2008-10-15 18:55:29

山に登ること①

テーマ:ブログ

山頂に何を掲げるのか?正解はパン ティーでした!


単独無酸素登頂者は世界で何人かいるかもしれませんが、マナスルの山頂にパン ティーをもっていったのは栗城史多しかいないはずです。世界初パン ティー無酸素登頂です。

ベースキャンプに下山してから凍傷の治療をして、空気の濃さと生きている実感に満たされています。唇は乾燥し、腕はやせ細ろえて、一日椅子に座っているのがやっとでした。

下山するまでは睡眠欲や食欲がいっぱいで、早く何か食べたいと思っていましたが、いざ目の前に御飯が出てきても少ししか食べれなく、まだ興奮しているのか睡眠も十分にとれません。

昨日、久しぶりにメールを見ると沢山の人達からの応援メッセージが届いていて、元気と感動を逆にいただきました。本当に有難うございます。そして、これはブログを書かなくてはいけないと思い、指の先に違和感を感じながらパソコンを打っています。
 
時間が経つにつれて、登頂したという実感が少しずつ出てきました。それまでは本当に自分がその孤高の世界にいたのか、ただ寝袋の中で夢を見ているような感覚でした。

今日は写真いっぱいです。そして、マナスルが僕に感じさてくれたことを、皆さんも少しでも感じていただければ幸いです。


10月9日
食糧と燃料は全て標高6900mに置いてきた。ジェットストリームとの長期戦の準備はできている。

「ジェットストリーム体験済み」

それが登山家としてカッコイイ感じがしていた。ところが、標高5700mのキャンプ1に向かうと、ジェットストリームを警戒してか、ほとんどの隊がいなくなっていた。

雪は深く、目の前の視界は白一色だ。キャンプ1に着く途中で、単独で来ているペルー人を発見した。彼はすでに何度かアタックしているが、標高7200mで雪の深さに限界を感じ、下山してきたのだ。
 
「雪が深すぎる。雪崩も起きているぞ」と言っていた彼は、キャンプ1からキャンプ2にかけての雪崩の巣を通過した時に真横で雪崩が起きたそうだ。彼は、イヤホンをつけて音楽を聞いていたのでしばらくは気付かなかったそうだ。雪崩に負けない音楽。一体何を聞いていたのか気になる。
 
キャンプ1に着くと、案の定だれもいない。唯一、かまぼこ型のテントに大きな体の男達が4人ほど立っている。ロシア隊だ。
 
もし彼らが明日、標高6400mのキャンプ2に先に行ってくれれば、深い雪をかき分けて進まなくても済む。ところが、その安易な予測はすぐに外れた。
 
翌日の天気はジェットストリームを感じさせない好天。雪はかなり積もったが、ここで進まないわけにはいかないだろう。テントの窓からロシア隊の動きをじっと見ていたが、午後になると彼らは上ではなく、下の方に向かいだした。どうやら雪崩を警戒して、下山したようだ。
 
たまたまロシア隊のシェルパが僕の知り合いだったので事情を聴くと、「この雪だと雪崩が起こる。上には上がらない方がいい」とのこと。
 
風もない快晴のマナスル。ジェットストリームの次は雪崩か・・と狭いテントの中に潜り込んだ。



翌日の10月10日。

1日経つと、昨日までの柔らかい雪が湿っている。今日も好天だ。もしかしたらジェットストリームは過ぎ去ったのかもしれない。

僕はテントを足早に片付け、午前7時にキャンプ1を出発する。登頂は全て天候で決まる。通信担当の藤川さんが調べつくした結果、12日が快晴となるようだ。そこを目指すためには、今日中にこのキャンプ1からキャンプ2を越えて、標高6900mのキャンプ3までに着かなくてはならない。
 
ところが、あの強力なラッセルを期待していたロシア隊はもういない。ここから先は、自分一人で雪をかき分けながら進まなくてはならないのだ。行けるところまで行ってみるかと、軽い気持ちで膝上までの雪に足を突っ込んだ。
 
セラックやクレパス地帯を越えていくと、斜度40度の「雪崩の巣」にぶつかった。先日、高所順応を済ませて下山してきた時には大規模な雪崩が起きていた場所だ。今回はすでに、小さい雪崩が起きて危険はおさまっている。

しかし、この柔らかい雪崩の跡を通過するのがまた大変なのだ。雪は思っていたよりも深く、胸までの深さ。歩くというより、雪の中でバタフライをしながら少しずつ進んで行く。まるで人間除雪機だ。




キャンプ3に着いたのは、陽も暮れた午後8時を過ぎたころ。日本の山ですら12時間行動もしたことがないのに、酸素が半分以下の極地で12時間ひたすら雪をかき分けて進んだのだから、肩や膝に相当な負担がかかった。
 
極度の疲れは、さらに体に負担をかける。高所では雪を溶かし、6リットル近くの水分補給をしなくてはいけないのだが、体に力が入らず、すぐに寝袋に入ってしまった。さらに体力がなくなる悪循環だ。

こんな時に、水を作ってくれる仲間がいればいいのにと思いながら、残り少ない水分を口にした。

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