群青の空に乱れ咲く
テーマ:断片的小説初めてお前と逢ったのは、群青の空に金粉の散る渡り廊下
鮮やかな青い髪を風に揺らし、憂いを帯びた眼差しで、
対照的な俺の紅い眼を見遣ったのだ。
毎日のように要塞の渡り廊下でお前とすれ違う
汗くさい男どもの集団と呼ぶべき傭兵衆に混じる、紅一点
いつ誰に犯されてもおかしくない状況でもお前は美しかった
誰もが触れることすらためらうほどの美貌
息をのむほど洗練された稽古風景
人を寄せ付けまいとすべてを拒む冷たい眼
なにもかもが、俺の心に突き刺さる
ある日いつものように渡り廊下ですれ違って
俺は無意識のうちに横をすり抜けたお前を視線が追う
そして 眼が 合った
声らしい声も発することがままならないうちに、お前は言った
「動くな!!!!」
鋭いアルトに、全身が硬直する
ひらりとお前の右手が閃き、ダンッ!と背後で地面を蹴る音
振り返ると、黒い影が俺と距離を置くように飛び退いていた
右手には白銀の刃が握られて、左手には小刀
小刀は警告を発したお前のものだと、すぐにわかった
金属が擦られる音とともに鞘から剣を引き抜き、構える
「実力差が解らないほど間抜けでもあるまい。退け!」
ぐらり、と――――黒い影がゆがみ、消える
それとほぼ同時に思い出したように呼吸が乱れ、汗が吹き出る
緊張していたのだと気付く
お前に・・・・まだ成人すらしていない小娘に助けられた
鞘に剣を収めながら、お前は静かに告げる
「背後に気を付けろ。私がいなければお前は殺されていたな」
「………悪い」
「構わない。次に狙われることがないのを願え」
群青に散る金粉が、まるで乱れ咲く白い花のように。