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[29315] 【習作】使い魔は子狐(ゼロ魔 オリ主 捏造)
Name: fb◆d9e7326c ID:68b3cec4
Date: 2011/08/15 22:44
はじめまして、fbと申します。

SSを書くのは初めてです。

いろいろと粗が目立つかもしれませんがよろしくお願いします。

それでは注意点です。

・ゼロの使い魔でオリ主ものです。

・独自解釈満載です。

・設定を捏造しているところもあります



まあ変なことばかり書いてると思いますが
適当に読み流してください。



[29315] 第1話 「彼」の場合
Name: fb◆d9e7326c ID:68b3cec4
Date: 2011/08/15 22:39
「彼」は走っていた。
何故か知らないが少し前から彼を呼ぶ”声”が頭の中に聞こえていた。

  -来たれ-
  -汝には伝えねばならぬ事がある-
  -この声が聞こえる者には資格がある-

最初は幻聴と思った。
しかしその”声”はあまりにもはっきりと頭の中に響くのである。
はっきりいって響きすぎである。
寝てるときはともかく2~3時間毎に聞こえてくるのはいかがなものか。
それだけではなくその声を聞くとそこへ行かねばならないという焦りにも似た気持ちになるのだ。
「彼」に今、何を望むか聞いたら、「お前を消す方法」って答えが返ってくるだろう。

はっきりいってこういうのは行ってもろくな事にはならないことが多い。
それでもその”声”に導かれながら「彼」は走った。

いくつもの山川を越え、いくつもの夜が過ぎた。
そして遂にその”声”の元へたどりついたのである。

そこには石で作られた狐の像があった。

  -ようこそ我が後継者候補よ-

「彼」がその像の前に立つとそれはまばゆい光を放った。

そして光が収まるとそこには一匹の狐がいた。
それも普通の狐とは異なる外見の。
その体毛は見事な金色であり、王者の風格というかそういうものが感じられる。
何よりも目を引くのはふさふさとした立派な九つに分かれた尾であった。

文句の一つも言ってやろうと思ってたのが見事に先制攻撃を受けて呆然とするしかない。
続けて狐のターン。
もう聞き飽きた”声”が響く。

  -我は別世界よりの来訪者-
  -この”声”を聞ける者は我の後継者にふさわしき者-
  -汝は我の知識と技を受け継いで我の後継者となる-
  -心して我の知識と技を受け取るがよい-

ブワッと狐の体から金色の光の玉が飛び出して「彼」を直撃した。
頭の中で何かカリカリと音が響く。
まあ早い話、脳の一部がフォーマットされてそこにデータが書き込まれているような感じ?
急に気が遠くなり、目覚めたときには全てが分かった。

 そこにいる狐はこの世界では「白面金毛九尾の狐」と呼ばれる存在であること
 過去にブリミルという者といろいろな魔法を開発中に実験の失敗によって別の世界から飛ばされて来たこと
 元の世界に戻ろうとしたがこの世界ではそれがかなわなかったこと
 この世界の情報を得るために時の権力者達に接触したりしたこと
 その過程で様々な国家を繁栄させたり滅ぼしたりさせてきたこと
 この世界で一生を終える覚悟をしたこと
 自分の子孫の中に自分と同じ資質を持つものが生まれるだろうこと
 そしてその肉体が滅ぶ前に秘術をもって蓄えてきた知識や技を選ばれた子孫に受け継がせようとしたこと
 そして自分がその選ばれた子孫であること

平穏に暮らしていた「彼」にとって、はっきり言って迷惑以外の何物でも無い
後継者か何か知らないが選択の自由ぐらい与えてくれ。
そんな「彼」の意志を無視するようにあの”声”が響く。

  -宝珠により、基本的な知識と能力を汝は得たことであろう-
  -しかしそれはあくまで頭の中でのこと-
  -しばらくはこの地でその技と力を実践して確かなものにするが良い-

まあ、せっかく手に入れたものだし実際に試してもみたくなる。
しばらくここで学ぶのも悪くない。
そこにいた九尾の狐の後継者である「彼」=「名も無い子狐」は返事の代わりに尻尾を振った。

  -それでは、これより我が知りし真理を汝に託す-
  -この世のすべての物質は、小さな粒より為る……-

こうして九尾の狐の九尾の狐による名も無い子狐のための講義が始まった。




どれくらいの時が過ぎただろう。
苦労して「彼」は様々な技を身につけた。
どれだけ苦労したかはここでは省略。
ちなみに人に化けたり火を吹いたりとかの妖狐としてのお約束は習得済みである。
まあ子狐があれこれできる範囲ではあるが九尾の狐の持つ技と力を身につけた。

そして蛍の光窓の雪というわけで最後のご挨拶。

  -これで我の持つ知識と技はすべて汝に伝えた-
  -あとはその時に応じて実践あるのみ-
  -ただし、虚無の技は消耗が激しく命を削ることもあるので使用はできるだけ控えるように-
  -そしてこれより先は汝が領分ゆえ我は一切関知せぬ-
  -ただ、これから世界中を旅する途中で光り輝く扉に遭遇することがあるやもしれぬ-
  -もし光り輝く扉が現れるようなことがあれば、迷わずその中へ飛び込むが良い-
  -その先には別の世界があるであろう-
   
そして「彼」の体から金色の光の玉が飛び出して白面金毛九尾の狐の中に帰っていった。

  -最後に汝の行く道に光あらんことを願う-

白面金毛九尾の狐はそう言うと再び石像に戻った。



そしてそこには一匹の「名も無い子狐」が残されるのみであった。
いや「二代目白面金毛九尾の狐」とでも呼ぶべきか。
最初は一本だった彼の尻尾はいつの間にか小振りながらも九つに分かれており、「彼」が「白面金毛九尾の狐」の後継者となったことを示していた。

子狐は自分を導いた狐をしばらく眺めていたがすぐにいずこともなく消えていった。



[29315] 第2話 「彼女」の場合
Name: fb◆d9e7326c ID:68b3cec4
Date: 2011/08/16 12:25
「彼女」は緊張していた。

ここはトリステイン魔法学院のヴェストリの広場。
春になると進級試験も兼ねて行われる「召喚の儀式」。
ここで生涯のパートナーとなるであろう使い魔が召喚される。

普通の生徒であれば何の苦労もなく使い魔を召喚できるはずである。
しかし「彼女」は普通ではなかった。
それゆえに「彼女」は第一関門であるサモン・サーヴァントの魔法を成功させることにのみ集中していた。



召喚の呪文を「彼女」は唱えた。

(こい、こい)

少し小さいが召喚の扉は現れた。

(よし、成功~)

「彼女」はこっそりガッツポーズを決めた。

(あとは扉が開いて使い魔が現れるだけ~)



そして扉が開いたと同時に爆発が起こった。

巻き起こった砂煙が収まったとき、そこには使い魔の姿はなかった。
もしかして今の爆発で召喚した使い魔が吹き飛んだのではないかと「彼女」は周囲を見回した。

しかし使い魔らしいものはなにも見当たらなかった。

「え~、もしかして失敗しちゃった~?」
「彼女」はおもわず叫んだ。

立ち会っていた教師のコルベールもよもや失敗するとは思ってなかった。
というか爆発自体考えてなかったのでどう対処すべきか考えていたが、まだ召喚の扉があるのに気付いた。

「いえ、まだ召喚の扉はありますよ。呪文自体は成功しています。」

「じゃあなぜ使い魔が現れないの?もしかして私にふさわしい使い魔ってこの世にいないの?」

「それは分かりませんがもう少し待ってみましょう。」

そんなことを言っていると召喚の扉から何か黄色いものが飛び出してきた。
それは扉から出てしばらく辺りの様子をうかがっていた。

「きゃ~、なにこれかわいい~。」

「彼女」はその黄色い塊に飛びつくとそれを撫で始めた。

「ふむ、これは狐ですかね?こんな色で尾が分かれているのは見たことがありませんが。」

「ふわふわのもふもふ~。」

次にするべき事を忘れて「彼女」はそれを幸せそうに抱きしめていた。
コルベールもその幸せそうな顔を見てうんうんとうなずいていたが、周りからの冷めた視線に我に返ったようだ。

「ミス・ヴォルテーヌ。それよりも契約の呪文の方を先にしてもらえますかな?」

「あ、すいませ~ん。
 え~と、我が名はヴィオレッタ・ド・ヴォルテーヌ。5つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ。」

そして「彼女」=「ヴィオレッタ」は抱きかかえた子狐にキスをした。
すると子狐の右前足が光り、そこにルーンが刻まれた。

「ふむふむ、ルーンの位置は右前足でルーンの形と大きさは…毛が邪魔でよくわかりませんね。」

コルベールは一つ一つ確認しながら記録していく。

「それではミス・ヴォルテーヌの召喚の儀式は終了です。あとは使い魔の名前を考えておいて下さい。」

そう言うとコルベールは次の生徒の方へ向かった。

「私の名前はヴィオレッタ。ヴィオレッタ・ド・ヴォルテーヌなの。よろしくね~。」

彼女は抱きかかえたままの子狐にあいさつした。
子狐も彼女が気に入ったのか、一声鳴いてあとは彼女のなすがままにされている。
そこへ既に召喚の儀式を終えた生徒が声を掛けてくる。

「かわいいー。大きさもぴったりだし良かったねヴィオ。」

「やっぱりチビにはチビの使い魔が来るんだな。」

「可愛い少女と子狐…絵になるねえ。」

それを聞いたヴィオレッタは即座に反応する。

「ぴったりとかチビとか言うな~!」

彼女は好き勝手に言ってくる生徒たちを見上げながら文句を言った。
そう、周りを見上げなければならないほどに彼女は小さく、その身長は120サント程しかなかった。
そして彼女の体格に合わせたかのように魔法の力も小さかった。
例えば風の魔法を使えばそよ風が吹き、水の魔法を使えば水滴が降ってくると言った具合に。
召喚の儀式の際に必要以上に緊張してたのはこのためである。
もっとも彼女の場合は魔法ということでは他の生徒にはない変わった点があったのだけど。

「これから大きくなるもん!」

彼女がそう言って薄い胸を張っても全然迫力がなくむしろ微笑ましくさえ感じられる。
その背後では次々と生徒が自分の使い魔を召喚していく。

そして

「おい、また爆発したぞ。」

「ヴィオレッタといいルイズといい、なんでサモン・サーヴァントの呪文で爆発するんだ?」

最後にルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールが平民を召喚して召喚の儀式は全て終了した。



[29315] 第3話 あなたの名前は
Name: fb◆d9e7326c ID:68b3cec4
Date: 2011/09/03 02:39
「みなさん進級おめでとうございます、これで召喚の儀式は終了です。この場はこれにて解散とします。あとの時間は各々の使い魔と親交を深めるために使って下さい。
 なお、使い魔の名前は明日の授業までに考えておいて下さい。あと、自分の使い魔の習性等,分からないことがある人はこの後聞きに来るようにして下さい。」

コルベールが解散を宣言すると生徒たちはそれぞれの使い魔を連れて学院に戻っていった。

ヴィオレッタが学院の方に歩き出そうとすると一緒にいた子狐がこちらも歩いて帰ろうとしていたルイズの方へ走っていった。
子狐はなにやら膝をついて呆然としているルイズの使い魔の周りをぐるぐる回り出した。
遅れてヴィオレッタがちょこちょこ走ってくるのをルイズはじっと見ていた。

ヴィオレッタの父親であるヴォルテーヌ伯爵はルイズの父親のラ・ヴァリエール公爵と親交があり、ルイズとヴィオレッタは互いに顔見知りであった。

「ちょっとヴィオレッタ。自分の使い魔ぐらいちゃんと見ててよね。」

「ごめんね~ルイちゃん。」

「その呼び方は止めてって言ってるでしょ。あなたも少しは貴族らしくなさい!」

「大変失礼しました。ミス・ヴァリエール…ってこれでいい~?」

「まったく、あんたって子は…で、そのちょろちょろしてるのがあなたの使い魔?」

「そうよ~。ルイちゃんの使い魔ってこの人?」

「そういうことになるわね。」

「初めまして~私はヴィオレッタ・ド・ヴォルテーヌっていうの。どうぞよろしくね。」

ヴィオレッタはそう言うと優雅にというよりは可愛く一礼した。

「あんた、人が名乗ってるのにその態度は何よ!名前があるならちゃんと名乗りなさい!」

ルイズの剣幕に押されて彼女の使い魔は話し出した。

「ああ、ごめん。なんだかよく分からないけどとりあえず俺の名前は平賀才人って言うんだ。」

「ヒラガサイトー?変わった名前だね。」

「サ・イ・トだ。えーっと…ここって外国だよな?…それじゃサイトヒラガって呼んでくれ。」

「わかった~、それじゃサ・イ・ト・ヒラガって呼ぶよ。」

「…サイトだけでいいよ…それより聞いてみるんだけど…ここはどこだ?」

「え~とね、ここは…」

「だからトリステイン魔法学院だってさっきから言ってるでしょ。」

「そのトリステイン魔法学院も知らないしというかさっき人が空を飛んでたよな?」

「メイジが飛ばなくてどうするのよ!」

ヴィオレッタはそんな微妙にかみ合わない二人のやりとりを面白そうに見ていたが、何か不穏な空気を感じたので

「私、この子の名前を考えなきゃいけないからルイちゃんまた後でね~。」

その場から退却した。






「それじゃ~あなたの名前をかんがえましょうね~。どんな名前がいいかな~?狐だからコンタローとか、フォックンかな?それとも…」

寮の自室に戻り、にこにこしながらヴィオレッタが名前を考えてると…

 -僕の名前は白面金毛九尾の狐だよ-

彼女の頭の中に声が響いた。

「えっ、今の何?」

びっくりして辺りを見回してもそこには自分の使い魔がいるだけ。

「もしかしてあなたが?」

 -そうだよ。僕が君の頭の中に直接話しかけてるんだよ-

「へえ~、使い魔と主人ってってお話ができたんだ~。」

 -まあ、全ての使い魔がそうとは限らないんだろうけどね。それより僕の名前は白面金毛九尾の狐っていうんだよ-

「ハクメンコンモウキュービノキツネって…変な名前~。…じゃあハクメンちゃんって呼ぶね?」

 -その呼び方は…イケメンの出来損ないみたいで…別の呼び方がいいな-

「イケメン?なにそれ?…じゃあキュウちゃんでどう?なんか響きがかわいいし、いいんじゃない~?」

 -それもなんだかな…他になにかない?-

「え~?キュウちゃんにしようよ~これじゃないとヤダ!」

その場で手足をばたばたさせているヴィオレッタを見て

 -そ、それじゃあキュウでいいよ…今までも名前なんて適当に名乗ってたしね…まぁ…-

使い魔の子狐はやれやれといった感じで主人の提案に賛成するのだった。

「それじゃ~あなたの名前はキュウちゃんね。よろしくね、キュウちゃん。」

 -こちらこそよろしく頼むねご主人様-





「ところでキュウちゃんって何が出来るの?」

 -いきなりどう答えていいのか分からない質問だね?-

「そういえば使い魔って主人の目になれるんだよね?」

 -ころっと話が変わるし…-

「え~っと…こうかな?…ってなにこれ?」

ヴィオレッタは意識を使い魔の方に向けて集中してみた。すると目の前に不思議な景色が見えてきた。

「カーテン?足?それに何この白いの?………ああっこれ私のパンツ!」

そう、彼女は自分のスカートを下から覗いていたのだった。

「キュウちゃんのエッチ~!変態!マリコルヌ!」

 -最後のは分からないけど…僕の視線で君を見たらそうなるんだからしかたないじゃないか。べつに君の下着に興味は無いし-

「興味はなくてもレディーの下着は覗いちゃだめなの。」

慌ててヴィオレッタは視覚を自分のものに戻してキュウを自分から少し離れた場所にやった。
まさか使い魔の視線がこうまで低いとは思ってなかった。
思い返してみれば男子が今日召喚の儀式で召喚した使い魔の中にはネズミや蛇やトカゲもいたような気がする。

「明日からは他の使い魔の動きには要注意ね~。」

特に地面を歩く小動物系の使い魔には注意しようと思うヴィオレッタであった。



[29315] 第4話 ヴィオレッタ驚く
Name: fb◆d9e7326c ID:68b3cec4
Date: 2011/09/03 02:41
 -そういえばご主人様にちょっとお願いがあるんだけど-

触覚や嗅覚なども一通り試してみたところでキュウが言った

「なあにキュウちゃん。」

 -ご主人様の記憶を覗かせて欲しいんだけどいいかな?-

「え、それってどういうこと?」

 -ぼくにはこの世界の知識や常識がない。ある程度のことは予想できてるんだけどそれを確かめてみたいんだ。-

「それだったら私が教えてあげるよ~?」

 -いや、聞くよりも手っ取り早いしご主人様のこともより深く解るから-

「?」

 -手を僕の方に出してもらえるかな。-

「うん。」

ヴィオレッタが手を差し出すとキュウはその上に自分の前足を置いた。

 -ちょっと痺れるかもしれないけど我慢してね-

そう言うとキュウは唸りだし、尻尾の毛が静電気を帯びたように逆立った。
ヴィオレッタは手に少し違和感を憶えたが集中してるらしいキュウの邪魔をしては悪いと思い黙っていた。
しばらくするとキュウの尻尾は元通りになり前足をヴィオレッタの手から離した。

「キュウちゃんの手ってプニプニで気持ちよかった~。それでもう大丈夫なの~?」

 -うん、よく解ったよ。やはりこの世界は僕のご先祖様のいた世界のようだ-

「ご先祖様のいた世界?」

 -そうだよ。僕はこの世界と違う世界から来たんだ。-

「なんだかよく分からないけどそれってどういうこと?」

 -僕の先祖は君たちが始祖と呼んでるブリミルと一緒に魔法の研究などをしてた。
  しかしあるときに実験の失敗で別の世界に跳ばされたんだ。
  戻ろうとしたんだけど彼の使う魔法じゃ戻れる確率が低いので元の世界に戻るのをあきらめたんだ。
  そしてその土地で子孫を残し、その中に自分と同じ体質の者が現れたときに自分の持つ技術を継承できるようにして死んでいったんだよ。
  その技術を受け継いだのが僕で、君の呼びかけに応えてこの世界にやって来たのさ-

「それじゃ~キュウちゃんは狐の国からやって来たんだ~。」

 -いや、僕のいたところにも人間はいたよ。ただここの世界とは違ってたけどね -

「違ってたって目が三つあるとかそんなのかな~。」

 -見た目も行動もこちらの人間と大差ないよ。ただ魔法を使う人間はほとんどいなかったね-

「じゃあ貴族とか平民とかいなかったんだ~。」

 -まあ向こうにも貴族とかはいたけどこちらのいう貴族とは違ってたね -

「へ~、そうなんだ。でもキュウちゃんはキュウちゃんということでいいね。」

 -…そういうことだね。僕はキュウで君の使い魔だよ -

「あらためてよろしくね~。」

 -よろしく、ご主人様 -

それからしばらくキュウは自分の世界のことをヴィオレッタに聞かせた。
彼女は「へ~」とか「ふ~ん」とか言いながらも興味津々で食べ物の話などになると身を乗り出して聞いていた。

 -そういえばご主人様? -

「なあにキュウちゃん?」

 -ここは魔法学院ですよね -

「そうよ。トリステイン魔法学院で私はここの2年生に進級したばかりよ~。」

 -この世界のことをもっと詳しく知るために図書室に行ってみたいんだけど、いいかな? -

「それはいいよ~。でもどうやって本を読むの?きつねさん向けの机とかもないよ~?」

 -それは大丈夫。ちょっと術を使うからびっくりしないでね -

なにやら唸ると彼はあっという間にヴィオレッタそっくりに化けた。

「え?何?これって私?!」

「そうだよ。ちょっとご主人様に変化させてもらったよ。」

「あ、声まで女の子。どういうこと?何が起こったの?わけわかんない~!」

「これが僕の持つ能力のひとつで変化の術。こんな事も出来るよ。」

そう言って彼の化けたヴィオレッタは3人に分身した。

「今度は私が3人?もう何が何だかわかんない~。」

呆然とするヴィオレッタを見て彼は術を解いて元の姿に戻った。

 -どうだい?この世界でもなかなかお目にかかれないと思うけど -

「すごいね!キュウちゃんってまだ他にもできることがあるの?」

 -うん。まだこの地の精霊と契約してないから大したものは使えないけど魔法とかも使えるよ
  僕は腕力とかは強くないけどああいった術…ここでは魔法と言ったほうがいいのかな…そういうのが得意なんだ -

「そうなんだ~。」

そう言ってまだ信じられないものを見た驚きの表情の表情から何かを考え込む表情になった。

「キュウちゃん!」

 -何? -

急に真剣な顔で声を掛けられて少し驚きながらも彼は答えた。

「キュウちゃんがいろんな事が出来ることは他の人たちには内緒にしてね。」

 -まあ特に見せびらかしてまわるつもりはないけど。前の世界でもそれで身を滅ぼしたのもいるからね -

「こんなことがルイちゃんのお姉さんにでも知られたらアカデミーの人たちがやって来て実験動物にされちゃうよ~」

 -実験動物…それは困るな。人間でも集団で来られると厄介だしね。それじゃなるべくこの力は人に見せないようにしよう。 -

しかしこのとき彼は近い将来にルイズのもう一人の姉によって愛玩動物にされそうになることをまだ知らなかった。

 -ああ、そういえばそのルイちゃんっていう子の使い魔なんだけど… -

「えっと、サイトヒラガとか言ってたね。」

 -彼も多分僕と同じ世界から来た人間だと思うよ -

「キュウちゃんは彼を見たことがあるの?」

 -いや見たことはないけど服装とか持ち物が僕のいた世界のものによく似ているんだ。
  僕の思ってるとおりなら彼は日本人だね。そして彼がもし日本人なら九尾の狐のことも知ってるかもしれないよ -

「へー、今度会ったら聞いてみようかな~。」

 -その時は僕も彼とこういうふうに会話してもいいかな? -

「え?私以外の人とも会話できるの?」

 -この会話する能力も僕の力のうちの一つだからね。それに変化の術を使って人に化ければ直接会話できるしね -

「そういえばそうだったね。でもあまり私の格好で変なことをしないでよ。」

そう言いながらもキュウちゃんの魔法はいたずらのネタになるなと密かに思うヴィオレッタであった。


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