農業情報研究所>環境>原子力>東電福島第一原発事故関係>2011年5月20日
困ったこと 「ヒマワリ作戦」に高校生集結
恐れていたとおり(絶対にやってはならない 菜種等による放射能汚染土壌の浄化現地実験 汚染拡大・深化の恐れ)、困ったことになった。宇宙航空得研究開発機構の宇宙科学研究所・山下雅道専任教授らのインターネット上での呼びかけに呼応、福島第一原発事故で放射能に汚染された土壌をヒマワリを植えて浄化しようとする「ヒマワリ作戦」に全国の高校生たちが集まり出したというのである(東京新聞 2011年5月20日 第30面 高校生集結 ヒマワリ作戦−記事リード部分のみ)。
神奈川県の平塚農業高校園芸研究班は、放射能を避けて上空からまくための種と水分を封じ込めたカプセルを作った。山形県の村山農業高校は取れた種を提供したいと申し入れた。
それだけではない。平塚市のNPO法人・ASE自然農業会は、40ヘクタールに植えたいという南相馬市からの要望に応え、ヒマワリの大産地であるタイから入手した種を送った。南相馬市を訪れ、地元の人たちと農地に種をまく予定という。ヒマワリの効果を聞いた三春町の花卉農家は、友人の田んぼと合わせて2ヘクタールにヒマワリを植えるという。
前にも書いたとおり、根が80センチも深く伸びるヒマワリがセシウム137を吸い上げる効果があるとすれば、降下したセシウムが長い時間をかけて土壌深く浸みこんでしまったあとのことだ。土壌中の物質に固着、せいぜい2〜3センチの表土にとどまっている現状では、いかなる除染効果も期待できない。仮にもっと深く入り込んでいる場合にも、水に溶けださないセシウム137は吸い上げることができない。ヒマワリはセシウム137を20日で95%除去するなどという話が巷間に飛び交っているが、これにはいかなる証拠もない。
効果がないだけならまだよい。今は土壌表層にとどまっているセシウム137を、ヒマワリの根が土壌深く拡散させ、また収穫物の処理が汚染をさらに広げてしまう恐れがある。汚染度が低く、少しばかり削ぎ取れば、また場合によっては下層土を混ぜ合わせることで復活できるかもしれない農地を台無しにしてしまう恐れがあるのである。
チェルノブイリ救援・中部の河田昌東氏のインタビューを聞けば、こうした懸念が門外漢の杞憂でないことが分かる。
チェルノブイリ救援・中部の河田昌東氏インタビュー(2011/5/7)
http://www.youtube.com/watch?v=3Q7wLVteD6A
農水省か文科省か知らないが、取り返しのつかない事態を招かないように、根拠のないうわさに踊らされたこうした動きに、手遅れならないように緊急に歯止めをかけるべきである。マスコミも、これがさもいいことのようにはやし立てるのではなく、弊害もあり得ることに注意を喚起すべきである。