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2011年9月2日(金)付

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自民党へ―政策で勝負するときだ

野田新首相がきのう、自民党の谷垣総裁、公明党の山口代表と会談し、協力を求めた。野党とくに自民党はどう対応するのかと注目したが、なんとも素っ気なかった。[記事全文]

避難長期化―生活再建の選択肢示せ

「ここで元通りの生活を取り戻すのは難しい」福島第一原発から20キロ圏内の警戒区域に一時帰宅した住民の一人は、高い放射線量の測定値を目の当たりにして、「現実を思い知らされ[記事全文]

自民党へ―政策で勝負するときだ

 野田新首相がきのう、自民党の谷垣総裁、公明党の山口代表と会談し、協力を求めた。

 野党とくに自民党はどう対応するのかと注目したが、なんとも素っ気なかった。

 自民党は民主党3人目の首相の「正統性」を否定する。だから谷垣氏はこれまで通り、第3次補正予算までは協力するが、その後は一刻も早く解散・総選挙をせよと応じた。

 だが、どうだろう。原発事故はまだ収束していない。復旧・復興事業も軌道に乗ったとは言えない。地方選を延期し続けている被災地も多い。

 ここは来年度予算編成でも与野党で共同歩調をとり、震災対応にあたるときではないか。

 振り返れば、6月の不信任案提出時に、谷垣氏は「(菅首相が)辞めれば、党派を超えて団結するのはいくらでもできる」と述べていたではないか。

 自民党は、有権者が民主党政権に愛想を尽かしている割に、自分たちの支持率が伸びない理由を真剣に考えるべきだ。

 たとえば、8月の民自公3党合意だ。子ども手当などを見直す代わりに、赤字国債発行を認める法律を成立させる合意は、民主党に看板政策を見直させ、菅内閣に引導を渡すもので、自民党の得点だったはずだ。

 しかし、赤字国債の発行を人質にとる手法に、世論の共感は広がらなかった。巨額の借金なしに予算を組めない財政にしたのは自民党政権だと、だれもが知っているからだ。

 下野した自民党は綱領を見直したり、候補者公募を増やしたりしてきた。けれど、借金体質や社会保障不安を招いた失政の総括と、その打開策を示したとは言い難い。年内に総選挙をしても、最大の武器が民主党批判なら、あまりにさびしい。

 さらに言えば、増税問題や原子力政策、TPP(環太平洋経済連携協定)について、党の見解はどうなのか。いまは民主党の党内対立ばかりが目立っているが、自民党も似たような事情を抱えているではないか。

 いわば、民主党も自民党も国の将来像を描く政策で党内が一致できないのだ。これで総選挙をされても有権者は戸惑う。

 民主党の党内融和で、しばらく内閣不信任案は通りそうにない。同時に国会は、野党が賛成しなければ法案が通らない。自民党はこの状況を生かして、政策形成に積極的にかかわるべきだ。どんどん修正案を突きつけ、独自の法案も出せばいい。

 その上で、新生自民党をアピールして初めて、党の展望が開けるはずだ。

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避難長期化―生活再建の選択肢示せ

 「ここで元通りの生活を取り戻すのは難しい」

 福島第一原発から20キロ圏内の警戒区域に一時帰宅した住民の一人は、高い放射線量の測定値を目の当たりにして、「現実を思い知らされた」という。

 菅首相は先週末、福島市を訪れた際、佐藤雄平知事に対し、高線量地域をできるだけ縮小する努力を約束しつつ、「こうした取り組みをしてもなお、長期にわたって帰還・居住が困難となる地域が生じてしまう」との見解を伝えた。

 これについて、「帰れないという判断は性急で、配慮に欠ける」といった批判が出ている。

 もちろん、汚染の実態やどこが帰還困難な地域に該当するのかといったデータが示されないままでは、唐突にすぎる。何より国の取り組みにはスピード感が決定的に欠けており、地元がいらだつのは無理もない。

 とはいえ、汚染度の高い地域で線量を十分に下げる作業は容易ではない。文部科学省がこのほど公表した土壌汚染の調査結果も、そのことを示している。しかも、病院や商店などの生活インフラを整え直さないと暮らしは成り立たない。時間がかかるという現実は直視したい。

 除染作業を急ぐと同時に、長期にわたり自宅に戻れない人が出る事態を踏まえて、支援策のメニューを示す必要がある。

 「ふるさとの復興」は誰もが望んでいるが、その前に個人の生活が立ちゆかなくなっては元も子もない。

 多くの避難者は今、県が借り上げた賃貸住宅に入っている。だが、入居は最長2年が原則だ。狭すぎたり、別の場所で新しい仕事を見つけたりといった事情で、新たな住宅の購入を希望する人も出てくるだろう。

 その際、心配の種になるのは、警戒区域内にある土地や建物の扱いだ。現状では、住むこともできず、売って資金にすることもできない。

 被害者への賠償の一環として、国や東京電力がこうした物件を借り上げたり、買い上げたりする枠組みを整備することは不可欠だ。

 地域コミュニティーを維持したいという思いが強い人たちには、集団移住という選択肢も準備しなければいけない。

 たとえ、線量が十分に下がって戻る条件が整ったとしても、子どものいる家庭などは心機一転、別の場所での生活を望むかもしれない。その際の賠償も検討したい。

 避難長期化や転居にも対応する幅広い選択肢を用意する。国と自治体は検討を急ぐべきだ。

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