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「ちょっとそこの召使さん。貴方はどんな味がするかしら?」
一年前まで、バニカ・コンチータの所有する館には十数人の召使とメイドがいた。 館の主である彼女にその言葉を囁かれることは、つまり囁かれた側にとって死を意味する。 顔を真っ青にして逃げ惑う召使やメイドを捕獲して殺しながら、リンとレンは常に考えていた。
嗚呼、なんで愛される事をそんなに嫌がるのだろう、と。
愛されるなんて贅沢な事なのに、何を思って彼らはそれを拒否するのか。 愛される事の素晴らしさ、嬉しさを、きっと彼らは理解していないのだ。 羨ましい。妬ましい。 コンチータ様にそっと囁かれたのが僕達なら、きっと逃げ惑うなんてせず喜んで自分の体を切り刻むのに。 生きながら彼女に愛されるのは、きっと痛いのだろうけれど。 それでもリンとレンは、いつかバニカ・コンチータの美しい指と口で愛されることを願っていた。
だからその囁きが自分達に向けられた者だと気付いた時、二人の心を包んだのは、純粋な喜びだった。
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