FILE157:「君もアンパンマンになれる!」
2011年9月1日放送
9月6日(火)午前1:40〜<総合>再放送予定です。
※再放送は通常より10分遅く放送開始予定です。ご注意ください。
※徳島県は別番組放送のため、FILE157の再放送は休止です。ご了承ください。
ニュースや特別番組等の影響で、放送時間変更や休止の場合もございます。ご了承ください。
NHKオンデマンドで9月2日(金)午後6時〜配信予定です。
やなせたかし(漫画家)
いま日本で最も売れているキャラクターといわれる「アンパンマン」。作者のやなせたかしは現役バリバリの92歳だ。ぬいぐるみで埋め尽くされたアンパンマン部屋を訪ねてきた爆笑問題を相手に、いきなりアンパンマンの主題歌を大シャウト、二人の度肝を抜く。東日本大震災後、ラジオ局へのリクエストが殺到して話題になった「アンパンマンのマーチ」。
「なんのために生まれて なんのために死ぬのか わからないなんて そんなのはいやだ!」「そうだ、うれしいんだ生きる喜び たとえ胸の傷がいたんでも」
――歌詞は、意外に深いメッセージを含んでいるのだ。
アンパンで出来た自分の顔を困った人に食べさせるという、ある意味衝撃的な設定。
そこにはやなせの人生哲学が込められている。中国での従軍経験や、戦後の価値観の大転換を目の当たりにしたやなせは、「どちら側から見ても揺るぎない正義とは、自分を犠牲にして飢えている人に食べ物をあげることだ」と考えた。
ライバルのばいきんまんのキャラクターも、「ばい菌がゼロでも人間は生きていけない。人間とばい菌との戦いは永遠に続く」という、やなせの悪の哲学が背景にある。
漫画家として食えない時代に手がけた老舗デパート包装紙のロゴや、電球に手をかざしながら作詞した「手のひらを太陽に」の歌詞。
9歳下の天才・手塚治虫と机を並べて仕事をした日々。
衝撃の秘話満載の面白トークに加え、被災地に捧げる新曲まで。驚異の92歳が爆笑問題を圧倒する。
やなせたかし
1919年高知県出身。東京高等工芸学校卒。1941年小倉野戦銃砲隊入隊。中国で終戦を迎える。新聞記者、三越勤務などを経て1953年漫画家として独立。「詩とメルヘン」責任編集、「手のひらを太陽に」の作詞のほか、「アンパンマン」はじめ著書多数。近年はCDを制作するなど歌も歌う。日本漫画家協会理事長。
今回の対戦内容
やなせたかし/爆笑問題
やなせ:正義というものは簡単に逆転するんだ。どっちから見ても正しいことは何かというと、「ひもじい人を助ける」ことじゃない?それはどっちの国へ行っても正しいわけ。だからそういうヒーローを作ろうと思ったんです。
太田:そういう思いがあったんだ。
やなせ:ところがですね。「やなせさん、これは何ですか。アンパンが空を飛んでいって助けるとか、こういうばかばかしい話は、今の子どもにはうけません。もうちょっと勇ましい話じゃないと。」って言われてですね、全部反対されたの。ところが、子どもは非常に素直に反応した。今、その子どもたちが大きくなって、30歳ぐらいになってます。彼らは「幼稚園の時に読んで、やっぱりアンパンマンが顔を食べさせる部分でグッと来たっ」て言うんです。
太田:これは日本人だからうけるのかな。この自己犠牲っていう感覚は?
やなせ:今はね、自己犠牲の逆の時代ですよね。エゴの時代です。自分が良ければ他人のことはどうでもいいっていう時代なんです。それなのにこの自己犠牲の話がどうしてうけてしまうのか、それも小さな子どもになぜうけるのか。さっぱりわからない。
田中:計算外なんだ。先生も驚いたっていうことですね。
先生の対戦感想
やなせたかし
爆笑問題は、やはり現在の芸人の中では割と好ましい線に行っていると思います。結構難しいことを言っているんだけど、あたりは柔らかくて。2人ともなかなかの好青年でしたよ。
手塚君の話も出たけど、僕は昔からあまり絵がうまくないしね、天才じゃないしね、まあぼちぼちとやってきた。それで、実にいろんなことをやってきたんですよ。作詞や舞台装置、ステージの構成や映画の脚本も書きました。その時はね、何か知らないけど無駄な方向へ行っていると思っていたんだけど、今考えてみるとね、それは全部今の仕事に役立っているなって思っているわけなんです。
ただ、残念なのはちょっと年を取りすぎてしまったことかな(笑)
爆笑問題の対戦感想
田中:92歳、まあでもほんと若いよね。現役感がすごいあるっていうか。70歳でヒット作が生まれるなんて、まあちょっと考えられないもんね。「アンパンマンのマーチ」も、ああいう歌い方を、作ったご本人がされると感動的ですよね。子どもたちの合唱みたいなので聞き慣れているから、ほんとうはああいう感じなのかって思ったよ。
太田:手塚治虫が大天才だったっていう話あったじゃない。手塚さんは、漫画ですごく難しいことに挑戦して、いろんなアプローチをしてきた。かたや、やなせさんは、アンパンマン1個で、子どもに向けて伝え続けている。これ、どっちがどうじゃなくて。やなせさんは、「生きていこう!」という一言で済ます強さみたいなところがある。理屈こねて「ああでもない、こうでもない」って言っている我々は、なかなかああは行かないよね。
田中:本当に一貫していますよね。今回の「陸前高田の松の木」の歌のテーマも「生き続けること」だしね。本人がそれを実行しているかのような感じがしたね。すごく優しい人なんだろうなという気がしたよ。
太田:一時期、サカキバラ事件みたいのが起きたとき、「人間を殺してなぜ悪い?」っていう問いに対して、「生きていることがすばらしいのだ」という答えではもう対抗できないんじゃないかって時があったよね。でも、やなせさんは、それ以外の言葉を言わないものね。でもそれが、子どもたちに伝わっているっていうすごさを感じたね。どうやったらそう来られるんだろうって、俺なんか理屈をこねまわす方だから。
「戦争は絶対駄目なんです」っていうね、何か本当に単純な、一番最初に言う言葉でしょ。それを92歳で全く疑いもせず言えることのすごさ。すごく伝わるし、この人に言われちゃしょうがないって思った。
ディレクター観戦後記
私には3歳になる姪がいます。徐々に喋るようになってきたので、たまに実家に帰っては、会話を試みます。
しかし、私と姪との共通の会話は「アンパンマン」しかありません。
これまで聞きだしたところ、彼女の将来の夢は「メロンパンナちゃんになること」で、今まで行った一番楽しい場所は「アンパンマンミュージアム」です。
もはやアンパンマン中心に人生が回っているとも考えられるわけです。すごいですね。
趣味の多様化だとか、共通体験がなくなっているとか言われています。
30年後、私と姪の間に、どんな共通の話題が増えているでしょうか?
「アンパンマン」以外になにかあるでしょうか?私には自信がありません。
ですから「アンパンマンのマーチ」のことは常日頃から歌えるようにしなければなりませんね。
老後のことを考えて。
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