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2011年09月02日

白血病入門(6)まとめ−予後因子と典型症例〜医師国試から

初めてこられて右も左も分からない方は、目次から
なにか知りたいことがあるならば右側の検索ボックスからどうぞ。(複合検索は不可)

 さて、このシリーズも6回め(最終)となりました。今回は今までの講義をまとめるとともに、予後因子、教科書的症例をご紹介します。

肥田 白血病はまだでない。3年以降で、白血病はピークが5年、がんが7年だった。これは必ずピークは出る。医師は知っておいた方がいい。(これは5月の話)

初期症状
・貧血
・感染に伴う発熱
・出血傾向
・歯茎からの出血が止まらない
・歯肉腫脹
など

血液検査では、白血球、赤血球、血小板の3系統が同時に低下することが多い。
早期発見には、血液像の検査が有効

(白血病の種類)
急性骨髄性白血病・・・50歳以上の成人に多い
急性リンパ性白血病・・10歳未満、とくに幼児(2〜4歳)に多い。
これから更に細分化される。

(発症のメカニズム)
 腫瘍性の変化を起こすには、細胞の遺伝子のうち増殖、分化を司る遺伝子が複数個(3〜4)損傷される必要がある。さらに、免疫力によっても左右される。例えば、T-cell(リンパ球)が損傷されている場合には数週間。増殖能力の落ちた高齢者では、半年程度になることもある。20〜50代であれば細胞分裂も盛んであり、通常は2〜3ヶ月程度と考えて良いのではないか。

(治療)
・大量化学療法のみ。なにも治療をしなければ、数ヶ月で死に至る。(一刻の猶予もない)
・骨髄移植は、最初の化学療法で抗がん剤の効果が見られた若年(55歳くらいまで)が対象となる。ミニ移植ならば、70歳くらいまで可能。
・化学療法で一番きついのは、副作用。
・まれに、ビタミンAの内服で治る白血病もある。

さて、予後因子

成人白血病
  1. 年齢が高い
  2. 二次性白血病(治療関連白血病)
  3. MDS(骨髄異形成症候群)より移行した白血病
  4. FAB分類 M0, M4, M5, M6, M7
  5. 末梢血の白血球数が多い
  6. ALL(急性リンパ性白血病)の中でL3, Ph1(フィラデルフィア染色体)陽性ALL
  7. 中枢神経系の浸潤がある
小児急性白血病
  1. 年齢(1歳以下、10歳以上)
  2. FAB 分類 L2, 3
  3. 非リンパ球性
  4. WBC 2万以上
  5. Ph1染色体陽性

以上は説明はしていませんが、もし万が一の場合には参考になるかと思い、記述させていただきました。

 最後に、医師国家試験から 急性白血病の臨床症例を紹介します。(これは、だれからも文句のつけられない立派な症例です−こんな教科書的症例にあうことはまれでもありますが)

83E4
19歳の男性38℃の発熱で来院した。眼瞼結膜は貧血状であるが黄疸はない。四肢の皮下出血と口腔粘膜下の出血とを認める。頸部リンパ節腫脹はない。心・肺・腹部に異常所見はみられない。赤血球205万,Hb6.9g/dl,Ht20%,網赤血球5‰,白血球900(好中性桿状核球6%,好中性分葉核球30%,リンパ球62%,前骨髄球2%),血小板7万。骨髄穿刺所見:有核細胞数20万,G/E比9.5。ペルオキシダーゼ染色陽性を示す異常細胞を多数認める。この異常細胞の出現している塗抹May-Giemsa染色標本を別に示す。
診断はどれか。
a 急性骨髄性白血病
b 急性前骨髄球性白血病
c 急性単球性白血病
d 急性リンパ性白血病
e 赤白血病

2011090208.jpg
解答 b
白血球が極端に減少しているところを見てください。こういう白血病もあります。このタイプは、ビタミンAが効果があるタイプですが、治療が少しでも遅れると不幸な結果となります。。

80D25
52歳の男性。38℃の発熱と関節痛とを主訴として来院した。両側頸部に小指頭大のリンパ節を数個ずつ認め,肋骨弓下に肝1cm,脾1cmを触れる。赤血球215万,Hb7.5g/dl,Ht22%,網赤血球2‰,血小板3.1万白血球は2.1万で,大部分は芽球である。それら芽球はAuer小体陰性,ペルオキシダーゼ反応陰性,エステラーゼ反応陰性である。骨髄血塗抹May-Giemsa染色標本を別に示す。
診断はどれか。
a 急性骨髄性白血病
b 急性骨髄単球性白血病
c 急性単球性白血病
d 急性リンパ性白血病
e 赤白血病

2011090208.jpg
解答 d

75C21
65歳の男性。2週前から全身倦怠と熱感があり来院した。体温38.5℃。両側頸部に母指頭大までのリンパ節を数個ずつ触れ,右季肋下に肝を2cm,左季肋下に脾を4cm触知する。赤血球300万,血小板5万,白血球75000,末梢血塗抹Wright-Giemsa染色標本を別に示す。 
考えられるのはどれか。
(1) 伝染性単核細胞増加症
(2) 慢性リンパ性白血病
(3) 慢性骨髄性白血病(急性転化)
(4) 急性リンパ性白血病
(5) 急性骨髄性白血病

a (1),(2),(3)   b (1),(2),(5)   c (1),(4),(5)
d (2),(3),(4)   e (3),(4),(5)
2011090210.jpg
解答 e
血小板減少+貧血の2系統異常で、白血球数は正常。下手すると見逃す可能性もあるかもしれません。が、末梢血中に芽球が含まれています。これは、血液像が大事ということですね。(あまり自信なし)

70C18
23歳の男性。今年の6月より難聴,7月より紫斑が出現した。8月受診時,右季肋部に肝を2cm,左右頸部に小指頭大までのリンパ節を数個触知した。脾腫は認めなかった。血液所見:赤血球265万,Hb 8.7g/dl白血球27000(好中球3%,リンパ球20%,単球1%,骨髄にみられたのと同じ幼若細胞70%,前骨髄球3%,骨髄球2%,後骨髄球1%),血小板2.3万
検査では幼若細胞(写真)を76%に認めた。
診断はどれか。
a 急性骨髄性白血病
b 急性リンパ性白血病
c 慢性骨髄性白血病
d 類白血病反応
e 形質細胞白血病

2011090211.jpg
解答 a

92F24
12歳の女児。1週前から元気がなく,昨夜,鼻出血があり止血しにくかったため来院した。今朝から発熱が認められた。体温38.3℃。四肢と体幹とに出血斑を認める。眼瞼結膜は貧血状である。両側頸部に径1.0cmほどのリンパ節を数個触れるが,圧痛はない。肝を右肋骨弓下に2cm,脾を左肋骨弓下に3cm触知する。血液所見:赤血球340万,Hb 9.8g/dl白血球112000,血小板4万。血清生化学所見:GOT 36単位(基準40以下),GPT 26単位(基準35以下),LDH 1200単位(基準176〜353)。骨髄血塗抹May-Giemsa染色標本を別に示す。
この患児の予後不良因子はどれか。
(1) 年 齢
(2) 性
(3) リンパ節腫大
(4) ヘモグロビン値
(5) 白血球数

a (1),(2)  b (1),(5)  c (2),(3)  d (3),(4)  e (4),(5)
解答 b

急性リンパ性白血病の予後不良因子・・・年齢と白血球数
(疾患を正確に把握し、その疾患の予後因子を選ぶのでかなり難問)

89C1〜89C3
次の文を読み,1〜3の問いに答えよ。
6歳2か月の男児。発熱を主訴として来院した。
現病歴:1週前から元気がなく,時々38℃の発熱が現れるようになった。
発育歴・既往歴:妊娠経過は異常なく,40週に自然分娩で出生した。出生体重2960g。Apgarスコア4点(1分),8点(5分)。日齢3から光線療法を24時間受けた。新生児期から特異な顔貌があり,生後1か月頃に精密検査を受けた。1歳時の身長74cm,体重9kg。首の坐り4か月,つかまり立ち13か月,独り歩き23か月。まだボタンをうまく掛けられず,独りで靴を履けない。まねをして丸は書くが,四角は書けない。
家族歴:父42歳,母41歳。両親と4歳の妹とに特記すべき疾患はない。
現 症:身長106cm,体重18kg。体温38.0℃。脈拍100/分,整。血圧110/54 mmHg。皮膚に発疹は認めない。眼瞼結膜は貧血状で,眼球結膜に黄疸はない。右側頸部に径約1.5cmのリンパ節を2個触知するが,圧痛はない。胸骨左縁第4肋間にLevine2/6度の柔らかい収縮期雑音を聴取する。呼吸音は正常。肝を右肋骨弓下に2cm,脾を左肋骨弓下に触知する。深部腱反射は正常である。第5指が短い。咽頭に発赤はない。顔の写真(A)を別に示す。
検査所見:赤血球303万,Hb 8.7g/dl,Ht 26%,白血球4600(好中性桿状核球1%,好中性分葉核球8%,単球6%,リンパ球63%,異常細胞22%),血小板8万。血清生化学所見:総蛋白7.0g/dl,アルブミン3.7g/dl,総ビリルビン0.5mg/dl,GOT 29単位(正常40以下),GPT 15単位(正常35以下),LDH 820単位(正常176〜353),Fe 55μg/dl(正常80〜120),TIBC 320μg/dl(正常240〜310)。CRP 6.1mg/dl(正常0.3以下),リウマトイド因子陰性。

2011090212.jpg

89C-1 この患児について正しいのはどれか。2つ選べ。
a 新生児仮死があった。
b 発達指数は約70である。
c 1歳時のKaup指数は低値であった。
d 新生児高ビリルビン血症があった。
89C-2 この患児で予想される末梢血リンパ球の染色体核型はどれか。
a 46,XY,5 p−
b 47,XY,+13
c 47,XY,+18
d 47,XY,+21
e 47,XXY
89C-3 骨髄血塗抹May-Giemsa染色標本(B)を別に示す。
この患児に合併しているのはどれか。
a 伝染性単核球症
b 再生不良性貧血
c 骨髄異形成症候群
d 急性リンパ性白血病
e 慢性骨髄性白血病

2011090213.jpg
解答 1-a,d 2-d 3-d

ダウン症の子どもの症例
・高齢出産
・急性リンパ性白血病に罹患しやすい

78C56
4歳の男児。5日前から発熱と頸部リンパ節腫脹とがあり,本日,出血斑が数か所に出現したので来院した。入院時,全身の表在性リンパ節を多数触知し,肝・脾をそれぞれ5cm触れる。赤血球385万,Hb 10.2g/dl白血球15万血小板7万。末梢血白血球の97%は別に示すカラー写真に見られる細胞で,ペルオキシダーゼ反応は陰性である。骨髄塗抹標本でも同型の細胞が96%検出される。
この疾患について誤っているのはどれか。
(1) 乳児期に頻度が高い。
(2) 髄膜刺激症状がなくても,脳脊髄液検査を行う。
(3) 末梢血で多数にみられる白血球は,PAS反応陽性のことが多い。
(4) 尿酸腎症の予防的治療を行う必要がある。
(5) アクチノマイシンDが第一選択薬となる。

a (1),(2)  b (1),(5)  c (2),(3)  d (3),(4)  e (4),(5)
2011090214.jpg
急性リンパ性白血病です。

 うーん、問題の解説が見あたりません。医師の方で、間違いをみつけられましたら、ご指摘ください。

一般の方は、どういった年齢で、初期症状がどんな感じか、また血液検査の値はどんなものか。を見ていただければ幸いです。(何しろ医師国家試験ですから、だれが見ても文句のつけようのない問題文となっています)

 以上で、白血病入門シリーズは終了です。

ご苦労様でした。

■白血病入門
白血病入門(1)熊大の研修医時代
白血病入門(2)初期症状と血液データの読み方
白血病入門(3)白血病の種類と原因
白血病入門(4)治療その1−化学療法−骨髄移植の前準備
白血病入門(5)治療その2−化学療法と骨髄移植他2011.8.31

タグ:白血病
posted by いんちょう at 21:46 | Comment(0) | 原子力

放射性セシウム除染が困難な理由(2)

最近、急に閲覧者数が増えました。他の注目記事をご覧になるには、目次からどうぞ。

保安院ホームページ
東京電力株式会社福島第一原子力発電所の事故に係る1号機、2号機及び3号機の炉心の状態に関する評価についてから

別添資料
2011090201.jpg

・・例えば、こんな資料なども一応クリックしてみて、本当かどうかを確かめる。大事な確認作業だと思います。とにかく、発表される資料を鵜呑みにしないことです。・・

もはやおなじみとなりましたベクレル表示です。これでは、全く海のものとも山のものともつきませんね。全員が知っている重さに換算してみます。

 別サイトで教えてもらいました。

いずれのサイトもセシウム汚染がいかに微量であるかをうまく説明しておられます。

ベクレルを重さ(グラム)に変換する方法
放射性物質のベクレルと質量の関係

このうち、下のベクレル・質量換算から

Cs-137 質量数 137 半減期 30年
崩壊定数(sec-1): 7.33e-10
崩壊定数(day-1): 6.33e-5
崩壊定数(year-1): 2.31e-2
1g 当たり放射能(Bq): 3.22e+12
1Bq 当たり質量(g): 3.11e-13

表から、放出量

Cs-137 1.5E16 Bq = 放出量 4658g

これだけのセシウムが、日本全国にばらまかれました。
密度 1.93g/cm3 ですから、容量で 2300cm3 おおよそペットボトル1本分

金属にしてしまいますと、
2011090105.jpg
このくらいでしょうか。

 空気中の水,クロルなどと反応して塩(えん)になっていますから、化合物量としてはその数倍となるのでしょうか。
ましてや、セシウム-137には放射能があります。前回の知識とあわせて、これを除染することがいかに困難か、おわかりではありませんか?化合物とあわせてたかだか10kgの物質を、東日本エリアから取り除くことはほとんど不可能だと私には思えます。

 ひとまみの食塩を野球のグランドに空からまいたと想像してみてください。それをどのようにして除染しますか?水で洗えば、金属と化合物を作ってさびてしまいますし、拾い集めるには小さすぎます。セシウムの除染を行うということは、そういうことです(厳密にはナトリウムよりも反応性が高いのですから、さらに難易度は飛躍的に高くなります。・・・前回のビデオを見てください。)

 なお、ヨウ素についても放出量を見てみます。(これは、
崩壊定数(sec-1): 1.00e-6
崩壊定数(day-1): 8.66e-2
崩壊定数(year-1): 3.16e+1
1g 当たり放射能(Bq): 4.61e+15
1Bq 当たり質量(g): 2.17e-16

放出量が 1.6E17 Bq ですから

おおよそ 390gに過ぎません。

次に、プルトニウムについて、

ネプツニウム 239 と合算します。
崩壊定数(sec-1): 3.34e-6
崩壊定数(day-1): 2.89e-1
崩壊定数(year-1): 1.05e+2
1g 当たり放射能(Bq): 8.42e+15
1Bq 当たり質量(g): 1.19e-16

放出量 7.6E13 = 0.01g

プルトニウム239
崩壊定数(sec-1): 9.13e-13
崩壊定数(day-1): 7.89e-8
崩壊定数(year-1): 2.88e-5
1g 当たり放射能(Bq): 2.30e+9
1Bq 当たり質量(g): 4.35e-10

放出量 3.2E9 = 1.4g

たったこれだけの放射性物質が吹き飛んだだけで、東日本エリアが重篤に汚染されました。

野球場にひとつまみの食塩をばらまいた・・・・除染方法を思いつけますか。

そういうことだと思います。

(追記)
チェルノブイリ 強制避難エリア基準で考えてみましょう。

148万Bq/m2 = 148 0000 x 3.11 x e -13 = 0.00000046 g = 0.46μg /m2

食卓塩1粒 = 0.1mg = 100μg

セシウムと食塩では質量数が違いますがまあ、細かい話は置いておいて、

塩 1粒を 1リットルの水に溶かして、その塩水10ccを 1m2に散布

それを除染するのに等しい(それよりもはるかに難しいのは、反応の強さを見れば分かります。)労力がかかります。

気の遠くなるくらいの微量セシウムが 1 m2にあるだけで、その地区は人も住めない地区になってしまっているのです。


桁が小さすぎますので、間違っているかもしれません。ご指摘いただけますと幸いです

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原子力発電入門(8)−核分裂生成物の半減期と病気2011.8.15
原子力発電入門(6)放射能と放射線
フクシマは、どうなる−除染は未完の技術2011.8.4
チェルノブイリでは強制移住2011.5.25
タグ:P 除染
posted by いんちょう at 13:20 | Comment(2) | 原子力

2011年09月01日

2011.8月の注目エントリー

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  15. 放射能汚染
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  17. セシウムは日本全国に降り注いだ2011.8.30
  18. われわれは原発事故にどう対処すればよいか(肥田舜太郎氏)2011.6.26
  19. 白血病入門(3)白血病の種類と原因2011.8.25
  20. 上空の雲に放射能滞留?−飛行機内測定結果2011.7.25.

番外編(2週間で番組終了)
お互いの肌のぬくもりが生きる力になる2011.8.23 橋爪文氏の原爆体験、人間のすばらしさの講演(NHKラジオ)
これは、今月半ばで終了予定です。是非、聞いていただき、放送延長の願いを電話していただければと思います。

 今月も、ほとんどの記事が入れ替わりました。その中で残っている記事のうち、特に肥田舜太郎先生の講演は、大事です。まだ、お聞きになっていない方、またどうしようかと途方に暮れてしまったときなどに勇気をもらえると思います。(橋爪さんの原爆体験もまたそうです)私も、どうしようか、と思ったときによく聞いています。

 残念ながら、全て原発の記事。これでは、ちょっと息が詰まりますね。

次に
リンク元サイト上位3(twitter・検索サイトのぞく)
  1. 放射能防御プロジェクト 木下黄太のブログ  「福島第一原発を考えます」
  2. EX-SKF-JP
  3. カレイドスコープ
84カ国の国と地域からアクセスがありました。
  1. Japan  95.8%
  2. United States  1.3%
  3. Germany  0.3%
  4. France  0.3%
  5. Australia  0.3%
  6. Thailand  0.2%
  7. Canada  0.2%
  8. China  0.2%
  9. (not set) 0.2%
  10. United Kingdom  0.2%
フランス語サイトで紹介されたためか、すこしフランスからのアクセスが増えました。

次に国内の状況
  1. 渋谷
  2. 横浜
  3. 新宿
  4. 大阪
  5. 千代田
  6. 埼玉
  7. 名古屋
  8. 札幌
  9. 千葉
人口に比例してアクセスがある印象です。

今後ともよろしくお願いします。

■関連ブログ
2011.7月の注目エントリー他2011.8.3
6月の注目エントリー2011.7.2
タグ:注目
posted by いんちょう at 23:12 | 原子力

放射性セシウム除染が困難な理由(70万アクセス)

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まひるのサンタさん 腐食から
2011090101.jpg2011090102.jpg
海の様子を見に行って横棒に足をかけたらボソッと落ちた!

海岸の歩道脇のこの鉄製の柵は何十年も経ったように見える。
しかし、本当は5〜6年だ!
たえず波しぶきがかかるところでは腐食が激しくボロボロ落ちていく。


海岸沿いにお住まいの方は、よくご存じの海風による腐食です。

さて、本題。セシウム・・・ほとんどの人が見たことも聞いたこともなかった金属でしょう。こういった場合には、化学の知識を動員します。まず、周期表から

2011090103.jpg

セシウムは、Cs一番左の下から2番目にあります。(ご確認ください)
この縦に並ぶ金属 上から
Li(リチウム)
2011091004.jpg
Na(ナトリウム)
2011091005.jpg
K(カリウム)
2011091006.jpg
Rb(ルビジウム)
2011090105.jpg
(ここからガラス管保管でしょうか)
Cs(セシウム)
2011091007.jpg
Fr(フランシウム)

は、アルカリ金属といわれ、非常に反応しやすい金属なのです。現在よく使われているLi-ion(リチウムイオン電池)が、不適切な利用を行うと爆発騒ぎを起こすのはご存じではないでしょうか。

 ナトリウムは、皆様よくご存じの食塩の成分(NaCl)です。非常によく知られた物質です。
このナトリウムを見たことがある人は、ほとんどいないのではないでしょうか?鉄、アルミニウム、金、銀といった いわゆる我々がよく知っている安定した金属とは全く性質が異なります。
空気中の成分と爆発的に反応を起こしてしまうため、空中で保管することはできず、石油などに入れて保管する必要があるからです。

ナトリウムを単体で大量に利用しているのは、ご存じもんじゅ。ナトリウム漏れ事故の動画です。ナトリウムにより配管、支持構造物がぼろぼろになっているのがよく分かります。すなわち金属ナトリウムは、腐食性が非常に強いのです。


次に英語ですが、アルカリ金属の性質 空気酸化や水との反応


Li(リチウム) -> Na (Sodium) -> K (Potassium) -> Rb(Rubidium) -> Cs (Caesium)

と比較しています。最後の水との反応を見てください。右に行くほど反応が激しくなり、最後のセシウムの時には、水槽が爆発します。周期表が下になればなるほど、金属が凶暴となる印象で、反応が激しくなります。

(簡単なビデオの説明)
・アルカリ金属には、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム の6種類がある
・全て柔らかい金属で、ナイフで切ることができる。
・最初のカットは、リチウム。ナイフで切るとメタル色がみえる。空気と反応して徐々に黒くなる
・ナトリウムも切ることができるが、リチウムよりも早く黒くなる
・カリウムを切ると、すぐに変色してしまって、メタル色を見ることはできない。
・周期表の下になるに従って、空気との反応スピードが速くなる。
・最後の水槽への投入は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムの順。最後水槽が爆発するのは、セシウムを投入したとき。

もう一つ別のセシウムと水との反応動画(Slow Video)


我々はこのようにとてつもなく反応しやすい金属と戦わなければならないのです。冒頭に掲げた塩害(ナトリウム)以上の反応を持つ物質が金属につくとどうなるのでしょうか?単に、物質の上にくっつくというよりも、物質と簡単に化学結合しそうです。

ソビエトではどうなったか。

放射性セシウムの恐怖 前編『除去を諦めたロシア』 から
チェルノブイリ原子力発電所の事故から25年。
 半減期が約30年の放射性セシウムによる土壌汚染が問題になっている。しかし、一方で放射性セシウムの除去を何年も行ってきたが、ロシアは結局諦めてしまった。それは何故なのか。

 チェルノブイリ原発事故では大量の放射性セシウムを含む放射能が飛散した。放射性セシウムは非常に反応しやすい物質で、常に他の元素と結合した状態で発見されている。IAEAが行った環境影響調査結果では、「屋根材やコンクリートにも容易に結合している」と報告がされている。
 放射性セシウムの半減期は30年。ガンマ線という波長の短い電磁波を光の速さで放射する。そして生物に衝突し、DNAを傷つける。飛散距離が長く、これを遮蔽するには10cm以上のコンクリート、鋼鉄、鉛、水しかない。


 いかがでしょうか、セシウム除染が非常に困難と考えられる理由を納得していただけたでしょうか。

 日本では、次のような記事が流れています。

産総研、土壌のセシウム除去で新技術
2011/9/1 11:32
 産業技術総合研究所(茨城県つくば市)は1日までに、土壌中のセシウムを除去する新技術を開発したと発表した。低濃度の酸と顔料の一種であるプルシアンブルーを利用する。放射性セシウムを含む廃棄物の量をもとの土壌の150分の1に減らせる見込み。従来手法よりも扱いやすく低コスト化が期待できるという。福島県などでの除染に役立てたい考え。

 土壌中のセシウムは特に粘土粒子にくっついている。新技術はまず薄い硝酸か硫酸を土壌に通して粘土からセシウムを水溶液中に抽出する。

 薄い硝酸を使った場合は200度、45分でほぼ100%抽出できた。さらに、水溶液中のセシウムイオンをプルシアンブルーの微粒子に吸着させた。微粒子の量は汚染土壌の150分の1で済み、廃棄物を減らせる。
 実験には非放射性のセシウムを使ったが、放射性セシウムでも同様の結果が得られるという。
 従来のセシウム抽出法は高濃度の酸を使うので取り扱いが難しく、コストもかかっていた。農地の土壌を傷める難点もあったという。新技術の酸は濃度が従来の12分の1と薄く利用しやすい。今後、協力企業を募り実証試験を進める予定だ。


 うまくいけばいいのですが。。。

セシウム・・・それにしても、放射能がなくても恐ろしい金属です。

 冒頭の塩害の写真。これをどうやって、元通りにします?我々にできるのは、このガードレールを撤去するだけではないのでしょうか?

 塩(ナトリウム)よりもはるかに結合性の強いセシウム、それを除染できるといわれて、あなたは信用できますか。

注:もちろん、セシウムは単体セシウムではなく、塩(えん)になっています。しかし、海風よりもはるかに強い腐食能力があるのは間違いなく、それゆえコンクリートにも、金属にも容易に結合してしまうのです。(チェルノブイリで証明されています)

反応性が非常に高い金属原子が、ごくごく微量ばらまかた。しかも半減期が30年

除染が非常に困難な理由です。

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posted by いんちょう at 22:19 | Comment(3) | 原子力

今、見ておかなければならない動画


・人類が今まで経験したことのない災害
・どう処置をしたらよいのかだれも分からない

ネット工作員さん、ご苦労様

・事故の収束方法は、まったく間違っている
・水をまいたところで、全く見通しがない。
・素人(政治家、東電)にまかせても、事故の収束はつかない。

2011/3/13 高濃度汚染地区の迫真動画・・早過ぎたレポート


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posted by いんちょう at 06:19 | Comment(0) | 原子力

福島作業員の白血病診断が早過ぎる

最近、急に閲覧者数が増えました。他の注目記事をご覧になるには、目次からどうぞ。
(しばらく同文をブログの最初に記述します)

福島第1原発:作業員が白血病で死亡 東電が発表
 東京電力は30日、福島第1原発で作業に携わっていた40代の男性作業員が急性白血病で死亡したと発表した。外部被ばく量が0・5ミリシーベルト、内部被ばく量は0ミリシーベルトで、松本純一原子力・立地本部長代理は「医師の診断で、福島での作業との因果関係はない」と説明した。
 東電によると、男性は関連会社の作業員で8月上旬に約1週間、休憩所でドアの開閉や放射線管理に携わった。
 体調を崩して医師の診察を受け急性白血病と診断され、入院先で亡くなったという。東電は16日に元請け企業から報告を受けた。事前の健康診断で白血球数の異常はなく、今回以外の原発での作業歴は不明という。【林田七恵】
毎日新聞 2011年8月30日 東京夕刊



福島第1原発作業員の白血病死、作業とは関係なし−東電
 東京電力は30日、同社の福島第1原子力発電所で短期間働いていた40歳台の作業員が急性白血病で亡くなったと発表した。痛ましいことである。だが、このことによって改めて原発作業員の安全への懸念が高まった。
しかし、問題山積の原発を運営する問題山積の東電は、原発での作業と作業員の死に因果関係はないとしている。
この作業員は元請け会社から8月初旬に約1週間、福島第1原発に派遣された。氏名は明らかにされていない。
東電広報部の川又浩生氏は、元請け会社から提出された医師の診断書からすると、作業員が2、3週間前の作業で受けた被ばくによって急性白血病を発症したとは医学的に考えられない、という。作業員の死因について、これ以上の詳細は聞くことができなかった。
 作業員は、福島第1を離れた後で体調を崩し医師の診察を受けた。東電は8月16日に元請会社から死亡の報告を受けた。元請け会社が提出していた福島第1で働き始める以前に行われた健康診断では、健康の問題は全くなかった。


 そもそも、放射線従事者であれば、勝手に住民票を取り寄せ、死亡届けを合法的に使って、放射線被曝の影響を調査しています。形式的には合意を取っていますが、このような調査をしておきながら、なぜ今回は一切の情報を出さないのでしょう。少なくとも、以前放射線に関係する仕事をしていたかどうかは、簡単に分かるはず。(個々人に全国共通の番号があり、それをみれば簡単に分かる)プライバシーとは関係ありません。なぜなら、放射線従事者になっていたかどうかの情報と、あとどれだけの累積被曝があるかだけで良いのですから。半ば強引な疫学調査を片方ではやっているのと、全くバランスがとれないと思えます。福島の方々も疑いようもなく、おなじ調査の対象者です。(もちろん、補償とセットで)

 さて、冒頭の毎日の記事。何気ないことが書かれていますが、我々開業医にとっては見逃せない情報が入っています。

8月上旬に約1週間、休憩所でドアの開閉や放射線管理に携わった。
 体調を崩して医師の診察を受け急性白血病と診断され、入院先で亡くなったという。東電は16日に元請け企業から報告を受けた。事前の健康診断で白血球数の異常はなく


・事前の健康診断(おそらく7月でしょう)では、白血球数の異常がなかった。
体調を崩して、急性白血病と診断された

 この診断の過程が不自然に早過ぎるのです。なぜ、我々医師がなかなか白血病を診断できないか。それは、白血球数などそれほど定期的には調べないからです。たとえば、風邪などの体調不良を訴えて来られた方がいたとしましょう。もしかしたら、白血病かもしれませんが、我々開業医はまず血液検査などはしません。
 なぜか。

風邪の患者ごとに血液検査をしていたら、疑いようもなく明らかな過剰診断であり、早晩社会保険の監査がはいり、保険医療機関としての免許取り消しになるからです。これは100%間違いありません。

 どの患者さんに、どの検査をするか。それが一番難しいのです。全員にすればもちろん確実ですが、そんなことをすれば日本の保険制度は崩壊してしまいます。血が止まらない。という訴えがあればもちろん調べますが、それでも血液を止める働きの血小板が減っていたり、凝固機能に異常があることは非常にまれで、次回受診の時には「先生、良くなりました。」と言われることがほとんどなのです。

 採血をすれば、白血病と診断することは、どんな医者にもできます(一部難しいのもあります。もちろん)。しかし、採血をするかどうかを決断するのが一番難しいのです。

 では、この記事を見てみましょう。体調不良(どのような臨床症状か書いてはありませんが)程度ですぐに血液検査をしているところが、私には大変不思議です。上記で述べたように、体調不良などの症状では、普通は血液検査など行わないからです。こういった体調不良を訴えた人全員に血液検査を行っているとすれば、その心当たりがあるからとしか思えません。(最初に診断を下した医師は、どこの医師でしょうか?医師を匿名にする必要はないと思います)−ですから、最初の臨床症状を公開するのは非常に大事なのです。紫斑などが出ていたり、歯茎が腫れたりしているとすれば、過剰検査ではないでしょう。もちろん。
 また、その場で血液検査結果が出るような体制がすでに組まれている(このような機械は、簡易的なものでも数百万円します。内科の医院でおいてあるところはそれほど多くはありません。−私の医院にはありません)のでしょう。

なぜ、原発作業とはまった関係ないと言い切れるのに、体調不良ですぐに血液検査をしたのか

そこに大きな疑問があります。体調不良があれば、原発作業員は全員血液検査をすると言うわけですか?そうだとすれば、その理由はなぜですか?

私が情報を開示していただきたいことは次の通りです。
・放射線従事者登録の有無。登録されているとしたら、その累積被曝線量
・一次診断を下した医師名と、その血液検査結果(病院の医師はむしろ必要ありません)
・できたら、福島で働く前の居住地(これは、プライバシーで拒否か)

関連ブログを読んでいただくことで知識が増え、報道の真意を読み取ることができるようになると思います。時間の許す限りお読みください。また、目次も手短にまとまっています。あわせてどうぞ。

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タグ:白血病
posted by いんちょう at 05:39 | Comment(13) | 原子力
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