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クリアランスとはどういう意味ですか?

Answer

Q.クリアランスとはどういう意味ですか?

 運転を終了した原子力発電所の解体作業や、原子力発電所の運転に伴って発生する廃棄物の中には、「放射性廃棄物として扱う物」以外に、「放射性廃棄物として扱う必要のない物」も多く含まれています。放射性廃棄物として扱う必要のない物について、資源として再利用したり、適切な処分を行っていくことは、地球の資源を守るための大きなテーマのひとつです。

 一般に、ある物質に含まれる微量の放射性物質が持つ放射能に起因する線量が、自然界の放射線レベルに比較して十分に小さく、人の健康への影響を全く考慮する必要がないものであるならば、その物質を放射性物質として扱わないことを「クリアランス」といいます。原子力発電所から出てくるコンクリートや金属などが、どのように再利用されたり、廃棄物として埋め立てられたとしても、人体への影響が無視できるといえるよう、再利用および埋設処分を想定した評価経路の計算結果から定められた放射能レベル(それ以下であれば放射性物質として扱わなくて良いレベル)のことを「クリアランスレベル」といいます。具体的には、各事例の計算結果から、人への健康への影響が1年間あたり0.01ミリシーベルト(mSv) ※1 を超えないよう、放射性核種ごとに濃度が定められることになります。例えば、コバルト60という放射性核種のクリアランスレベルは1グラムあたり0.1ベクレル(Bq) ※2 になります。放射能濃度がクリアランスレベル以下であることを所要の手続きにより確認し、普通の産業廃棄物と同様に、性状等に応じて再生利用や処分を可能とする制度が「クリアランス制度」です。

 なお、沸騰水型原子炉110万キロワット級の原子力プラント1基を解体すると、約54万トンのコンクリートや金属等の廃棄物が発生すると試算されていますが、その大部分は、放射性物質に汚染されていないもの(約93%:約49.5万トン)か、放射能のレベルがきわめて低く人の健康への影響が無視できるもの(約5%:約2.8万トン)ものです。これらを「放射性物質として扱うべきもの(約2%:約1.3万トン)」から安全に区分して、リサイクルできるものはリサイクルし、循環的な利用が行われないものは適切に処分していくことは、環境負荷の低減および資源の有効利用にもつながり、循環型社会形成を目指す上で大切なことといえます。

  • ※1.シーベルト(Sv)とは、人の受けた放射線の量を表わす単位。シーベルトが同じであれば、影響度合も同じになります。また、年間0.01ミリシーベルトは、国際放射線防護委員会(ICRP)など国際的にも放射線防護の体系の中で人の健康に対する影響が無視できる線量として使用されています
  • ※2.ベクレル(Bq)とは、放射性物質の放射能の強さを表わす単位。同じ1ベクレルであっても、放射性物質の種類によって、出す放射線の種類や強さが違うため、人への影響度合が異なります。