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[29127] サテライトウィッチーズ (機動新世紀ガンダムX×ストライクウィッチーズ)
Name: 三振王◆9e01ba55 ID:664d5fcd
Date: 2011/08/02 08:59
※この作品は平成ガンダム三部作の第三作目“機動新世紀ガンダムX”と、人気パンツアニメ“ストライクウィッチーズ”のクロス作品でございます。

※時系列はガンダムX側は最終回中、ストパンは第一期の1話の最中からスタートです。

※クロスカプ要素、ハーレム要素ありの予定

※二部編成の予定。

※オリ主はいませんがオリ敵はいます(出番は2部になってから)


それでもおkな人はどうぞ楽しんでいってください。








[その他のアルカディア投稿作品]

【ガンダム系】
○Lyical GENERATION(ガンダムSEED DESTINY他×リリカルなのはシリーズ)
○ANGEL FEATHER MARCH(ガンダムW×そらのおとしもの)

【特撮系】
○汽笛が鳴る頃に(仮面ライダー電王×ひぐらしのなく頃に)

【短編】
○リリカルなのは×スイートプリキュア短編



[29127] プロローグ「消失」
Name: 三振王◆9e01ba55 ID:664d5fcd
Date: 2011/08/01 22:28
LG another episode 02





かつて、戦争があった。


ひとつのスペースコロニーが起こした独立戦争が発端となった紛争は、地球連邦側とスペースコロニー側の全面戦争にまで拡大し、宇宙革命軍がコロニー落とし作戦を盾に地球連邦に降伏を迫ったことに対して、連邦軍が徹底抗戦の姿勢を崩すことなく決戦兵器“ガンダム”を投入し戦闘を泥沼化させたため、ついに最悪の結果を迎えてしまう。コロニー落としにより地球は壊滅的な被害を受け、100億を誇った人口はそのほとんどを失った。そして15年の時が流れた。
A.W.0015、地球環境がようやく安定期に入った地上では少ない物資を勝ち取るため人々の争いが絶えず、略奪者が跋扈する混乱の時代を迎えていた……。


そんな折、この世界に生きる戦災孤児の少年ガロード・ランはある日、不思議な力……ニュータイプ能力を持つティファ・アデイールと、伝説のMS“ガンダムX”と運命的な出会いを果たす。
彼はティファを保護しに現れたジャミル・ニート率いるフリーデン隊と共に旅に出て、その先で“力を持たないもの”としてティファを守りながら様々な出会いと別れを繰り返し、再び動き出した宇宙革命軍と新連邦軍との争いに巻き込まれていった。


そしてガロードは今、宇宙革命軍と新連邦軍の司令官をサテライトランチャーで葬り去り、15年前の悪夢を再現してこの世界の滅亡を目論むフロスト兄弟を倒す為、仲間達と共に月面上で最後の決戦に臨んでいた……。


宇宙革命軍と新連邦軍が激しい戦闘を繰り広げている場所から大分離れた位置、そこにガンダムヴァサーゴCBがMA形態に変形したガンダムアシュタロンHCに乗り、サテライトランチャーの標準をその二つの軍に定めていた。
『さあやろう兄さん……僕達の時代の幕開けだ』
『マイクロウェーブ……照射』
月のマイクロウェーブ送電施設から照射されたマイクロウェーブを受けてサテライトランチャーの発射態勢に入るヴァサーゴ、その時……。
「まてぇ!」
ガロード・ランの駆るガンダムDXが二人の前に立ちふさがった。
『あれは……DX!』
「過ちは繰り返させない!」
そう言ってガロードはDXに装備されているツインサテライトキャノンの標準をヴァサーゴとアシュタロンに向けた。そして月基地からマイクロウェーブを受けて背中の翼を光らせる。
『バカな!? 送電システムはこちらの手中にあるはず!?』
『兄さん!』
『……! DXを討つ!』
『でもチャージが!』
『かまわん!』
DXの存在に焦ったシャギアは、チャージが不十分なままサテライトランチャーの引き金を引いた。

―――グォォォォォォォォン!!!

「させるかー!!!」
銃口から紫色の閃光が放たれる、それを見たガロードはツインサテライトキャノンの引き金を引き、銃口から二つの光を放った。

―――グォォォォォォォォン!!!

そしてDXとヴァサーゴが放った光が激しくぶつかり合い、そのまま三機と月面を飲み込むほどの大爆発を起こす。
「うぉぉぉぉぉ!!!」
『ぐううううう!!!』
衝撃波に飲み込まれ、ガロード達はそのまま吹き飛ばされてしまう。

「し、死んでたまるか! 生き延びて……ティファの元に帰るんだー!!!」
次の瞬間、ガロードは衝撃波とは違う謎の光に包まれた事により意識を失った……。



数十分後、先ほどの戦闘宙域から少し離れた場所に戦闘用宇宙戦艦……フリーデンⅡがやってきた。
「ガンダムX,エアマスター、レオパルド、Gファルコン、ジェニス、ベルティゴ収容完了! あとはガロードのガンダムDXだけよ!」
「急がないと……!」
ブリッジではオペレーターのトニヤ・マームが艦長代理のサラ・タイレルに状況を報告していた。
「さっきの爆発はサテライトキャノンのだよな? ガロード、無事だといいけど……」
「無事に決まってんでしょ! あの子が簡単に死ぬわけないじゃない!」

「ガロードは……見つかりましたか?」
その時、ブリッジに一人の少女が入ってくる。
「ティファ? 部屋で待っていた方が……」
操舵主のシンゴ・モリはガロードの行方を聞きに来たティファに安全な場所に避難するよう指示する。
「戦闘はもう終わっています、私もガロードを探すのを手伝わせてください」
「まったく、アンタ達はホントラブラブね~、私達がちゃんと見つけてあげるからアンタは大人しく部屋で…………?」
その時、トニヤはレーダーに妙なエネルギー反応を発見する。
「あら? 何かしらコレ?」
「どうしたのトニヤ?」
「い、いや、なんか妙な反応を見つけて……」
そしてフリーデンⅡの目の前に、とてつもなく巨大な雷雲のようなものが出現した。
「な、なんだアレ? 宇宙空間に雲って……」
「!! いけない! 皆逃げて!」
「「「え?」」」
ふと、ティファはいち早くその雲の危険性を感じ取り皆に逃げるよう指示した。



しかし時すでに遅く、フリーデンⅡは……。





プロローグ「消失」










それは、何の力を持たない少年が、大切な人を救う為、“自分に出来ること”を見付けていく物語。

それは、魔女としての力を持つ少女達が、自分達の世界を守る為新たなる力を得る“決意”をする物語。



月の光が二つの世界を繋ぐ時、魔女と機械人形は新たなる守る力を得る……。










プロローグはここまで、という訳でアルカディアでの三作目のガンダムクロス作品はガンダムXとストライクウィッチーズになります。
芳佳達の出番は次回から、リリジェネと同様原作に沿う展開にするつもりなのでお楽しみに。



[29127] 第一話「俺にもできる事がある」
Name: 三振王◆9e01ba55 ID:664d5fcd
Date: 2011/08/04 21:42
 第一話「俺にも出来る事がある」


地球とよく似ているが、魔力が存在する世界、その世界は今戦乱の中にあった。
1939年。突如として襲来した異形の敵『ネウロイ』の前に、人類は多くの版図を失った。瘴気をまき散らし金属を吸いつくすネウロイに通常の軍隊は歯が立たず、唯一対抗できる存在は、新兵器ストライカーユニットで空を駆け、魔力を身にまとうウィッチのみ。だが彼女たちの奮闘もむなしく大国カールスラントは陥落し、人類の命運は風前の灯火に思えた。

そんな1944年の夏、はるか東方の島国扶桑で、ひとりのウィッチが戦いに身を投じようとしていた……。










「ん……んん……?」
ガロードはDXのコックピットの中で目を覚ました。
「あ、あれ? ここは……」
消えていたモニターを再び点けると、そこにはどこまでも広がる青空が広がっていた。
「? なんで俺地球に戻って……さっきまで月にいたのに」
ガロードはコックピットのハッチを開いて外に出てみる、そしてヘルメットを脱いで辺りを見回す。
「ここは……無人島か? よく見るとMSの残骸が落ちてる」
DXは小さな島に着陸しており、周辺には地球軍や革命軍が使っていたMSの残骸が散らばっていた。
「あ! そうだフリーデン!」
ふと、ガロードはフリーデンの事を思い出し、コックピットの通信を繋げようとする……が、
「な、なんで通じないんだ……!? 俺どこに来ちゃったんだよ!?」
どこにも繋がらず、いよいよ混乱してくるガロード。
「お、落ち着け、慌ててもどうにもならねえ、まずはここがどこか調べないと」
そう言ってガロードはDXを動かそうとする、しかしコックピットの画面にはいくつかエラーの文字が浮かび上がっていた。
「そっか……さっきの戦いでいくつか壊れたんだな、しょうがない修理すっか」
ガロードはため息交じりにパイロットスーツを半分脱ぎながらコックピットから降りた。
「えーっと、工具箱はどこやったかな……」





それから一時間後、応急処置を済ませたガロードは再びコックピットに乗り込み、レーダーで周辺の状況を確認する。
「うーん……周辺にはMSどころか人っ子一人いないのか、通信も繋がらないし……マジでやばいって感じ?」
そう言ってガロードはお手上げといった様子で天を仰ぐ、その時……レーダーにある物体の接近を告げる警報が鳴り響く。
「ん? なんだ?」
ガロードはモニターを見る、するとそこには漆黒の装甲を身にまとった飛行機のようなものがこちらに接近している様子が映し出されていた。
「もしかして救援? でも見たこと無いMAだな……」
その時、その漆黒の飛行機のようなものから赤い光線が数発、ガロードの乗るDXの横をかすめた。
「うわっ!? なんだいきなり……まさか革命軍!? それとも地球軍か!?」
攻撃を受けたガロードはすぐさまDXを起動させ、漆黒の飛行機に向かって行く。
「やるってんなら受けて立つぜ! おらぁ!」
ガロードはビームライフルの標準を漆黒の飛行機の先端に合わせ、引き金を引く、銃口から放たれたビームは漆黒の飛行機を見事撃ち抜いた。
「やりい! 百発百中……あれ!?」
しかし漆黒の飛行機はすぐさま再生し、赤いレーザー光線で反撃してくる。
「のわっ! おっかしいな……あの辺が弱点じゃないのか?」
ガロードはすぐさま気を取り直し、飛行機の周りを飛びながらビームライフルの弾を確実に当てて行く、すると……飛行機の削られた装甲の中から赤い宝石のようなものが現れる。
「お!? あれが弱点っぽいな……そら!」
それを発見したガロードは持っていたビームサーベルを赤い宝石に向かって投げる、するとビームサーベルの刃は赤い宝石を見事貫いた。
「よっと!」
ガロードはそのまま漆黒の飛行機に接近し、刺さったビームサーベルを引っこ抜く、すると漆黒の飛行機はガラス片のようにバラバラと崩れていった。
「な、なんだ? これMAじゃないのか?」
飛行機との戦闘が終わり、ガロードはとりあえず元いた無人島に戻ろうとした、その時……レーダーは再び警告を鳴らしていた。
「なんだ、また何か来るのか? アレは……ええ!?」
ガロードはモニターに映し出される光景を見て驚愕する。


「お、女の子が……空を飛んでいる!?」


モニターには赤い髪の少女を先頭に、9人の少女達が銃を手に持ち足にはプロペラの付いた巨大なブーツのようなものを履いてこちらに向かって飛んできている様子が映し出されていた。
「え!? ちょ!? なんだアレ!? 戦わないといけないのか!?」
ガロードは流石に生身の人間にMSで戦うのは躊躇いを感じるらしく、エネルギーも切れかけてこれ以上戦えるかどうか判らないのでビームライフルを構えたまま動けないでいた、対して少女たちもガロードと一定の距離まで接近すると銃を構えたままこちらの様子を窺っていた。
「……? もしかして俺が敵か味方か解らないのか? それなら……」
そう言ってガロードはライフルとサーベルをしまい、DXに手を上げさせマイクの音量を目一杯上げた。
「撃つなー! 俺は敵じゃない!」
少女達はDXから声が聞こえた事に驚いたのか、互いに顔を見合わせて話し合いを始めた。
「お、どうやら向こうも戦うつもりはなさそうだな……ん?」
すると9人の少女達のうち、戦闘を飛んでいた赤い髪の少女と、黒いリボンで結んだ深緑色の軍服を着た少女、そして白いリボンでツインテールの幼さが残る少女が接近してきた。
「こっちに近づいてくる……話がしたいのか? んじゃとりあえず……」
ガロードは念の為安全装置を外した銃を懐に忍ばせた後、コックピットのハッチを開け放った。
「やあやあお迎えご苦労さん、とりあえずその銃をしまって……」
するとコックピットの中のガロードを見て、接近してきた三人の少女は驚愕していた。
「うわー! このネウロイ人が乗ってるー!!」
「これはネウロイじゃない……兵器なのか!?」
「何者なの貴方……? どこの軍の所属?」
「いや、軍隊には入ってないよ、フリーデンっていうバルチャーに所属していて……」
「ふりーでん? ばるちゃー? なにそれ?」
ガロードの単語に首を傾げるツインテールの少女、どうやらフリーデンはおろかバルチャーの存在すら知らないようだった。
「……とにかく私達の基地に来てもらいます、詳しい事情はそこで聞かせてもらうわ」
「わかった、それじゃ案内頼むよ」


こうしてガロードは少女達に案内され、青い海に浮かぶ半島の基地にやってきた。





「で……俺は何故か監獄に入れられてしまった」
ガロードは基地に着いた早々DXから降ろされ、そのまま独房らしき場所に入れられてしまったのだ。
「おい! 俺は敵じゃないって言ったろう!? アンタ等新連邦なの!? それとも革命軍!?」
「ったくやかましいな~、サーニャが起きちゃうじゃないか」
するとそこに白い長髪をなびかせた白い肌の少女がやってきた。
「お前……さっき空を飛んでいた子達の中にいた……」
「エイラ・イルマタル・ユーティライネン、お前の監視を任されたモンだ」
「なあおいここから出してくれよ、俺はお前らと戦うつもりはないんだ、ていうかここどこ? 何者なんだお前ら?」
「質問は一個ずつにしろよ、ていうかまずはお前の事教えろ」
「そ、そうだな、俺は……」
ガロードはエイラと名乗った少女に自分の名前、経歴、そして仲間達や自分の過ごしてきた世界について余すことなく説明した。
「第七次宇宙戦争? MS? ニュータイプ? どれも聞いたことのない単語ばかりダナ」
「そんな筈は無いんだけどな……15年前のコロニー落としで地球全体が大変な事になったのに……」
「お前の話を聞くと、ウィッチやネウロイの事は知らなさそうダナ」
「ん? なんだそれ?」
今度はガロードが首を傾げる、そんな彼にエイラはネウロイや自分達ウィッチの事を簡単に説明した。

「てことは……お前もウィッチってやつで、数年前からこの星を荒らしているネウロイって奴と戦っているのか、あの島で戦った黒いのがそうなのか?」
「まあなー、しっかしお前スゴイのに乗っていたな……どうやって作ったんだアレ?」
「作ったっていうかアレは奪った物っていうか……それより俺のDXはどこにやったんだよ?」
「格納庫で今ミーナ隊長達が色々調べ回っている、お前は後で色々尋問とかされるだろうなー」
「そんな……一体どうすれば……」
「ま、悪いようにはしないようミーナ隊長は努力するってさ、まあのんびり待っていろ」
そう言い残し、エイラは独房から出て行った。

そして一人取り残されたガロードは、深くため息をつきながらポケットの中を弄った。
「ヤバい感じだな……とりあえず逃げるか」



一方エイラは外で待っていた同僚のウィッチであるミーナ・ディートリンゲ・ヴィルケとゲルトルート・バルクホルンに先程のガロードの話の内容を伝えた。
「とまあ、そんな感じでべらべらと喋ってくれたぞ、宇宙で戦争してたとかホラばっかだったけど」
エイラはガロードの言っている事が到底信じられず、彼が嘘を言っていると思い込んでいた。
「そうか、奴がどこの軍の者か解ればよかったのだが……」
「仕方ないわね、私達でこの白いネウロイの事を調べないと……何か判った?」
そう言ってミーナは寝かせられているDXのコックピットの中を調べていた整備兵達に話しかけた。
「ダメです、操縦桿らしきものを操作してみたのですがウンともスンとも言いません」
「これだけの大きさの物を魔力無し動かすなんて出来る筈ないのだけれど……」
ミーナもまたDXがある意味遥か未来の技術で作られたことに気付けず、魔力で動いているものだと信じ切っていた。
「ちょっと私達ウィッチの魔力で動かせないか試してみましょう、エイラさん……他のウィッチも呼んできてくれる?」
「へーい」



その頃ガロードは独房の扉のカギ穴に、懐にしまっていた針金を突っ込んで開けようとしていた。
「もーちょい、もーちょい……お! いける!?」
するとガロードの手元でガチンという音が鳴った。
「よっしゃ! それじゃこんな所とはガンダムに乗っておさらばおさらば!」
ガロードは牢屋からこっそり出ると、DXがある格納庫に向かおうとした……が、ある事を思い出し立ち止まってしまう。

「あ、そう言えば格納庫ってどこだ?」



そう言う訳でガロードは格納庫を探して基地の中を見つからないように移動していた。
「どこだどこだ~? 俺のガンダムはどこだ~? おっと」
すると彼の近くを基地にいる整備兵が通り過ぎて行った、対してガロードはすぐさま物陰に隠れて見つからないようやり過ごした。
「ふう、あぶねえあぶねえ、見つかる所だった……(チョンチョン)ああ? なんだよ」
ガロードは自分の背中を誰かが突っついている事に気付き、自分の手でそれを払おうとする。
「今見つかったらやべえんだよ、だから要件は後で……(チョンチョン)だあもう!! しつこいな! なんだよ!?」
耐えかねたガロードは後ろを振り向く、するとそこには白い髪に白い肌の美少女が眠そうな目でガロードを見ていた。
「あ」
「……」
ガロードはその時初めて自分が見つかった事に気付く。するとそこに……
「サーニャー、ミーナ隊長が格納庫に集まれって……あ!?」
先程ガロードと独房で出会ったエイラがやってきたのだ。
「だ、脱走だ~!! 捕虜が脱走したぞ~!!」
「うげ!? にっげろ~!」
エイラに大声を出され、ガロードはスタコラサッサとその場から逃げ出した。
するとエイラの大声に呼応して基地にいた兵達が集まってきた。
「いたぞ! 捕虜だ!」
「撃て撃てー!」
兵達は間髪入れずガロードに向かってピストルで銃撃する。
「あ、あぶねえだろ!? 当たったらどうすんだ!?」


一方、エイラと彼女にサーニャと呼ばれた少女はガロードの行方をタロットカードを使って占っていた。
「エイラ、あの人どこに行きそう?」
「このカードは……どうやら外に行くみたいダナ」


「あれ!? ここ外!?」
案の定、ガロードはエイラの占い通り基地の外……カタパルトらしき場所に出ていた。
「待て―!」
すると彼の後ろから兵達が追いかけてきた。
「やべ!」
ガロードは兵達から逃げるため、自分が出てきた扉とは別の扉に入ろうとする。すると……。
「おいおい、なんの騒ぎだ~?」
茶髪の少女がガロードの入ろうとした扉から突然出てきた。
「うわ!?」
「うひゃ!?」
突然現れた少女にガロードは対処しきれず、そのまま彼女とぶつかり勢いで押し倒してしまう。
「いたたた……急に出てく(ふにゅ)あれ? なんだこれ?」
ガロードは起きあがろうとして床に手を付けようとしたが、代わりに何か柔らかいものを掴んでしまう。
「おいおい誰だお前? いきなり大胆だな~」
「え? うわー!?」
ガロードは押し倒した少女の胸をわしづかみにしている事に気付き、顔を真っ赤にして飛び退いた。ついでに補足すると少女、格好はビキニパンツ一丁である。
「っておまえ! なんで裸なんだよ!?」
「いや日光浴でもしようと思って水着に着替えようとしたら外が騒がしくて……」
「あー!!? さっきの白いネウロイに乗ってた人―!?」
するとそこに先程ガロードとDXのコックピットを開け放った際に顔を合わせたツインテールの少し色黒の少女が水着姿で現れた。
「お前はさっきの!?」
「何してんのシャーリー!? プロレスごっこ!?」
「いやいやいや!? コレはなんというか……」
ガロードが必死に弁解しようとすると、シャーリーと呼ばれた少女は舌をぺロリと出した。
「いきなり押し倒された上に胸揉まれちった」
「うひゃー!!? チカンだー!!」

すると追いかけてきた兵士達が追いついてきた。
「こんのやろう!! シャーリーさんに痴漢しただと!?」
「ハチの巣にしてくれるわふふははー!!!」
「うわああああ!!! 誤解だー!!」
ガロードは先ほどよりも多めの銃弾の雨に晒されながらその場を逃げ出した……と思いきや、突然バックして戻ってきた。
「そう言えば格納庫ってドコ!?」
「「あっち」」
ガロードの質問に格納庫の方向を指差して答えるルッキーニとシャーリー。
「サンキュー!」
そう言ってガロードは再びその場から逃げ出した……。


「なんだか面白そう! 私達も追いかけよう!」
「いや、その前にブラ付けさせて」


一方ガロードは再び基地の中を逃げ回っていた。
「あーびっくりした……とりあえず兵士達は撒いたな……」
そう言ってガロードは後ろを向いていた顔を前に向かせる。すると……。
「もう、何の騒ぎですの……ってきゃ!?」
「うわ!?」
角から現れたメガネを掛けた金髪の少女と衝突し、押し倒してしまった。
「ててて……またかよ(スカッ)」
ガロードは起きあがる為に床に手を置こうとするが、さっきとは違って何も掴めない事に気付いた。
「きゃあ!! どこ触って……!」
「ん? なんだコレまな板?」
「まない……! 人の胸揉んどいて何という暴言! 許せませんわ!」
ガロードのまな板発言に怒り心頭のメガネの少女はガロードにビンタを放つ。
「のわ!?」
ガロードはその攻撃を起きあがる事で紙一重で回避する。
「ご、ごめんよー! 俺格納庫に急いでいるから!」
「待ちなさいこの変態!」
そう言って逃げ出すガロードを、メガネの少女は頭から汽笛のように湯気を噴出させながら追いかけて行った。
そしてガロード達が先程までいた場所に、今度は金髪のショートヘアの少女が眠そうな目で現れた。
「ん……? なんか楽しそうな事やってる……」
するとそこにガロードを追いかけていたシャーリーとルッキーニと呼ばれた少女が現れる。
「エーリカ、さっき黒髪の男の子が来なかったか?」
「さっき向こうに行ったよー、ペリーヌも追いかけていった」
「さんきゅー!」
二人はエーリカと呼んだ少女に一言礼を言ってその場から去っていった。
「あ、私も行く~!」


「格納庫……ここか!」
数分後、ガロードはメガネの少女に追いかけられながらようやく格納庫に辿り着いた。
「あった! DX……!」
「え!? ちょっと貴方は!?」
格納庫に入ると、そこにはDXの周りで話し合いをしているミーナとバルクホルンがいた、すると後ろからメガネの少女……ペリーヌとエーリカ、そしてシャーリーとルッキーニが追いかけてきた。
「隊長! その山猿を捕まえてくださいまし!」
「ねえねえ! 皆何してんの!?」
「さっきそいつ着替え中のシャーリーを襲ったんだよ!」
「だからそういう誤解を招く言い方すんな!」
「き、貴様~! ウィッチを襲うとは……! 成敗してくれる!」
するとバルクホルンは体を発光させると頭から犬耳を、尻からは尻尾を生やしてガロードに殴りかかる。
「うわ!!?」
ガロードはバルクホルンのパンチを回避する、すると行き場を失った彼女の拳はそのままコンクリートの地面にたたきつけられた。
「げえ!? 地面が!?」
コンクリートの地面が粉々になっているのを見てガロードは戦慄する。
「ちっ! 外したか……!」
「こ、殺す気かバカ野郎! こんな所もうこりごりだー!」
そう言ってガロードはDXのコックピットに向かう。
「逃げるぞ! 誰か捕まえろ!」
「ま、待ちなさい!」
「へへん! 捕まってたまるかよ!」
ガロードはミーナ達の手を掻い潜りDXのコックピットに向かう、するとそんな格納庫にエイラとサーニャが遅れてやってくる。
「シャーリー! 回り込んで捕まえろ!」
「おっしゃ!」
エイラの指示に従い、バルクホルンらに行く手を塞がれてもたついているガロードの進行方向に回り込むシャーリー。
「もう邪魔すんなよ! とりゃ!」
「きゃ!?」
一方ガロードは止めようとしたミーナを押しのけてDXのコックピットに向かう、すると……目の前にシャーリーが立ちふさがった。
「捕まえた!」
「わぷっ!?」
シャーリーはそのまま突進して止まれなかったガロードを自分の胸に埋めるようにして捕えた。
「よくやったシャーロット! そのまま逃がすなよ!」
「あーんそこ私のポジション~!」
そう言ってシャーリーに捕えられたガロードにジリジリとにじり寄るバルクホルン達。
「むが! もがもがっ!(な、何だコレ息が出来ないんだけど!?)」
割と本気で息が出来ずに命を危機を感じたガロードは彼女の胸の中で必死にもがいた。
「ちょ! あんまり暴れんなって!」
「もが!(あ、そうだ! そりゃ!)」
そしてガロードは腰を落としてシャーリーのホールドからすり抜け、彼女の股の下から抜け出してコックピットに向かった。
「うわわわわ!?」
「何をやっているのだリベリアン!?」
「まずい! あの子が乗り込むわ! あの中には……!」

そしてガロードはようやくコックピットの元に辿り着いた。
「よっし! 入っちまえばこっちのもんだ! ……え!?」
「はい?」
しかしコックピットの中には、髪を一本の三つ編みで纏めた少女がコックピットの中にいた。ミーナに指示されてDXが動かせないか調べていたようである。
「リーネ! そいつを追い出せ!」
「え!? え!? 急にそんな事言われても!?」
シャーリーの突然の指示に戸惑うリーネと呼ばれた少女。一方ガロードもどうしたらいいか解らなかった。
「え、えっと……とりあえずそこから出てくれな「隙有り! スゥゥゥゥゥパァァァァァァルッキーニキィィィィック!!!」ほげ!?」
するとガロードの後頭部にルッキーニの飛び蹴りがさく裂し、彼はそのままコックピットに入ってしまった。
「きゃあ!?」
「うわ!?」
そしてその拍子にコックピットのハッチが閉まってしまう。
「あ、はいっちった」
「な、何をしてますの~!!?」

その頃コックピットの中に入ったガロードは中でリーネともみくちゃになっていた。
「いや~!! 離れて~!! どこ触っているんですか~!?」
「ちょ!? こんな狭い所で暴れな(ベキッ!)おぶっ!?」
暴れまわるリーネを落ち着かせるのに四苦八苦するガロード、その時……基地に警報のサイレンが鳴り響いた。
「!? なんだ!?」
「この警報……ネウロイ!?」
ガロードはすぐさま懐にしまっていた操縦桿……DXを動かす為のGコンを取り出し、計器に差し込んで起動させる。
「まさか……その操縦桿で動かしていたの!?」
「ご名答、それにしても一体何が……」
そう言ってガロードはレーダーを操作し周辺の様子を確認する。
「この反応……さっきの黒い奴がまた現れたのか?」
「扶桑海軍の人達がネウロイに襲われているんだ……! 坂本少佐が乗っているのに……!」
「ん? お前の仲間が襲われているのか?」
「は、はい……扶桑から今日帰ってくる予定だったんですけど、早く助けに行かないと……!」
リーネはそう言って不安そうな顔で下を向いてしまう。ガロードはそんな彼女を見てしばらく考え込んだ後、決意に満ちた表情で操縦桿を握りしめる。
「……よし、俺に任せろ!」
「え?」


一方外のミーナ達も警報を聞いて慌てて準備を始める。
「おいおいまたネウロイかよ!? さっき出てきたばっかりだろ!?」
「文句を言っている暇があったらストライカーユニットを履け!」
「リーネとアイツはどうするんダ!?」
「しょうがないけど基地の兵達に任せるしか……!」
その時、突如DXからガロードの声がマイクを通じて大きめに発せられた。
『おいお前ら! DXから降りろ! 発進させるぞ!』
「え!? 何なに!?」
するとDXはズズズと腕を使って起きあがり始め、周りにいたミーナ達は慌ててその場から離れていった。
「お、起きあがりましたわ!?」
「すんごーい! かっちょいいー!」


そしてDXは起きあがり、歩いて格納庫の外にある滑走路にやって来た。
「ど、どうするつもりですか!?」
「俺がそのネウロイって奴をやっつけてやるよ、俺もアレの仲間に襲われた以上他人事じゃないし……」
「な、なんで……? 私達は貴方を……」
「困っている奴がいるのに放ってはおけないよ、これに乗っている以上……俺にもできる事がある……と思う」
ガロードは生まれた時からずっと、あの世界で戦争によって蹂躙され悲しい思いをする人達を沢山見てきた、救いたくても救えなかった人もいた、だからリーネの言葉を聞き、ガンダムという力を持っている彼は自然と“ネウロイという驚異に蹂躙されている見ず知らずの人達を助ける”という行動に移っていた。
「貴方は……」
リーネはガロードのまっすぐな瞳を見て思わず黙り込んでしまう。
(何となくだけど……この人は悪い人じゃない……)
「それじゃ行くぞ! しっかり捕まっていろよ!」
「え!? あ、はい!」
ガロードに言われるがまま、リーネはシートの後ろに回り込みそれをしっかりと掴む。
「ガロード・ラン……ガンダムダブルエックス、行くぜ!」
そしてガンダムDXはそのまま勢いよく蒼い空へ飛び立っていった……。



「目標は……あそこか!」
数分後、ガロード達を乗せたDXは何隻もの軍艦が煙を上げて破壊されている海域にやってくる、そして空では……二人のウィッチがネウロイと戦っていた。
「坂本少佐! もう一人は……扶桑の人?」
「あの子達を助ければいいのか?」
「はい! ちょっと待ってください!」
そう言ってリーネはイヤホンのようなものを取り出し、それを耳に装着する。
「坂本少佐! 私です、リネット・ビショップです!」
するとリーネの耳にネウロイと戦っているウィッチの一人、坂本美緒から返信が来た。
『リーネ……!? それに乗っているのか!? なんだその兵器は!?』
「説明は後でします! それより戦況を教えてください!」
『あ、ああ……今私が囮になりながらあのネウロイのコアがある場所に宮藤が攻撃を仕掛けている、だが中々露出しなくてな……』
よくよく見るとネウロイに接近しながら銃撃しているウィッチ……宮藤は、どこか苦しそうに不安定な軌道で飛びながら、ネウロイに機関銃の弾を撃ち込んでいた。
「あんま持ちそうにないな……早く助太刀しないと」
「あ! 待ってください! コアが!」
すると宮藤の銃撃がネウロイのコアを露出させる事に成功する、しかし彼女は力尽きてそのまま海面へと落ちそうになっていた。
「そこか!」
ガロードは露出したコアをDXのバスターライフルのビームで撃ち抜いた。するとコアを破壊されたネウロイはガラス片のようにバラバラと散って行った。
「次はあの子だ!」
ネウロイの破壊を確認したガロードはDXを海面へと落ちていく宮藤の元に向かわせる。そしてDXは見事宮藤を空中でキャッチした。
「やった! やりましたよ少佐!」
『ああ……見事な手際だ』
そう言って美緒はDXの手の中で疲れて眠っている宮藤の元に向かう。
「ふいー、なんとか終わったな……ん?」
戦闘が終わりシートに背を凭れ掛らせるガロード、するとモニターにこちらに接近してくるストライカーユニットを履いたミーナ達の姿を確認した。
「あちゃー……もうDXのエネルギーも残っていないし、牢屋に逆戻りって訳ね……」

ガロードはこれからどれだけいるかも判らない異世界での生活を想像してやれやれとため息をついた……。










本日はここまで、微妙にガロードのキャラが変わっている? でもストパン世界はエッチいハプニングが多いわけだし、これぐらいしないと順応しないかなーなんて思いながら書きました。
次回はガロードが501に協力する事になる経緯と、ストパン一期第三話をベースにした話を描きます。



早く劇場版の情報こないかなー、一期での謎が二期では全然明かされなかったし、(つーか劇場版で完結するの?)はやくスクリーンで飛び回る彼女達を見たいです。
それとバンダイさん、DXのHG(Gファルコン付き)が出るのずっと待ってます。



[29127] 第二話「一人なんかじゃない!」
Name: 三振王◆9e01ba55 ID:664d5fcd
Date: 2011/08/08 22:09
 第二話「一人なんかじゃない!」


ネウロイと戦った後、ガロードは再び501の基地に収容され、次の日に取り調べ室のような場所でミーナ達の尋問を受けていた。
「だからー、俺はどこの軍にも所属していないって、信じてくれよー」
「信じろって言われてもね……あのような兵器を個人で作れる訳がないでしょう? 一体何なのあの兵器は?」
「だからガンダムだって、もうめんどくさいなー」
そう言ってガロードは机の上に突っ伏する。
「はあ、どうしたもんかしらね……」
「苦戦しているようだなミーナ」
そこに美緒が取調室に現れる。
「美緒……」
「あ、アンタ確か黒いの……ネウロイと戦っていた人?」
「坂本美緒だ、あの時は助けてくれてありがとう、おかげで私達も扶桑海軍の皆も大した被害が出なくてすんだ」
「いやあ、自然に体が動いただけさ、あのリーネって子がサポートしてくれたおかげでもあるし……」
そう言ってガロードは照れ笑いを浮かべ、頭をぼりぼり掻いた。
「ふふふ、面白い奴だ……それとミーナ、あの白い機体を調べていた整備兵達から報告が来たぞ」
「そう、それで結果は?」
「正直さっぱりだそうだ、魔法力どころかこの世の技術すら使われていないんじゃないかと言っていたぞ、私も見させてもらったがあんな物この世界で作るのは不可能だと思うぞ」
「そう……」
「あー、やっぱ俺異世界に来ちゃったのかなー、地球軍も革命軍も無いし、ネウロイなんて化け物がいるし、アンタ達は空飛ぶし……」
その時ふと、ガロードはミーナ達の格好を見てある事に気付く。
「ところでアンタ達、なんでスカートなりズボンなり履かないの? 正直目のやり場に困るんだけど……」
「「は?」」
ガロードはミーナ達がズボンを履かずにパンツ丸出しの状態でいる事を指摘する、対してミーナ達は首を傾げた。
「ズボンならもう履いているだろ、なあミーナ?」
「そうよねえ」
「え、いやだってパンツ丸見え……」
「これはズボンよ」
「ズボンな訳ないだ「ズボンよ」そ、そうですか」
ガロードは何かこれ以上詮索するとヤバいと思い口を噤んだ。


「中佐、少佐、少しよろしいでしょうか?」
その時、取調室に美緒の部下らしき扶桑軍人が現れた。
「どうした? 今我々は取り調べ中なのだが?」
「それが基地に軍の上層部の方々が御出でに……そこの少年と話がしたいと」
「なんですって?」





数十分後、ガロードは兵達に連れられて会議室のような所に連れてこられた、そこには坂本達のとは違って高級そうな軍服と、いくつもの勲章を取り付けた中年の男たちが座っていた。
(成程、こいつらがあいつらの上司って訳ね)
ガロードはかつて出会った革命軍や地球軍の身勝手な上層部の人間と目の前にいる軍人たちが重なって見えて苦い顔をする。
「君の事とあの機体の事は報告書で読んでいる、素晴らしい戦闘力だな」
「そりゃどうも」
「でだ……君の力を我々に貸してほしい、それとあれをどうやって作ったのか我々にも教えてくれないか? アレが量産できればウィッチを必要とせずともネウロイを殲滅できるのだ」
「まあ、確かにねえ」
頷いてみせたガロードであったが、彼は目の前の軍人たちがDXを良からぬ事に使う気満々だと言う事を見抜いていた。
(もしネウロイとの戦いが終わったら今度は人類同士でってか、どこの軍のお偉いさんも考えることは一緒な訳ね)
ガロードの頭の中にこの世界が自分の世界のように、戦争の果てに死体で溢れかえる死の世界に変わる様子を想像する。
(そんなことはさせない……過ちは繰り返させない)
自分に大切な事を教えて死んでいった男の事を思い出し、ガロードはこの世界で自分のすべきことを決めた。
「解った……俺はアンタ達に協力する、ただし条件がある」
「条件? なんだね言ってみたまえ」
「アンタ達の希望通り、俺はガンダムDXでネウロイと戦ってやる、その代わり衣食住はちゃんと用意してくれ、それとDXの整備は俺自身がやる、あれは結構デリケートだから知識の無い奴が動かすと壊れるからな、そして最後……俺が一番最初に流された島に他のMSの残骸があるからこの基地に持ってきてくれ、残ったエネルギーをDXに移す為にな、俺からの要望は以上だ」
ガロードの要望を聞き、軍人たちは互いに顔を見合わせて話し合い、再びガロードの方を向いた。
「すぐに兵達に伝えよう、君はこの基地に留まり第501統合戦闘航空団と共にネウロイの迎撃に当たってくれ」
「商談は成立って訳ね、んじゃ後はよろしく」
そう言い残してガロードは会議室から出て行った……。



「よろしいのですかマロニー大将? あんな少年を信用して……しかも501の連中と一緒になさるのですか?」
「無論、信用はしておらんさ、まずはしばらく泳がせて奴が何者か、あの兵器がどこで作られた物かを徹底的に調べるのだ、それに501の基地は最前線だ、あの機体の戦闘データも沢山取れよう、もし不都合な事があれば……」



一方会議室から出たガロードは、懐にしまっていたGコンを取り出し、それを上に投げてお手玉した。
「さて……当分の間はここにいて元の世界に帰る方法を見つけないと、ぐずぐずしていると俺消されちゃうしな~」
ガロードはこの世界の軍にDXを調べさせる気はさらさらなかった、そして元の世界に帰る方法を見つけ、タイミングを見計らってこの基地から逃げるという計画を立てていたのだ。
「問題は帰る方法があるのかどうかだ、この辺に資料ってないかな~」



それから一時間後、ガロードはミーナによって他のウィッチ達が集まるブリーフィングルームに案内された。
「という訳で、今日からこの基地で私達と一緒に戦ってくれるガロード・ラン君よ、皆仲良くしてね」
「えーっと、皆よろしくな」
そう言ってガロードは目の前にいるウィッチ達に挨拶する、対してウィッチ達はそれぞれガロードを好奇の目で注目していた。
(ひゃー、皆女の子じゃん、おまけにパンツ丸見えだし……ていうか昨日会った子ばかりだ)
その時、前の方に座っていたメガネの少女……ペリーヌ・クロステルマンが不満そうにガタリと立ちあがった。
「中佐! 私は認めませんわ! 私達の部隊にこのような山猿を入れるなんて!」
「山猿って……失礼な奴だなお前」
悪口を言われてむっとくるガロード、しかしペリーヌは彼に対する罵声をやめない。
「第一彼は男でしょう!? ワタクシ達と共同生活なんかしたらいつ男の本性を剥き出しにして襲いかかってくるか!」
「大丈夫、俺はそういうことしない(そんなことしたらティファに嫌われるじゃん)」
「これは上層部の命令だ、従うんだペリーヌ」
「く! 坂本少佐が言うのでしたら……!」
ガロードの隣にいた美緒の一言で、ペリーヌは口を噤み座る。
「では各々ガロードに自己紹介しろ、まずは……」
するとペリーヌの後ろにいたツインテールの少女が手を上げる。
「私フランチェスカ・ルッキーニ! よろしくねガロード! 私の隣にいるのは……」
「シャーロット・E・イェーガーだ、シャーリーって呼んでくれ」
そう言ってオレンジ髪の少女……シャーリーは大きな胸をブルンと揺らして挨拶する。
次に、通路を挟んだ隣の席に座っていた金髪の少女と黒髪の少女が自己紹介を始める。
「私、エーリカ・ハルトマン! こっちの仏頂面がゲルトルート・バルクホルンだよ!」
「……よろしく」
次に、彼女達の前に座っている二人の白髪の少女が自己紹介を始める。
「私は昨日独房で会ったな、エイラ・イルマタル・ユーティライネンだ」
「私はサーニャ・リトヴャク……ふあああ」
最後に、前の方に座っていた2人のウィッチが自己紹介した。
「ふん! ペリーヌ・クロステルマンですわ!」
「リネット・ビショップです、昨日はどうも……」
そしてセーラー服を着た黒髪の少女が元気よく挨拶した。
「私……宮藤芳佳です! よろしくガロードさん! 私も今日入隊したばっかりなんです!」
「あ、お前昨日ネウロイと戦っていた……」
ガロードは宮藤が、昨日自分が助けたウィッチだという事に気付く。
「覚えていてくれたんですね! あの時は本当に助かりました!」
「ほう、仲がいいなお前達……よしリーネ、自己紹介も終わったことだし二人に基地の中を案内してやれ」
「は、はい! 判りました!」


そしてガロードと芳佳はリーネによって基地の至る所を案内されながら、互いの身の上について話の花を咲かせていた。
「へえ、じゃあガロード君って私の一個上なんだ、なんだか親近感が沸くなー」
「そうなのか? 俺も周りに同世代の奴はあんまりいなかったからなー、お前はいくつなの?」
「え? わ、私も15です」
「おー同学年だー、なんか共学の学校みたいだねー」
「俺学校行った事ねえから判んねえやー、あはははー」
「うふふふー」
「……」
ガロードと芳佳がにこやかに笑う中、リネットはただただ黙り込んでいた、それを見た二人は堪らず彼女の背後でコソコソと話し合いを始める。
「んー、なんかリーネはノリが悪いなー」
「私ももっと仲良くしたいと思っているんですけどね」

そして三人は基地で一番高い場所……管制塔にやってきた。
「うわ~! すご~い!」
「ここは基地で一番高い場所なんです」
「島全体が基地になっているんだな」
「はい、ドーバー海峡に突き出した島、それがウィッチーズ基地、そしてあれがヨーロッパ大陸、でも大半は敵の手に落ちて……」
「こんなに静かなのに、ここも戦争しているのか」
「ここも?」
宮藤はガロードの“ここも”という発言に食いつく。
「俺のいた世界もつい最近、人類同士で戦争してたのさ、俺はその真っ只中にいてさ……生き延びるのに必死だったよ」
「へえ、すごいんだねー」
「……」
リーネはそんなガロードの顔を見て何故か俯いてしまった……。





その日の午後、ガロードは格納庫でDXの整備を行っていた。
「えーっと、あと一回飛ぶぐらいのエネルギーは残っているか、バスターライフルの方は弾切れか」
そう言ってガロードは使っていたプラスドライバーを床に置き、そのままレンチを手に取ろうとする。
「レンチ、レンチはっと」
「ほい」
「お、サンキュー……って」
ガロードはその時初めて、エーリカが自分の傍で整備の様子をしゃがみながら観察している事に気付く。
「……何?」
「観察してるの、珍しいじゃんこの機体、あーあ、私も動かしてみたいなー」
そう言ってエーリカはじりじりとガロードの距離を詰める。
(う……)
ガロードはそれを見て思わずエーリカから顔を反らす、なぜなら自分の視界にしゃがんでいるエーリカが履くパンツのようなズボンが入ってしまったからだ。
「ふっふーん、なんで目を反らすのかなー?」
「て、てめえ! わざとやってるな!?」
そう、エーリカはガロードの反応を楽しむ為にわざと彼と距離を縮めたのだ。

「おーいガロードー」
「あ! ハルトマン中尉もいるー!」
するとそこに、様子を見に来たシャーリーとルッキーニが現れた。
「お、二人も観察―?」
「おう! メカ好きとして是非ともこれの中身がどんなふうになっているのか調べたくてさー」
「私もコレ乗りたーい!」
するとルッキーニはピョンピョンと跳ねてDXの中に入っていった。
「あコラ! 勝手に入っちゃダメだろ!? 何かの拍子で動き出したらどうするんだ!?」
「あー、その辺は大丈夫だよ」
注意しようとするシャーリーをガロードは止める、そして数分後、コックピットからつまらなそうにしているルッキーニが這い出てきた。
「にゅー! どこ押しても動かないからつまんなーい!」
「ははは、お前達にDXは動かせねえよ、これに乗るには特別な資格ってもんが必要なんだよ」
「何それ!? 教えてー!」
「私も知りたーい!」
「いやあ! こればかりは教えられねえなあ!」
「「ぶー!!」」
拒否されたルッキーニとエーリカは不満そうに頬を膨らませる。

その時、基地の外からパアンと銃弾が放たれる音が鳴り響いた。
「ん? なんだ今の銃声?」
「きっと坂本少佐が芳佳とリーネをしごいているんだよ、ちょっと見にいこーぜ」
そしてガロードはシャーリー達と共に、滑走路先端で狙撃訓練を行っている芳佳、リーネ、美緒の元にやってきた。
「おーやってんなー」
「あ、ガロード君、それに皆も……」
「今リーネが訓練中なのか?」
「はい、海の上にある的に当てる訓練なんですけど、的が遠すぎて全然見えないんです」
「へー、どれどれ……ぶっ!!?」
ガロードは後ろからリーネの狙撃している態勢を見て、思わず顔を真っ赤にする、なぜなら今の彼女の格好はうつ伏せになったままライフルを構えている態勢なのだが、ガロード達の位置からだとちょうど尻、というかパンツ(ズボン)に纏われた股が丸見えなのだ。
(いかんいかんいかん! 邪な事考えるな俺!)
「おや~ガロード君? リーネの尻見てなんで顔赤くしてるのかなー?」
「ガロードのエッチ~」
「ウブだねぇ~」
「ええええ!? ち、違う! 誤解だ!」
「お前達静かにしろ、訓練中だぞ」
「「「はーい」」」
美緒に注意され黙りこくるガロード達、そして辺りが静まりかえった時……リーネはライフルの引き金を引いた。

放たれた銃弾が海面を駆け遥か先の的に向かう、その様子を美緒は右目の眼帯を避けて観察する。
「うーん、右にずれたな、もっと風を読め」
「はいっ!」

(ええ!? 今の見えたのかよ!? 俺には遠すぎて判らなかったぜ!?)
美緒が遥か彼方の的の様子を把握しているのを知って、ガロードは驚いていた。
(ウィッチは魔法使いだからな、坂本少佐は魔眼っていう固有魔法が使えるんだ、ちなみにリーネは弾道安定、私は超加速、ルッキーニは光熱攻撃、エーリカは疾風だな)
(そーいやリーネの頭にネコ耳みたいなのと尻に尻尾みたいなのが生えているけど何?)
(アレは使い魔だよー、私達ウィッチは使い魔を憑依させて魔法を使うんだー)
(ふーん……)
シャーリーとルッキーニのウィッチに関する解説にウンウンと頷くガロード、するとその様子に気付いた美緒はにやりと笑った。
「ガロード、お前もやってみるか?」
「え? 俺が? へへへしょうがないな~、俺の実力見せちゃうよ~」
そう言ってガロードはリーネからライフルを受け取って、先ほどの彼女と同じ態勢でライフルを構える。覗き込むスコープの先には遥か彼方に立てられているオレンジ色の的が映っていた。
(えっと、風の具合とこの銃の弾道、後は……)
ガロードは集中力を高めて引き金を引く、そして弾は遥か彼方の水平線に吸い込まれていった。
「どう!? 当たったか!?」
「ほぉ……角にかすったか、一発目でコレとは見事なものだ」
「えええ!? ガロード君スゴイ!」
直撃とは行かないまでも、ガロードの中々の射撃センスに一同は驚く。
「いやあ、こんなもん勘だよ勘、リーネには遠く及ばないって」
「は、はあ」
そう言ってガロードはリーネにライフルを返し、そのままDXの整備の続きをするため格納庫に戻っていった。

「すごいなーガロード君……」
「よし、次は宮藤、お前が撃ってみろ」
「え? は、はい……」
ガロードの射撃のセンスに関心する芳佳だったが、自分の番が回ってきたことに気づき暗い顔をする……。





その日の夜、ガロードは与えられた寝室で寝ていたが、中々寝付けず基地の周りを散歩していた。
「ったくよ~、こう暑いと寝れないよ」
ふと、ガロードは空を見上げる、空には満天の星空と、美しく輝く月が浮かんでいた。
「綺麗な空だ……ティファにも見せたかったなあ」
ガロードは離れ離れになった自分の大切な少女の、優しく微笑む顔を思い浮かべていた。
「……絶対にお前の元に帰るからな、待っていてくれよ……ん?」
その時、ガロードは自分の元に誰かが近寄ってくる事に気付く。
「リーネ……?」
「あ、ガロード……さん……?」
それはリーネだった、彼女は何故か眼に涙を浮かべていた。
「お、おいどうしたんだよ? 泣いてんのか?」
「……! なんでもないです……!」
リーネは涙を拭ってそのまま走り去って行った。
「どうしたってんだアイツ……?」
するとリーネと入れ替わりで、今度は芳佳がガロードの前に現れた。
「あ、ガロード君……」
「芳佳か? 今リーネが走っていったけど……何かあったのか? もしかして喧嘩?」
「あ、あの実は……」
そして芳佳は先程、リーネを励ますつもりが逆に怒らせた事をガロードに話す。
「リネットさん、自信が持てていないみたいだから励ましてあげようと思ったんだけど、『最初から飛べたアナタとは違う!』って言われちゃって……私、そんなつもりで言ったんじゃないのに……」
そう言って芳佳は落ち込んで俯いてしまう。
「うーん、難しいよなそういうの……今はそっとしておいたほうがいいかもな、もしかしたら何かがきっかけであいつも変わるかもしれないし……」
「“あいつも”?」
「こっちの話さ、それじゃ俺はもう眠いからいくぜ、ふあああ……」
「あ、私も行くよ、一緒に帰ろう」
ガロードは大きなあくびをするとそのまま芳佳と共に基地の方へ歩いて行った……。





次の日の明朝、501の基地にネウロイの襲撃を告げる警報が鳴り響いた。
「監視所から報告が入ったわ、敵、グリット東114地区に侵入、今回はフォーメーションを変えます」
「バルクホルン、ハルトマンが前衛、シャーリーとルッキーニは後衛、ペリーヌは私とペアを組め!」
「残りの人は私と基地で待機です」
「了解~」
「了解」
そう言って美緒達はストライカーユニットを履いてネウロイと戦いに出撃していった。
そしてその様子を芳佳とリーネ、そしてガロードは見送った。
「いっちゃったね」
「……そうですね」
「いやー、俺のDXが弾切れを起こさなきゃ手伝えたのになー」
「今私達に出来る事ってなんだろう?」
「足手まといの私に出来る事なんて……!」
リーネはそう言って芳佳達の元を走り去って行った。
「お、おいリーネ!?」
「リネットさん……!」
すると芳佳とガロードの元に、先ほどのやり取りを見ていたミーナがやってくる。
「二人とも……ちょっといいかしら?」
「あ、はい……」

二人はミーナから、リーネが戦えない理由を聞いていた。
「リーネさんは……このブリタニアが故郷なの」
「え……!?」
「ヨーロッパ大陸はネウロイの手に落ちているんだろう? それじゃリーネは……」
「欧州最後の砦、そして……故郷であるブリタニアを守る、リーネさんはそのプレッシャーで、実戦になるとダメになっちゃうの」
「リネットさん……」
「宮藤さん……貴方はどうしてウィッチーズ隊に入ろうと思ったの?」
「はい、困っている人達の力になりたくて……」
「リーネさんが入隊した時も同じ事を言っていたわ、その気持ちを忘れないで、そうすればきっとみんなの力になれるわ」
そう言ってミーナは二人の元から去っていった。
「……」
「リーネ……」


それから数分後、二人はリーネのいる部屋の前にやって来ていた。
「リネットさん……私、魔法もへたっぴで叱られてばっかりだし、ちゃんと飛べないし、銃も満足に使えないし……ネウロイとだって本当は戦いたくない、でも私はウィッチーズに居たい、私の魔法でも誰かを救えるのなら、何か出来る事があるなら……やりたいの、そして……皆を守れたらって」
『……』
「だから私は頑張る、だからリネットさんも……」
芳佳はリーネに語りかけるが、反応がない。
「芳佳……ちょっと俺、リーネに話したい事があるから、ちょっとミーナ中佐んとこ行っててくれ」
「う、うん、よろしくね」
芳佳はガロードの言葉に素直に従い、ブリーフィングルームに向かって行った……。
そしてガロードはリーネの部屋の扉に背を凭れ掛らせる。
「あのさ……お前もうちょっと肩の力を抜いたらどうだ? そう重く考えないで気楽にさ……」
『……! 簡単に言わないでください! 人の命が掛かっているのに……特別な力を持っているガロードさんには解らない!』
「……」
しばらく二人の間に沈黙が流れる、するとガロードはポツリポツリと自分の身の上話を始めた。
「……俺に特別な力なんてないよ、むしろ俺の周りには……スゴイ奴が沢山いた、技術も、経験も、能力も……俺が一生かかっても追いつきそうにない奴ばかりでさ、DXに乗ってなきゃ、もしかしたら俺は一番弱かったかもしれない」
『え……?』
ガロードの話に驚くリーネ、そして彼女は自分から質問をぶつけてみた。
「ガロードさんはどうして戦っていたんですか? その、向こうの世界で……」
「うーん、始めは生き延びる為にかな? 両親も一緒に育った同年代の子達も次々死んでいったし、MS盗んで売ったり強盗やっつけて報奨金もらったりと色々やったなあ、でも……」
「でも?」
「ある日……俺はティファに出会った、あの子はすごく特別な力を持っていて、色んな奴らに狙われていたんだ、だから俺は……ティファを守る為にガンダムに乗って戦った」
『たった一人を守るために……』
「あのさ……リーネも国とか世界とかそんな大仰なものじゃなくて、もっと自分の身近な物を守るつもりで戦えばいいんじゃないか?」
『でも、それだと……』
「大丈夫、リーネには芳佳やウィッチーズの皆がいるじゃないか、一人じゃちょっとしか守れないけど、皆一緒ならもっと多くの物を守れると思うんだ、コレ、経験者が語るんだから間違いないぞ?」
『ガロード……さん……』
リーネはガロードの言葉を聞いて、何か胸の奥の突っ掛りが取れていく気持ちになっていた。

「リーネは……一人なんかじゃない! だからもっと自信持っていけ!」





その時、ウィッチーズ基地に再び警報が鳴り響く。
「なんだ!? またネウロイが!?」
「ガロードさん!」
すると部屋の中からリーネが出てくる、彼女の顔は先ほどの自信なさげなのとは打って変わって、少し決意に満ちた表情に変わっていた。
「ブリーフィングルームにいくぞ!」
「はい!」
そして二人は頷きあい、ブリーフィングルームに向かって駆けていった……。


ブリーフィングルームではミーナが基地に残っていたエイラ相手に作戦内容を説明していた。
「先程美緒達から報告があったわ、新たなネウロイがこちらに向かっているそうよ」
「始めにでたのは囮か……」
「出られるのは私とエイラさんだけね、サーニャさんは?」
「夜間哨戒で魔力を使いはたしている、ムリダナ」
そう言って両手の人差し指で×マークを作るエイラ。
「そう……じゃあ二人で行きましょう」
「私も行きます!」
するとそこに芳佳が息を切らして駆けこんできた。
「まだ貴女が実戦に出るのは早すぎるわ」
「足手纏いにならないよう、精一杯頑張ります!」
「訓練が十分じゃ無い人を戦場に出すわけにはいかないわ、それにあなたは撃つ事に躊躇いがあるの」
芳佳に対しあくまで厳しい言葉を投げかけるミーナ、しかし芳佳も負けじと食い下がる。
「撃てます! 守る為なら!」

「俺達も出るぜ、なあリーネ」
「はい!」
するとようやくガロードとリーネがやって来て、ミーナに出撃させてもらえるよう懇願する。
「ガロード君はともかく、貴女達はまだ半人前なの」
「二人合わせれば一人分くらいにはなれます!」
「なあ俺からも頼むよ中佐さん、俺もフォローするからさ」
三人の懇願に、ミーナはついに折れた。
「……90秒で支度なさい」
「「はい!!」」
「さすが隊長! 話がわかるぅ!」
そう言って皆は自分達の武器がある格納庫に向かう、その途中でエイラがガロードに話しかけた。
「やるじゃんお前、リーネにあそこまで自信付けさせるなんてさ」
「なあに、俺はただ自分が言われた事をあの子に言ってあげただけさ、それに……」
「それに?」
「別に俺が何も言う必要は無かったかもな、芳佳の言葉もちゃんと届いていたみたいだし」
「そっか」


そして90秒後、ミーナ、エイラ、芳佳、リーネはそれそれストライカーユニットと銃器を装備し、ガロードはDXに乗り込んで、急速接近するネウロイに向かって飛行していた、「敵は三時の方角からこちらに向かっているわ、私とエイラさんが先行するから、三人はここでバックアップをお願いね」
「はい!」
「はい!」
『はいはい』
「じゃあ頼んだわよ」
そう言ってミーナとエイラは先にネウロイの方へ向かって行った。
するとミーナは、一緒に飛んでいる芳佳とガロードに語りかける。
「宮藤さん……ガロードさん……」
「うん?」
『なんだ?』
「本当は私……怖かったんです、戦うのが……」
「私は今も怖いよ、でも……うまく言えないんだけど、何もしないでじっとしている方が怖かったの」
「何もしない方が……」
『あー、なんか判るかもなそれ、ん……!?』
その時ガロードは、ネウロイがこちらに向かってきているのをモニターで確認する。
『二人とも! 敵が近づいてくるぞ!』
「え!? あ、はい!」
リーネは慌てて持っていたボーイズMkⅠ対装甲ライフルを構える。


一方ミーナたちは逃げる飛行機型のネウロイを、銃撃しながら追っていた。
「早い……!」
するとミーナ達の放った銃弾がネウロイのエンジン部分らしき場所を破壊する、しかしネウロイはその部分だけ分離し加速しミーナ達を振り切った。
「加速した!?」
「早すぎる!? まずいわね……!」



一方リーネは向かってくるネウロイを狙撃するが、弾が中々当たらず焦っていた。
「ダメ……全然当てられない!」
「大丈夫! 訓練であんなに上手だったんだから!」
「私……飛ぶのに精いっぱいで、射撃で魔法をコントロールできないんです……!」
『それなら俺が支えちゃうぜ!』
「え? きゃ!?」
ガロードが半ば強引にリーネをDXの掌に乗せる。リーネはDXの指に跨るような格好になっていた。
『これなら足元を気にせずに撃てる筈だ!』
「あ……はい」
すると皆の元にミーナから通信が入ってきた。
『三人とも、敵がそちらに向かっているわ、貴方達だけが頼りなの、お願い!』
「はい!」
リーネはライフルの標準をネウロイに定めようとする、そして彼女はある事を思いついた。
(西北西の風、風力3……敵即、位置を……そうだ! 敵の避ける未来位置を予測して、そこに……!)
そしてリーネは隣で飛んでいた芳佳にある指示を出す。
「宮藤さん! 私と一緒に撃って!」
「うん! わかった!」
『頑張れよ二人とも……!』
緊迫した状況に、ガロードは思わず操縦桿を強く握りしめる。
そしてリーネは接近してくるネウロイに標準を定めた。
「今です!」
次の瞬間、芳佳の持つ九九式二号の銃口から銃弾が連射され、隣ではリーネが引き金を引いてはリロード、引き金を引いてはリロードを5回繰り返した。
彼女達の放った銃弾はまっすぐネウロイに向かって行く、そして芳佳が放った銃弾を上に飛んで避けたネウロイは、そのままリーネの放ったライフルの弾の直撃を受け、最後の五発目でコアを破壊されバラバラと砕け散った。
「「きゃあああ!!?」」
『うおっと!?』

その様子を遠くから見ていたミーナ達は安心してふうっと息を吐いた。
「リーネさん……出来たのね」

「すごーい! やったねリネットさん!」
「やった! やったよ宮藤さん! ガロードさん! 私初めて皆の役にたてた!」
駆けよってきた芳佳を、リーネは喜びのあまり彼女に胸を圧しつけるように抱きついた。
「ふああああ!? リネットさん苦しい!?」
「二人のおかげよ! ありがとう!」
『なあに、俺達はアドバイスしただけさ、あとはお前の力だよ』
「それでもありがとう! あはははは!」


こうしてリーネはこの日、ウィッチとして初めての戦果をあげた……。


次の日、501基地の中にて……。
「芳佳ちゃんガロード君、おはよー」
「おはようリーネちゃーん」
リーネは廊下で会った芳佳とガロードに挨拶する。そしてその様子を美緒とミーナは優しく見守っていた。
「どうやらミーナさん、宮藤さんと仲良くなれたみたいね、名前で呼び合うなんて……」
「ふ、まあ仲良くなることはいいことだ、戦場で背中を預けられるのは信頼し合う者同士のほうがいいしな」


「ん? リーネちゃんリボンの柄変えたの?」
「う、うん、似合うかなガロード君……」
「似合うんじゃないの? にしてもなんでリボン変えたの?」
「そ、それはその……」
そう言ってミーナは何故か顔を赤くして俯いてしまった。


「……仲良くなりすぎるのも考えものね、これからどうなることやら……」
「あっはっはっは! まあいいじゃないか!」
美緒とミーナはリーネのガロードに対する感情の変化に気付き、この先のこの部隊の未来に思いをはせていた……。










本日はここまで、次回はバルクホルン回になります。
しかしストパンのBD、DVDはガンダムやなのはのと比べて付属する資料集の分厚さが半端ないですね、おかげで色々と助かります。



[29127] 第三話「そんなの絶対に許さない!」
Name: 三振王◆9e01ba55 ID:3f309a96
Date: 2011/08/08 22:13
 第三話「そんなの絶対に許さない!」


今日も夢を見た、ネウロイが私達の故郷に侵攻してきて、街も人もすべて焼き尽くしてしまったあの忌まわしい日を。

私はこれまでエースと周りの人間に持てはやされながらも、ネウロイの前では何も守れなかった、故郷と、友人の大切な恋人、そして……世界で一番大切な自分の妹を。

もう何も出来ない私には生きている意味がない、でも消えてしまう前にせめて一匹でも多くネウロイを葬り去ろう、それが何も守れなかった私に出来る唯一の償いだから……命なんて惜しくない。





前回のネウロイ襲撃から数日後、芳佳とリーネは食堂で朝食の支度をしていた、ウィッチーズ隊では度々、こうやって隊員達がたまに食事を作り、自分達の故郷の料理を他の隊員達に振舞うのだ。
「ねえ芳佳ちゃん聞いた? カイハバ基地が迷子になった子供の為に出動したんだって~」
「へえ! そんな活動もするんだ、すごいね~」
「うん!たった一人の為にねー」
「でもそうやって一人一人を助けられないと皆を助けるなんて無理だからねー」
「そうだね!」

「皆を助ける……そんな事は夢物語だ……」
「「え?」」
その時、二人は食事を取りに来ていたバルクホルンが何か言っている事に気付く。
「え? なんですか?」
「すまん、独り言だ」
そう言ってバルクホルンは浮かない顔で自分の席に歩いていく。そして芳佳とリーネはそんなおかしい様子の彼女を見て顔を見合わせた。

「おー、なんかいい匂いするなー」
するとそこに料理の匂いに釣られたガロードがやってきた。
「あ、ガロード君おはよー、今から朝ごはんなんだー」
「よかったら食べていきます? 今日は二人で扶桑の料理を作ったんですよー」
「え!? いいの!? やった~!」
こうしてガロードは芳佳達と朝食を取る事になった(普段は男子職員達と食べている)

「おかわりー!」
「俺もー!」
数分後、501の隊員達が皆集まって朝食を取る中、ルッキーニとガロードは空になったスープの皿を上げて芳佳にオカワリを要求した。
「はいはーい、ちょっと待ってくださいねー」
「ルッキーニはともかく、ガロードもよく食べるなー」
ルッキーニの隣にいたシャーリーは二人の食いっぷりに半ば呆れ気味に関心する。
「ま、食べれるときに食べないとねー! それに俺、こんなうまい料理食べるの初めてだよ!(ティファにも食べさせてあげたいなー)」
「そ、そうなんですか? 私が作ったんですそのスープ……」
そう言ってリーネがもじもじしながらトレイで顔を隠す。
「すごいじゃんリーネ! 将来は料理人かお嫁さんで決まりだな! いい嫁になるぜ!」
「へっ!?」
これが芳佳等に言われたならなんともないのだろうが、ガロードに言われたせいかリーネはつま先から頭のてっぺんまで赤くなり、頭から湯気が出ていた。
「ん? どうしたんだリーネ?」
「な、なんでもありませ~ん!」
そんな二人のやり取りを見て殆どの隊員は苦笑いをしていた、するとバルクホルンは食事を残したまま席を立とうとしていた。
「あれバルクホルンさん? お口に合いませんでした?」
「食欲がなくてな……ガロード、食べていいぞ」
「マジで!? やりぃ! でもちゃんと食べないとダメだぞ? 人間いつ何が起こるかわからねえからな」
「ああ……」
バルクホルンはそのまま食堂から出てしまい、芳佳は自分達の料理がおいしくなかったのかなと思い不安を感じていた、するとその時、おかわりを要求していたルッキーニが催促してきた。
「おかわり早く~!」
「あ、はいはい! ちょっとまってね~!」
すると今度はペリーヌが、スプーンの上に納豆を乗せて芳佳に文句を言う。
「まったく、バルクホルン大尉じゃなくても、こんな腐った豆なんてとてもとても食べられたもんじゃありませんわ」
それに対し芳佳は反論する。
「でも納豆は体にいいし、坂本さんも好きだって……」
「だよなー、俺は好きだぜ」
「さ、坂本“さん”ですって!?」
ペリーヌは芳佳が美緒の事をさん付けで呼んでいる事を知り、物凄い形相で芳佳に詰め寄った。
「しょ、少佐とお呼びなさい! ワタクシだって少佐をさん付けで……ごにょごにょ……」
しかし途中で顔を真っ赤にして俯いてしまう。
「ともかく、いくら少佐がお好きでも! この匂いだけは絶対に我慢ができませんわ!」
「おかわり~!!」
すると放置され気味だったルッキーニは涙目で芳佳に再三おかわりを要求した。
「ああ! はいはい!」
「ふん!」
ペリーヌはそのまま自分の席に座り、芳佳からそっぽを向いてしまう、ガロードはそんなペリーヌに話しかける。
「んじゃそれも俺が食べていい?」
「好きにしなさいこの野良犬!」



それから一時間後、ガロードは扶桑海軍によって運び込まれたMSの残骸からビームライフルのエネルギーを抜き取っていた。
「よしよし、バッテリーは残ってたな、でもそんなにたくさんは撃てないか……節約しないとなー」
「ようガロード! やってるな!」
「おー! なんか面白そうな事やってるー!」
するとそこにシャーリーとルッキーニが見学しにやってくる。
「あれーお前ら、訓練じゃねーの?」
「今はバルクホルンとエーリカが飛んでんの、アタシ等はその後さ」
「ふーん、そういやバルクホルン、随分と元気なかったけど何かあったの?」
「うーん……私には判らないなあ、隊長やエーリカなら何か知ってんじゃないのか? あの三人出身が同じカールスラントだし」
「きっとお腹痛いんだよ! だから朝ごはん食べられなかったんだ!」
「ははは……まあそう単純だったらいいんだけどなあ」
そしてシャーリーは整備されているDXをまじまじと見つめる。
「それにしてもいいなあコレ……どれぐらいの早さで飛ぶんだ?」
「んー、エアマスター程じゃないけど結構早いと思うぞ」
「そっかー、いいなー、いつか私にこれを操縦させてくれ! いいだろ!?」
「お、おう」
目を輝かせるシャーリーを見て、ガロードはある人物達の事を思い出していた。
(シャーリーってあれだな……パーラに似ているな)
「ん? どうしたガロード、私の顔に何か付いているか?」
「いや、俺の知り合いにシャーリーと似ている子がいるんだ、多分気が合うんだろうなーって」
「へー! そうなのか!?」
「ねえガロード!? その人胸おっきい!?」
「あー、大きいっちゃ大きいか」
「おお~!」
ルッキーニはそう言って期待に胸を躍らせて目を輝かせていた。
「なんだルッキーニ、鞍替えかこの薄情者~!」
そう言ってシャーリーはルッキーニをぎゅーっと抱きしめる。
「あー、やっぱりシャーリーのおっぱいは心地いい~」
(相変わらずでけえよな、もしティファにあんなの付いていたら……いやいや! ティファはちっぱいだろうとボインだろうと可愛いぜ!)
仲の良いシャーリーとルッキーニを見てガロードは頭の中で妄想を巡らせる、するとそこに飛行訓練を終えたバルクホルンとエーリカがストライカーユニットを履いてやってきた。
「お、訓練終わったのか、おつかれさーん」
「どもどもー」
「……」
エーリカが返事をする一方、バルクホルンは何も言わず通り過ぎていった。
「あー、バルクホルンの奴、最近元気無いなー」
「喧嘩友達が元気無くて寂しいのシャーリー?」
「おー、お前生意気な事言う様になったなー」
「はうーん」
そう言ってシャーリーは拳をルッキーニの頭にぐりぐりと押しつける。
「でもホントトゥルーデ元気無いんだよね、宮藤が来てから……」
「宮藤が来てから? どういうことだ?」
エーリカの何気ない一言に食いつくガロード。

「宮藤ってね……似ているんだよクリスに」


ガロード達はエーリカからバルクホルンに妹がいる事、その子がネウロイによって大けがを負い意識不明で、今はブリタニアの病院に収容されている事、そして宮藤が……何となくクリスに似ている事を……。
「成程ねえ、バルクホルンにそんなことが……」
「なんかそれで最近しょっちゅう昔の夢見てうなされているみたいでさ……少し心配なんだよね」
(大切な人を守れなかったのか……だからあんなに悲しそうな顔していたんだな)
ふと、ガロードの頭の中にフリーデンとの旅の中で出会った人達の顔が浮かび上がる。

「なんか……放っておけないよな」



次の日、ガロードは基地の外でシャーリーとルッキーニと共に芳佳、リーネ、美緒、そしてバルクホルンの編隊飛行の訓練を見学していた。
「へー、芳佳最初の頃と比べて飛ぶのがうまくなったよな」
「そうなんだよー、まだウィッチになってまだ日が経ってないのにすごいよな」
「でもスピードはシャーリーが一番だもんね!」
その時、ガロード達の背後からペリーヌが現れ、飛行訓練を行う芳佳を睨みつけていた。
「あの豆狸……! また坂本少佐と……!」
「なんだぁ? 急に現れたと思ったら……」
「んー? なんでペリーヌ芳佳の事嫌いなのー? 私は芳佳好きなのにー」
「あの豆狸! 坂本少佐にべたべたしすぎなのですわ! おまけに私の頭にモップをぶつけたり坂本少佐と一緒にお風呂に入ったりして……!」
「お前ほんとうにもっさん好きだな」
「もっさん?」
「俺が付けた仇名、坂本さんを縮めたんだ」
「も、もっさん!!?」
ガロードの美緒の呼び方に、ペリーヌは堪忍袋の緒が切れてしまった。
「あ、貴方! その呼び方はいくらなんでも失礼でしょう!? 坂本少佐は貴方の上官で……!」
「いや、俺軍属じゃないし……ていうかもっさんもわっはっは言いながら気に入ってくれたぞ」
「そういう問題じゃありませんわこの野良犬」
「んだとう、お前も犬みたいなもんじゃないか、ほらぺリ犬」
「「ぶー!!」」
シャーリーとルッキーニはガロードが付けたペリーヌの名前を聞いて思わず噴き出してしまう。
「こここここここの野良犬! もう我慢なりません!! ここで消し墨にして……!」
そう言ってペリーヌが使い魔を憑依させガロードを攻撃しようとした時、突如基地中に警報が鳴り響いた。
「警報!? ネウロイか!?」
「いくぞ皆!」


数分後、ガロードはDXに乗ってストライカーユニットを履いたシャーリー、ルッキーニ、ペリーヌ、そして途中で合流したミーナと共にネウロイが出現した空域に向かった、そして先行していた芳佳達とも合流しネウロイの元に向かった。
「最近、やつらの出撃サイクルにブレが多いな……!」
「カールスラント領で動きがあったらしいけど、詳しくは……」
「カールスラント……!」
美緒とミーナの話を聞いていたバルクホルンは、ハッと目を見開く。
「どうした?」
「いや、なんでもない……」
「よし、隊列変更だ、ペリーヌはバルクホルンの二番機に、宮藤は私のところに入れ」
(また……!)
ペリーヌは美緒と組むことになった芳佳に対し嫉妬していた。
『もっさん! 俺達はどうするんだ!?』
「ガロードはシャーリーとルッキーニと組んでネウロイに当たってくれ」
「りょーかい!」
「んじゃパパッとやっつけちゃおう!」

そして彼女達の元にネウロイが接近してくる。
「敵発見! 宮藤! ついてこい!」
「あ、はい!」
「バルクホルン隊、シャーロット隊突入! 私は少佐の援護に!」
「了解!」
先行するバルクホルンは、二丁の機関銃の銃弾をネウロイに撃ち込んでいく、続いてシャーリー、ルッキーニ、ガロードもそれに続いて攻撃する。
『お前ら! 巻き込まれるんじゃねえぞ!』
「判ってるって!」
「そんなヘマしないよーん!」
余裕たっぷりのシャーリー隊、対してバルクホルン隊はペリーヌがバルクホルンの動きについていけないでいた。
(ワタクシがついていけないだなんて……!)
ふと、ペリーヌの視界に美緒と一緒に飛ぶ芳佳が入ってくる。
「あの豆狸……! 坂本少佐と一緒に……!」
そう言ってペリーヌはバルクホルンについて行こうと必死に加速する、それをリーネと一緒に飛びながら見ていたミーナは彼女の動きがいつもと違う事に気付く。
「やっぱりおかしいわ……!」
「えっ?」
「バルクホルンよ! あの子はいつでも視界に二番機を入れているのよ、なのに今日は一人で突込みすぎる……!」

そして別の位置にいたシャーリーもその事に気付き、彼女に警告する。
「近づきすぎだぞバルクホルン!」
「大丈夫だ! これくらい……!」


その時、芳佳達の攻撃によってネウロイの装甲が少し薄くなった。
「あそこよ! あそこを狙って!」
「はい!」
ミーナの指示でリーネはその個所を狙撃する、するとネウロイはガラス片を散ばせながら小規模の爆発を起こし、そのままレーザーで反撃してきた。
「うわっ!?」
「くっ……」
皆避けたり魔力シールドで防いだりしてレーザー攻撃を凌いだ、
「! 近付きすぎだバルクホルン!」
美緒の警告でレーザーを回避するバルクホルン、そして彼女の後ろにいたペリーヌは魔力シールドでそのレーザーを防いだ。
「は!?」
「うっ!?」
すると押された勢いで、ペリーヌは移動していたバルクホルンとぶつかってしまう。そしてネウロイのレーザーが怯んだバルクホルンに襲いかかる。
「あああああ!!?」
バルクホルンが張った魔力シールドは間に合わず、レーザーは二丁あった銃のうち片方を爆散させ、その破片がバルクホルンの胸に突き刺さった。
「大尉!?」
「バルクホルンさん!!」
そのまま近くの小島に墜落していくバルクホルン、それを見た芳佳とペリーヌはすぐさま彼女を追いかけていった。

「バルクホルン!! くっ……!」
その様子を見ていたシャーリーも追いかけようとするが、ネウロイのレーザー攻撃に阻まれてしまう。
『俺が行く! シャーリー達はネウロイを!』
「わかった! あいつを頼む!」
ガロードはシャーリーの代わりにバルクホルンを助けに小島に降りて行った……。


一方、負傷したバルクホルンを空中で受け止めた芳佳とペリーヌは、彼女を一旦地上に降ろし上着を脱がして怪我の状態を確認する。
「ワタクシのせいだ……! どうしよう……!」
「出血がひどい……! 動かせばもっとひどくなる、ここで治療しなきゃ!」
「お願い……大尉を助けて……!」
芳佳は血に染まるバルクホルンのシャツを見て事は一刻を争うと判断し、治癒魔法を発動させ彼女の治療を試みる。
「焦らない……! ゆっくりと……! 集中して……!」
そして芳佳の手から青白い光が放たれ、バルクホルンを包み込む。
「そんな力が……くっ!」
そうしている間にも、ネウロイの猛攻は止むことなく、ペリーヌは芳佳達を守る様に魔力シールドを張った。
「うっ……」
「今治しますから……!」
「私に張り付いていては、お前達も危険だ……! 離れろ、私なんかに構わずその力を敵に使え」
「嫌です、必ず助けます……! 仲間じゃないですか!」
「敵を倒せ……! 私の命など捨て駒でいいんだ……!」
「あなたが生きていれば、私なんかよりもっと大勢の人を助けられます……!」
「無理だ……皆を守る事なんて出来やしない……私はたった一人でさえ……! もう行け、私に構うな……!」
バルクホルンはあくまで芳佳達を逃がそうとする、するとペリーヌが芳佳達に話しかける。
「早く! もう持たない!」
「ど、どうしよう、早くしないと……!」
ペリーヌの限界が近い事を知り芳佳は焦り始める、そしてネウロイの無数のビームが彼女に向かって放たれた。
(だ、ダメ……!)
自分の魔力シールドでは防げないと思い、ペリーヌは覚悟を決めて目をギュっと瞑る、しかしその時……。
『させるかー!!!』
ペリーヌの前にDXが覆いかぶさるように割り込み、その身を呈して彼女をビームから守った。
「ガロード……さん!?」
『おいバルクホルン……ふざけるなよ! 捨て駒でいいってなんだよ!!』
「え……?」
先程までの芳佳達のやり取りを聞いていたガロードは声に怒りを込めてバルクホルンを叱咤する。
『この世界には……生きたくてもそれが叶わなかった奴が大勢いるんだ! それなのに死にたいだなんて……! そんなの絶対に許さない!』
「だが私は……たった一人でさえ守れなかったのに……!」
『バカ野郎! 一人で無理なら皆で守ればいいだろうが! ここには芳佳もいる! ペリーヌも! シャーリーも! リーネも! もっさん達だって! 俺だっている! 一人で何でも抱え込むんじゃねえ!!』
「ガロード……ラン……!」
ガロードの魂の籠った言葉が、バルクホルンの心に力を注いでいく、
その時、DXの胸部にネウロイのビームが直撃し、中にいたガロードに大きな衝撃が襲う。
「ガロード君!」
『へ、へへへへ……大丈夫だ、このくらい……俺は誰も死なせない、死なせるもんか……!』
「死なせない……そうだな……!」
するとバルクホルンは起きあがり、武器を手にストライカーユニットを履いて浮かび上がった。
「クリス……今度こそ守ってみせる!」
「バルクホルンさん……!」
「大尉……!」
体力の限界が来てその場にへたり込んだ芳佳とペリーヌは、回復したバルクホルンのその心強い頬笑みに笑顔で答えた。
「うおおおおおお!!!」
そしてバルクホルンはミーナ達を掻い潜り銃を乱射しながらネウロイに向かって飛んでいく、彼女の気迫の籠った攻撃はそのまま露出したままのコアに当たり、ネウロイはガラス片となって砕け散った。
「おー……やったじゃんバルクホルン!」
ガロードはコックピットから降り、完全復活したバルクホルンの雄姿をその目で直に焼き付けた……。





その後、無茶をしたバルクホルンはあとでミーナにこってりと怒られた後、休暇届けを出して妹のクリスの見舞いに行ったそうな。





その次の日の事……ガロードは先日ネウロイの攻撃で損傷したDXの修理を行っていた。
「やっぱ一人でやると手間かかるな……でも基地の人間に触らせると何されるか判らねえし……」
そう言って機体の下に潜り込み修理を続けるガロード、その時彼は誰かの足音が近づいて来ることに気付いた。
「ん? シャーリーか?」
「あ、あのガロードさん……」
「あれ? ペリーヌ?」
自分の予想とは違う意外な訪問者にガロードは驚く、そのペリーヌの手にはいくつものコッペパンが入ったバスケットがあった。
「ん? 何それ?」
「そ、その……先日のお礼もまだでしたし、よろしければ昼食にいかがかと……」
「へー! ペリーヌが焼いたの!? すげーじゃん!」
そう言ってガロードはペリーヌからバスケットを受け取り、中のパンをがつがつと食べ始めた。
「あ、あの……あの時は助けていただきありがとうございます……」
「モグモグ……いいっていいって、俺は当然のことをしたまでだよ」
「ま、まあその……あの時の貴方はカッコよかったですわ、一番は少佐ですけど……ワタクシ少しキュンと来ちゃいましたわ……」
「ふぇ? ふぁに? ふぃふぉふぇふぁい」(訳:え? 何? 聞こえない)
食べる事に夢中でペリーヌの最後の方の言葉を聞いていなかったガロード、するとペリーヌは顔を真っ赤にぷんぷんと怒り始めた。
「な、なんでもありませんわ!」
そしてペリーヌはそのまま走り去っていった。
「ゴクッ……何なんだアイツ?」


「ガロード……少しいいか?」
するとペリーヌと入れ替わる様に今度はバルクホルンが現れた。
「お? もう帰ってきたのかバルクホルン、妹さんの見舞いはどうだった?」
「ああ……医者の話ではもう目を覚ますだろうと言っていた」
「そっか、妹さん早く良くなるといいな」
エーリカからクリスの事を聞かされていたガロードは何気に彼女の事を心配しており、もうすぐ良くなると知ってほっと胸を撫で下ろす。
「ガロード……ありがとう、お前と宮藤のおかげで私はまた戦うことが出来た……」
「いんやあ、俺はただ放ってはおけなかっただけさ……もう簡単に死にたいなんて思うなよ」
「肝に銘じておく」
そう言ってバルクホルンは頭をぺこりと下げた。
「にしてもあの時の戦っているバルクホルン、すごかったなー、クリスもバルクホルンみたいなお姉ちゃんもって幸せもんだろ」
「そ、そうか?」
突然ガロードに褒められ、バルクホルンは照れながら頬をポリポリと掻く。
「俺さー、小さい頃両親が死んで家族とかいなかったからさ、兄弟とかに憧れてんだよねー」
「そうだったのか……それじゃ私の事、姉と呼んでもいいんだぞ?」
ガロードの事を哀れに思い、バルクホルンは冗談交じりにそう提案する。


そ れ が い け な か っ た


「そう? それじゃ……お姉ちゃん!」
「!!!?」
“その時、バルクホルンに電流が走る……!”というナレーションが聞こえてきそうなほど、バルクホルンの心臓に言いようの無いインパクトが襲いかかり、そのまま後ろに吹き飛んでいった。
「え!? なんだ!? どうしたバルクホルン!?」
「い、いやなんでもない!!!(なんだ今のは……!? この気持ちは何だ!?)」
そしてバルクホルンは息も絶え絶えに必死に起きあがり、ガロードに再び提案する。
「す、すまないがもう一度私をお姉ちゃんと呼んでくれないか?」
「え? あ……お姉ちゃん?」
「はぐ!!?」
再びバルクホルンの心臓がキュンとし、彼女はそのまま仰向けに大の字で倒れた。
「な、なあマジでどうしたんだおい!?」
「し、静まれい! 私はなんともない! これで失礼する!」
バルクホルンはそのまま飛び起き、格納庫から猛スピードで去っていった。
「なんだアイツ……?」


一方バルクホルンは走りながら、機関車の如く脈打つ心臓の鼓動を必死に抑えようとしていた。
(な、なんだこのクリスにお姉ちゃんと言われた時の幸せな気分にも似た、この……あの……なんだコレは!?)
自分の今の気持ちを言葉で表現することが出来ず、バルクホルンはそのまま自室に駆け込みベッドの上で悶えていた……。


生粋のシスコンのバルクホルン、真逆の何かにも目覚める……。










本日はここまで二人目、三人目も陥落……(笑)
ガロードってWみたいに5人組の美少年の一人としてデザインされたらしいですよね、芳佳達から見たらガロードは美少年なんでしょうか?
次回は水着回ですよー。



[29127] 第四話「はやくて!? おおきくて!? やわらかい……」
Name: 三振王◆9e01ba55 ID:3f309a96
Date: 2011/08/12 22:20
 第四話「はやくて!? おおきくて!? やわらかい……」


その日、ガロードはDXの整備を終えた後、置いてあった芳佳達のストライカーを眺めていた。
「それにしてもスゲー作りだよなストライカーユニットって、キッドに見せたら喜んで改造しそうだな……」
「んー? 私のストライカーユニットに何か用かガロード?」
するとそこにシャーリーが現れる。
「いやなんでも、お前こそどうしたんだ? 今ブリーフィングじゃ……」
「私のストライカーの慣らし運転をしに来たのさ」
「へー、熱心なもんだな」
そしてシャーリーは台に固定されたままの自分のストライカーユニットを履き、自分の使い魔であるウサギを憑依させエンジンを起動した。

――ドォンッ!!

するとストライカーから鼓膜を揺さぶるような爆音が発せられる。
「ぎゃ!? お、おいおい、でかい音出すなら先に言ってくれよ!」
「あーわりいわりい」
シャーリーはてへへと笑いながら耳を押さえているガロードに謝罪する。

「シャーリーさん!」
「ガロード君!」
すると今度は芳佳とリーネが現れガロード達の元に駆け寄る、どうやら先程の爆音で何事かと思ったようだ。
「お? よう二人とも! どうしたんだ二人して?」
そう言ってシャーリーは呑気に芳佳とリーネに手を振った。
「あ、あの……さっきの音は?」
「ああ、シャーリーがストライカーを起動させた音だよ、俺もびっくりしちまった」
「なんならもう一回やってやろうか?」
シャーリーはそのままもう一度ストライカーのエンジンを起動させ辺りに爆音を響かせる。
「うおおおお!? だからいきなりやんなって!?」
再び響く爆音に、ガロード達は反射的に耳を塞ぐ。そして芳佳は音の元のエンジンを止めてもらいため、シャーリーに大声で話しかける。
「も、もういいです! わかりましたからー!」
しかし芳佳の言葉は爆音によって掻き消され、シャーリーはその事に気付かないまま隣にあった計器を操作する。
「ふん……いい感じだ、もう少しシールドとの傾斜回路を……ところで何言ってんだ宮藤?」
「音止めてくれってさー! このままじゃ会話もできねーよ!」
「ああ、すまんすまん」
代わりに話しかけてきたガロードによってシャーリーはようやくエンジンを止めた。

「う~るさいな~」
その時、ガロード達のいる格納庫の天井からルッキーニの声がしてきた、ルッキーニは天井を支える骨組みの上で昼寝をしていたのである。
「「ルッキーニちゃん!?」」
「お前そんな所にいたのか!? 全然気付かなかった……」
「ふぁ~! 折角いい気持で寝てたのに~、ガロードの声で起きちゃったよ~」
そう言ってルッキーニは天井から飛び降りてそのまま華麗に着地した。
「ネコかお前は」
「ルッキーニちゃん、今の音平気だったの?」
リーネの質問にルッキーニはあっけらかんに応える。
「うん! だっていつもの事だし」
「いつも……? シャーリーさんいつもこんな轟音立てて……」
「ストライカーのエンジンを改造しただけだよ」
「エンジンの改造って……どういうことです?」
「ふ……おいで、見せてあげる」

芳佳達はストライカーユニットを履いて台から降りたシャーリーに連れられて外にやってくる。
「あの、改造って……」
「魔導エンジンのエネルギーの割り振りをいじったんだよ」
「割り振りって……攻撃や防御に使う分のエネルギーを変えているんですか?」
「そういうこと」
「一体何を強化したんですか?」
「もちろん速度!」
「シャーリー!」
その時、速度計測機を抱えたルッキーニからシャーリーに相図が送られる、するとシャーリーの足元の魔法陣がさらに大きくなる。
「GO!」
そしてルッキーニのGOサインと共に、シャーリーは勢いよく空へ飛び出していった。
「いっけーシャーリー!!」
「すごい……! なんて加速……!」
「MSでもあれだけの速度を出せるのはそうそういないぜー」
「まだまだ!」
するとシャーリーはそのまま物凄いスピードで雲に届きそうな位置まで上昇した。
「おお、一気に上がった……1000メートルぐらいを一分もかからずに上昇するなんて……」



一方飛び続けているシャーリーはさらに飛行スピードを上げた。
「いくよマーリン、魔導エンジン出力最大!」
シャーリーは自分の体を魔法で輝かせながら飛行スピードをさらに上げた。
「シャーリーさんまだ加速している……!」
「時速770キロ! 780! 785! 790! 795! ……800キロ! 記録更新だよ!」
そしてシャーリーはそのままガロード達の横を光速で横切っていった。
「うわっ!?」
「あんにゃろう……こっちをおちょくってんのか!?」

「もっとだ……もっとだ!」
しかしシャーリーのストライカーユニットはそれ以上加速することが出来ず、ガタガタときしみ始めた。

「あー、800を超えたあたりで減速してきたな」
「もうちょっとで音速だったのに~!」
ルッキーニはまるで自分の事のように悔しがる、そして彼女達のもとにシャーリーが戻ってきた。
「シャーリー記録更新だよ!」
「「すごかったです!!」」
「おお! やった~!」
そう言ってシャーリーは嬉しさのあまりガッツポーズした。





そして地上に降りたシャーリーが一言。
「あ~! お腹減った~!」



数分後、格納庫に戻ったガロード達はストライカーの整備をしているシャーリーからある雑誌を見せてもらっていた。
「これなんですか?」
「『グラマラスシャーリー新記録』って……バイクの記録ですか?」
「シャーリーはパイロットになる前はバイク乗りだったんだって!」
「ボンネビルフラッツって知ってるかい? リベリオンの真ん中にある、見渡す限りすべて塩でできた平原さ」
「そんなところがあるんですかー」
「そこは私らスピードマニアの聖地なんだ……」
シャーリーは瞳を閉じながらその時の様子を思い浮かべていた。
「そこで記録を破った日に耳にしたのさ、魔導エンジンを操って空を舞う世界最速の魔女の話をね……その日に私は軍に志願して入隊、今ここでこうやっているってわけ」
「それで任務の無い日にこうやってスピードの限界に挑戦しているんですね?」
「最速かあ……スゴイなあ……!」
リーネと芳佳は様々なチャレンジをしてきたスケールの大きいシャーリーを尊敬の眼差しで見る。
「でもそれってどこまで行けば満足するんですか?」
「そうだなあ……いつか音速、マッハを超える事かな?」
「ふえ? 音速ってなんですか?」
「音が伝わる速度だよ、大体時速1200キロメートルぐらいさ」
「ほあああ……」
「そんな速度を出すなんて、本当に可能なんですか?」
「さてね……でも、夢を追わなくなったらおしまいさ、今日はここまでっと」
そう言って整備を終えるシャーリー、そしてある事を思い出し芳佳達に質問する。
「ところで……二人は何か用かい?」
「ふえ?」
「ん?」
「「ああ~!!? 忘れてた~!?」」
芳佳達はようやく本来の目的を思い出し顔を見合わせる。
「あ、明日明朝1000時に海に行くことになんたんです! 水着持参で……」
「ガロード君も来てほしいってミーナ隊長が……」
「それってつまり……海水浴?」
「ほお! それは楽しみだな!」
「え? 何がです?」
「二人の水着姿が見れるじゃん? ついでにガロードの」
「「えええ~!!?」」
シャーリーにそう言われ、二人は恥ずかしさで顔を真っ赤にする。
「俺はついでかよ!?」
「まあまあ、そんじゃ持っていく水着選ばないとな~」

そう言ってシャーリー達は格納庫から去っていった。そして誰もいなくなった格納庫に一人昼寝して残っていたルッキーニは、大きなあくびをしながら目を覚ます。
「ふあ~……ん?」
その時ルッキーニはシャーリーのストライカーに引っ掛かっていた彼女のゴーグルを発見する。
「いっただき~!」
ルッキーニはゴーグルを自分の頭に掛けようと引っ張る、するとゴーグルのゴムがストライカーの翼に引っ掛かっていたので、ストライカーはそのままガタンと地面に倒れてしまった。
「へ? うきゃー!?」
オイルが漏れてパーツがバラバラになったストライカーを見て、ルッキーニは事の重大さを認識し思わず叫んでしまう。
「どどどどどうしようどうしよう!? え、えーっとこの部品どこだっけ? こっち? こっちだっけか?」
ルッキーニは自分で修理を試み、あいまいな記憶でストライカーの部品をはめていった……。

数分後……オイルまみれになりながらルッキーニはストライカーの修理を完了した。
「ふう! これで元通り! ……だよね?」
ルッキーニは自分の修理に不安を感じながらも、とりあえずお腹がすいたので格納庫から出ていった……。





次の日、水着姿の501の面々は海岸に到着し、まずシャーリーとルッキーニが真っ先に海に飛び込んでいったいった。
「「やっほぉー!!」」

「ほ! ふ!」
「ふんふーん」
一方バルクホルンとエーリカは泳ぎの練習を始める、もっともバルクホルンは綺麗なクロールのフォームに対し、エーリカはどう見ても犬かきなのだが。(アニメでは泳いでいる時海面に突き出したお尻が可愛いので是非そちらもチェック)

「肌がひりひりする……」
「腹へったなー」
サーニャとエイラは泳ごうとはせず、砂浜で二人仲良く並んで座り、皆が泳いでいる様子を眺めていた。

そして芳佳達はというと……。
「な、なんでこんなの履くんですか~!!?」
芳佳とリーネは水着姿のまま訓練用のストライカーユニットを履いていた。
「何度も言わすな、万が一海上に落ちた時の為だ」
「他の人達もちゃんと訓練したのよ? あとはあなた達だけ」
「つべこべ言わずにさっさと飛びこめ!」
「ふえええー!!?」
「きゃあああ!!?」
美緒に催促され芳佳とリーネは慌てて海に飛び込んだ。

「……浮いて来ないな」
「ええ……」
しばらくした後、美緒とミーナは芳佳達が浮いて来ない事に焦り始める。
「やっぱり飛ぶようにはいかんか……」
「そろそろ限界かしら……」
その時、突如海面に芳佳とリーネが浮かび上がってきた。
「ぶはぁ!」
「ぷはぁ!!」
「あら、上がってきた」
「いつまで犬かきやっとるかー、ほら、ペリーヌを見習わんかー」
溺れかけている芳佳とリーネの後ろでは、ペリーヌが悠々自適に平泳ぎをしていた。
「まったくですわ……」
ペリーヌは溺れかけている二人を見て、やれやれとため息をつきながらそのまま横切っていった。
「そんな……いきなり……無理……」
そして芳佳とリーネはついに力尽き、ぶくぶくと海の底に沈んでいった……。
「あらあら……仕方ないわね、ガロード君頼める?」
『オッケーだぜミーナさん!』
すると海面から何故かDXがグモモモモと浮かび上がってきた、ちなみにその手にはぜーぜー言ってる芳佳とリーネが乗っていた。
「ライフセーバー役ご苦労だなガロード」
『いやいや、お役に立てて何よりだぜ!』
「それにしてもMSって水中も入れるのね、高性能ね……」
『まあレオパルド程じゃないけどね! MSにも水中用ってのがあるし……』
「ふむ……もしもの時の為に水中用の装備の開発を上申したほうがいいかもな……それはそうと皆、休憩時間だー」

美緒に言われてそれぞれ海で泳いでいた隊員達が一斉に砂浜に上がってくる、そして最後にストライカーユニットを抱えた芳佳とリーネが満身創痍と言った様子で陸に上がってきた。
「はぁ……はぁ……もう動けない……」
「私も……」
そして力尽き砂の上に倒れ込む二人。
「あ、遊べるって言ったのに……ミーナ中佐の嘘吐き……」
「ありゃりゃ、大分お疲れのようで」
するとそこに様子を見に来たガロードとシャーリーが現れた。ちなみにガロードは軍から支給された長ズボン状の海パンを履いている。
「なあにすぐ慣れるさ、それにこうやって寝てるだけだって悪くない……」
「は、はあ……」
そう言って芳佳、リーネ、シャーリーは仰向けに寝て日光浴を楽しむ、そしてガロードは彼女達の隣に座り込む。
「お日様……あったかい……」
「うん、気持ちいい……」
「だろ?」
「平和だなあ……」
「あれ?」
その時、芳佳は太陽を見て異変に気付き、身を起こした。
「? どうしたの?」
「今……太陽のとこ、何か横切った」
「何が……?」
シャーリーとリーネ、そしてガロードも目を細めて太陽を見る。そしてシャーリーはその物体の正体を察知した。
「……! 敵だ!」
「ふぇ!?」
「ネウロイ!」
「こんな時にかよ!?」
「……!」
シャーリーはすぐさま自分のストライカーが置いてある格納庫に向かって駆けていき、芳佳とリーネも彼女を追いかけていく。
「「シャーリーさん!」」
「やべっ! 俺も行かなきゃ!」
すると島全体に敵の襲来を告げる警報が鳴り響く。それを聞いた501の面々も格納庫に向かって行った。

一方美緒とミーナは近くにあった連絡用電話で管制室から状況の確認を行っていた。
「敵は一機、レーダー網を掻い潜って侵入した模様」
「もう……また予定より二日早いわ」
「だれがいく?」
「すでにシャーリーさん達が動いているわ」


一方格納庫に一番乗りで着いたシャーリーは自分用の武器であるBAR、M1911A1を抱えストライカーを履いた。
「イェーガー機……出る!」
そしてシャーリーは勢いよく空へ飛び出していった。
「シャーリーさん……きゃあ!?」
「あいたた……私達も行こう!」
シャーリーが飛んでいく様子を目の当たりにした芳佳とリーネもすぐさま格納庫に向かった。

ネウロイに向かって高速で飛翔するシャーリー、すると彼女が耳に装備しているインカムにミーナからの通信が入ってきた。
『シャーリーさん聞こえる?』
「中佐?」
『敵は一機、超高速型よ、すでに内陸に入られている』
「敵の進路は?」
『ここから西北西、目標はこのまま進むと……ロンドン!』
『ロンドンだ! 直ちに単騎先行せよ! シャーリー……お前のスピードを見せてやれ!』
「了解!」
美緒の言葉を聞いて気合を入れたシャーリーは、ゴーグルを付けて加速する。
「「うわぁあ!?」」
その衝撃波は後ろを飛んでいた芳佳とリーネにも襲いかかり、彼女達の飛行バランスを大きく狂わせた。
「も、もうあんなところに!」
「リーネちゃん急ごう! ガロード君も来てくれる!」
そう言って芳佳とリーネはシャーリーの後を一生懸命追いかけていった。


「シャーリーさん……」
一方基地では美緒とミーナがシャーリー達の戦いぶりを見守っていた、そこに……。
「あああ~! シャーリー行っちゃった……まさかあのままなのかな?」
「何があのままなんだ?」
「えっとね、夕べ私シャーリーのストライカーをね……ひっ!?」
その時ルッキーニは自分の背後から物凄い殺気を感じ、錆びたロボットのようにギギギと後ろを向いた。
「あ、あの……なんでも無いです」
「続けなさい……フランチェスカ・ルッキーニ少尉……うふふふふ!!」
「あわわわわわわわわわ」
ルッキーニは恐怖のあまり、体から大量の冷や汗を流していた……。


ルッキーニから事情を聞いた美緒はすぐさまシャーリーに帰還するよう指示を出す。
『大……! 帰……! ただち……!』
(なんだ? 加速が止まらない……今日はエンジンの調子がいいのか?)
しかし計器の不調で美緒の指示は届かず、シャーリーはいつもと調子が違うストライカーを気にかけていた。
(この感じ……似てる……似てる! あの時と!)
シャーリーの脳裏にモンデビルフラッツで記録を破った時の記憶が浮かび上がる。
『ただ……せよ!……尉!……!』
「いっっっっけぇーーーーー!!!」
シャーリーはそのまま超加速の魔法を発動させ、空気の壁を切りながら加速していった。



「……はっ!?」
気がつくとシャーリーは自分が未踏の領域にいる事に気がつく……そう、彼女は今音速を超えた世界の中にいたのだ。
「あ、あたし……マッハを超えたの? これが超音速の世界……! すごい! すごいぞ! やった! わたしやったんだ!」
『聞こえるか大尉!? 返事しろ!』
するとようやくインカムの調子が戻り、シャーリーの耳に美緒の言葉が届いた。
「少佐やりました! あたし音速を超えたんです!」
『止まれー! 敵に突っ込むぞー!』
「へ?」
するとシャーリーの正面にネウロイが高速で接近してくる、シャーリーは加速する事に夢中でネウロイの事をすっかり忘れていたのだ。
「へ? ……ふええええええ!!!?」
シャーリーは反射的に自分の目の前に魔力シールドを展開する、するとシャーリーの体は高速で放たれた銃弾のように、ネウロイをコアごと突き抜いてしまった。

「……! 敵撃墜です!」
同じころ、シャーリーを追っていた芳佳とリーネはネウロイが爆散した事を美緒達に伝える。
『シャーリーさんは!?』
「えっと……あ! 大丈夫です!」
すると芳佳は、ネウロイの爆煙の中からシャーリーが上空に向かって飛び出してきたのを確認した。
「無事です! シャーリーさんは無事です!」
そう言って二人はシャーリーの元に向かう、すると彼女達はシャーリーの異変に気付く。
「あれ……?」
シャーリーはどうやら気を失っているようで、(顔は笑ったままで)音速を超えたことで燃え尽きた自分の水着の燃えカスを撒き散らしながら上昇する、そして魔力が切れてストライカーユニットが脱げると、彼女はそのまま海へ真っ逆さまに落ちていった。
「わああああ!?」
「全然無事じゃなーい!」
慌てて助けに向かおうとする芳佳とリーネ、すると彼女達の横を追いかけてきたガロードのDXが横切った。
『俺に任せろ!』
「「ガロードくん!」」
ガロードはDXを海上まで先まわらせ、そのままシャーリーを空中でキャッチする。
『おっしゃ! シャーリー無事か!?』
ガロードはシャーリーの無事を確認するため、手元にMSのカメラを向ける。
「!!!? ぶー!!!!」
そして豪勢に鼻血をコックピットの中にぶちまけた、そりゃそうですよ、だって部隊一どころか世界レベルのナイスバディを持つ少女がMSの手の上で全裸で眠っているんですよ? 思春期真っ盛りの15の少年でガンダムシリーズで1,2を争う純情ボーイにはきついってもんがありまっせ。

「はやくて! おおきくて! やわらかい……」ガクッ
それがガロードの遺言だった。

「わあ~!? DXが沈んでる!? なんでぇ!!?」
「が、ガロードくーん!」
数分後、残りのウィッチ全員によって引き上げられたDXのコックピットの中には、鼻血で真っ赤に染まったガロードが発見された……。










その日の夜、ガロードは基地の外で涼しい夜風に当たっていた。
「はあ……今日はエライ目にあった……」
「ようガロード!」
するとそこに、そのエライ目に合わせた張本人が現れた。
「シャーリー? もう体はいいのか?」
「へーきへーき! 魔力は減っていたけど寝て食ったら治っちまった!」
「単純な体しているなお前……今日は大活躍だったじゃん」
「おうよ! でもまだまだ私は記録更新を目指すぜ~! 音速の次は光速だ!」
手をぎゅっと握りしめて熱く語るシャーリー、ガロードはそんな彼女を羨ましいそうに見つめていた。
「いいなシャーリーは……輝いているって感じだぜ」
「あん? なんだ急に……」
「俺ってさー、その日を生きる事に精一杯でそう言った夢中になれる事を持った事無いんだよ、だから夢を持っているシャーリーが羨ましいぜ」
「はっはっは! どんだけ過酷な環境にいたんだよお前は!?」
少し元気のない様子のガロードの背中を、シャーリーはバンバンと叩く。
「たはは……だから今日の飛んでいるシャーリーの姿はカッコ良くて綺麗だったぜ、ただそれだけさ」
「お!?」
シャーリーはガロードに褒められて思わず顔を赤くする。
「どうした?」
「い、いやー……綺麗なんて言われたの初めてだからさ……ちょっとドキッとしたというか……」
「ふーん? 俺はただ率直な感想を言っただけだぞ?」
「そ、そうか……私が綺麗……」

(ティファ……俺、お前と離れ離れになっちゃったけど、今は元気でやってるよ、もしまた会えたら……ここの皆を紹介するよ、きっとティファもこいつらと仲良くなれると思うから……)
そしてガロードは離れ離れになった想い人の事を想い、月と星が輝く夜空を見上げた……。










そのガロードの視線の遥か先に、バイザーのような仮面を付けた、黒いレオタードを着て芳佳達のとは違う何かゴツゴツとしていくつもの砲台が付いたストライカーを履いたウィッチが、501基地を見下ろしていた。

「目標確認……ターゲット、ストライクウィッチーズ隊及びガンダムダブルエックス……」










本日はここまで、仮面を付けたウィッチ……なんかガンダムっぽくていいなって書いて思いました。

さあて次回のサテライトウィッチーズはサーニャ&エイラ回です、エイラはストパンの中で一番好きなんでさらに気合入れて書こうと思います。



[29127] 第五話「俺も一緒だ!」
Name: 三振王◆9e01ba55 ID:3f309a96
Date: 2011/08/15 07:51
 第五話「俺も一緒だ!」


8月16日夜、ガロードは芳佳、美緒、ミーナと共にブリタニアの上層部の元から501基地へ輸送機に乗って帰還途中だった。
「むう~……」
「なんだもっさん? 随分と機嫌悪いじゃねえか」
「上層部の奴らが態々呼び出しておいて何かと思えば、予算の削減だなんて聞かされたんだ、顔にもでるさ」
そう言って美緒は腕組みをしながら不機嫌そうにムスッとしていた。
「俺もさりげなくDXよこせって言われちゃったぜ」
「でもすごいよねガロード君、言葉巧みに誤魔化してDXを守るなんて……」
「まあね! 交渉術には自信があるのさ!」
「彼らも焦っているのよ、いつも私達に戦果をあげられてはね、自分達でも操縦できるかもしれないDXを是非とも欲しいと思っているのよ」
(無理だと思うけどね……アレがなけりゃ)
そして美緒は激昂しながら話を続ける。
「連中が見ているのは自分達の足元だけだ!」
「戦争屋なんてあんなものよ、もしネウロイが現れていなかったら、あの人達……今頃は人間同士で戦い合っていたのかもね」
「さながら世界大戦だな」
そう言って美緒は上層部への侮蔑をこめた笑みを浮かべる、それを見ていたガロードは自分の世界で起こった戦争の事を思い出す。
(そっか、ここにはネウロイがいるから人間同士で戦うことは無いんだ、じゃあ俺達の世界のような事は起こらないのか……? まるでネウロイが人間同士の戦争を阻止しているみたいだ)
「ガロード君? どうしたの?」
「いや、なんでもない」
芳佳に話しかけられ思考を中断するガロード、そして彼は何気に輸送機の窓から外を眺めた。その時……。
『ララーララー……』
突如機内に少女の歌声が響き渡った
「……? 歌声……?」
「坂本さん、何か聞こえませんか?」
「ん? ああ、これはサーニャの歌だ、基地に近づいたな」
「私達を迎えに来てくれたのね」
芳佳とガロードは外にいるサーニャの姿を確認すると、彼女に向かって手を振った。
「ありがとうサーニャちゃん!」
「すげえな! 歌上手いじゃん!」
『……! ラ……ララーララー……』
するとサーニャは頬を赤く染めて、そのまま雲の中に潜りこんでいった。
「あらら、雲の中に入っちゃったよ」
「サーニャちゃんって照れ屋さんですよね」
「うふふ、とってもいい子よ、歌も上手でしょ……あら?」
その時ミーナはサーニャの歌が中断したことに気付き、彼女に確認を取る。
「どうしたサーニャ?」
『誰かこっちを見ています……』
「報告は明瞭に、あと大きな声でな」
『すみません、シリウスの方角に所属不明の飛行体、接近しています』
「ネウロイかしら……?」
『はい、間違いないと思われます、通常の航空機の速度ではありません』
「私には何も見えないが……」
美緒は右目の魔眼でネウロイの位置を確認しようとするが、うまくいかなかった。
『雲の中です、目標を肉眼で確認できません』
「そう言うことか……」
「おいおいこれってかなりやばいんじゃないの!? 俺達戦えないしサーニャだけ戦わせるのは……!」
「ど、どうすればいいんですか!?」
敵が近付いている事を知り動揺するガロードと芳佳、対して美緒は至って冷静だった。
「どうしようもないな」
「そんな!」
「悔しいけどストライカーが無いから仕方がないわ……は!? まさかそれを狙って!?」
「ネウロイがそんな回りくどいことなどしないさ」
『目標は依然、高速で接近しています、接触まで約三分』
「サーニャさん、援護がくるまで時間を稼げればいいわ、交戦はできるだけ避けて」
『はい』
そう言ってサーニャは自分の武器であるフリーガーハマーを構え、そのままネウロイがいる方角に向かって飛んでいった。
『目標を引き離します!』
「無理しないでね!」
「よく見ておけよ」
「は、はい……サーニャちゃんにはネウロイがどこにいるか判るんですか!?」
「ああ、あいつには地平線の向こう側にあるものだって見えている筈だ」
「へえー……」
「それでいつも夜間の哨戒任務に就いてもらっているのよ」
「お前の治癒魔法みたいなもんさ、さっき歌を聴いただろう? あれもその魔法の一つだ」
「歌声でこの輸送機を誘導していたのよ」
(まるでニュータイプみたいだな……もしかしてサーニャ、サテライトシステムを動かせたりして?)



一方サーニャはネウロイの位置を特定しフリーガーハマーの引き金を引いた。
「……!」
フリーガーハマーから放たれた数発の弾はそのまま雲の中にいると思われるネウロイの予想位置に着弾し、大きな爆発を起こす、しかし……。
「反撃して……こない?」
弾が当たっていないのか、ネウロイが撃墜された様子はなかった。
『サーニャ、もういい戻ってくれ』
「でも……まだ……」
息も絶え絶えにまだ戦える事をアピールするサーニャ、しかしミーナ達はそれを聞き入れなかった。
『ありがとう、一人でよく守ってくれたわ』
「はい……」
そしてサーニャはネウロイ撃墜をあきらめ、美緒達の指示に従い輸送機と共に戻っていった……。

すると彼女達の前方から、援護にやってきた他のウィッチ達が飛んできた。
「サーニャ!」
「エイラ……」
そしてエイラが真っ先にサーニャの元に駆けつけ、彼女の身の安全を確認する。
「大丈夫か? どこも怪我していないか?」
「うん、平気……」
『おうおう、仲いいじゃん二人とも』
「うっせ、からかうなよ」
茶化してくるガロードに対し、エイラは舌をべーっと出して反撃した……。
『ガロード君、エイラさんと仲いいね』
『まあな、基地に来た時初めて会話したのがエイラだったから……』
「鉄格子越しだったけどな~」



それから一時間後、ブリーフィングルームに集まった芳佳達ストライクウィッチーズ全員とガロードは、先ほどサーニャが撃墜しそこねたネウロイについて話し合っていた。
「それじゃあ今回のネウロイはサーニャ以外誰も見ていないのか?」
「ずっと雲に隠れて出てこなかったからな」
「けど、何も反撃してこなかったっていうけど、そんな事あるのかな? それ本当にネウロイだったのか?」
「……」
エーリカの指摘にサーニャは俯いてしまう。
「恥ずかしがり屋のネウロイ……なんて事ないですよね、ごめんなさい……」
「だとしたら、ちょうど似た者同士気でもあったんじゃなくて?」
「……べー」
リーネの言葉を使ってサーニャを皮肉ったペリーヌに対し、エイラはちょっとむっとしたのか彼女に対して舌をべーっと出した。
「ネウロイとは何か……それがまだ明確に判っていない以上、この先どんなネウロイが出ても不思議ではないわ」
「仕損じたネウロイが連続して出現する確率は極めて高い」
「そうね、そこでしばらくは夜間戦闘を想定したシフトを組もうと思うの、サーニャさん」
「はい」
「宮藤さん」
「は、はい!」
「それとガロード君……ガロード君?」
ミーナに名前を呼ばれて返事をする芳佳とサーニャ、しかしガロードの返事が返ってこず、一同は部屋の隅でしゃがみ込んでいる彼に視線を集中させる。
「しっかりしろガロード・ラン……! 正気を保つんだ……!」
実は芳佳達の殆どは風呂上がりでかなりラフな格好……つまり薄着であり、ガロードはそんな桃源郷を気恥ずかしさから直視できず、必死に冷静を保とうとしていたのだ。
「おいおい、本当にウブだなガロードは……それ!」
そんなガロードを見て、シャーリーは後ろから抱きつき、自分の豊満な乳房を彼の頭に載せた。
「のわああああああ!!? やめろってー!!」
「なんだこのぐらい~? この前私の生まれたままの姿見たくせに~?」
「ぶっ!!?」
ガロードはこの前の作戦の(第四話参照)どこぞのラッキースケベも真っ青なハプニングを思い出し、大量の鼻血を噴出した。
「こらリベリアン! ガロードに何をしておるか!」
「そそそそうですわ! そんなの卑怯ですわ!」
その様子を見てバルクホルンとペリーヌが止めに入る。ちなみにルッキーニは現在爆睡中なのでいつものように文句を言ったりはしない。
「ああん? 別にいいだろ、なんでお前らが文句言うんだよ?」
「そ、それは私がガロードの姉代わりだからだ!」
「いつのまに姉になったのトゥルーデ!?」
バルクホルンとガロードの意外な関係に驚くエーリカ。
「わ、わたくしはただその……ガロードさんが他の女性といちゃいちゃしているところ見たくないというかその……ごにょごにょ……」
(ペリーヌさん……いつの間にガロード君をさん付けで呼ぶようになったんだ……)
芳佳はあれだけ喧嘩していたペリーヌとガロードが仲良くなっている事に驚いた。
そして三人はガロードを巡って言い争いを始める。
「とにかく! ガロードをたぶらかすのはやめろ!」
「別にいいだろ~、それにガロードは堅物なカールスラント軍人より私の柔らかい胸のほうが好みなんだよ」
「きぃー! 女性の魅力は胸では決まりませんわ! やはり気品と上品さを兼ねそろえているワタクシが……!」

「な、なんだかとんでもないことになっているね……あれ? リーネちゃん?」
三人のやり取りを距離を置いて見ていた芳佳は隣にいたリーネに話しかけようとしたが、彼女がいつの間にか居なくなっている事に気付く。

「ふにゃあ~」
「うふふ、大丈夫ガロード君?」
リーネはいつの間にか鼻血を出して倒れていたガロードを膝枕で介抱していた。俗に言う漁夫の利って奴である。
((((く、黒い……!!))))
芳佳、サーニャ、エイラ、エーリカはそんなリーネの抜け目の無さに戦慄する。
「あ! こらリーネ!」
「抜け駆けはゆるしませんわ!」
「というか私にもやらせろ!」
そして始まる4人のウィッチによるガロードの屍争奪戦。
「……我々は何の話をしていたんだっけ?」
「四人とも……後でちょっと廊下に来なさい」ユラァ……

結局その日の作戦会議はグデグデのまま終了し、はしゃぎすぎたリーネ達はその後水の入ったバケツを持って廊下に立たされた……。

次の日の朝、微妙に低血圧なガロードはウィッチ達の食堂に足を運んだ。
「お! 何このおいしそうな果物?」
そしてテーブルの上に乗ったボールの中にある大量の青い粒状の果実を発見する。
「ブルーベリーだよ、私の実家から送られてきたの、目にいいんだよー」
するとそこに大量のブルーベリーが入ったボールを持ったエプロン姿のリーネがやってくる。
「へー、旨そうだ、ひとつもらっていい?」
「ふふふ……どうぞ」
ガロードは許可をもらってブルーベリーを一つ手に取り、それを自分の口の中に運んだ。
「うんめぇ~! 新鮮な果物なんて久しぶりだ~!」
「沢山あるからもっと食べていいよー」

「あ! ガロードだ! ねえねえ!」
するとそこにルッキーニがガロードの元に駆けよって来る。
「お、どうしたルッキーニ?」
「コレ見て! べー」
そう言ってルッキーニは自分の舌を見せる、彼女の舌はブルーベリーを食べた事により青くなっていた。
「はははは! 面白いなそれ!」
「でしょでしょー! 今度はあの二人に見せよーっと!」
ルッキーニはそのまま、バルクホルンと一緒のテーブルで食べているエーリカの元に向かった……。
「そーいやなんで皆でブルーベリーなんて食べてんだ?」
「そうか、昨日お前は途中で気絶してたな」
するとそこに美緒が現れ、ガロードに対し説明を始める。
「これからしばらくの間、夜間哨戒任務の人員を増やすことになってな……ガロード、お前にも宮藤とエイラとサーニャと一緒に出撃してもらうぞ」
「ん? 別にいーけどなんで俺?」
「輸送機でお前はあの戦闘を目撃している……それと上層部がDXの夜間戦闘のデータを欲しがっているのだ」
「成程ねえ……」
軍の上層部がらみだと知り、ガロードは憂鬱そうにため息をつく。
(すっかり忘れていたけど、俺そのうちここから逃げ出さないといけないんだよな……それまでにアレの隠し場所をなんとかしないと……)



そして朝食が終わり、美緒は芳佳とエイラとサーニャ、そしてガロードを自分の元に集める。
「さて、朝食も済んだ所で、お前達は夜に備えて……寝ろ!」
「へ?」



その数分後、“四人”は日光を遮って暗くしてあるサーニャの部屋兼・臨時夜間専従員詰め所に集められていた。
「はいはいはい! 異議ありだぜもっさん!」
「どうしたガロード?」
「いや! 女三人と男一人が一緒に寝るって流石にそれはねえんじゃねえの!? 芳佳達だって気を使うだろうし……!」
「これもチームワークの向上を図るためだ、それに……お前はそういう間違いをする度胸が無いことぐらい重々承知だ」
「いや! 否定できないけどさ!?」
「宮藤、万が一ガロードが襲いかかってきたら、こう握って……ブチッと引っこ抜いてやれ」
「「「「何を!!?」」」」


という訳でガロードは半ば強引に芳佳、サーニャ、エイラと一緒の部屋で寝る事になった。
「ごめんねガロード君、ベッドは私達が占領しちゃって……」
「別にいいぜ、むしろ野宿で雑魚寝の方が多かったからな俺、屋根の下で寝れるのはありがたい」
「どんだけ過酷な世界で生きてきたんだよお前……」
そう言ってエイラはタロットカードをペラペラとめくり始める。
「なんだかコレお札みたい……」
「お札?」
「お化けとか幽霊とかが入ってきませんようにっておまじない」
「私……よく幽霊と間違われる」
「へー、夜飛んでいるとありそうだよね」
「ううん、飛んでなくても言われる、いるのか居ないのか判らないって……」
「あはは……」
サーニャの話に芳佳は思わず苦笑いをする。恐らくペリーヌに言われたのであろうというのは想像するのに難しく無かった。そしてガロードは幽霊と聞いて、ある人の事を思い出す。
「幽霊か……なんかルチルさんを思い出すなー」
「ルチル? 誰だそれ?」
「正真正銘、本物の幽霊さ、その人に俺達助けてもらったことがあってさ……その人がいた海は皆に“ローレライの海”って呼ばれていたんだ」
「ガロード君本物の幽霊に会ったの!? すっごーい!」
「その幽霊……どんな人だったの……?」
ガロードの話に興味を抱く芳佳達。



それから数分後、ガロードの話を聞き終えた皆は次にタロット占いに興じていた。
「エイラすげーな、未来予知の魔法が使えるのか、まるでニュータイプだな」
「ほんのちょっと先の未来しか見れないけどな……ていうかなんだよニュータイプって?」
そう言いながらエイラはタロットで芳佳の未来を占う、そして彼女が手に取ったカードを見せてもらう。
「どれどれ……おおよかったな、今一番会いたい人ともうすぐ会えるって」
「え!? そうなの? でも……それは無理だよ」
占いの結果を聞いて芳佳は喜ぶが、すぐに暗い顔をする。
「なんで?」
「だって私の会いたい人……」
エイラは何となく、芳佳の会いたい人が恐らく遠い世界に行ってしまった事を察知し、苦い顔をする。
「そっか……うう~ん、そう言われてもなー」
「まあ未来なんて誰にも判らないさ、俺が言うんだから間違いない」
「ちぇー、なんだよガロードまで……」
そう言ってエイラはベッドにごろんと寝転がった。
「……あれ?」
その時芳佳は部屋に掛けてあったカレンダーの8月18日の欄が赤いペンで○を付けられてチェックされている事に気付く。
(あの日……確か……)





その日の夕方、それなりに睡眠をとった四人は再び食堂に足を運ぶ。
「ん? なんか暗いね……」
「暗い環境に目を合わせる訓練なんだって」
「へー、で何このお茶?」
ガロード達はテーブルの上に置かれていたティーカップをまじまじと見つめる、するとペリーヌが声高らかに説明を始めた。
「マリーゴールドのハーブティーですわ、これも目の働きを良くすると言われていますわ」
「あら? それって民間伝承じゃ……」
そう指摘するリーネに対し、ペリーヌは猛犬のように噛みつく。
「失敬な! コレはおばあさまのおばあさまのそのまたおばあさまから伝わるものでしてよ! がるるる……!」
「ご、ごめんなさい……」

そして他の隊員達も、ペリーヌが出したハーブティーをそれぞれ口にする。
「サンショウみたいなにおいだね」
「サンショウ?」
「芳佳、リーネ、もっかいべーってしてみて」
そう言ってルッキーニは自分の舌を見せる、舌はブルーベリーの時と違い何も色が付いていなかった。
「「べー」」
ルッキーニの言うとおり見せた芳佳達の舌も同じだった。
「うう~! つまんなーい!」

「く……!」
「どっちらけ……」
ルッキーニの反応を見て悔しそうにするペリーヌに、エイラはフッとバカにしたような笑みを浮かべる。
「べ、別にウケを狙ったわけではなくてよ!?」

「うーん、お茶の味はよく解んねえや、全部同じ味がする」
「まずい……」
ハーブティーをがぶがぶ飲むガロードとは対照的に、サーニャはまずそうにちびちびと飲んでいた……。



その日の夜、芳佳、エイラ、サーニャはストライカーユニットを履いてライトが照らす滑走路に立っていた。
「ふ、震えが止まらないよ……!」
「なんで?」
「夜の空がこんなに暗いなんて思わなかった……!」
芳佳は夜の闇の予想以上の暗さに全身を震わせていた。
「夜間飛行初めてなのか?」
「無理ならやめる?」
芳佳を気遣うサーニャとエイラ、しかし芳佳は首を横に振った。
「て……手を繋いでもいい? サーニャちゃんが手を繋いでくれたらきっと大丈夫だから……」
「……わかった……」
そう言ってサーニャは芳佳の右手を掴む、するとエイラも面白くなさそうな顔で芳佳の左手を掴んだ。
「エイラさん……?」
「さっさといくぞ!」
「え!? ちょ! 心の準備が~! う、う、うわ~!」
そしてサーニャとエイラは芳佳の言葉も聞かず手を繋いだまま空へ飛翔した。
「手え離しちゃダメだよ! 絶対離さないでね!」
「もう少し我慢して……雲の上に出るから……」
ドンドン上昇する三人、そして三人は雲の上の月と星の光に照らされた空域にやってくる。
「すごいなー! 私一人じゃ絶対にこんな所まで来れなかったよ~!」
芳佳は先程とは打って変わって嬉しそうに飛びまわる。
「ありがとう! サーニャちゃん! エイラさん!」
「ふふ……」
「いいえ……任務だから……」

『おおーいお前らー、俺を置いていくな~!』
するとそこにDXに乗ったガロードが芳佳達の後ろに現れる。
「あ……ガロードさん……」
「おおー、ようやく来たか~、早く来ないと置いて行っちゃうぞー」
「あははは……」





次の日の朝、食堂にある飲み物が置かれていた。
「な、なんですのコレ……」
「肝油です、ヤツメウナギの、ビタミンたっぷりで目にいいんですよー」
「すんすん……なんか生臭いぞ」
「魚の油だからな、栄養があるなら味など関係無い」
どうやら隊員達の間では肝油の評判は悪いようだ。そしてペリーヌは芳佳に対しバカにしたような高笑いを上げる。
「おーっほっほっほ! いかにも宮藤さんらしい野暮ったいチョイスですこと!」
「いや、持ってきたのは私だが?」
「ありがたく頂きますわ!」
そう美緒に指摘され、ペリーヌは慌てて肝油を一気飲みし、あまりの不味さに顔を青く変色させる。
「べぇー!? なにこでー!?」
「エンジンオイルにこんなのがあったな……」
「ぺっ! ぺっ!」
「ううう……」
そして他の隊員達も肝油を飲んで不味そうなリアクションを取っていた。それを見た美緒はやはりかといった様子で頭をポリポリ掻いた。
「新米の頃は無理やり飲まされて往生したもんだ、あっはっは!」
「心中おざっじしまずわ……」

しかしそんな中! 肝油を飲みほす兵(つわもの)が二人!
「美緒、おかわりもらっていい?」
「おいおい残すなよ、もったいないな~」
鉄の舌を持っていると噂されているミーナと、食べられるものは何でも食べておく習慣が身に付いているガロードはちゃんと飲んでいた……。



それから数時間後、芳佳、エイラ、サーニャ、そしてガロードは夜間哨戒任務の為寝ようとするが……。
「あづー、全然寝れねえー」
気温が高く眠れないでいた。そこで芳佳は気を紛らわすためエイラとサーニャに話しかける。
「ね、ねえ、サーニャちゃんとエイラさんの故郷ってドコ?」
「私スオムス」
「オラーシャ……」
「えっと……それってどこだっけ?」
「スオムスはヨーロッパの北の方、オラーシャは東」
「そっか……ヨーロッパって確かほとんどがネウロイに襲われたって……」
「うん、私のいた街もずっと前に陥落したの」
「じゃあ家族の人達は?」
「皆街を捨ててもっと東に避難したの、ウラルの山々を超えてもっともっと……ずっと向こうまで……」
「そっか……よかった」
「家族は無事なんだな」
「何がいいんだよ、話聞いてないのかお前ら」
そう言ってエイラは頬を膨らませながら芳佳とガロードに言い放つ。
「だって、今は離れ離れでもいつかまた皆と会えるってことでしょ?」
「あのな、オラーシャは広いんだぞ、ウラルの向こうったって扶桑の何十倍もあるんだ、人探しなんて簡単じゃないぞ、大体その間にはネウロイの巣だってあるんだ」
「そっか……そうだよね、それでも私は羨ましいな」
「強情だなお前……」
「だってサーニャちゃんは早く家族に会いたいって思っているでしょ? だったらサーニャちゃんの家族だって絶対早くサーニャちゃんと会いたいって思っている筈だよ、そうやってどっちもあきらめないでいれば、きっといつかは会えるよ、そんな風に思えるのって素敵な事だよ」
「だよなあ、俺なんてもう家族は皆死んじまったし、サーニャ達が羨ましいぜ」
「……」



その日の夕方、寝汗でびっしょりの芳佳達はこれからどうするか話し合っていた。
「ガロード、お前はこれからどうすんだ?」
「へっへっへ……実はこの前、いい穴場を見つけたからそこに行ってくるぜ、ここの大浴場は男は使えないからな」
そう言ってガロードは芳佳達と別れ、そのまま外に出かけていった……。
「んじゃ私達はサウナにでも行くか、その後は水浴びだなー」
「サウナ? 何ですかそれ?」
「へっへー、付いてくれば判るさ」



数分後、ガロードは基地から大分離れた場所にある湖にやってきた。
「いやー、この前散歩してたらこんなにきれいな湖見つけちまったんだよなー、行水には最適だぜ」
そう言ってガロードはおもむろに服を脱いで海パン一丁(この前海に行った時に支給された奴)で湖の中に飛び込んだ。
「はぁー! 冷たくて気持ちいいぜ! お……!」
そしてガロードは水に浸かりながら水平線に沈んでいく夕陽を眺める。
「おお、絶景絶景、それにしても皆今頃なにしているのかな……」
ガロードは離れ離れになったかつての仲間達の事を思い出す。
(あの戦争の後、皆ちゃんと生き延びたのかな……? 激しい戦闘だったけど、まさか誰かやられたりしていないよな……)
頭の中にドンドンと悪い考えが巡って行き、ガロードはそれを振り払うかのように頬をパンパンとたたく。
「いかんいかん! 悪い風に考えちゃ……! きっとあいつらは大丈夫! うん! きっとそうだ!」
そう言ってガロードはざぶんと湖の中に潜り込んだ、その時……。
「ららーららー……」
「ん? この歌……」
湖の奥の方から歌声が聞こえてきた事に気付き、ザブザブと声のする方角に向かって行った。

「ららーららー……ん?」
するとそこには、生まれたままの姿のサーニャが岩の上で歌を歌っていた。
「うっ……!?」
ガロードは思わず叫びそうになりながらも言葉を飲み込み、その場で身を隠した。
(あ、あぶねー、見つかるところだった……というかサーニャ、なんでこんな所に……)

「サーニャちゃーん」
「おーいサーニャー」
すると今度は芳佳とエイラも現れる、もちろん二人は何も着ていないすっぽんぽんの状態である。
「あ、宮藤さん、エイラ……」
(げえー!? 今度は芳佳達まで!? は、早く逃げないと……!)
ガロードは芳佳達に見つからないようにその場から去ろうとするが……。
「!? 誰だそこにいるのは!?」
エイラがガロードの気配に気付き、近くに会ったゴルフボール大の石ころを拾い、ガロードのいる方角に投げた、すると石ころは見事カツンとガロードの脳天を直撃した。
「いってー!!? 何しやがる!?」
あまりの痛さにガロードはエイラ達の前に飛び出す。
「「「「あ」」」」
そしてガロードは芳佳達三人の生まれたままの姿を直視してしまった。
「うわわわ!!?」
「ひゃ……!」
芳佳とサーニャはすぐさま水の中に体を沈めて自分の体を隠す、そしてエイラは……。
「ガロードお前! なんでここにいるんだよ!?」
一切隠そうとはせず、逃げようとしたガロードを捕まえて芳佳達の元に引き摺ってきた。
「あ、あの……この前この水場を見つけて水浴びしようかなーって思って……」
「ここは私とサーニャの水浴び場だ! それで!? お前見たのか!?」
「み、見ていない! 三人の綺麗な水水しい肌なんて見て無い!」
「見てんじゃねえかあああああ!!!」
怒り心頭のエイラはそのままガロードの首にアームロックを決める。
「ぐえええええ!! 苦しい! それと当たってる!」
ガロードは首が締まる感覚と背中のやわらか~い感触で脳味噌が沸騰しそうになっていた。
「うっせ! おいこいつどうする!? 隊長に引き渡すか!?」
「そ、それは可哀そうだよエイラさん……」
「ガロードさんは悪気があって見たわけじゃないんだし……」
水に浸かったせいか意外と冷静な芳佳とサーニャ。
「うーん、まあサーニャが言うなら……」
そう言ってエイラはガロードを解放する、そしてガロードはすぐに岩場の影に隠れてしまった。
「はー! はー! いや悪かったな、今度から気を付けるよ」
「わかりゃいいんだよ、たく……」
「あはは……私お父さん以外の人に裸見られたの初めてだよ」
「私も……そう言えば昔お父様に言われた事がある、裸を見せていいのは家族と友達、それと結婚する相手だけだって……」
「「何!!?」」
サーニャの言葉に目を見開いて驚くエイラとガロード、そしてサーニャは頬を赤く染めながらガロードに語りかける。
「ガロードさん……私と結婚する?」
「えええええ~!!?」
サーニャの大胆発言に仰天する芳佳、するとサーニャとガロードの間に立ちふさがるようにエイラが仁王立ちした。
「だ、ダメだそんなの! サーニャを渡すくらいなら……渡すくらいなら……! 私がガロードと結婚する!!!」
「「えええええええええええ!!!?」」
エイラは大分混乱しているようで、自分が随分と的外れな事を言っている事に気付いていなかった。
「エイラ……ガロードさんと結婚するの?」
「はっ!? いやいやいやそういう意味じゃないというか、私が結婚したいのはサーニャ……うあああああ!! 何言ってんだ私~!!?」
頭の中がぐちゃぐちゃになり顔をばしゃんと水に沈めるエイラ。そしてガロードは……。
「ご、ご、ごめんなさーい! 俺には……俺にはー!!」
そのまま物凄い勢いで泳いで行ってしまった……。
「ああガロード君……いっちゃった」
「違うんだ、違うんだよサーニャ~!」
「よしよし……」


その日の夜、芳佳達は夜間哨戒任務の為夜空を飛行いていた。
『そーいえばさ、サーニャがいつも歌っている歌って何だ? すげー綺麗だよな』
「これは……昔お父様が私の為に作ってくれた曲なの、小さい頃、雨の日が続いていて、私が退屈して雨粒を数えていたらお父様がそれを曲にしてくれて……」
「サーニャの家は音楽一家でさ、サーニャ自身もお父さんの薦めでウィーンで音楽の勉強をしていたんだ」
「素敵なお父さんだね」
「宮藤さんのお父さんだって素敵よ、あなたのストライカーは博士がお前の為に作ってくれたんだろう?」
『え!? そうなの!? すげえじゃん!』
「えへへ……だけど折角ならもっと可愛いのがよかったかも……」
「贅沢いうなよ、高いんだぞアレー」
そして楽しくなって笑い合う四人、すると芳佳は少しストライカーを加速させ皆より一歩前に突き出た。
「ねえ聞いて、今日私誕生日なんだ!」
『へえ! おめでとう芳佳!』
「なんで黙ってたんだよー」
「私の誕生日はお父さんの命日でもあるの、なんだかややこしくて皆に言いそびれちゃった」
「バカだなあお前、こういう時は楽しい事を優先したっていいんだぞ?」
「ええー? そういうものかなー?」
『そういうもんじゃねえの? 俺はよくわからないけどさー』
するとサーニャは広域探査の魔法を強め、芳佳に語りかける。
「宮藤さん……耳をすませて」
「え?」
すると芳佳の耳に装着してあるインカムに、音楽らしき音が流れてきた。
「あれ? 何か聞こえてきたよ?」
『こっちも傍受したぜ、これは……』
「ラジオの音……」
「夜になると空が静まるから、ずっと遠くの山や地平線からの電波も聞こえるようになるの」
「ええ~!? すごいすごい! こんな事できるなんて!」
「うん、夜飛ぶ時はいつも聴いてるの」
「二人だけの秘密じゃなかったのかよ」
そう言ってエイラは不満そうにサーニャに語りかける。
「ごめんね、でも今夜だけは特別……」
「ちぇ、しょうがないなー」
エイラはまあいっかといった感じで芳佳とサーニャの周りをぐるぐると飛んだ。
「え? どうしたの?」
「あのね……」
「あのな、今日はサーニャも……!」
その時、広域魔法に何か引っかかったのか、サーニャは突如会話を中断する。
『ん? どうしたサーニャ?』
そして辺りにこの世のものとは思えない、曇った声の歌声らしきものが響き渡った。
「ん!? なんだ!?」
「これ、もしかして歌……!?」
『お、おい皆! 雲の中から何かがこっちに近付いてくるぞ! スゴイスピードだ!』
するとDXのレーダーはその“何か”が近付いてくることを察知する。
「ネウロイだよきっと!」
『くそ……! まさか俺達だけのところを狙ってきたのか!? 通信も繋がらねえ!』
「……! 皆避難して!」
『お、おい!?』
するとサーニャはある事に気がついたのか、突然急上昇して芳佳達から離れた。
「サーニャちゃん!?」
するとネウロイは突如赤い光線をサーニャに向かって放つ、そのビームはサーニャの左足を掠めた。
『サーニャ!』
バランスを崩して落下しそうになるサーニャ、そんな彼女をガロードはDXで空中で受け止める。
『バカ! いきなりなんて無茶するんだ!?』
「一人でどうするつもりだよ!?」
「敵の狙いは私……! 間違いないわ、私から離れて……一緒にいたら……!」
サーニャはネウロイが自分を狙っている事に気付き、芳佳達を危険な目に遭わせないよう自分から離れていったのだ。
「バカ! 何言ってんだ!」
「そんなことできるわけないよ!」
「だって……!」
サーニャは涙目になりながら二人に訴える、するとガロードはDXの手の上にいたサーニャを芳佳に抱えさせた。
『そんなことしなくても……俺達がパパッとやっつければいいんだよなぁ?』
「……! ああ、その通りだ!」
そう言ってエイラはサーニャの武器、フリーガーハマーを肩に抱えてガロードのDXと共に迫ってくるネウロイに対し向かい合った。
「サーニャは敵の動きを私に教えてくれ、大丈夫……私は敵の動きを先読みできるから、やられたりしないよ」
『俺も一緒だ! 皆がいればあんな奴怖くねえぜ! 俺達は絶対負けない!』
「あ……うん」
サーニャはエイラとガロードの力強い言葉にコクンと頷いた。
「ネウロイはベガとアルタイルを結ぶ線の上をまっすぐこっちに向かっている、距離……約3200」
「こうか?」
「加速している、もっと手前を狙って、そう……あと三秒」
『わかった!』
サーニャは広域魔法を駆使してエイラとガロードに敵の現在位置を伝える。
「今だガロード!」
『当たれえー!』
そしてネウロイが標準内に入った時、二人は一斉に持っていた武器の引き金を引いた。
飛んでいくフリーガーハマーの砲弾とバスターライフルのビーム、すると入れ替わりでネウロイから放たれた赤い光線が芳佳達を襲った。
『おっと!!』
皆はそれを上昇することで回避する、そして下にある雲の中に大きな物体が通り過ぎていくことに気付いた。
『仕留めそこなった!?』
「ううん、速度が落ちてる……ダメージがあったんだ、あ! 戻ってくる!」
「戻ってくんな!」
そう言ってサーニャは雲の中を駆けるネウロイに向かってフリーガーハマーの弾を撃ち込んでいく、しかしネウロイはそれを悠々と回避してしまった。
「避けられた!?」
『畜生お前! ちょろちょろすんな!』
ガロードはDXのビームだけでなく、体に装備されているバルカン砲も駆使してネウロイを攻撃する、するとネウロイは雲の中から飛び出し、まっすぐガロード達に向かって飛んできた。
『エイラ!』
「判ってる! うりゃー!」
エイラは持っていた自分の銃で迫ってくるネウロイの先端をガリガリと削る。そしてついにコアが露出した。
「ガロード!」
『おうよ! 俺の射撃技術見て度肝抜かすなよ!』
そう言ってガロードは一度深く深呼吸し、ビームライフルの標準を露出したネウロイのコアに定め、そのまま引き金を引いた。
放たれたビームはそのままコアを撃ち抜き、ネウロイはガラス片になってバラバラと崩れ、慣性の法則で破片は下の雲をすべて払ってしまった。
『よっしゃ一発必中……ってうわ!』
「ガロードくん!」
ガラス片はそのままガロード達を飲み込もうとしたが、芳佳がとっさに魔力シールドを張ったことで大事には至らなかった。
「気がきくな宮藤」
「えへへ……あれ? 歌がまだ聞こえる……」
『これって……ピアノの音……お父様のだ!』
そう言ってサーニャは芳佳の手から離れ、月に向かって舞う様に飛んだ。
「そっかラジオだ! この空のどこかから届いているんだ! すごいよー奇跡だよ!」
「いや、そうでもないかも」
「え?」
「今日はサーニャの誕生日だったんだ、正確には昨日かな……」
『え!? じゃあ芳佳と同じ日なのか!?』
「サーニャの事が大好きな人なら誕生日を祝うのは当たり前だろ? 世界のどこかにそんな人がいるなら、こんな事だって起こるんだ、奇跡なんかじゃない……」
『そっか……そうだよな』
「エイラさん優しいね」
「そんなんじゃねえよ……バカ」
そう言ってエイラは芳佳達から顔を反らす、彼女の顔は気恥ずかしさで真っ赤になっていた。

そしてサーニャは涙を舞い散らしながら父と母を想い夜空を見上げた。
「お父様、お母様……サーニャはここにいます……ここにいます」
そんな彼女に対し、芳佳はお祝いの言葉を捧げる。
「お誕生日おめでとう、サーニャちゃん」
「貴女もでしょう? お誕生日おめでとう宮藤さん」
「おめでとな……」
『二人ともおめでとう!』
「あ……ありがとう!」





その時、ガロードのコックピットに501基地の指令室から通信が入った。
『ガロード君! 皆! 聞こえてる!?』
「お、ミーナさん、こっちは終わったぜー」
『そうじゃない! もう一つ近付いて来ているぞ!』
「え?」

すると雲の向こうからキラリと光り、そこから一つの影が猛スピードで接近してきた。
「なんだアレ……?」
「まさか……ウィッチ!?」
芳佳達は急接近してくる物体が仮面を被り白鳥のような羽を頭から生やしたウィッチだという事に気付く。
そしてそのウィッチは持っていた銃の銃口を芳佳達に向けた。
「! 宮藤! シールドだ!」
「え!? あ、はい!」
エイラは危機を察知して芳佳にシールドを出させる。すると仮面のウィッチは銃の引き金を引き、銃口からビーム弾を1、2、3発と放った。
「きゃ!!」
「私達に向けて撃った……!?」
「反撃するぞ宮藤!」
芳佳にビーム弾を防いでもらい、相手に敵意があると判り反撃しようとするエイラ。
「そ、そんな私……人を撃つなんて……!」
しかし芳佳は手が震えて銃を構える事が出来なかった。
(くっ……宮藤はビビっちゃってるし、サーニャはストライカーが片っぽ壊れてる、DXじゃ小回りが利くウィッチ相手は不利だ……なら!)
覚悟を決めたエイラはガロードと芳佳に指示を出す。
「私があいつを引きつける! 宮藤はサーニャを頼む! ガロードはそれとなく援護してくれ!」
「エイラ!?」
「エイラさん!」
エイラはそのまま仮面のウィッチに向かってストライカーを加速させ、持っていた銃の引き金を引く。しかし仮面のウィッチはそこから放たれた銃弾を難なく回避した。
「読まれたか!? くっ……!」
エイラはそのまま仮面のウィッチを追いかけるが、相手はそのままエイラの後ろに回り込もうとする。
「んな?! くそ!」
有利な位置に移動しようとしても、相手に動きを読まれて思う様にいかないエイラ。
(なんでだ!? 相手の動きが読めない! まるで向こうも私の力を使っているみたいだ……!)
その時、エイラのインカムにガロードのうろたえる声が聞こえてきた。
『あの動き……まさか……!』
「ああん!? なんだよガロード! あのウィッチの事知っているのか!?」
『い、いや……でもそんなバカな……!』
ガロードの脳裏に、かつて味方として、そして敵として戦ったある特殊能力をもった戦士達の戦う姿が浮かんでくる。
(あのウィッチの動き、ジャミルやカリスの……!)
『気を付けろエイラ! そいつニュータイプだ!』
「にゅー……!? またそれかよ!?」
『とにかく援護する!』
そう言ってガロードはブレストバルカンを仮面のウィッチの進行方向に向かって放ち、動きを一瞬だけ止めた。
「今だ!」
その隙を見逃さなかったエイラは銃で反撃する、しかし仮面のウィッチはシールドを張ろうともせずに、上体を捻らせ銃弾を回避し、その勢いで背中を向けたままエイラに向かってビーム弾を放った。
「くっ……!?」
ビーム弾はエイラのストライカーを翳めた。
「そんな!? エイラが被弾するなんて!!」
「こ、この!」
エイラは反撃を試みようとする、しかし……。

―――ピリリリリリ!

「うっ!?」
「な、何これ……!?」
「息苦しい……!」
戦っているエイラだけでなく、芳佳とサーニャも頭に電流が流れる感覚で苦しみ出す。
(まさか……ウィッチとニュータイプが共鳴しているのか!?)
「データ収集完了……帰還します」
仮面のウィッチはエイラの被弾を確認すると、そのまま猛スピードでその場から去っていった……。
「逃げた……?」
「何だったんだアイツ……?」
芳佳達は追いかける余力が無く、去って行く仮面のウィッチを呆然と見送った……。










次の日、美緒とミーナは芳佳の父、宮藤博士の墓がある丘に赴き、花を添えていた。
「今回のネウロイは明らかにサーニャに拘っていた、行動を真似してまで……」
「ネウロイに対する認識を改める必要があるのは確かなようね」
「上の連中……このことをどこまで知っていると思う?」
「さあ? もしかしたら私達よりもっと多くの事を掴んでいるのかも……」
「うかうかしてはいられないか……それにあの仮面のウィッチの事もある」
「そうね、一体何者なのかしら……ガロード君は何か知っている様子だったけど……」
「ん?」
すると美緒達は墓に一枚の写真が添えられている事に気付き、それを見て思わず笑みをこぼした。


写真には芳佳とサーニャがガロード達に囲まれながら、バースデーケーキを持って笑顔を向けている姿が映っていた……。










今回はここまで、次回は原作7話を大幅改編してお送りいたします。新キャラもでるかも?
今のところエイラが一番Xのニュータイプっぽい能力を持っていますね、ただティファの方が見渡せる未来が長いっぽいのかな?

明日は終戦記念日ということで本日は予定を早めて投下させていただきました。
過去を忘れるのはいけない事だけど、それに囚われ過ぎて未来が見えなくなることはもっと不幸なことなんだなと、最近のネットのニュースを見て思います。



[29127] 第六話「何がスースーするんだ?」
Name: 三振王◆9e01ba55 ID:3f309a96
Date: 2011/08/18 23:55
 第六話「何がスースーするんだ?」


ある日の朝、ガロードは熱くて早く目が覚めてしまい、いつもの湖で行水した後基地の周辺を散歩していた。
「ったく……最近あっちいんだよ、もっと涼しくならないのかな……うわっと!!?」
その時、ガロードの足元を何か灰色の小さいものが通り、それは近くの草むらに入っていった。
「なんだなんだ? 今のは……」
ガロードは気になってその影を追って草むらに入る、するとその先で……。
「ふんっ! ふんっ!……ん? ガロードじゃないか?」
木刀で素振りをしている美緒がいた。
「おはようもっさん、こっちに何か小さいのが来なかったか?」
「小さいの……? ここには何も来なかったが?」
「そっか、見失ったかー」
「それにしても起きるのが早いなガロード、どうだ、私と一緒に訓練でも……ってもういない!?」
美緒はガロードを訓練に誘うが、そのガロードはいつの間にか逃げていた。
「逃げ足が速いな……流石は私が見込んだ男!」


数分後、ガロードは朝食をたかりにウィッチの食堂に向かっていた。
「あぶねーあぶねー……さて、今日の料理は誰が担当なのかな~っと」
「あ! ガロードじゃんおはよー!」
するとそこにエーリカが手すりを滑りながら階段を下りてきた。
「おーエーリカじゃん、おはよー」
そう言ってガロードは立ち止まり、エーリカに挨拶する。
「あースースーするー」
「ん? 何がスースーするんだ?」
エーリカは勢いよく降りた後ガロードの目の前に着地する、その拍子で彼女のカールスラントの軍服がぺらりとめくれた。
「ん……? んん!?」
ガロードはそんなエーリカの姿を見て顔を真っ赤にして驚いた。なぜなら彼女はパン……じゃなくてズボンを履いていなく尻が丸出しだったのだ!
「おまっ、お前!? ズボンどうしたんだよ!?」
「いやー、実はいくら探しても見つからなくてさー、代えが無いか探していたんだよー」
するとガロード達のところに窓から風が吹いてきて、エーリカの軍服をめくった。
「ば、バカ野郎! 少しは隠せ!」
「あはははー、ごめんねー」
そう言ってエーリカは大浴場の更衣室に向かった。
「どこ行くんだエーリカ?」
「いやー、こうなったら誰かのズボンを借りて履くしかないじゃん」
「いやいやいや! その理屈はおかしいんじゃないの!? 普通に探せよ!」
ガロードは浴室に向かおうとするエーリカの腕を取る、その時……。
「あれー!!?」
更衣室からルッキーニの叫び声が響いた。
「ん? あの声は……」
「ルッキーニか?」
何事かと思い、ガロードとエーリカは更衣室を覗きこむ。そこにはノーパン姿で頭を抱えているルッキーニの姿があった。
「うおっと!」
ルッキーニの姿を見て思わず視線を反らすガロード。
「どうしたの? そんな大声出して……」
「あのねあのね、脱衣籠置いてあった私のズボンが無くなっているの」
「ルッキーニもなのか?」
するとそこに、風呂から上がって体にバスタオルを巻いただけの姿の芳佳、ペリーヌ、美緒が現れた。
「ん? どうしたのだルッキーニ、ハルトマン、それにガロード?」
「ふえええええ!!? が、ガロード君なんで更衣室にいるの!?」
「へ!? いやこれは違うんだ!」
「も、もう……いくらお年頃とはいえやりすぎですわ……」
隠そうとしない美緒、そんな彼女の後ろに隠れる芳佳、そして最初は戸惑いつつもまんざらではない様子のペリーヌ、三人のリアクションはバラバラだった。
「あのね、私のズボンが無くなってて……」
「まったく、整理整頓をちゃんとしないからそう言う事になるんですわ」
ペリーヌはため息混じりにルッキーニを見ながら自分の脱衣籠に手を伸ばす。そしてある事に気付いた。
「あ……あら? ワタクシのズボンがありませんわ」
すると同じく脱衣籠に手を伸ばしていた芳佳と美緒も首を傾げた。
「あれ? 私のスーツも無い!」
「む、私のもだ……一体どうなっている?」



数十分後、基地にいるウィッチ全員(ミーナとリーネは買い出しの為不在)+ガロードは食堂に集められていた。
「つまり……少佐達も何者かにズボンを盗られたっていうの?」
「“も”ということは……」
「ああ、我々のズボンも盗られた」
そう言ってバルクホルン、シャーリー、エイラ、サーニャ、エイラは一斉に頷いた。
「起きたらタンスの中を荒らされていたんだ」
「今は代えのズボンを履いているからいいけど……これもネウロイの仕業なのか?」
「んな訳あるかい」
シャーリーのボケか本気かどうかも分からない一言に突っ込みを入れるエイラ、その一方でガロードはほっと胸を撫で下ろしていた。
(よ、よかった……てっきり皆何も穿いていなかったのかと……)
「むう、ネウロイではないとなると、やはりドロボーなのか?」
「ウィッチの基地に忍び込むとはいい度胸だな……よし、まだ遠くに行っていないかもしれない、皆で手分けして探そう」
「異議なーし!」
美緒とバルクホルンの提案に、ルッキーニが元気よく両手を上げて返事をする(ノーパンのまま)。

こうして9人のウィッチと一人の炎のMS乗りによるパン……ズボン泥棒探しが始まった。



そしてガロードはエーリカとルッキーニと一緒に、まずエーリカの部屋を調べにやってきた。
「うわ! なんだこの汚い部屋!?」
「なんかゴチャゴチャしてる~」
二人は物が散乱しているエーリカの部屋を見て驚く。
「しょーがないじゃん、私片付けるの苦手なんだよー、それより早くズボン泥棒の手がかりを探そう」
三人はズボン泥棒の手がかりを探す為、物が散乱する部屋の中を捜索し始める。
「しっかし汚い部屋だねー、あ、キノコ生えてる」
「おいおい、なんか勲章っぽいの落ちてたぞ、コレ大事な物じゃないのか?」
「んー? 別にどうでも……その辺に置いといて」
(なんつー奴だ……ここの基地にいる軍人ってやっぱ変わっているなあ)
ガロードは自分の世界で出会った軍人たちの事を思い出し、改めて501小隊の異質さを認識する。
(まあしょうがないのか、普通なら学校に行っててもおかしくない歳だしな……ん?)
その時ガロードは、ばら撒かれた本の下から一枚の白い布を見つける。
「何だコレ? ハンカチ?」
「あ! 私のズボン! そんなところに!」
「うぉわ!?」
それは盗まれたと思われたエーリカのズボンだった、それに気付いたガロードは思わず顔を赤くしてズボンを放り投げた。
「なーんだ、ズボンここにあったんじゃん」
「いやーごめんごめん、余計な手間を掛けさせちゃったねー」
そう言ってエーリカは放り投げられたズボンを拾い上げ、そのまま穿いた。
「た、たく簡便してくれよ……」
「んじゃ今度は脱衣所に行ってみよっか」
「れっつらご~!」



数分後、三人はルッキーニ達のズボンが無くなった脱衣所にやってきた。
「手がかり手がかり~、犯人の手掛かりないかな~?」
ルッキーニは犯人の手掛かりがないか、地面をハムスターのように四本足でうろちょろし始めた。
「だから! なんか履けー!」
ただノーパンなのでもう尻が丸見えで、エーリカはともかくガロードはもう恥ずかしさで顔で茶が沸かせそうになっていた。
「えー、別にこのままでいいよー」
「ガロード、気にしすぎなんじゃなーい?」
「なんで俺お前らと行動しているんだろ……ええい! ちょっと待ってろ!」
そう言ってガロードは一旦脱衣所から出て、5分くらいしてある物を持って現れた。
「ほら! コレ履いとけ!」
「んー? 何これ?」
「俺の海パン! しばらくはこれで我慢しろ!」
「おー! さんきゅー♪」
ルッキーニはガロードから海パンを受け取ると、そのままずいっと履いた。
「うりゅ~、なんかゴツゴツする~」
「我慢しろよ、ノーパンのままだとこっちの身が持たないんだから……」

「あ! ねえ二人とも! こっちきて!」
するとエーリカが何かを発見し、ガロードとルッキーニを呼ぶ。
「どしたの!? なんか見つけた!?」
「コレ見てコレ!」
エーリカの指差す先には、何か薄い黒い斑点のようなものがいくつもあり、それは脱衣所の外まで続いていた。
「なんだコレ? 足跡……?」
「きっと犯人のだよ! 追いかけてみよう!」
三人は外まで続く足跡を追っていった……。


数十分後、三人は足跡を追跡して基地の外にある森にやってきた。
「まだ足跡続いてる……どこまで行ったのかなー?」
「あれ? この辺って確か朝に変なのが通り過ぎた……」
その時、近くの草むらで何かガサガサと何かが動く音が聞こえた。
「何かいるよ!」
「ここか……!」
代表してガロードがその音がした草むらをかき分ける、すると……。
「ワン!」
「うわっ!?」
灰色の物体がガロードの顔に覆いかぶさり、彼の視界を防いだ。
「うわああああ!? なんだコレ!? 生臭いんだけど!?」
「こいつ……犬?」
ガロードの顔にへばりついているのは、釣り目で灰色の小さい豆柴だった。
「あ! 見て見て!」
するとルッキーニは草むらの中で、一か所に敷き詰められている大量のズボンや美緒と芳佳のスーツを発見する。。
「ここにあるのみんなのズボンじゃない!?」
「ホントだ―! それじゃ、みんなのズボンを盗んだのは……」
そう言ってエーリカとルッキーニは顔にへばりついた子犬に悪戦苦闘するガロードを見た。
「ワンワン! ワン!」
「だぁー! 誰か取ってくれ~!」



一時間後、三人はブリーフィングルームに皆を集めて、連れてきた豆柴の子供と盗まれたズボンを皆に見せた。
「よ、よかった~! 私のスーツが返ってきた~!」
「しっかし、ズボン泥棒の正体がこんな子犬だったとはねー」
そう言ってシャーリーは机の上で大人しく座っている豆柴の頭を撫でる。
「寝床を作るためにその豆柴が私達のズボンを盗んでいたのか」
「まったく、人騒がせな犬ですわ」
「あの少佐……この子どうするんですか?」
不安そうなサーニャの質問に、美緒は難しそうな顔で首を傾げた。
「うーん……このまま逃がしても同じ悪さをするだろうし、この基地に害を及ぼすなら最悪……」
「そ、それはちょっと可哀そうだろ少佐!」
シャーリーは美緒が何を言いたいのか察知し必死に反対する。するとエーリカが何かを思いついたのか手をポンと叩く。
「そーだ! 折角だしうちの基地で飼っちゃえば!?」
「何を言っているのだハルトマン中尉、そんなことできる訳……」
「そこら辺はさー、ウィッチ達の心のケアが目的―とか適当な理由付けてミーナに説得してもらおうよ!」
「これは簡単な問題では……」
「でも坂本さん、この子とってもかわいいですよ?」
「可愛いければいいという問題では……」
その時、美緒は芳佳が抱きあげた豆柴と視線が合う。
「くぅ~ん……?」
「うっ!?」
その瞬間、美緒は何故か自分とその子犬が浜辺で追いかけっこをしている幻影を見た。一昔前の某CMみたいに。
「お、おのれ……私の心をここまで揺さぶるとは……!」
(あの犬、意外と世渡り上手だなー)
ガロードは何となく自分とその子犬の同じところを感じった。
「あらみんな? こんな所に集まって何をしているの……? ていうかその犬何?」
「わあ~子犬だ~、芳佳ちゃん私も触っていい?」
するとそこに買い出しから帰ってきたミーナとリーネが現れた。
「おおミーナ、実はな……」

~美緒、事情を説明中~

「なるほどね……皆はこの子をどうしたいの?」
ミーナは皆の意見を聞く事にした。
「私はこの子飼いたいです……」
「私もです!」
「そ、その……私も……」
「私は別に構わないぜー」
「もちろんおっけー!」
「私は別にどちらでも……」
「まあ拾ってきた以上、最後まで責任は持つよ~」
「噛まないなら……」
「ま、別にいいと思うけどー?」
隊員達は皆豆柴を飼うことに反対しなかった。
「私も特に反対する理由はないぞ」
「判りました……では私のほうから上に伝えておくわ、その代わり……餌代とかは皆で出し合いましょうね」
ミーナの条件に芳佳達は首を縦に振った。
こうして豆柴は501基地で飼われる事が決定した……と思いきや、エーリカが突然何かを思い出し手を上げて意見を出してきた。
「そーいや大事な事忘れてた! その子の名前どうすんの!?」
「名前か……豆柴は扶桑の犬種だし、扶桑の名前がいいか……」
「あれ? 皆見てください」
その時、芳佳は抱えている豆柴の首に何かが掛かっている事に気付き、近くにいた美緒とミーナに見せる。
「これは首輪? もしかしてこの子捨て犬だったのかしら?」
「名前のようなものが彫られているな、“九字兼定(くじ かねさだ)”……ほう、立派な名前じゃないか」
「じゃあ君は兼定だね、よろしく兼定」
「ワン!」ニヤリ
「ん?」
兼定と名前を付けられた豆柴は嬉しそうに芳佳のボリューム少なめの胸に顔を埋めた。
「あはは、くすぐったいよ兼定~!」
「あーん宮藤ずるい~!」
「私もさわりたーい!」
ガロードは芳佳の胸に顔を埋める兼定が何故かスケベ親父のように笑ったところを目撃する、しかしエーリカとルッキーニを始めとした他のウィッチ達にもみくちゃにされる兼定を見て、自分の見たものは幻だろうと無理やり納得した。
(まあ……そんなわけないか、さっきのは気のせいだよ気のせい)
こうして501にまた新たなる仲間が加わったのだった……。









本日はここまで、前回の半分以下の長さだったなあ……今回出した豆柴の九字兼定はストパン一期以前に発表されたOVA版や漫画の天空の乙女に登場したキャラです、リリジェネのもふもふ久遠みたいにこっちでも別次元のキャラを登場させたいなーと思って登場させました。

次回はミーナさんのお話です。



追記
すっかり忘れてた、芳佳&サーニャ誕生日おめでとう!



[29127] 第七話「忘れたりなんかしない」
Name: 三振王◆9e01ba55 ID:3f309a96
Date: 2011/08/22 21:44
 第七話「忘れたりなんかしない」


ある日の朝、芳佳は格納庫にいる整備兵達にお茶と扶桑のお菓子を差し入れにやってきた。
「あの……コレ扶桑のお菓子なんですけど、よかったらみなさんで食べてください」
「……」
しかし整備兵達は何も言わず、ストライカーの整備を続けていた。
「あの……」
「すみません、ミーナ隊長から必要最低限はウィッチ隊との会話を禁じられていますので……」
「え?」
「おーい芳佳、何してんだー?」
するとそこに、ガロードがDXの整備にやってきた。
「あ、ガロード君……私扶桑のお菓子持って来たんだけど……」
「マジで!? うっはー超うまそうじゃん! 一個もらい!」
「あ……」
ガロードは芳佳が持っていたかりんとうをそのまま口に運ぶ。
「おーなんだこれ? 甘いんだなー!」
「ふふふ……よかったら後で沢山あげるよ、実家から沢山送られてきたんだ」
「マジで! やっほーい!」
そして芳佳はそのまま格納庫の外へ去っていった。
「さーって、DXの整備を始めるかなーっと……あん?」
「「「「「…………」」」」」
その時ガロードは、格納庫にいた整備兵全員が自分を見ている事に気付く。
「え、ちょ? 何あんたら? 俺の顔に何か付いてる?」
すると一番近くにいた整備兵が急に立ち上がり、つかつかとガロードの前に立った。
「な、なんだ!? やんのかコラ!? 俺の中の人は元暴走族の高校教師の役をやってた事があるんだぞ!?」
訳が判らない事を言って身構えるガロード、すると整備兵はガロードの両肩に自分の両手をバンッと置くと……。
「お願いします! ウィッチの子達の事……教えてください!」
血涙を流してガロードに懇願していた。そしてよく見ると後ろにいた他の整備兵達は皆ガロードに向かって土下座していた。
「へ?」



数分後、ガロードは整備兵達に囲まれながら彼らの事情を聴いていた。
「成程ね、ミーナ中佐がウィッチと男の交流を禁止していると……」
「はい、おかげで我々は彼女達と話すどころか、さっきのように芳佳さんの好意を受け取る事が出来ないのです……!」
そう言って整備兵Aは流れる涙を豪快に腕で拭きとった。
「何? アンタ達芳佳達と話したいの?」
「それどころかもう……彼女にしたいぐらいですよ!」
整備兵Bがガロードにグイッと顔を近づけ、後ろでは他の整備兵達がウンウンと頷いていた。
「ガロードさん……ウィッチはその魔力を扱う影響で自然と美人になるんです、男としてそりゃあ……気にならない訳ないでしょう!? ああ、俺も芳佳さんの手作りの料理食べたいなあ」
「俺はリネットさんに膝枕してもらいたい!」
「ペリーヌさんツンツンしてるけど、デレたらきっと可愛いんだろうなあ!」
「シャーリーさんの豊満な胸……一度でいいから顔を埋めたい! いや! 頭に乗せたい!」
「ルッキーニちゃんは最高だぜ! 12歳的な意味で!」
「バルクホルンさんをお姉ちゃんと呼びたい……」
「エーリカちゃんはマジ天使!」
「一度でいい……一度でいいからサーニャさんの歌を間近で聴きたい!」
「エイラさんに占いしてもらいながらキャッキャウフフなんていいなあ」
整備兵達がそれぞれ自分の溢れそうな欲望をガロードにさらけ出す、ガロードはそんな彼らを見て圧倒されていた。
(ていうか俺、こいつらの願いの殆どを達成しているな……言ったら殺されそう……ん?)
その時ガロードはある事に気がつく、それは今までの自分に対するミーナの態度だ。
「そう言えば俺、あんまりミーナ中佐にくっつきすぎるな~とか言われた事ないなあ、基本的芳佳達の周りをブラブラしてても何も言われないし……」
「それに関しては自分! 噂で聞いた事があります!」
すると整備兵Jが元気よく手を上げてガロードに説明する。
「ミーナ中佐が貴方を注意しないのは上層部の命令だと噂されています、あのDXの技術を何が何でも手に入れるため、ウィッチ達を使って貴方を取り込むつもりだとか……」
「使う? どういうこった?」
「その……解りやすく言えばハニートラップみたいなもので……」
「ああ、成程……俺のご機嫌取りってわけか」
つまり上層部はウィッチを犠牲にしてでも色香で自分を籠絡し、DXの技術を得ようとしているんだとガロードは考えた。
「まあ無駄だと思うけどな、俺の心はとっくにティファの虜にされているぜ」
「とにかく俺達、このままじゃいやなんですよぉ……女ッ気が無いままいつ死ぬかもわからない戦場に駆り出されて、野郎どもと抱き合ったまま天に召されると思うと……」
辺りに整備兵達のすすりなく声が響く、ガロードはそんな彼らのうち一人の肩に手をポンと置いた。
「泣くんじゃねえよ、まあ皆の気持ちは分かった。俺もミーナ中佐とそれなりに話してみるよ」
「おお! ありがとうございますガロードさん!」
「この御恩は一生忘れませんっ!!」
ガロードは整備兵全員から感謝と称賛の言葉を浴び続けた……。





数時間後、DXの整備を終えて格納庫から出たガロードは、暇つぶしに散歩でもしようと兼定と一緒に基地の外に出ていた。
「今日は天気がいいなあ、兼定」
「ワン!」
拾われてから兼定は特に芳佳と、自分と同じ雄に分類されているガロードになついていた。
そして兼定は尻尾を振りながらガロードの先を走って行った。
「あ、おい待てよ兼定―……ん?」
「え? うわ、なんだこの犬……?」
その時、兼定は何か手紙のような物を持って俯いている扶桑の軍服を着た少年を発見する。
「ようアンタ、扶桑の人か?」
「あ、貴方はもしかして……ガロード・ラン?」
「おろ? 俺の名前を知っているのか?」
「俺、貴方が助けてくれた赤城って戦艦に乗っていたんです、あの時はその……助けてくれてありがとうございました」
「赤城? ああ! あの時の……」
ガロードはこの基地に初めて来た時に初めて遭遇した戦闘で、扶桑海軍の艦隊を助けた事を思い出した。
「なあに、俺はただ当然のことをしたまでさ、それにしてもどうしたんだ? 元気無さそうだったけど……」
「じ、実はその……この手紙を宮藤さんに渡したかったのですが、ミーナ中佐に付き返されて……」
「あちゃー、またあの人か……それラブレター?」
「え、ええまあ……」
するとガロードは顔を赤くする少年兵から手紙を奪い取った。
「え? ちょ!?」
「なんなら俺が芳佳に渡しておいてやるよ! 俺ならウィッチに近付いても平気だしさ!」
「い、いいんですか!?」
ガロードの提案に少年兵の顔がぱあっと明るくなる。
「あんたみたいな人放っておけねえんだよ、鏡見ているみたいでさ……まあ任せてくれって!」
「ワン!」
兼定も“任せておけ!”と言わんばかりにワンと吠えた。
「あ、ありがとうございますガロードさん!」
そう言って少年兵は去って行くガロードと兼定に何度もお礼を言った……。





その日の夜、ガロードと兼定は芳佳の部屋に赴き、先ほど少年兵から預かった手紙を渡した。
「おーい芳佳、郵便だぜー」
「あ! これさっきの……ありがとうガロード君!」
手紙を受け取ってガロードに礼を言う芳佳、ふと、ガロードは芳佳の傍らにあるウィッチの人形に気付く。
「おろ? どうしたんだその人形? 可愛いじゃん」
「扶桑人形だよ、赤城の人がくれたんだ」
「へぇー、よく出来てるな」
「ちゃんとお礼が言いたいんだけど……ミーナ中佐にダメだって言われちゃった」
「うーん、あの人もなんでそこまで禁止するのかなー? ちょっと気になってきた……よし、芳佳よー、さっきのお菓子まだ残ってんのか?」
「うん残ってるよ? どうするの?」
「へへへ、まあ見てなって」



数分後、ガロード芳佳から貰ったお菓子を持ってエーリカの部屋にやってきた。
「相変わらず汚いなこの部屋……」
「んで? 態々お菓子持ってきてまで私に聞きたい事って何?」
そう言ってエーリカは芳佳のお菓子をぼりぼりと食べる。
「ミーナ中佐について聞きたいんだ、あの人ウィッチと男の関わりを極端に禁止しているだろ? なんでかなって思って」
「ああ、成程……別にうちの部隊に限った話じゃないけどね、面白くない話するけどいい?」
無言でコクコクと頷き了承するガロード。
「ミーナってさ……昔恋人がいたんだよね、クルトっていう音楽の道に進もうとしてた時に仲良くなった人でさ……でもネウロイと戦うため二人とも軍人になって、そのままネウロイとの戦争で……」
「……そっか、やっぱりそう言う訳か」
「あらま、意外な反応だね」
「俺の仲間にはそんな思いしている奴が結構いたから、ミーナ中佐もそんな感じかなーって思っててさ……」
「へえ、で……これからどうすんの?」
「話す機会があれば話してみるさ、あの人にはあの人なりの考えがあるんだろうけど、俺の考えも知ってほしいかなって……」
「そっか、まあ頑張りなよ」





次の日、基地にネウロイ襲撃を告げるサイレンが鳴り響き、ガロードとストライクウィッチーズはネウロイが出現したカールスラント付近の海域に出撃した。(シャーリー、ルッキーニ、サーニャ、エイラは待機)
『アレか!』
目的の海域に着いたガロード達は四角い箱状のネウロイを発見する。
「300m級か……いつものフォーメーションか?」
「そうね」
「よし、突撃!」
美緒の相図と共に、まずバルクホルンとエーリカが先行し、その後ろからリーネとペリーヌが続いていく。
「え!?」
するとネウロイは突然いくつもの小さな個体となって分裂し、ガロード達に襲いかかってきた。
「分裂しただと……!?」
「右下方80、中央100、左30」
「総勢210機分か、勲章の大盤振る舞いになるな」
「美緒はコアを探して、バルクホルン隊は中央、ペリーヌ隊は右を迎撃、宮藤さんは坂本少佐の直衛に入りなさい」
「「「了解!」」」
『ミーナさーん、俺は?』
「ガロード君も宮藤さんと一緒に坂本少佐のフォローに入って、コアを探している坂本少佐に敵を近づけさせないで」
『よっしゃ! 頑張ろうぜ芳佳!』
「うん!」
そしてウィッチ達は襲いかかるネウロイに対し迎撃を開始した。

「これで10機!」
「こっちは12機だ!」

「いいこと! 貴女の銃では速射は無理だわ、退いて狙いなさい」
「はい!」
「わたくしの背中は任せましたわよ!」


それぞれ迫ってくるネウロイを次々落としていく、それを少し離れた場所で見ていた芳佳とガロードは感嘆の声を上げる。
「皆……すごい……!」
『おっと! 感心している場合じゃないな! こっちにきた!』
すると約10機程のネウロイが芳佳達の方に向かってきた。
「くっ……!」
『当たれぇ!』
二人はその向かってくるネウロイをすべて銃弾で落としていく。
「いいわその調子よ!」
『まだコアは見つからないのか!?』
「ダメだ……見つからん」
「……! もしかしてまた陽動!?」
ミーナは以前戦ったネウロイ(二話に出てきたもの)の事を思い出す。しかし美緒はその意見を否定した。
「いや、コアの反応はする、しかしあの群れの中にはいないようだ」
『どっかに逃げちまったのか?』
「戦場は移動しつつあるわね」
その時、芳佳はふと上から何かが襲ってくる気配を感じ取った。
「……! 上です!」
そこには太陽を背に襲いかかる数体のネウロイがいた。
「くそ! 見えない……!」
『任せろ!』
ガロードはビームライフルの標準をネウロイの集団に合わせ引き金を引く、するとネウロイは一つを残して破壊された。
「! 見つけた!」
美緒はその最後の一個にコアがある事を見抜く。
「全隊員に通告、敵コアを発見、私達が叩くから他を近づけさせないで!」
「「「「了解!」」」」
ミーナはすぐさま他の隊員達に指示を出し、自分は美緒、芳佳、ガロードと共に雲の中に逃げていったコアを持つネウロイを追いかけていった。

「いた!」
そして雲を抜けてネウロイを発見したミーナ達は、そのまま一斉に銃撃を開始する。すると放たれた銃弾はネウロイに数発当たった。
「宮藤逃がすな!」
「はい!」
美緒に言われ芳佳はネウロイにトドメの一発をお見舞いする。その一発は見事コアに命中し、ネウロイはガラス片となって芳佳達に振りそそいだ。
「くっ……!」
「美緒!」
『ん?』
芳佳達は魔力シールドで、ガロードはDXのシールドでガラス片を凌いだ、そしてガロードは魔力シールドを張っている筈の美緒の顔にガラス片が掠ったのを目撃する。
『もっさん大丈夫か? 今……』
「大丈夫だ、心配するな」
「美緒……」
するとそこに、別の場所で戦っていたリーネ達が合流してきた。
「芳佳ちゃんすっごーい!」
「ふん! あんなのまぐれですわよ」
「いや、不規則な軌道の敵機に命中させるのは中々難しいんだ」
「宮藤やるじゃ~ん!」
「えへへへ……そうかな?」
皆に褒められて照れる芳佳、そして皆は戦火で廃墟になったカールスラントの街に降り注ぐネウロイの破片を見つめる。
「綺麗……」
「ああ、こうなってしまえばな」
「綺麗な花には棘が……とはよくいいますわね」
「自分の事か~?」
「な!? 失礼ですわね! ま、まあ綺麗なところは認めて差し上げてもよくってよ」
戦闘が終わり芳佳達の間に和やかな空気が流れる。
「……」
その時、ミーナは何かを見つけたのか近くの海岸に降りていった。
「あ、あれミーナ?」
「そうか。ここはカレー基地か……」
『……』
するとガロードもミーナの後を追う様にDXを海岸の方へ向かわせた。
「おいガロード?」
「少佐、ここはガロードに行かせてあげて」
「ハルトマン……?」
美緒はガロードを引きとめようとするが、エーリカにその必要はないと言われ、とりあえず様子を見ることにした……。





地上に降りたミーナは一台のボロボロの車に近付き、運転席のドアを開ける。
「あ……!」
そして助手席に赤いリボンで梱包された布袋を発見し、目を見開いた。
「ミーナさん」
するとそこにガロードが現れ、ミーナは布袋を持って彼の方を向く。
「……どうしたのガロード君?」
「うん、少し気になって……その車知り合いのか?」
「ええ、恋人の……この基地は彼が死んだ場所だから……」
「……そっか」
そしてガロードはボンネットに座り、ミーナに話しかける。
「皆に聞いたよ、規律の事とか、ミーナさんの昔の事とか……」
「そう……貴方もおかしいと思う? 軍の規律の事……」
「どうかなあ? 俺はここの軍人じゃないからよくわからない、ミーナさんはどう思うんだ?」
ガロードの問いかけに、ミーナはまっすぐな瞳で即答する。
「もちろん正しい事よ、いつ死ぬかも判らない戦場で、恋愛なんて……辛い想いしかしないわ」
「辛い、ねえ……」
ガロードはボンネットから降り、お尻の汚れをパンパンと払った後、ミーナの瞳をじっと見つめて問いかけた。
「その人との楽しかった思い出を思い出すのも……辛いのか? 好きになった事を後悔しているのか?」
「え……?」
ガロードの問いかけにハッと顔を上げるミーナ。
「俺だって嫌だぜ、大切な子と死に別れるのは……でも大切な人がいるからこそ、人は守る為に戦えるんじゃないのか? それにいつ死ぬかも判らないって……それじゃ死ぬつもりで戦っているみたいじゃん」
「そ、そんな事……!」
「俺はこの世界の人間じゃないから、ちょっと離れた場所で様子を見ることが出来るからさ、なんかミーナさんの事がそういう風に見えちゃうんだよね」
そしてガロードはどこまでも広がる青空を見上げる、まるで遠く離れた想い人を想う様に。
「俺は生きるために戦うぜ、大切な子と一緒に未来を掴む為に……それが俺の信念だ」
「生きるために……信念……」
「ミーナさんもさ、あんまり後悔ばかりしないでスカッと忘れてもっと楽に考えたらどう? そんなツンツンしていると天国の元彼も心配しちゃうぜ」
すると、ミーナは目からぽろぽろと涙を流し自分の想いをさらけ出した。
「後悔なんか……! 忘れたりなんかしない! クルトとの大切な思い出を忘れたりなんか……! 失った事がない貴方には何も判らないわ!」
ガロードはそれに対し、臆することなく自分の考えをぶつけた。
「ああ、判らないし、できれば一生判らないでいたい、そうならないように俺は強くなるんだ、ここの人達にだってきっとそれが出来るよ」
「……! 本当にできると思う? 皆に……一度大切な物を失った私なんかに?」
「できるじゃなくてやるんだよ、あんまり重く考えないほうがいいんじゃねえの?」


するとそこに、様子を見に来た美緒が降りてきた。
「話は終わったか……ん? ミーナお前……まさか泣いて……」
「え、えっとその……」
「なんでもないさ、早く帰ろうぜもっさん」
「お、おい……」
そう言ってガロードは美緒の背中を押し、ミーナの元を去って行った。

「ガロード君……」





次の日、501の基地の中を歩いていた整備兵AとBは、サーニャとエイラとすれ違った。
「あ、おはようございます」
「おはようさーん、毎日ご苦労さん」
「え!?」
そしてすれ違いざまにサーニャとエイラに挨拶され、整備兵Aは目をパチクリさせる。
「お、おい! 俺ウィッチに話しかけられちまったよ! 一体どうなってんの!?」
「ああお前知らなかったんだよな、規則が改定されてウィッチとあいさつとちょっとのコミュニケーションぐらいはしてもいいって事になったんだ」
「まままままマジで!!? ねえマジで!?」





同時刻、ウィッチ基地から赤城が出港し、その船上にガロードに芳佳への手紙を渡した少年兵が、少しずつ遠くなっていく501の基地を見続けていた。
「宮藤さん……やっぱり結局来てくれなかったなあ」
その時、彼の周りにいた扶桑兵達が空を見て騒ぎ出した。
「お、おいアレ見ろ! ウィッチだ!」
「え?」
すると彼らの元に、ストライカーを履いた芳佳、美緒、リーネが編隊を組んで飛んできた。
「みんなありがとー! 頑張ってねー! 私も頑張るからー!」
「芳佳ちゃん、よかったね」
「うん、ちゃんとお礼言えた……!」
「世話になったからな」
「はい!」
そう言ってリーネと美緒に向かって嬉しそうにほほ笑む芳佳、そして船上の扶桑兵達も手を振りながら、精一杯の笑顔で芳佳達にお礼の言葉を送った。



一方赤城の艦橋では、通信兵が501基地からの通信を傍受していた。
「艦長、基地から通信が入っています」
「繋げ」
すると通信機から美しい歌声が流れてくる、曲はリリーマルレーンだ。
「これは……全艦に繋げ」
美しい歌声が、赤城に乗る乗員全員の耳に癒しを運んだ。



その歌声の主はミーナだった、彼女はあの車の中に入っていた袋の中に入っていたドレスを着て、基地の広間でサーニャのピアノ伴奏に合わせてマイクに向かってリリーマルレーンを唄っていたのだ。
そして彼女の周りではバルクホルンら他のウィッチ達が心地よさそうに彼女の歌を聞いていた。しかしその場に……ガロードはいなかった。





「ミーナさんの歌……綺麗だな」
ガロードはミーナの歌を、DXのコックピットの中で一人のんびりと聞いていた。
(それにしても……そろそろここに留まるのもヤバいかもな)
ガロードは軍の上層部の最近の動きを見て、少なからず自身の身の危険を感じていた。
(このDXを渡すわけににもいかないし、芳佳達に迷惑は掛けられない……そろそろここから出る必要があるな、でも……)
ガロードには一つ気になる事があった、それは先日、サーニャやエイラ、芳佳と一緒の任務に就いた時に遭遇した仮面のウィッチの事だった。
(あのウィッチがどうしてニュータイプ能力を持っていたのか、少し調べないとな……)
そうしてガロードは今後の方針について一人であれこれ思案する。

「くぅーん……」
そんなガロードが乗っているDXを、兼定は一匹で見つめ続けていた……。










今回はここまで。
ガロードってミーナとは恋愛に対する考えが正反対の人間だから、自分の意見を言い合う場面を書きたかったんですけど……なんかうまくいかなかったような気がする。

次回は芳佳と美緒メインでオリジナル話を書く予定です、ガンダムシリーズではよくあるあのシチュエーションでお送りいたします。



[29127] 第八話「死なせるもんか!」
Name: 三振王◆9e01ba55 ID:3f309a96
Date: 2011/08/25 21:54
 第八話「死なせるもんか!」


ある日の朝、ガロードはいつものようにウィッチ達の食堂に赴いて彼女達が作るおいしい朝食を食べようと廊下を歩いていた。
「今日の当番は誰なのかなーっと……ん?」
するとガロードは一人でふらふらと廊下を歩く芳佳を発見する。
「おーい芳佳、おはよー……ん? ずいぶんとフラフラじゃねえか」
「あ、ガロード君……くしゅんっ!!」
芳佳はガロードの方を向いた瞬間くしゃみをした。
「おいおいどーした? もしかして風邪でもひいたのか?」
「うーん、昨日訓練の途中で夕立に当たっちゃって……熱はないみたいなんだけどね」
「そっか……あんまり無理すんなよ、せっかくだし飯食ったら薬もらいに医務室行こうぜ」
「うん、ありがとうガロード君……」

そして二人は一緒に食堂に向かった、するとそこではシャーリーとエーリカが厨房に立って朝食を作っていた。
「お、芳佳とガロードだー、おはよー!」
「おいおい、今日は芳佳と一緒なのかー? お前ずいぶんと他の奴らとも仲いいよなー」
そう言ってシャーリーは人参を切りながらつまらなさそうに口を尖らせる。
「あんまりいちゃいちゃするとー! 隊長が頭に角生やして怒っちゃうよー?」
「私は鬼じゃありませんよ、フランチェスカ・ルッキーニ少尉?」
「ひっ!?」
ミーナを使ってからかっていたらご本人がいつの間にか背後にいて飛び上がるほど驚くルッキーニ。
「ミーナさんも朝食―?」
「ええ、どうせなら一緒にどう? ガロード君」
「あはは、それじゃー」



それから数分後、食堂にウィッチ全員が集まり朝食を食べ始める、ちなみにガロードの右隣には芳佳が、左隣にはミーナが座っている。
「今日はボンゴレとスープだよーん!」
「ロマーニャ料理ですか……おいしいですー」
シャーリーとルッキーニが作った料理に舌鼓を打つウィッチ達、そんな中ミーナはガロードの頬にボンゴレの食べカスが付いていることに気付く。
「あらガロード君、頬についているわよ」
ミーナは食べかすを指で取ると、それをペロリと舌で食べてしまう。
「あ、サンキューミーナさん」
「うふふ、慌てなくてもいいのよ、しっかり噛んで食べなさい」
その様子をエーリカはにやにやしながら見つめていた。
「おいおい、なんか恋人みたいだな二人とも、姉さん女房に世話を焼かれる年下みたいな」
「へっ!!?」
するとミーナはボンッと頭上から煙を吹き出しながら顔を真っ赤にした。
「おー照れてる照れてる!」
「あれー? ウィッチと男の人って恋愛禁止じゃなかったのー?」
エーリカとルッキーニは一緒になってミーナをからかい出す、それを美緒はわっはっはと笑っていた。
「はっはっはっは! ミーナ……新しい恋に目覚めたか!」
「そそそそそそんな訳ないでしょう美緒!? わわわわわわわ私がそんなガロード君と恋人同士だなんて!」
「でも悪い気はしないだろう?」
「そりゃあまあガロード君はイケメンだし、この前も正直ドキッとして……って何言わせるの!!?」
目をぐるぐる回し手と顔をぶんぶん振って否定するミーナをにやにやしながら見つめるエーリカ、ルッキーニ、美緒、しかし彼女達は気付いていなかった、そのすぐ傍でリーネとペリーヌが並々ならぬ殺気を放っている事を……。
「ヤダナアサカモトショウサ、ガロードクントミーナチュウサガツキアッテイルワケナイジャナイデスカ……」
「え? ちょ、なんだリーネ? 目が怖いんだが」
「オフタリノジョークモワラエマセンワ……トネールデヤキキリマスワヨ?」
「あ、あれ!!? なんか私まずい事言った!?」
「びえー!? 殺されるー!」
人殺しの目をしている二人に心底ビビる三人、だがそんな中シャーリーは余裕の表情で皆に言い放った。
「まあ私はガロードに裸見られたからなー、そういう意味では一歩リードしてるな!」
「「「えっ!!?」」」
ウィッチ達の視線がシャーリーに集中する、しかしリーネはすぐさま気を取り直して胸を張ってシャーリーに言い放つ。
「わ、私なんてガロード君に胸を揉まれました!(第一話参照)そういう方面では私が一歩リードしています!」
「な、なんだと!? 私だって揉まれた事あるぞ! しかも生で!」
「わ、わたくしもですわ!(第一話参照)」
「揉みすぎだろガロード……」
顔を真っ赤にして言い合いをする三人、そんな中エーリカとルッキーニは何かを思い出したかのように手をポンとたたいた。
「あ、そういえば私、ガロードにズボンの中を見られたことがある(第六話参照)」
「そういえば私もだ!(第六話参照)」
すると二人は挑発するように体をもじもじさせ始めた。
「つまりぃ、私はガロードに責任を取ってもらわなきゃいけないね!」
「そうだね!」
エーリカはともかく、ルッキーニは責任の意味がよく分からずノリで言っていた。すると二人の発言にリーネとペリーヌが噛みつく。
「お二人とも……次の任務の時は気を付けてください、私間違って撃っちゃうかも」
「トネール使うとき巻き込んじゃうかもしれませんが、まあ不幸な事故だと思って……」
「へ、へん! 脅そうったってそうはいかないぞ! 私だってガロードのこと結構気にっているんだから!」
今度は臆することなく反論するエーリカ、そんな中サーニャはぼそりと隣にいたエイラに話しかける。
「ねえエイラ……私たちもガロード君に裸見られているよね……?(第五話参照)」
「またソレか、言っとくけど私はサーニャを渡すつもりはない、サーニャは私のy……ゲフンゲフン!」
ゴニョゴニョと言葉を詰まらせながら人差し指の先端同士をぐりぐりさせるエイラ。
「エイラ!」
するとサーニャは突然エイラの肩をガシッと掴み、いつもの眠そうな目とは打って変わってキリッとした目で彼女を見つめる。
「さ、サーニャ!?」
「エイラ聞いて……私はエイラとずっと一緒にいたいけど、お父様達に孫の顔も見せてあげたいの、そこで知ってる? この世界には“妻妾同衾(さいしょうどうきん)”というのがあるの」
「さい……なんだって?」
「妻と愛人が夫と一緒のお布団で寝る、妻公認の不倫で三人一緒に暮らすこと……つまり私とエイラが結婚して、ガロード君が愛人になれば私たちは女としての幸せを手に入れられるうえにいつまでも一緒でいられるのよ! これで一石二鳥よね!」
なんかもうツッコミ所が多すぎてツッコミきれないのだが、エイラはサーニャの謎の説得力に圧されて思考能力が低下していた。
「な、成程……それなら三人一緒に幸せになれるな!」
「でしょう? だから私たちもガロード君に責任とって愛人になってもらいましょう」
こうしてサーニャとエイラもガロード争奪戦に加わることになった。

「あ、あのみんな落ち着いて……」
事の発端になったミーナは必死になって今にも血の雨を降らせそうなウィッチ達を宥めようとする。
「なあミーナ、少し聞きたいことがある」
すると両肘をテーブルについて両手で頬杖をついていたバルクホルンがミーナに語りかけた。
「な、何トゥルーデ!? 何かいい方法を思いついたの!?」
「お前がガロードの恋人になるということは……ガロードの姉である私はお前のことを義姉さんと呼ばなければいけないのか?」
「かんっっっけいないわよね今ソレ!!!!?」
ゲルトルート・バルクホルン、この状況で一人フリーダムだった。おまけに本人は本気の本気なので始末に負えない、そしてどんどん収拾がつかなくなる食堂、そんな時ルッキーニがある提案を出す。
「よおーっし! こうなったらガロードに誰がいいか直接聞いてみよう!」
「ルッキーニナイスアイディアだ!」
すごくいい笑顔でウィンクしながら親指を立てるシャーリー。
「ガロード君! 私たちの中で一番好きなのは誰!?」
目を血走せながらガロードの方を向くウィッチ達、はたしてガロードの答えは……!?


「あ、ごめん……聞いてなかった」
「わふーん」
いつの間にかテーブルの下にいた兼定にパンを与えていて、「あ、サンキューミーナさん」というセリフの後のウィッチ達の会話を聞いていなかった。


「「「「「「「「「「ズコーーーーーー!!!!」」」」」」」」」」
一斉にひっくり返るウィッチ達、ついでに天井のシャンデリアがテーブルの上にガシャンと落ちたり、たまたま近くを通りかかった整備兵が窓を突き破って激しくズッコケたり、外にいたカモメが落下したり、四方のハリボテチックな壁が外に向かって一斉に倒れたり、最後に501基地が島ごとズモモモモと海に沈んでいくという見事なオチがついた。
20年後ぐらいにそのエピソードを聞いた扶桑の放送作家が、それを元に5人のコメディアンを用いた土曜8時の超国民的長寿コント番組を作るのだが、詳しい内容はいずれ機会があったら語るかもしれないし語らないかもしれない。





そんな騒動があったその日の昼、外は激しい雷雨に見舞われていた。
「うわー、ひでえ嵐」
「珍しいな、扶桑の台風並みじゃないか」
格納庫の入り口でガロードと美緒は外を眺めながら語り合う。
「リーネも洗濯物が乾かないとか言って困っていたな」
「この状況でネウロイが来たら苦戦は必至だな」
「おいおい、そういうこと言うと……」
その時、基地全体にネウロイ襲撃を告げる警報が鳴り響いた。
「ほら見ろ! フラグ立てたから来ちゃったじゃん!」
「わ、私のせいか!? すまん!」
珍しく慌てる美緒、するとそこに警報を聞きつけた芳佳とリーネが格納庫にやってくる。
「ネウロイが出たんですか!? 出撃します!」
「他のみんなも後から来るそうです!」
「よし……なら我々で先行しよう、ガロードも一緒に来てくれ」


数分後、芳佳、美緒、リーネ、ガロードは嵐の中ネウロイが出現した空域に向かっていた。
「もうすぐ目的地に着くぞ、皆気合を入れろ!」
『りょーかい!』
「はい!」
「……」
元気よく返事をするリーネとガロード、しかし芳佳だけは返事をしなかった。
「ん? どうした宮藤? 聞こえていないのか?」
「え? あ! はい! すみません……!」
「大丈夫芳佳ちゃん? 今朝から風邪気味だったよね?」
『あんまり無茶するなよ? ダメそうだったら下がったほうが……』
心配して声を掛けるリーネとガロードに対し、芳佳は無理やり笑顔を作って答える。
「へ、平気平気! なんともないから心配しないで!」
それを見た美緒は嬉しそうにいつものような大笑いをする。
「はっはっは! よくぞ言った宮藤! 病は気から! 気合で乗り切れ!」
「はい!」


そして四人はネウロイが到着した空域に到着する。
「いたぞ! ネウロイだ!」
「あれってこの前の300m級!? どうしてまた……!?」
するとネウロイは以前と同じように数十個の個体に分裂し、芳佳達に襲いかかる。
「来たぞ! 各機散開!」
「「はい!」」
『よっしゃ! 暴れちゃうぜ!』
美緒の指示で他の三人は分散してネウロイを各個撃破していく、その中でも特にガロードの動きは格段に目立っていた。
『へっへーん! こう広いとやりやすくていいぜ!』
ガロードはDXの機動力を最大限に利用し、MSにとって小さくて当てにくいネウロイをビームライフルで次々と破壊していく。
(スゴイ! ガロード君次々とネウロイを落としている……もしかして私達を攻撃に巻き込まないように今まで手加減していたのかな?)
離れた場所で狙撃をしていたリーネは、いつもより動きのいいDXを見て驚く、その時……すぐ傍で戦っていた芳佳の動きがおかしい事に気付いた。
「……!? どうしたの芳佳ちゃん!? ふらふら飛んでいたら落とされちゃうよ!」
「ハァハァ……ご、ゴメン……!」
芳佳はふらふら飛行しているうえ、いつもは当てられるような銃撃も全然当てられていなかった。
「……!? 宮藤どうした!? しっかりしないと……!」
「は、はい……!」
しかしその時、芳佳の後ろにいたネウロイの一体がビームを放つ、そのビームはそのまま芳佳のストライカーのプロペラ部分を撃ち抜いた。
「あ……!」
「宮藤!?」
間髪いれず二射目を放とうとするネウロイ、それに気付いた美緒はすぐに芳佳の前に立ってシールドを張った。
すると放たれた二射目のビームは美緒のシールドを撃ち抜き、彼女のストライカーを破壊した。
「うっ……」
「ああああああ!!?」
そして宮藤は力尽きるように、美緒は破壊されたストライカーの制御が出来ずに、近くの無人島に落下していった。
「芳佳ちゃん! 少佐!」
『く……!』
ガロードはすぐさま落下していく芳佳と美緒を追いかけていく。
「ガロード君!」
『リーネは撤退してシャーリー達と合流しろ! 二人は俺が連れて帰る!』
「そんな……! きゃ!!」
リーネは自分も付いて行こうとするが、大量のネウロイに行く手を阻まれてしまい、そのまま口惜しそうにその場から撤退していった。










「はあっ……はあっ……」
「おいどうした宮藤!? しっかりしろ!!」
数分後、空中で芳佳と美緒を受け止めたガロードは、そのまま無人島に着陸し二人を地面に降ろす。
「もっさん! 芳佳はどうしたんだ!?」
「そ、それが……さっきから呼吸が荒いんだ、それにどうやら熱が……!」
ガロードは試しに芳佳のおでこを触ってみる、すると芳佳のおでこは通常のより明らかに熱くなっていた。
「スゴイ熱じゃないか! どうしてこうなるまで……!」
「だって……私はウィッチだし……休んでいられないと思って……」
熱で顔を真っ赤にし、息も絶え絶えに芳佳は語る。彼女は風邪の症状が悪化していくにも関わらず、皆に迷惑をかけまいとやせ我慢をしていたのだ。
「とにかくコックピットで休ませよう、ここじゃ病状が余計に悪化する」
そう言ってガロードは芳佳を背負い、美緒と共にDXのコックピットに入った。



一方援護に来たミーナ達と合流したリーネは、彼女達と共に悪化していく状況に絶望を感じていた。
「そ、そんな……! ネウロイが増えている……!」
ガロード達が着陸した無人島の周りに、もう一体同じ形のネウロイが現れ、最初に現れたネウロイと同じように分裂し無人島を囲っていたのだ。
「こ。これだけの数じゃ近付けない……!」
「おい少佐! 宮藤! ガロード! ……ダメだ! 通信も妨害されている!」
そう言って悔しそうに歯噛みするバルクホルンとシャーリー、そしてミーナは心苦しそうにある辛い決断を下す。
「……ここでこうしていても仕方がないわ、一度基地に帰還して作戦を考えましょう」
「ミーナ! 三人を見捨てるの!?」
ミーナの決断にエーリカが珍しく声を荒げ反論する。そんな彼女をバルクホルンが宥める。
「よせハルトマン、ミーナだってよく考えて決断したんだ」
「くっ……判っているけどさ……!」
エーリカはまだ納得していない様子だったが、とりあえずミーナの指示に従う事にしたのか、彼女に背を向けた。それを見ていたペリーヌは少し自嘲めいた笑みを浮かべた。
「というか……ワタクシより先にエーリカさんが噛みつくなんて以外でしたわ」
「仲間を心配するのは当たり前じゃん……それよりも早く基地に戻って作戦を立てよう」



一方DXのコックピットの中に避難した美緒とガロードは、モニターで外のネウロイの様子を監視しながらシートに寝かせている芳佳の額に濡れタオルを乗せていた。
「やつら、どうして俺達を襲わないんだ? 何にせよ助かるけど……」
ふと、ガロードはすぐ傍にいる美緒を見る、彼女のいつもの豪快な雰囲気は陰っており手をぎゅっと握りしめて歯ぎしりしていた。
「情けない……! 隊長なのに隊員の異常にも気付かなかった! それどころか気合でなんとかしろなどと……!」
自分の先程の発言と行動を思い出し激しく後悔する美緒、そんな彼女をガロードは優しく励ます。
「もっさんだけのせいじゃねえよ、傍にいた俺やリーネだって気付けなかったんだし、こいつが変に我慢しすぎたせいでもあるんだ、だからあまり自分を責めるのは……」
「それでも……それでも私は……!」
「う……ううう……!」
その時、芳佳は突然震えだした。
「ん!? 芳佳どうした!?」
「いかん、体温が下がってきている、クソ! 私にも治癒魔法が使えれば!」
「使える本人がこれじゃあなあ」
「……よし!」
すると美緒は何か思いついたのか、徐に軍服を脱ぎ捨て、さらにスク水風スーツの上だけを脱ぎ始めた。
「わあああああ!!? いきなり何してんだもっさん!?」
美緒の行動に驚いたガロードは慌てて美緒から視線を反らした。
「体温が落ちたのなら人肌で温め合うのが一番だ! む……それだと宮藤も脱がせる必要があるな」
「ううぅ……」
そう言って美緒は今度は熱で苦しむ芳佳の服を脱がし始める。
「だから~! なんで俺がいる時にするかなあ~!? しょうがないから俺は外へ……」
そう言ってコックピットから出ようとするガロードの手を美緒はガシッと掴んだ。
「どこへ行くガロード?  お ま え も ぬ ぐ ん だ 」
「簡便してください! 俺には……! 俺には心に決めた人が!」
「はぁーはっはっは! 問答無用!」
美緒はなんか悪役っぽい笑顔で嫌がるガロードの服を無理やりはぎ取った。
「いやあああああ!!! もっさんのケダモノおおおおお!!!」
雨が降りしきる曇り空に、絞め殺された鶏のようなガロードの悲鳴が響き渡った……。

「ううう……ティファにも見せた事ないのに……!」
数分後、そこにはコックピットの端っこでパンツ一丁で大切な物を散らしてしまった乙女のようにさめざめと泣くガロードの姿があった。
「泣いている暇はないぞ! 早く宮藤を温めるのだ!」
そう言って上半身裸の美緒は上半身裸の芳佳にピトッと抱きついた。
「あ、あの……ホントにやらなきゃダメ?」
「お前! 宮藤を助けたくないのか!?」
「判りました……」
美緒に怒られガロードは渋々、そして顔を真っ赤にしたまま芳佳に抱きつく。
(あああ~……! 柔らかい、そしていい匂い……ティファゴメンよ! ゴメンよぉ~!)
ガロードは芳佳の温もりを直に感じながら、心の中でティファに何度も謝った、その時……芳佳がうつろな声で美緒とガロードに話しかける。
「ごめんなさい……二人とも……私のせいで……迷惑かけて……」
「な、何気にするな、お前はゆっくり休んで……」
「坂本さん……私死んじゃうんでしょうか……? こんなに苦しいの生まれて初めて……」
「そ、そんな事……」
高熱でうなされる芳佳は、今まで吐いた事の無いような弱気を吐いてしまう。それに対して美緒はうろたえて何も言えなかった、すると……ガロードは芳佳の手をギュッと握りしめて彼女に優しく語りかける。
「大丈夫だ……芳佳は死なない、俺達が死なせるもんか、だから安心して眠っていろ」
「う、うん……」
すると芳佳はすうっと目を閉じて眠ってしまった。
「眠ったか……震えも収まったみたいだな」
「ああ、何か掛けてしばらく寝かせよう」



数分後、二人の上着を掛けた芳佳の容体が安定したのを確認したガロードは、コックピットの外で体育座りで項垂れている美緒の元に向かった。
「はぁぁ~……」
「どうしたんだもっさん? ため息なんてらしくないじゃん」
「……私だってため息ぐらいつくさ、今日ほど自分の無力さを呪った日は無い……」
「そんな気にするなよ、誰だってミスはあるだろう?」
「いや……私の場合そう言う訳にはいかない、宮藤の事ならなおさらだ」
「あん? どういうこった?」
ガロードは美緒の隣に座って彼女の話を聞く態勢にはいった。
「ガロード、お前は……我々ウィッチの“あがり”の事は知っているか?」
ガロードは首を横に振る。
「我々ウィッチは一部の例外を除いて、20歳を過ぎると魔力を失って飛べなくなるんだ、私ももうすぐ飛べなくなる……」
「ええっ!? そうだったのか!?」
初めて聞くウィッチの真実にガロードは一度は驚くが、そう言えば自分が会ったウィッチは皆20歳以下だったなと思いすぐに納得した。
「だから私は、私の代わりに世界を守るウィッチを育てなくてはならない」
(だからもっさん……特に芳佳に目をかけていたのか)
「だが今回のような事になるとは……私の今までしてきたことは一体なんだったんだ!?」
そう言って美緒は自分に対する不甲斐なさへの怒りで、地面に自分の拳をガンッと打ち付けた。
そんな彼女の手を、ガロードはそっと握った。
「もっさん……あんまり自分を責めんなよ、人間誰だってミスはあるんだ、俺だって昔……自分のミスで仲間に大けが負わせたことあるしよ」
「……? お前にもそんなことがあったのか?」
「ああ、俺がまだフリーデンの一員になったばっかりの頃だったかな、その時の俺、ちょっと考え事しながら作業していたせいで仲間を危うく下敷きにしちゃいそうになってさ、おまけにそのあと、名誉挽回しようとMS工場の機材を持ち出そうとしたら敵に襲われて、そこにあった動力炉が暴走して大爆発を起こしたんだ、幸い俺は無事だったけど助けようとしてくれたジャミルに大けがを負わせちゃってさ……ははは、あの時の俺ってホントかっこ悪かったんだよな」
「お前にそんなことが……」
美緒は初めて聞くガロードの昔話に真剣に耳を傾ける、そしてガロードはすっかり暗くなった空を見上げながら再び語り出した。
「もっさん……あんまり焦るのはよくないぜ? じゃないと俺みたいにとんでもないバカやっちまうぞ、もっとこう……リラックスした方がいいぜ」
「リラックスか……そうだな、お前の言うとおりかもしれん……」
美緒は先ほどまでの落ち込んだ表情はどこへいったのか、今はすっかり優しい微笑をガロードに向けていた。
「いやーしっかし、もっさんのあんな様子初めてみたぜ、いっつも豪快に笑うか厳しく怒鳴るかのどっちかだからさ……」
「ひ、人をなんだと思っているんだ……これでも昔は宮藤みたいにオドオドしてばかりだったんだぞ」
「ぶっーー!!?」
美緒の言葉を聞いて、笑いのツボが刺激され思わず吹き出すガロード。
「貴様! 笑うとは何事だ!?」
それにむっと来た美緒はガロードにヘッドロックを決める。
「だ、だって芳佳みたいなもっさんなんて想像できないぜ!!? だははははは!!」
「わ、笑うなあ~!!!」
ガロードがあまりにも笑うので、美緒はムキになって怒り顔を真っ赤にしていた。

そして数分後、ようやく落ち着いてきたガロードは息を切らしながら美緒に謝罪していた。
「はーはー……いやあ悪いもっさん、あまりにも面白くてよー」
「まったく……次に笑ったら刀の錆にしてやるからな、それにしても……こうやってふざけあうのは久しぶりだ、醇子や徹子と一緒にいた頃を思い出す」
そういって美緒は昔を懐かしむように空を見上げる。
「その人たちって……もしかしてもっさんが新人だった頃の仲間?」
「ああ……今は別の場所でネウロイと戦っている、しばらく会っていないがな……」
「んじゃ、ネウロイ全滅させたら同窓会でも開いたら? 芳佳やエイラ達も誘ってさ」
「それはいい! また一つネウロイを倒した後の目標ができたな! はっはっはっは!」
(ははっ、ようやくいつものもっさんに戻ってきたな、よかったよかった)
ガロードはいつものように豪快に笑う美緒を見て一安心していた……。





その頃無人島周辺では、基地に戻り作戦を立て直したミーナ達が再び戻ってきた。
「これより私たちは三人の救出作戦を行います、まずはペリーヌ機とルッキーニ機、そしてハルトマン機が先行し、他の隊員は彼女達の援護を」
「どこか一点でもネウロイの集団に穴を開けて、そこから少佐達を救出する」
「ここに少佐がいればコアを狙い撃ちできるんだけどね……」
「それでは作戦開……!!?」
その時、ミーナ達は上空から何かが近づいてくる事に気づく。
「あれは……あの時の!?」
エイラはその何かが先日自分たちに襲いかかった仮面のウィッチということに気付く。
「……」
仮面のウィッチはそのままネウロイの集団にビーム弾を撃ち込んでいく、するとネウロイの集団の一部はそのまま仮面のウィッチに向かっていった。
「あのウィッチ……まさか私達を助けてくれるの?」
「なんにせよ有難い! 我々も続くぞ!」



一方その様子に気付いたガロード達もすぐさま出撃の準備を始めようとする。
「皆が助けに来てくれたのか! もっさん! 飛べるか!?」
「いや……さっきの攻撃でストライカーが……! 宮藤もダメだ!」
「しょうがねえ、DXに乗れ!」
ガロードは美緒をDXに乗せてコックピットハッチを閉じ、外の様子をモニターで見る。
「皆苦戦しているな……この前の倍の数だからな」
「くそ! 一体どうすれば……! そうだ!」
突如美緒は何かを思いついたのか、突如シートに座っているガロードに抱き寄った。
「うおっと!? なんだよいきなり!?」
「私がコアの位置を指示する、お前はそれをビームライフルで撃ち抜いてくれ」
「成程ね……判ったぜ!」
美緒は眼帯を取り捨てて自分の右頬をガロードの左頬にぺったりとくっつけ、左手は操縦桿を握る彼の手の上に乗せる。
「頼むぜもっさん……!」
「任せろ!」
ガロードは魔力で光る美緒の右目の光を感じながら、操縦桿を握る左手の力を強める。
「くそ! どこにあるんだコアは……!」



一方空で戦っているミーナ達も、コアを見つけようと必死にネウロイと戦っていた。
「うにゅ~! 数が多すぎる~!」
「泣きごと言うなルッキーニ! 敵は待ってはくれないぞ!」
「もう! 勲章はお腹一杯だよ!」
「弾も無くなってきた……コレは本格的にきついな」
そう言って冷や汗をかきながら戦うウィッチ達、その時エイラと小隊を組んで戦っていたサーニャが仮面のウィッチの様子に気付いた。
「……!? サーニャあの人……!」
「あん? なんだあいつ……ここから離れていくぞ」
「……!? まさか!」



仮面のウィッチは群れから離れていたネウロイの一団に向かってビームを放つ、するとその一つがネウロイの個体に命中し、次の瞬間半数近くのネウロイがガラス片になって砕け散った。
「きゃ! まさかあの方、コアの居場所が判っていましたの!?」
「一体どんな魔法を……!」
底の見えない仮面のウィッチの能力にペリーヌとリーネは驚愕する。

「……」
一方仮面のウィッチはそのまま動きを止めてDXの方を見た。まるで何かを伝えるように……。


―――キィィィィン!

「うっ!?」
同じころ、ネウロイのコアの位置を探っていた美緒は、突然頭の中に何者かの声が響くのを感じた。
「どうしたもっさん!?」
「い、いや……何でもない、ん?」
ふと、美緒はモニターに映るネウロイの集団の中に、コアを持つネウロイを発見する。
「いたぞ! 標準を右30度ずらせ!」
「わかった!」
そしてモニターに映る標準がコア持ちのネウロイをロックオンする。
「今だ! 撃てー!!!」
「うおおおお!!!」
美緒の言葉でガロードは勢いよく引き金を引く、するとビームライフルから放たれたビームは見事コアを持つネウロイを貫き、残りの他のネウロイもすべてガラス片になって砕け散った。
「やった……!」
「ああ……」
美緒はそう答えながらモニターに映る仮面のウィッチを見る、すると仮面のウィッチはそのまま何処かに去っていった。
(先程の感覚……まさか奴が……?)



その後、ガロード達はミーナ達に無事保護され、医務室に運ばれた芳佳の体調も次の日には回復に向かっていた……。


その次の日の昼、ガロードはリーネとペリーヌ、そして美緒と共に芳佳のお見舞いをしに医務室に足を運んでいた。
「芳佳ちゃん、もう大丈夫なの?」
「うん、もう平気……心配掛けてごめんね」
「ふ、ふん! わたくしは別に心配なんてしていませんわ! これからはちゃんと体調管理に気を付けるように!」
そういってペリーヌは芳佳からプイッと目をそらした。
「そんなこと言って……ペリーヌも結構心配していたよな」
「が、ガロードさん、からかわないでくださいまし……」
ガロードに褒められ頬を赤く染めるペリーヌ、その時……美緒は芳佳の毛布で何かもぞもぞ動いていることに気付く。
「ん? 宮藤……毛布の中に何かいるぞ」
「ああ、兼定ですよ、ホラ」
芳佳が毛布をめくると、そこには芳佳の膝の上でちょこんと丸まっている兼定がいた。
「ははは……兼定は本当に宮藤が好きなんだな」
「使っている使い魔が同じ豆柴だからでしょうか?」
「くぅーん」ウヘヘ
(なんかこいつ怪しいな……)
芳佳達の見えないところでいやらしく笑う兼定を見て怪しむガロード。そして彼はそのまま芳佳に話しかける。
「何にせよもう無茶してみんなに心配かけんなよ、お前だってここの一員なんだからさ」
「う、うん……」
すると芳佳は顔を真っ赤にして毛布の中にもぐりこんだ。
「どうしたの芳佳ちゃん?」
「な、なんでもない、多分熱がまだ残っているんだよ」
「そう……?」

リーネの心配する声に答えながら、芳佳は毛布の中で昨日のガロードの言葉を思い出していた。

――死なせるもんか!

(ガロード君の手……暖かかった……お父さんみたいに……)
芳佳は自分の手の中に残るガロードの温もりを思い出す、すると胸がチクチクと痛みだし、彼女は胸をぎゅっと手で掴んだ。
(なんだろうこの気持ち……私どうしちゃったんだろう……?)
芳佳は自分の中に芽生えたガロードに対するある感情に戸惑いながら、静かに目を閉じた……。









本日はここまで、これで大体のウィッチとフラグが立ちましたね。(ちょっと違う人が何人かいますが)

そして次回は原作第九話と  正  妻  降  臨  の話になります。
ガロードは生き延びる事が出来るか……!?



[29127] 第九話「手を出すな!」
Name: 三振王◆9e01ba55 ID:3f309a96
Date: 2011/08/29 21:30
 第九話「手を出すな!」


芳佳達との一件があった数日後、ガロードはバルクホルンとエーリカと共にロンドンにある病院に向かっていた。
「走れハルトマン! クリスの待つ病院へー!」
「はいはい……」
「落ち着けよバルクホルン、そんなに急がなくたって病院もクリスも逃げないぜ」
「う、うむ……」
興奮するバルクホルンを半ば呆れ気味に宥めるガロードとエーリカ。
「にしてもよかったな、クリスちゃんの意識戻ったんだって?」
「ああ、良かった……」
ガロード達が何故ロンドンの病院に向かっているのかというと、そこに収容されている意識不明のバルクホルンの妹クリスがつい先日目を覚ましたとの連絡が入ったので、そのお見舞いに向かっていたのだ。
「でもなんで俺も連れて来させたの?」
「いやー、実はトゥルーデがクリスにってお土産沢山買い込んじゃってさ~、荷物持ちが欲しかったんだよー」
「あはは、成程ね……しっかしこいつ本当に姉バカだよな、クリスが目を覚ましたと聞いてストライカー履いて勝手に出撃しようとしていたし……」
「あれは大変だったね止めるのー」
「ああ、早く着かないかな……!」
和気藹々と会話するエーリカとガロードの脇で、バルクホルンは貧乏ゆすりをしながらソワソワしていた……。


数十分後、ロンドンの病院に着いたガロード達、そしてバルクホルンは勢いよくクリスのいる病室に掛け込んだ。
「クリス!」
「ちょ、ちょっと!? ここは病院ですよ!?」
すると病室でシーツを取り替えていたナースがバルクホルンを注意する。
「あ……す、すみません、急いでいたもので……」
「ふふふ……!」
厳しい視線を向けるナースに平謝りするバルクホルン、するとそれをベッドの上で見ていた少女……クリスティアーネ・バルクホルンはクスクスと笑いだした。
「クリス……!? クリス!」
目を覚ましている妹の姿を確認したバルクホルンは、その事実をしっかりと確認するかのように彼女の手をギュッと握った。その様子を、部屋にいたナースと後から病室に入ってきたエーリカとガロードはほほえましく見守っていた。
「あ、エーリカさんと……誰?」
クリスは初対面であるガロードの存在に気がつく。
「彼はガロード・ラン……私達の大切な仲間さ」
「あはは……なんかムズ痒いな」
そう言ってガロードは照れくさそうに頬をポリポリ掻く。
「お姉ちゃん、私がいない間大丈夫だった?」
「何を言う、大丈夫に決まっているだろう、私を誰だと……」
そう言ってクリスの質問に対しエヘンと胸を張るバルクホルン、しかしすぐ傍で椅子に腰かけたエーリカとガロードが肩をすくめる。
「ああもう全然ダメ、このあいだまでひどいもんだったよ、やけっぱちになって無茶な戦いばっかりして……」
「あの時は本当に肝が冷えたぜ、芳佳がいなきゃどうなっていたことか……」
「お、お前ら!? 無い無いそんな事はないぞ! 私はいつだって冷静だ!」
拳を振り上げて二人を黙らせようとするバルクホルン。そんな彼女を見てクリスはふふっと笑った。
「お姉ちゃん……なんだか楽しそう」
「そうだなー、ここにいるガロードと宮藤が来てから変わったよなトゥルーデ」
「宮藤……?」
「入ったばかりの新人さ、そう言えばガロードが来たのも同じ時期だったな」
「そんなこともあったなあ……もう大分昔の事に感じるぜ」
「宮藤さんかー、私友達になれるかな?」
「きっとなれるさ、お前達少し似ているし……でもお前の方が何倍も美人だがな!」



そんな感じで和気藹々と過ごすうちに、あっという間に帰る時間がやってきて、ガロード達は外に止めてあった車の元に戻ってきた。
「いやー楽しかったな、俺質問攻めに遭っちゃったよ」
「まあ昔っから私達の周りって同年代の男の知り合い少なかったからねー、珍しかったんでしょ」
「ん……?」
するとそこに、伸ばした白い眉毛で目が隠れていて、口元も白いひげで隠れている生まれたてのヤギみたいな老人が近づいてきた。
「そ、そ、そこのお若い方~」
「お、おいおい大丈夫かじいさん?」
あまりにもおぼつかない老人の足取りに、ガロードは思わず手を貸そうとする。
「おっとっと!」
すると案の定老人は前のめりに転びそうになる……のだが、何故か老人はガロードを避けるように後ろにいたエーリカのうっすい胸に飛び込んだ。
「だ、大丈夫おじいさん?」
「ああ……優しいのうお嬢さん(チッ、目測を誤ったか、どうせなら後ろの子のデカイ胸に飛びこみたかったのに)」
「じいさんなんか言ったか?」
ガロードはその老人の怪しい一言といやらしい眼つきを見逃さなかった。すると老人はすぐさま弱々しい雰囲気に戻った。
「何もいっとらんよ~? それより貴女方、この手紙が風でこの車から飛んでいくのを見て回収したんじゃが……」
「手紙?」
バルクホルンは老人から差し出された手紙を受け取る。
「ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ……ミーナ宛の手紙だ」
「どうして私達の車に……とりあえずありがとうおじいさん」
エーリカ達はそう言って老人にお礼を言い車に向かって行く。その時……。


「ガロード・ラン」
老人は後ろを歩いていたガロードを呼びとめた。
「……!? アンタどうして俺の名前を!?」
「まあそう警戒なさるな、ワシはお前さんの味方じゃ」
老人は伸ばした眉毛の隙間から覗かせるエメラルドグリーンの瞳で、ガロードの瞳をじっと見つめる。
「ガロード……お前さんはそのうち、信じられないほど過酷な真実に遭遇するじゃろう……だが負けてはならんぞ、お前さんにはこの世界とお前さんの世界でできた仲間がいるんじゃからな」
「……? それってどういう……?」
その時、老人のすぐ傍を美人が通り過ぎた。
「お! そ、そこのお嬢さん! ワシと一緒にお茶でもどう~!?」
「え!? きゃー何このジジイ!?」
老人はそのまま驚いて逃げる美人を追いかけていった、先ほどのよぼよぼな足取りとはうって変わってとても軽快なステップで。
「な、なんだったんだあのじいさん……?」
「おーいガロード! 置いてくぞー!」
「お、おうー!」
ガロードは謎の老人に首を傾げながらも、エーリカに呼ばれて車の元に走っていった……。


一時間後、基地に戻ってきたガロード達は先程受け取った手紙を執務室にいたミーナと美緒に見せた。
「悪いが先に中身を見させてもらったぞ」
「なんて書いてあったんだ?」
「『深入りは禁物、これ以上知りすぎるな』……だってさ、二人とも何したの?」
「悪いが我々は何もしていない、しいていえばネウロイの事を調べていただけだ」
ガロードの質問に、美緒は淡々と答える。
「では何故こんなものが……?」
「もしかしてさー、そのネウロイ関係でなんか調べられたら不味い事でもあるんじゃない? その手紙の送り主?」
「おお! ガロードあったまいいー!」
「いやー、それほどでも! んで……差出人に心当たりは?」
ガロードはエーリカに褒められて照れ笑いを浮かべた後、すぐに表情を引き締めてミーナと美緒に質問する。
「心当たりがありすぎるぐらいだ、が……こんな品の無い真似をする奴の見当はつく、あの男はこの戦いの核心に触れる何かをすでに握っている、私達はそれに触れたんだ」
「あの男……?」
その場にいた人間すべてが美緒の方を向く。
「トレヴァー・マロニー……空軍大将さ」
「ああ、あの人か」
ガロードはこの世界に来たばかりの頃、その男にDXの事をしつこく聞かれた事を思い出した。
「とにかく……この件は私達に任せて、他の隊員達にもあまり軽々しく喋らないように」



数分後、執務室を出てバルクホルンらと別れたガロードは、今後の自分の身の振り方について考え始めた。
(さて、向こうもそろそろ本腰を入れてDXを手に入れてこようとするだろうな……そろそろこの基地ともオサバラするかなあ)
ガロードは思考を巡らせながら、格納庫に歩みを進める。
(問題はDXをどうするかだ、いまだに元の世界に帰る方法が見つからないし、このままここに置いといてもあのマロニーって人は戦争に利用するだろうし……ここの月には“アレ”がないとはいえ、万が一使われたりしたら大変な事になるだろうしな……)
ガロードはいまだにミーナ達の上司である軍上層部の事を信用していなかった、彼は私利私欲のために戦争を起こした自分の世界の大人達とこの世界のマロニー達を重ね合わせていた。
(でも逃げたあとどうする? 寝床は無いし補給も出来ないし……いっその事DXをバラして売っちゃうか?)

そうこう考えているうちに、ガロードは格納庫にやってきた、するとそこで……ストライカーユニットを履いて出撃しようとしている芳佳とペリーヌを発見する。
「ん? おーいお前らどうしたんだ? 今日ってストライカーの訓練が無い日じゃ……」
「あ、ガロード君……」
芳佳はガロードの姿を確認するやいなや、少し気恥ずかしそうに目を反らした。
「……? どうしたんだ芳佳? お前ここのところ変だぞ?」
「う、うん……なんでもない」
「宮藤さん、早く参りましょう」
するとペリーヌが二人の会話に割って入り、芳佳に出撃するよう促す。
「お、おいペリーヌ、どうなってんだよコレ?」
ガロードは状況を飲み込めず、とりあえずペリーヌを呼びとめた。
「実はワタクシ達……これから決闘を行いますの」
「決闘!?」
ペリーヌの想定外の返答に度肝を抜くガロード。
「ここ最近宮藤さんは生意気ですわ、坂本少佐と仲がよく、私を差し置いて左捻り込みをマスターして、最近はガロードさんに色目……コホン、そんなわけで先輩であるワタクシが一度喝を入れてあげようかと……」
最後の言葉を言いかける前に飲み込み、軽く咳払いをするペリーヌ、そして彼女はある事を思いついた。
「そうですわガロードさん! アナタ決闘の立会人になっていただけます?」
「俺が……? べつにいいけど、暇だし……」
「決まりですわ、ではワタクシは先に参ります」
そう言ってペリーヌはストライカーを履いてそのまま空に飛び立って云った。
「さて……じゃあ俺もDX乗りますか」
「う、うん!」



それから数十分後、ガロードはDXに乗って、芳佳はストライカーユニットを履いてペリーヌのいる空域にやってきた。
「10秒以上後ろを取ったほうが勝ち、それならよいでしょう宮藤さん?」
「……」
芳佳はいまだに釈然としないといった感じで持っている銃器の安全装置の有無を確認した。
「うん、掛かってる……」
『大丈夫か二人とも? 怪我だけはすんなよ』
ガロードの問いに二人はコクリと頷くと、一斉に飛び出して決闘をスタートさせる。

「取りますわよ……!」
「……!」
まずはペリーヌが低高度から上昇して芳佳の背後を取ろうとする、しかし芳佳もペリーヌの存在に気が付き振り切ろうとする。
「あん! まったくもう……ちょこまかちょこまかと!」

その二人の戦いを見ていたガロードは素直に感心していた。
(すげえなあ芳佳、新人だってのにニュータイプみたいな動きしやがる……元から才能があるのかもなあ)

―――ウウウウウウウウウ~!!!!

その時、辺りにネウロイ襲撃を告げるサイレンが鳴り響いた。
「警報……!? ネウロイか!?」
ガロードと芳佳、ペリーヌは一斉に基地の方角を見た……。



数分後、三人は先行してネウロイが出現した空域に向かっていた。
『もっさんとミーナさんには連絡入れといた! すぐに向かうってよ!』
「わかりましたわ!」
ふと、ガロードは先日の美緒との会話を思い出す。
(そう言えばもっさん、この前魔力が無くなりかけているって言ってたけど大丈夫なのか。……? それっぽい現象ちょくちょく見てるし……)
その時、突如芳佳がガロード達の前にでた。
「……!? 宮藤さん! 一体何を!?」
「このまま待ってても逃げられちゃう……! 先に行って足止めしてきます!」
「ちょ! 自分勝手に行動するのもいいかげんに……!」
芳佳は止めようとするペリーヌを振り切ってネウロイの出現地点に向かって行った。
『しょうがねえ……! 俺が芳佳のフォローに向かうからペリーヌはここでミーナさん達と合流してくれ!』
「が、ガロードさんまで!? まったくもう!」
そのまま置いて行かれたペリーヌは、勝手に行動する二人に憤慨した……。



数分後、芳佳と後から追いかけてきたガロードは全長1mほどのネウロイを発見する。
『あれか……? 随分と小さいな』
「これなら私一人で倒せるかも……よし!」
そう言って芳佳は銃の標準をネウロイに定め、そのまま引き金を引く……が、弾が発射されることはなかった。
『芳佳! 安全装置!』
「あ!」
芳佳はガロードに言われて慌てて安全装置を外そうとするが、少しもたついてしまう、するとそれを見ていたネウロイがグニャリと変形を始めた。
『ん? なんだあいつ……』
そしてネウロイはそのまま芳佳の隣に向かって行き、そのまま黒い人間の姿に変形した。
『……!? ネウロイが人に!?』
「え? きゃ!?」
芳佳は隣で自分と並ぶように飛んでいるネウロイに気付き驚愕する。
「ね、ネウロイがどうして人の姿に……?」
『まさかこの前のサーニャの歌みたいに人間の真似をしているのか……?』
すると人型ネウロイはダンスを踊る様に芳佳の周りをぐるぐると飛びまわった。
(まるで人間みたいだ……)
ガロードは人型ネウロイから敵意が感じられず、攻撃しようという思考に辿り着かなかった。
そして人型ネウロイは両手を広げ、芳佳に近づこうとする。
「え!? ちょ! ちょっとまって~!」
芳佳は思わず両手を前に突き出す、すると人型ネウロイは芳佳から1,2mほどの距離を保って停止した。
「あ、あれ……?」
芳佳はネウロイの行動に拍子抜けしながらも、意を決してネウロイに語りかけた。
「は……初めまして、あなたは誰なの……ってネウロイっていうのは判っているんだけど……」
するとガロードも芳佳の真似をして人型ネウロイに話しかける。
『お、俺ガロード! お前ら一体何者なんだ!? 俺達の敵なのか!?』
するとネウロイはDXに近づいて行き、DXの顔のエメラルドグリーンの瞳をじっと見つめる。
『……?』
ガロードは思わずDXの手でネウロイを包もうとする、するとネウロイはまるで蝶のようにDXの手からすり抜けていった。
『あ、あれ?』
「あはははは、嫌われちゃったね……あれ?」
芳佳はガロードとネウロイのやり取りを見て笑っている自分自身に驚く、そして意を決して、先ほどガロードがした質問を自分でしてみる。
「ねえ……あなた達は本当に私達の敵なの?」
するとネウロイは自分の胸を開き、その中にあった自分のコアを見せる。
「これは……」
芳佳は思わず手を伸ばす、まるで触れる事により何かが判るのか知っているように……。


その時、突如上空からビームの雨が降り注ぎ、芳佳とガロード……そしてネウロイを襲った。
「!! 何!?」
『あいつは……!?』
ガロードはビームが放たれた方角を見る、するとそこには先日からガロード達にちょっかいを掛けてくる仮面のウィッチがいた。
「またあのウィッチ!?」
『くそ! 何なんだよお前!? 一体何が目的で……!』
すると一緒に襲われた人型ネウロイはコアをしまうと、両手から仮面のウィッチに向かってビームを放った。
「……!」
仮面のウィッチはそれをかろうじて回避する、すると人型ネウロイはそのまま仮面のウィッチに向かって飛んで行った。
「あ、あなた……!」
仮面のウィッチと人型ネウロイは芳佳達より少し高い高度で激しい空中戦を繰り広げる、それを芳佳とガロードはただただ呆然と見つめていた。
『あのネウロイ……俺達を助けてくれるのか?』
「どうして……!?」

「くっ……!」
仮面のウィッチは人型ネウロイに追いかけられながら、不利な状況を打開するため一気に後ろを向いてビームライフルを構える、しかしネウロイはその振り向いた瞬間を狙ってビームを放った。
「っ……!」
仮面のウィッチは顔面に向かって発射されるビームを身を捻って回避しようとする……が、コンマ1秒ほど反応が遅れてしまい、顔につけていた仮面を落とされてしまった。

「当たった!?」
『あれは……!』
その様子を見ていた芳佳とガロードは、仮面のウィッチの素顔を見ようと彼女に注目する。


仮面が取れたウィッチはリボンで一本にまとめた長い髪をなびかせながら、その素顔を芳佳とガロード達の前に晒した。
『っっっっっ!!!?』
ガロードは謎のウィッチの素顔を見た途端、全身を何かハンマーのようなもので打ち付けられたような衝撃に襲われた。


―――お前さんはそのうち、信じられないほど過酷な真実に遭遇するじゃろう―――


先程出会った老人の言葉がガロードの脳裏によぎる、彼の言った“過酷な真実”が、今彼の目の前に存在していた。
『あ……あ……』
「ガロード君、私はどっちに加勢したらいいんだろう……ガロード君?」
芳佳はその時になって初めてガロードの様子に気付く。
「ど、どうしたのガロード君?」
『あ……な、なんで……』
するとネウロイは最後のトドメにと、両手のビームを仮面のウィッチに向けて放った。
『っっ!!! やめろおおおおおお!!!!!』
するとガロードは尋常じゃない程の反応速度でネウロイと謎のウィッチの間に割って入り、DXを盾にビームから謎のウィッチを守った。
「ガロード君!? 何を……!」
『手を……出すな……!』
「え?」
ガロードは震える声で、ネウロイと芳佳に向かって叫んだ。





『ティファに……ティファに手を出すなあああああああああ!!!!!!』

謎のウィッチは正真正銘、彼が守ると約束したティファ・アディール本人だった。





「ティファ……?」
芳佳はガロードの行動と言っている事が判らず混乱していた。そして当のガロードはストライカーユニットを履いたティファの方を見る。
『ティファ! 俺だ! ガロード……ガロード・ランだ! 判るだろおい!』
「ガロ……ド……」
ガロードの言葉を聞き、ティファはピタッと動きを止める。
『そうだティファ! なんでこんな事になったのかさっぱりだけど、俺達が戦うことは……!』

―――キィィィィン!

「う、うわあああああ!!!」
するとティファは突然胸を押さえて苦しみ出しそのままビームライフルの銃口をDXに向けて引き金を引いた。
『ティ、ティファあああああ!!!?』
ビームの直撃を受けながらもティファに迫るガロード。
「う、うううう……!」
するとティファは苦しみながらもガロードから距離を取る。
『なんで逃げるんだティファ!? ティファあああああ!!!』
「ちょ! ガロード君落ち着いて!」
芳佳はガロードの取り乱しように少し戸惑いながらも彼を宥めようとする。


「宮藤! ガロード!」
するとそこに美緒、ペリーヌ、リーネ、バルクホルン、エーリカ、シャーリー、ルッキーニがやってきた。
「さ、坂本さん……!」
「あ! あの時のウィッチ! あんな顔していたんだ!」
「ちょうどいい……ふん捕まえて正体を暴いてやる!」
そう言ってルッキーニとシャーリーがティファの元に向かおうとするが……。
『待ってくれえええええ!!!』
彼女達の目の前にDXが立ちふさがる。
「どわ!? なんだよガロード!?」
『お願いだからティファを傷つけないでくれー!!』
「ティファ? ガロードあの子と知り合いなの?」

「……戦況は不利……一時帰還します……」
するとティファは現れた美緒達を見てその場を高速で去っていった。
「あ! アイツ逃げ『ま、待ってくれティファァァー!!!』
エーリカの言葉を遮ってティファを追おうとするガロード、しかしティファは雲の中に入って姿をくらましてしまった。
『そ、そんな……ティファ! ティファァァァァ!』
「さっきからティファティファうるさいぞ! なんだというのだ一体!?」
ガロードのあまりの取り乱しように呆れるバルクホルン。

「……」
するとネウロイもそのまま芳佳達の元から去って行く。
「あ! 待って!」
芳佳はネウロイを追おうとするが、追いつけず見失ってしまった。

『ティファ……どうして……』
仮面のウィッチの正体がティファだったという事実に打ちのめされるガロード、そんな彼を心配そうに見つめるウィッチ達。
「……とにかく基地に帰還するぞ、話は帰ってから聞こう」
「は、はい……」
『ティファ……』
そして芳佳とガロードは美緒の言葉に素直に従い、基地に帰還していった……。










本日はここまで、次回は10話をベースにした話を投稿いたします。
ティファがウィッチになった理由、魔力をもった理由などは次回以降やんわりと説明します。

それにしても今回の話は特に怒られそうだなぁ……他の自分の作品みたくガンダムキャラにクロス先のキャラの能力を持たせるなんて、受け入れてくれる人がどれだけいるのか……。



[29127] 第十話「信じてくれ!」
Name: 三振王◆9e01ba55 ID:3f309a96
Date: 2011/08/31 20:43
 第十話「信じてくれ!」


人型ネウロイと仮面のウィッチ……ティファとの戦いから戻ってきたガロードは、すぐさま自分の部屋に閉じこもってしまった。
「ガロード、一体どうしたんだろう……?」
「あのウィッチ、知り合いだったのかな……?」
ガロードの部屋の前ではシャーリーとルッキーニ、そしてエイラとサーニャが彼の様子を見に集まっていた。
「ガロード君……あの子の事ティファって呼んでいた……」
「何が何だか私にはサッパリだ、でも……大切な子なんだなぁとは思う」
「だよなあ……はあ……」
そう言ってルッキーニを除く三人は深くため息をついた。

一方ガロードは部屋の隅であれこれと思考を巡らせていた。
(どうして!? どうしてティファがウィッチに!? なんで俺や芳佳を攻撃したんだ……! 訳が判らねえよ……!)
ガロードは頭をぐしゃぐしゃと掻きながらベッドの上でのた打ち回っていた。そこに……。
「くぅーん……」
兼定が不安そうな顔でガロードの元に近寄ってきた。
「兼定……?」
ガロードはベッドにとび乗ってきた兼定を撫でる、すると不思議と心に落ち着きを取り戻してきた。
「……そうだな、ここでジタバタ悩んでもしょうがないか、まずはどうしてこうなったのか調べないと……」
そう言ってガロードはこれまでの事を頭の中で整理し始めた。
(これまでティファは三回、俺達の前に現れた、一回目はサーニャとエイラ、芳佳と一緒の時、二回目は皆といた時、三回目は……芳佳と一緒の時か、三回とも俺と芳佳がいた時に来たのか……俺とあいつに何かあるのか?)
そしてガロードは次に先程遭遇した人型ネウロイの事を思い出す。
(あのネウロイ、芳佳に何か伝えようとしていたのかな? ちょっと相談してみるか……)

ガロードは意を決っして兼定と一緒に芳佳に会いに部屋を出る、するとそこでシャーリー達と遭遇する。
「あ! ガロード出てきた!」
「ようやくか……心配させんなよ」
「悪い、でも俺はもう大丈夫だから、ところで芳佳は?」
「あいつは今謹慎中だよ」
「ええ!? なんで!?」
エイラの思いがけない答えに、ガロードは思わず彼女に詰め寄る、すると代わりにサーニャが答えた。
「宮藤さん……指示なしで勝手にネウロイと戦ったから軍紀違反で……」
「そうだったのか、まったく軍っていうのは融通が利かないんだよなあ」
するとシャーリーとエイラは同意するようにうんうんと頷いた。
「よし、それじゃ俺……芳佳と話があるから行くな、心配してくれてありがとさん」
ガロードは四人にお礼を言うとそのまま去っていった。

その時、サーニャがハッとある事を思い出した。
「あ、ティファって誰なのか聞くの忘れてた……」
「まあそのうちわかるだろ」


数分後、ガロードは芳佳のいる独房の前にやってきた。しかし……。
「あれ? 誰もいない……」
独房はもぬけの殻になっていた。
「ここじゃないのか? まさか……」
「わん!」
すると兼定は「ついてこい!」と言いたげに吠えて格納庫の方に向かっていった。
「あ! 待てよ兼定!」
ガロードは走っていく兼定を追いかけていく。

そして数分後、ガロードと兼定は格納庫に辿り着く、するとそこには……。
「あ……ガロード君?」
「どうしてここに……?」
ストライカーユニットを履いた芳佳と、それを見送ろうとするリーネがいた。
「お前……謹慎してなきゃいけないんじゃなかったのかよ?」
「そ、それは……」
ガロードの質問に対し答えようとするリーネ、そんな彼女を芳佳は手で制する。
「……私、あのネウロイにもう一度会って確かめたいの、あのネウロイ……私に何か伝えようとしていたから……」
「いいのかよ? 下手したら銃殺刑モノだぜ?」
「……」
ガロードの質問に、芳佳は決意に満ちた表情で無言で頷いた。
「そっか……んじゃさ、俺にいい考えがあるんだ」
「「いい考え?」」
ガロードは悪い事を考えているような笑顔で芳佳とリーネに自分のある考えを話した……。



数分後、501の基地全体に警報が鳴り響いた。
「DXが……ガロード君が脱走した!?」
「は、はい……芳佳ちゃんと兼定を人質に“身の危険を感じてきたから脱走するぜ!”って言って……ネウロイの巣に向かっているみたいです」
ブリーフィングルームでリーネの報告を聞いていたミーナ達は度肝を抜いていた。
「はっはっは! ガロードめ……大それたことをする!」
「笑いごとじゃないぞ少佐! 急いで追撃隊の編成を……」
いつものように豪快に笑う美緒を諌めるバルクホルン、その時指令室にある電話が鳴り響き、ミーナが受話器をとった。
「はいこちら501……閣下? はい……ですが……いえ、了解しました」
ミーナは通話を終えて受話器を置くと、隊員達に指令を出した。
「先程司令部からDXを捕獲せよと指令があったわ、中のパイロットと人質の生死は問わないそうよ」
「な、なんですって!?」
「穏やかじゃないね……!」
司令部の対応の速さと指令の内容に驚くペリーヌとエーリカ、他の隊員達も同じような反応をしていた。
「対応が早すぎるな、まるで内部にこちらの情報を流している者がいるみたいだな」
「今はそんな事を考えている暇はないわ、上層部も援軍を出してくれるみたい……とにかく出撃するわよ!」





一方その頃海上では、DXが人型ネウロイが現れた空域に向かっていた。
「ガロード君ごめんね……私のわがままに付き合わせちゃって」
「いいんだよ、そろそろ基地から出ていかなきゃなーとは思っていたし、あのネウロイも気になるし、あのままお前を出撃させていたら後々大変だったろう?」
“芳佳はガロードの人質になっている”というのはガロードが芳佳に罪を被せない為にリーネに言わせた嘘だった、もしあのまま芳佳だけを行かせたら軍の法律で重い罪に被せられてしまう……なら基地を去るつもりの自分がすべての罪を被ろうと考えていたのだ。
「ワン!」
「兼定も付いて来ちゃったね……」
「こいついつの間に潜り込んでいるんだもんな~!」

そしてDXでしばらく飛んだ後、芳佳はある疑問をガロードにぶつける。
「ねえガロード君、あの仮面のウィッチ……ティファっていったい誰なの?」
「ティファか……あの子は俺の大切な子さ」
きっぱりと言い放つガロード、そんな彼を見て芳佳は質問を続ける。
「大切って……どのくらい?」
「どのくらい……そうだなあ、ずっと一緒にいるって約束したぐらいかな、俺はティファの為ならなんだってできるぜ!」
「そう……なんだ……」
芳佳は胸がちくちく痛むのを感じながら、ガロードの話に耳を傾け続けた。一方のガロードは嬉しそうにティファの話を続けていたが、急に暗い顔をする。
「……それなのにどうしてティファは俺や皆を……ティファは確かに色んな奴に狙われるような特別な力を持っているけど、あんな風に武器を持って戦う子じゃないんだ! 一体誰がティファをあんな風に……!」
自然とレバーを握るガロードの手に力が入る。
「……行こう、あのネウロイはガロード君にも何か伝えようとしていた……!」
「ああ、確かめに行くぞ……!」
「ワン!」


それから数分後、DXは人型ネウロイが出現した空域に辿り着いた。
「ここか……」
「あ! 見てガロード君!」
すると芳佳はモニターに映る人型ネウロイの姿を発見する。
『……』
人型ネウロイはDXの目の前でホバリングすると、ふっと背中を向けて移動を始める。
「ついてこい……って言っているのかな?」
「とりあえず行こうぜ」
ガロードは迷うことなくDXでネウロイの後を付いて行った。
その前方には巨大な渦のような黒い雲がそびえていた。
「あれは……!?」
「ネウロイの巣だよ!」
そしてDXはネウロイに案内されながら巣の中に真下から入って行った……。



「うわあ……まるで雲の廊下だぁ」
巣の中を進みながら芳佳は場違いな事を言っていた。そしてDXは巣の中心に到達し、そのまま光に包まれた。
「……っ! ここは……」
ガロード達が辺りを見回すと、DXの目の前にネウロイが透明な十二面体をバックに立っている事に気付く。
「これは……?」
「教えてくれ! お前は一体俺達に何を伝えようとしているんだ!?」
するとDXの目の前にいくつものスクリーンが展開され、そのすべてに青い地球が映し出されていた。
「地球……?」
するとスクリーンの一つの画面が、空から突然現れ街を火の海にするネウロイと、それを迎撃している美緒を映し出していた。
「坂本さん!?」
思わず芳佳が声を掛ける、すると画面は今度は墜落したネウロイのコアを、それを取り囲む研究者らしき者達の様子を映し出した。
「ネウロイの……破片?」
次に画面は研究室らしき場所を映し出す、そこにはぼんやりと人型の機械が置かれているのがわかる。
「ネウロイの破片とロボット……どういう関係なんだろう?」

「なあネウロイ! お前はティファがあんな風になった原因を知っているのか!?」
ガロードの問いに応えるように、今度は隣にあったスクリーンがある様子を映し出す。
そこにはガロードが戦っていた月面での地球軍と革命軍の様子が映っていた。
「これは……!」
「あそこで戦っているの……DXだよね!?」
芳佳はヴァウサーゴとアシュタロンとサテライトキャノンを撃ちあっている様子を見て目を見開く。
「どうしてお前達があの戦いを……!?」
スクリーンは次に戦闘が終わりMSや戦艦の残骸が浮かぶ宇宙を映し出す、するとそこに一隻の白い戦艦が現れた。
「フリーデン……!」
「え? ガロード君あの戦艦と知り合いなの?」
「知り合いも何もあそこにティファが乗って……!?」
その時、フリーデンは突然出現した黒い渦に飲み込まれ、その場から姿を消した。
「フリーデンが……消えた!?」

次にスクリーンは巨大な試験管のようなものに入れられたティファと、ネウロイのコアを持ったガロードと同い年ぐらいの少年が映し出されていた。
「ティファ……!? おいお前ティファに何するんだ!? やめろ!」
「が、ガロード君、多分聞こえてないよ……」
少年は妖しく微笑むと、手に持ったコアをティファの体の中に入れてしまった。
「あいつが……! あいつがティファをウィッチに!!」
「あれ……?」
激怒するガロードの隣で芳佳は、ティファの後ろにいくつものネウロイのコアが試験管の中に収められていた。
(あんなに沢山のコアが……あの人が捕まえたのかな?)

そしてスクリーンが消え、再びネウロイがDXの前に立った。
「何にせよありがとう、おかげで色んな事が判った」
ガロードは自分達をここまで導いてくれたネウロイにお礼を言う。
『……!』
するとネウロイは何かを察知してその場から消え去ってしまった。
「! どこへいくの!?」
「外で何かあったのか……!?」

数分後、DXが外に出るとそこには美緒達ウィッチ、海上には赤城を始めとした扶桑海軍がネウロイの巣を取り囲んでいた。
「坂本さん!? 皆!?」
『ガロード、聞こえるか?』
DXのコックピットに美緒から通信が入る。
「もっさん、これは一体どういうこった?」
『上層部がお前“達”を敵性勢力として排除いろと命令してきた、ただし……DXだけはなるべく無傷で回収しろとな』
「……色々と無茶苦茶だな、もっさんどころか扶桑海軍まで引っ張り出すなんて」
「坂本さん聞いてください! あのネウロイは……!」
その時、ガロードと美緒達の通信に割って入ってくる者が現れた。
『坂本少佐、裏切り者に何を躊躇っている、早く攻撃を始めるんだ』
『マロニー中将!? しかし……!』
(マロニー……あいつか)
ガロードはこの包囲網がマロニーの指示だという事が判り歯ぎしりする。
『やつらは我々を裏切り、誰も入る事が出来なかったネウロイの巣に丁重に案内されながら入ったのだ……いわば人類の敵になったのだ、躊躇わずに攻撃するんだ!』
「そんな! 私達そんなつもりじゃ……!」
「よせ芳佳、何を言っても無駄だ」
弁明しようとする芳佳をガロードは手で制する。彼は無茶苦茶な理由で自分達を攻撃しようとするマロニーに何を言っても無駄だと思ったのだ。
「で、でもガロード! このままじゃ私達……!」
「とりあえずここから逃げるぞ、まあ俺を信じてくれ」
そう言ってガロードは芳佳にウィンクすると、美緒達に向かって大声で叫んだ。
『おいお前ら! そんな事言っていいのか~? このDXにはお前らを一気に吹き飛ばすほどのおっそろしい兵器が搭載されているんだ!』
『何!? 聞いてないぞそんなの!?』
初めて聞くDXの秘密に美緒を始めとしたウィッチの殆どの面々は動揺する。しかしその中でミーナは冷静に判断を下していた。
『落ち着いて皆、ガロード君のはったりって可能性だってあるのよ?』
しかしそれもガロードの計算のうちだった。
『どうかな? そんな事言うと本当に撃っちゃうよ!』
そういってガロードはDXの背中の翼を可変させ、二本のキャノンの銃口をウィッチ達や扶桑海軍に向ける。
『変形した……!? まさか本当に!?』
「判ったら俺達をこのまま逃がしてくれ、一緒に戦った仲間を撃ちたくないからな」
すると芳佳がガロードに小声で話しかける。
(ガロード君!? まさか本当に……!?)
(安心しろ、脅しだ脅し、第一サテライトキャノンは……)

だがその時、マロニーの口から予想外の言葉が放たれた。
『その兵器は……マイクロウェーブを受けないと撃てないのではないのかね?』
「!!!!?」
「マイクロウェーブ?」
ガロードはこの世界では自分しか知らない筈の事実をマロニーが知っている事に驚愕する。
「な、なんでアンタがその事を……!?」
『ふん! 見くびってもらっては困る……今から我々の力を見せよう!』



するとウィッチ達の遥か後方から三つの戦闘機らしきものが高速で接近してくる。
「うわ! なんだ!?」
「今のは……!?」
美緒達は自分達の横を通り過ぎて行った戦闘機に驚愕する。

そして三つの戦闘機はそれぞれ人型に変形し、両腕を胸で合わせて赤いビームを一斉に発射した。
「うわあ!」
「きゃ!」
赤いビームのうち一つは隣にいた人型ネウロイを消滅させ、もう二つはDXの足と腕に直撃した。
「あのネウロイが!」
「な、なんだあのスピード……!?」
『はっはっは! 見たか我々のウォーロックの力は!? 大人しくDXを引き渡せば命は取らないでやるぞ……!』
マロニーはガロードを脅迫しながらウォーロック三機にDXを包囲させる。
「が、ガロード君……!」
「大丈夫だ芳佳、俺を信じてくれ……! ここで死ぬつもりも死なせるつもりはない!」
ガロードは覚悟を決めてバスターライフルのビームをウォーロックの一つに向けて発射する、しかし狙われたウォーロックは凄まじい機動力で回避し、他の二機と共にDXに反撃し始めた。
「うわっとと!!? 掴まれ芳佳!」
「うん!」
ガロードはウォーロック三機の攻撃を逃げるように回避し、そのままそこから逃げようとする……しかしウォーロックは猛スピードでDXの背後をぴたりとくっついて離れなかった。
「くそ!」
逃げながらバスターライフルで反撃するも回避されてしまい、ガロードの心の中に自然と焦りが見えてきた。
「ガロード君……!」
「このままじゃヤバい……! まだティファも取り戻していないのに……!」

一方DXとウォーロックとの戦いを見守っていた美緒達は、自分達はどうすればいいか迷いに迷っていた。
『どうしたミーナ中佐? 早く君達も加勢に向かいたまえ!』
「で、ですが中将……!」
『元はと言えば君があの裏切り者を野放しにしていたからこんな事になったのだぞ? 尻拭いは君達でしたまえ』
「くっ……!」
マロニーの言うことは軍人としては正しいのだろう、しかしミーナはその命令に素直に従うことが出来なかった。
「ミーナ! 我々は……!」
「ガロード君と宮藤さんと戦うなんて、そんな……!」
「あれ?」
その時、エーリカはDXの後ろから何かが接近してくる事に気付く。
「ん? どうしたハルトマン?」
「向こうから何か近付いてくるよ! 青いのと赤いのと白いの!」
「まさかまたウォーロック? それともネウロイ?」
「いや……あれは!?」


するとDXのコックピットに新たな通信が入る。
『ガロード! 高度を下げてください!』
「!!」
ガロードはその声に反射的に反応してDXの高度を下げた。
するとウォーロック三機に向かってビームやミサイル、銃弾の雨が降り注いだ。
「今の攻撃は!?」
「まさか……!」
ガロードは攻撃が来た方角を見る、そこには彼がよく知っている三機のMSの姿があった。
「エアマスター! レオパルド! ベルティゴ!」

『おらおら! スピードならエアマスターも負けてねえぜ!』
可変型MSであるガンダムエアマスターバーストのパイロット、ウィッツ・スーは可変して攻撃から逃げようとしたウォーロックを猛スピードで追撃し、ノーズビームキャノンでエンジン部分を破壊し墜落させる。

『いけ! ビット!』
カリス・ノーティラスが駆るニュータイプ専用MS……ベルティゴは、残り二機に対してビットを放出し、四方からビームを浴びせ二機ともを撃墜する。


「な、何あれ……!」
「DXと色が違うけど……顔は似てるね!」
「感心している場合か! アレは一体……」
ミーナや美緒は突然現れた三機の巨人に動揺し、逆にルッキーニは興奮気味に喜んでいた。するとミーナの元に再びマロニーから通信が入る。
『な、何をしている! 君達もウォーロックと共に戦うんだ!』
「で、ですが……」
DXと同等、もしくはそれ以上の戦闘力を持っているかもしれない巨人と戦うのはあまりにも分が悪く、ミーナは先程以上に戦う事を躊躇っていた。
そしてそうこうしているうちに、海上にいた扶桑海軍がDXらに向かって砲撃を始めた。



「ふ、扶桑海軍まで攻撃してきた!?」
芳佳はDXの中でかつて味方だった者達からの攻撃が激しくなっていく事に動揺する。するとGファルコンと合体しているレオパルドデストロイから通信が入ってきた。
『おいおいガロード、ティファというものがありながら彼女連れか~?』
「パーラ……ティファが……」
『おっと、詳しい話は後にして、そろそろフリーデンに逃げるぞ』
そう言ってレオパルドに乗るロアビィ・ロイは扶桑艦隊やウィッチ達の手前に向かってミサイルやビーム、ガトリングの弾をありったけ撃ち込み、巨大な水しぶきを上げさせる。
『よし! 逃げるぞガロード!』
「皆……!」
「リーネちゃん、坂本さん、皆……」
ガロードと芳佳は美緒達ウィッチを一瞥した後、ウィッツ達と共にその場から去っていった……。


「ふにゃー!!? ちべたー!!?」
「目くらましか!?」
「海軍の人達も船の制御が出来ないみたいですわね……!」
リーネらウィッチ達は波に揺られて舵が効かなくなっている扶桑海軍の艦隊を見ながら、高速で去っていくDXらを見送った。



数分後、ガロードは久しぶりに再会したウィッツ達に色々と通信で質問していた。
「ウィッツ、ロアビィ、パーラ、カリス……お前達もこの世界に来ていたんだな」
『俺らだけじゃねえよ、フリーデンの皆全員がここに来ている、ティファを除いてな……』
『僕達は数週間前、この世界のアフリカ大陸にいつの間にか来ていたんです、そして現地のウィッチの部隊にガロードと501の事を聞いてここに来たんです』
『驚いたぜ~! DXの反応を見つけたと思ったらお前ら軍に取り囲まれているんだもん!』
「そうだったのか……ありがとう皆」
久しぶりに仲間達と話し、ガロードの顔は自然と綻んでいた。するとそんな彼に芳佳は話しかける。
「ガロード君、この人達は一体……?」
「こいつら? こいつらは……」
するとDXらの行く手に、白くて巨大な戦艦……フリーデンが見えてきた。


「お前らと同じで、俺の大切な仲間さ」










その頃501基地の司令室では、マロニーが先程の戦闘結果に不満を漏らしていた。
「なんということだ……! ウォーロックが三機ともやられてしまうとは……!」
すると隣にいたマロニーの副官が彼を宥める。
「技術部はまだウォーロックは調整不足と言っていました。やはり早すぎたのでは……?」
「判っている、そもそもあの扶桑の小娘がネウロイと接触などしなければ、我々はこんなに早く動かなかったのだ、だがしかし……慌てることはない」
その時、彼の背後から一つの影が現れた。
「マロニー中将、ウォーロック小隊の戦闘配備、終了しました」
「うむ、中々の手際だ」
マロニーはそう言って外の滑走路を見る、そこにはざっと20機程のウォーロックが隊列を組んで並んでいた。
「いえいえ、僕達は“彼”からコアを預かってきただけですよ」
「いやいや、君達のおかげでウォーロックの量産が可能になったのだ……」
マロニーはそう言ってその謎の青年の方を向く。



「感謝しているぞ……オルバ・フロスト」









次回予告
共に戦ってきた仲間との離別、そしてかつての仲間達との再会を経て、ガロードはマロニー達の陰謀を阻止するため、そしてこの世界を守る為に再び戦場に赴く。
「この世界をお前達の好きにはさせない!」


自分が想いを寄せている人の、一番大切な人を救う為、芳佳は仲間達と共に叫ぶ。
「私達の声を聞いて! ティファちゃん!」


二人は戦う、自分達にできる事を一つずつ叶えながら、離さず、あきらめずに、信じ続けながら。
そして二人は仲間達と共に未来を作りだす、それが新たなる苦難の始まりだとしても。



最終話「DREAMS ~みんなでできる事~」
さあ飛ぼう! 光の翼を広げて!










本日はここまで、次回は第一部最終話でストパン原作11話と最終話をベースにした話をまとめてお送りするつもりなのでちょっと長いかもです。
フリーデンがアフリカからガリアに来る経緯は最終話後に外伝として投稿します。(一応その話は書き終わっています)

第一部も残りわずか、はたしてガロードはティファを救う事が出来るのか!? ウィッチに不可能はない! 頑張って書きますのでみなさん楽しみにお待ちください!


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