チャンピオンベルトを巻きガッツポーズの清水智信=31日夕、東京・日本武道館で(北田美和子撮影)
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WBAスーパーフライ級
県出身で初
世界ボクシング協会(WBA)スーパーフライ級タイトルマッチ十二回戦が三十一日、東京都の日本武道館で行われ、挑戦者でWBAフライ級4位の清水智信(30)=福井市出身、金子=が、王者のウーゴ・カサレス(メキシコ)を2−1の判定で下し、県出身選手では初めて世界チャンピオンの座に就いた。 (藤共生)
八回。強打に押されていた清水が、足を踏ん張り、王者を押し返し始めた。「清水!清水!」。大声援が背中に注ぐ。相手をはねのけると鋭い左ジャブで出はなをくじき、カウンターをボディーに何発も集めた。つかず離れずの“清水の距離”に引き戻し、劣勢の展開をひっくり返した。
中盤は王者のペースだった。えぐるような強烈なフックで自慢のフットワークを止められた。よぎったのは、三年前の二度目の世界戦で内藤大助に喫した悔しい敗戦。「ここでのまれたら前回と同じ」。冷静に、かつ気迫を前面に押し出した。
スーパーフライ級で飛び抜けた強打を誇る王者は、これまで一階級下だった清水にとって過去最強の敵だった。しかし、勝算はあった。「王者は中盤以降にラフさが出てくる。鍵は中盤以降の気持ちと体のスタミナ」(金子賢司トレーナー)。にらんだとおりの戦略で勝機をつかんでいった。
「新チャンピオン!清水智信!」。アナウンスが響くと、セコンド陣と抱き合った。三度目の挑戦で、悲願の世界王者に。「夢は必ず報われる。皆さんの支えのおかげです」。人生を懸けた一戦に勝利した男の目からは涙が止まらなかった。
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