携帯端末を“押し付ける”イー・アクセス躍進への秘策
(ダイヤモンドオンライン 2011年9月1日配信掲載) 2011年9月2日(金)配信
とりわけ東日本大震災では、その通信網が意外な力を発揮した。
じつは震災後、イー・モバイル端末には一度も通信規制がかからなかった。被災した基地局878局のうち津波で全壊したものは約1%。それも5日間で8割がたが復旧した。後発参入のために、基地局が小型化され復旧が容易だったのだ。
そのため個人だけでなく、危機管理対策として法人の需要も生まれた。イー・モバイルが震災時に使える端末だと認められたのだ。
この秘策を打ち出せる理由は、もう一つある。財務面が安定したことだ。
通信のようなインフラ事業は先行投資が必要だが、10年度にようやく設備投資がひと段落、モバイル事業の営業損益が初めて黒字化した。つまり今後は契約者が増えるぶん、キャッシュを稼げる企業体になったというわけだ。
事実、実績も出てきた。今期の契約件数は見通しの385万件を上回るペースで増えている。震災の影響が約1億円で済んだこともあって、今期は前年度比10.2%増の売上高2000億円、同16.7%増の純利益170億円と、過去最高益となる見通しだ。さらに業績予想の上方修正の可能性が高い。
同社のエリック・ガン社長は「契約数は予想よりかなり伸びている。居酒屋で食べ放題と飲み放題があるように、データ通信と音声通話も定額料金で安心して使ってもらえるようにしたい」と話す。
勢いづいた同社は、携帯1台目を申し込むと3台目まで無料になるキャンペーンも打ち出している。
“押し付けた”端末が将来的にキャッシュを生む、飛躍の種を着々とまいている。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 小島健志)
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