アレを使って撃破する…)

「ショウヤ・ナカノ、試作イージス、出る!」

ショウヤは今まで伏せてきた切り札の使用方法を頭でシミュレートし、ブースターを使い敵MSへと接近していった。

「続いて、ストライク、カタパルト接続、ストライカーパックはエールを装備します、システムオールグリーン、進路クリア、ストライク発進どうぞ!」

(アスランがいない。これなら僕でも充分戦えるはずだ)

「キラ・ヤマト!ストライク、行きます!」

第八艦隊が近くにいること、そしてアスランがいないため、キラは前回の戦闘よりも幾分か気を楽にして戦場へ向かっていった。

「続いて、ジン、カタパルト接続、発進スタンバイ、システムオールグリーン、進路クリア、ジン発進どうぞ!」

(この戦力なら大丈夫だ。なんとしても凌ぎきる!)

「ムウ・ラ・フラガ!ジン、出るぞ!」

フラガもまた、前回の戦闘に比べれば生き残れる可能性は高いと、気を楽にしつつも適度に緊張を保ち、発進していった。






「来た!俺は赤い奴の脚を止める!イザークは青い奴、ニコルは捕獲ジンを、ディアッカは足つきを狙え。あくまで目標はMSだ。ディアッカは七分経ったらどれかに狙いをつけて援護してくれ、その後一気に総攻撃し、撃破できなくともすぐに撤退だ」

「「「了解」」」

ミゲル達はそれぞれの相手へと向かっていく。

(どうやら敵はそれぞれ一機ずつに分かれて目標を叩く、もしくは足止めするつもりか……今の俺と試作イージスの実力ならクルーゼ以外の敵は倒せるはずだ!こっちに向かってくるのはシグーか、悪いがここで死んでもらうぞ!)

クルーゼとの戦いで異常な速度で成長した今のショウヤの実力は高い。さすがに同じ機体で戦うのならば。てこずるが機体性能で劣る相手ならば間違いなく勝てる。ショウヤは確信し、シグー以外のMSが各目標へと接近していくのを確認し、試作イージスにコテツを持たせ、熱振動を起こさせると一気にシグーへと接近していく。

「来るか!赤い奴!」

ミゲルはナチュラルだと油断せずに今までの経験から、コテツを装備した試作イージスの間合いの外へ常に距離をおこうとする。

「…ふ、やはり引っかかっている!もらった!」

殺れる!そう確信しトリガーを押す、即座に試作イージスはコテツを装備している右腕の腕部内臓ビームガンを放った。

『ピー!ピー!ピー!』

「な、何ぃ!」

突然のアラームに驚きながらもミゲルは反応し回避行動を取るが、ビームはシグーの顔の部分を完全に破壊した。メインカメラが破壊されコックピットに何も写らなくなり視覚を潰されたミゲルは致命的な隙をさらしてしまう。

「殺ったぁぁぁぁ!」

ショウヤは雄たけびとともに試作イージスをシグーに全速で接近させ、コテツでシグーを両断する。

「う、うわぁ!」

サブカメラへと切り替わった瞬間、ミゲルの身体は蒸発した。最期の瞬間、彼の心の中には療養中の弟の顔が浮かんだ。






「な、ミゲルが、嘘だろ…?」

シグーのシグナルがロストし、呆然としながら、ディアッカは呟いた。そしてすぐに現状を確認する。シグーを撃破した試作イージスがアークエンジェルに取り付こうとするディアッカとニコル達のほうへと接近してきているのが、画面に写った。

「や、やばい!?」

動揺しながらもディアッカは生き残るための判断を考え、実行しようとした。

「イザーク!ニコル!ミゲルが落とされた!このままじゃ全員やべぇ!撤退するぞ!」

「くそぅ!ミゲルまで…く、撤退するぞ!」

「そんな、ミゲルが…わかりました。撤退しましょう」

イザークもストライクと戦闘へ入る前だったので、いつものように激昂せずに撤退を行う。

(赤い奴と青い奴、そして足つき!次の戦闘で必ず落とす!)

しかし、その怒りはイザークの中へと溜め込まれ蓄積されていた。





「おいおい」

(クルーゼじゃないとはいえかなりの実力者が乗ってるはずだろ、あのシグー。瞬殺って一体どんなことすりゃできるんだよ……まったくあいつはすげえ奴だな。さて、とりあえずは安全圏か)

ムウはショウヤに呆れを感じるとともに賞賛し、少しは楽になるかと思いつつ、アークエンジェルへ帰還して行った。

(ナカノ少尉、一体どうやって一瞬でシグーを落としたんだろうか?ほんとすごい人だな。でもこれで避難民も助かるし、僕らもオーブに帰れる…でもフレイはきっとこのまま軍へ…僕はどうすればいいんだろう?)

キラもショウヤに呆れを感じるとともに賞賛した。そしてオーブへ帰れると安堵するが、フレイのことを思い出して悩む。答えが出ないままアークエンジェルへ帰還して行った。

そしてアークエンジェルのブリッジでは、今回なぜショウヤがシグーを瞬殺されたかが分析されていた。

「シグーをあんな短時間で落とすなんて…戦闘中の試作イージスの行動を画面に映せる?」

「できます」

マリューの言葉に、ダリダ・ローラハ・チャンドラII世が答え、数秒後試作イージスの戦闘中の行動が画面に写される。

「これは…そうか、そういうことね」

画面を見てマリューは一人納得する。

「いったい、どういうことなんですか?」

戦術眼ではナタルに部があるが、今回は試作イージスの性能を熟知していなければ気づかないことだった。ゆえにナタルがマリューに問うた。

「試作イージスはコテツを装備して、腕部内臓ビームガンで相手を牽制しつつ接近してコテツで一刀両断するのがセオリーの戦闘スタイルなのよ。いままでは本来の使い方をしてこなかったの。使用していなかった理由はわからないけど、あのシグーは前に戦ったことがあって、それも接戦だった。だからコテツを装備した試作イージスは遠距離の武装がないと完全に思い込んでしまった。外付けの武装なら注意するだろうけど、腕部内臓ビームガンは使用したり、スペックがわかっていないと見えないからわからない。それが思い込みにつながって、間合いをとって戦えばいいと判断した。でも実はBライフルほどの射程はないけどビーム射撃兵装を持っていたためにいきなり使用されたことで反応できず、メインカメラを破壊されてしまい、ナカノ少尉に落とされた。」

「なるほど…」

聞かされたナタルも納得した。

「たぶん、少尉はわざと腕部内臓ビームガンを使用してこなかったのだと思うわ。前回の戦闘ではあのカスタムシグーのほうが総合的な戦闘力では上だろうから回避される可能性が高かったし、ジンやMA相手には使用せずともBライフルで対応できる。サイレントラン以前の戦闘では理由はわからないけどね」

アークエンジェルでショウヤの行動が分析されていころショウヤは次の戦い、低軌道会戦について考えながら、アークエンジェルへ帰還していく。

(次は低軌道会戦か…介入するべきか?いくらなんでも原作通り進めば被害が大きすぎる。今後は原作通りに進まなくなるか

もしれないし、できるだけ被害を減らしたほうがいい。大西洋連邦にとってハルバートン准将の死は大きい損害だ。大西洋連邦の被害を無視して連合がプラントに勝っても戦後ユーラシアと必ず摩擦が起きるだろうからな、大西洋連邦の利益につながることを目標にして動こう。自分にできることは微々たることだが、それでもしないよりはましだ。大西洋連邦が最大勢力で勝てば、後は平和的に解決していくだろう。ユーラシアはブルーコスモス過激派、デスティニーのジブリールの勢力の影響が大きい。盟主王はブルーコスモス思想を除けば判断は的確だ。そのおかげでMSが開発されたし。戦争に勝てばあまりにわけわからん政策は取らせないだろう。そうなれば後は平和を謳歌…できるかなぁ?)

とりあえずは生き残るため、そして原作を知っているがゆえに自分の所属する国、大西洋連邦が有利になるように自分にできることをしようと、ショウヤは次なる戦いのことを考えながら、アークエンジェルへ戻っていった。。


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