携帯端末を“押し付ける”イー・アクセス躍進への秘策
(ダイヤモンドオンライン 2011年9月1日配信掲載) 2011年9月2日(金)配信
「携帯電話は使わなくてもいいんです。イー・モバイルを使う人が増えたときか、災害時に使ってください」。
2台目の携帯電話を持つ必要がないために断ろうとする客に、スタッフは「箱にしまったままでも構いませんから」と食い下がってくる。
イー・モバイルの販売店では、今年7月からこのようなデータ通信端末を契約した客にもれなく携帯電話を“押し付ける”キャンペーンが行われている。
その名も「セットで話そうキャンペーン」。携帯端末の代金とイー・モバイル同士の通話を24時間無料にするもの。基本料金すら無料となる大胆なプランだ。客は携帯を箱に入れておいても損はない。
これでは、イー・モバイルブランドを展開するイー・アクセス社は赤字を垂れ流すことになる。業界では端末代金を実質的に無料にしても、2年間の割賦契約を結んで縛りをかけ、基本料金や通話料金で儲けるのが常識だからだ。
じつはからくりがある。“押し付ける”携帯端末はすべて在庫品。すでに特別損失で処理しており、今期の業績に影響が出ないのだ。それどころか、形ばかりの契約を結んで客を確保している。
それでは、なぜカネにならない端末をわざわざ“押し付ける”のか。
これは、データ通信に特化してきた同社が音声通話に本格参入する上での妙案なのだ。
2005年に携帯電話事業に参入し、07年からデータ通信の定額サービスを始めた。基地局を一から整備したため、他社に比べて通話可能な地域はごく限られていた。そのぶん、高速データ通信に特化して客を集めた。10年度の累計契約件数は、3年前の約8倍の311万7900件まで伸ばし、うち約9割がデータ通信の利用者だ。
通信網の人口カバー率が92%に達し、全国ほとんどでつながるようになったことで、いよいよ音声通話携帯の需要も取り込める体制になったわけだ。
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