放射性物質を加えた薬剤を注射で投与して臓器の機能を調べる検査で、甲府市の市立甲府病院が、過去12年間でおよそ80人の子どもに対し、学会の基準を上回る量の放射性物質を投与していたことが分かりました。
この検査は「核医学検査」と呼ばれ、「テクネチウム」という放射性物質を加えた薬剤を静脈に注射して放射線を観察し、臓器の機能が正常かどうか調べるものです。市立甲府病院は、1日夕方、記者会見し、主に腎臓の機能を調べる検査で、ことしまでの12年間に、少なくとも84人の子どもに対して学会の基準の2倍以上の放射性物質を加えて投与していたことを明らかにしました。このうち41人は、推定の投与量が基準の10倍以上に上るということです。市立甲府病院の小澤克良院長は「子どもは体を動かすので、素早く鮮明な画像を撮るため放射線技師の判断で多い量を投与していた。長期的に繰り返されていたことは組織体制が不十分だったと言わざるをえず、患者や家族の人たちに心からおわびします」と謝罪しました。そのうえで、病院の書類には実際に投与した量より少ない量を記録していたことを認め、「保険の範囲内になるよう記載していた。法令順守の意識が低かった」と説明しました。今回の問題について基準を設けた日本核医学会は「放射性物質の過剰投与が長期間、繰り返されたことは病院の管理・運営体制の問題と考えられる」という声明を発表しました。病院は、投与していた放射性物質の量は直ちに健康被害が出る量ではないとしていますが、今後、希望者を対象に健康への影響を調べることにしています。これについて、核医学が専門で、放射線の人体に対する影響に詳しい京都医療科学大学の遠藤啓吾学長は「テクネチウムは投与量が少なくても腎臓の状態をよく観察することができ、被ばく量は通常、数ミリシーベルトで済む。10倍以上の量を投与をしていたというのは考えられず、病院の医師の管理が不十分だったと言わざるをえない」と話しています。そのうえで、健康への影響については「腎臓は比較的放射線の影響を受けにくい臓器で、今回明らかになった問題では、被ばくは腎臓に限られているため、健康への影響はほぼ出ないと考えられる。しかし、念のため、慎重に経過を見ることが必要だ」と話しています。