経済産業省原子力安全・保安院は2日、東日本大震災の発生直後に作成した東京電力福島第1原子力発電所1~3号機の事故解析・予測資料を公表した。最悪の場合、3月12日未明に炉心溶融(メルトダウン)が起きうるとしていた。官邸の窓口に保安院職員を通じて渡したが説明はしておらず、どう活用されたかは不明という。事故調査・検証委員会の調査で焦点の一つとなりそうだ。
半年もたって急に公表した理由は明らかにしなかった。保安院によると解析は独立行政法人原子力安全基盤機構に依頼。同機構は原子炉への注水が止まり冷却できなくなった場合、炉内の状態がどう変わるかを「緊急時対策支援システム(ERSS)」で計算した。保安院は資料を3月11日午後10時に作成した。
同資料によると、11日午後10時50分に燃料棒が冷却水から露出すると予測。同11時50分に燃料の被覆管が破損し始め、12日午前0時50分に溶融が始まるとした。同3時20分に原子炉格納容器が設計上の限界圧力に達してベント(排気)が必要になり、放射性物質が外部に出ると予測した。
保安院によると資料は3月11日午後10時44分、12日午前0時17分の2回、官邸危機管理センターからアクセスできる電子フォルダーに入れた。官邸にいた保安院職員が印刷して担当者に渡したが、内容の重要性を説明した形跡はないという。
3号機についても同様の解析・予測を進め、13日午前6時50分に官邸側に渡した。また1号機は放射性物質の外部への影響なども計算したが、官邸には送らなかった。
保安院は「ちぐはぐな対応で、良かったとは思っていない」としている。東電は「炉心の損傷割合など社内の計算結果を保安院に出した」というが、保安院の予測が東電と共有されたかは不明だ。
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