NHK ETV特集「ネットワークでつくる放射能汚染地図 3」の動画を先ほどご紹介しました。その記事に寄せられたコメントについて考えていたら、こんな記事になりました。

「疎開」は報じられず、「除染」だけが報じられ続けるのはなぜなのか、私なりに考え、分かりやすくまとめたつもりです。
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NHK ETV特集「ネットワークでつくる放射能汚染地図 3」のような形で継続して、人物の活動を追っていく番組は貴重だと思います。

しかしこの番組の存在意義はすこしずつ薄れているように思えます。第1回の時 は、汚染マップをつくるという活動が、誰もが望んでいたが誰もしていなかったことでした。つまり、放射能汚染マップの作成が、そのままこの国のあり方に対 する批判を含んだものだったからです。木村真三氏が職を辞してまで汚染マップづくりを始めたというストーリーがこの番組を一層輝かせていました。

しかし、今、この番組の立場は、稀有でセンセーショナルなものではなくなってきています。放射能汚染地図作成に対して国も遅ればせながら参加したからです。とは言え、同じ人物の活動を継続的に追いかけるという番組スタンスは、信頼性を勝ちとっているようにも思えます。

最近、メディアは、「汚染そのもの」を報じるというスタンスから、「除染」について報じるというスタンスに変わってきました。NHKを始め、メディアは、「除染」に飛びついています。これには児玉龍彦氏の国会での発言が市民に好印象だった影響も少なからずあるでしょう。

しかし「除染」は根本的な解決にならないと訴える人々も増えてきています。今後は「除染」か「疎開」か、という問題が深刻になってくるでしょう。

ここで、なぜメディアは「疎開」を取り上げないか、について考えてみます。メディアは「疎開」より「除染」を報じやすい、のでしょう。

報じる対象を簡潔に書くと以下のようになります。

●疎開・・・危機を逃れた人々。
●除染・・・危機の真っ只中にあり続ける人々。

メディアは企画を考えるときにネタ数を意識します。ネタ数があればあるほ ど、困らないからです。テレビの企画書を書く際に必要とされることの1つに必ず「ネタ数」があります。簡単に言うならばテレビの企画書は、「センセーショ ナルさ」×「低予算」×「ネタ数」でできています。

「疎開」と「除染」のどちらがネタ数が多いか。「除染」です。新しいホットスポットが発見されることは、新しいネタが生まれることを意味します。しかも怯える住民たちを映し出せます。非常にテレビ的です。

一方「疎開」は、危機を脱した人々という報じられ方をされます。「放射能汚染」という危機から脱したという文脈で報じるわけです。実際は、疎開した人は家族 との別離があったり新しい職を探したり、子どもたちを新しい学校に通わせたりと、様々な気苦労があるのですが、「放射能汚染という危機」という文脈から は、それらは「危機」とはされないのです。

なぜか。

「疎開」の場合、撮影した「絵」が「危機を煽るものではない」からで す。疎開先の生活を撮影した「絵」は、視覚的には「日常」的だからです。一方、「除染」は、ガイガーカウンターに表示された数字を見た住民たちのリアクションを報じることで危機感を煽れます。この「数字」が非常にテレビ的なのです。

「疎開」と「除染」のどちらが、視聴者に訴えかける力が強いかは、ハッキリしています。大手テレビ局・新聞社などマスメディアの方針は、いつ何時でも視聴率という数字を優先することです。これは絶対に変わることはありません。

テレビを批判するのはたやすいことです。なぜならば、テレビは今の時代とマッチしなくなってきているからです。なぜテレビは私たちの目には愚鈍で「滅び行く恐竜」のように写るのでしょうか。テレビは実は、その特性を生かした報じ方をしているに過ぎないのです。ただ、その特性が今の時代にそぐわなくなってきているのです(まだまだテレビと相性のよい世代の人々がこの国の資産を保持しているのも事実です。お金がほしい政治家やメディアは彼らにこび続けています)。

これに立ち向かえるのは、雑誌、ラジオ、などのマイナーなメディアです。「吉田照美 ソコダイジナトコ」もその1つだと思います。アーサー・ビナード氏の言葉は、刺激的かつ、グローバルな視点で原発を説明します。新しい視野を獲得したい人にはおすすめしたい人物です。

マスメディアへのカウンターになりえる番組があればこれからもどんどん紹介していきたいと考えています。

カウンターメディアに必要なのは、新しい問題提起の継続だと思います。単発の問題提起なら誰もができます。新しい問題提起を継続することは非常に労力が必要ですが、継続して、新しい問題提起をし続けるメディアがどんどん登場することを私は願っています。

皆様のお考えをお聞かせください。

以下は、とても気になる本。フリージャーナリストが事故後の福島第一原発に潜入して書いた本です。
福島第一原発潜入記 原発作業員の真実
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※関連記事は、もう少し下にございます。ごゆっくりご覧くださいまし。

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