東北のニュース
横たわる難題救って 農家・漁業者「支援早く」
 | 東日本大震災の津波で流された定置網の再開を目指して、網を縫う漁師たち。東北の農水産業の再建へ向け、野田新首相の手腕に対する期待は大きい=30日、気仙沼市唐桑町の大沢漁港 |
|
民主党の野田佳彦新首相が選出された30日、東日本大震災の深い爪痕が残り、福島第1原発事故による見えない放射能の恐怖と戦う東北の農家や漁師たちは、新しいリーダーに向けて食糧基地・東北の再生を訴えた。政局の迷走で、震災対応が後手に回った政治に対する被災地の不信感は根深い。「泥くささ」が身上の野田氏に1次産業の思いを託せるのか。現場は厳しい目で見詰めている。
「風評被害で原価割れ寸前の価格が続く。来年の肥料代も確保できない」。福島県桑折町のモモ農家佐藤親さん(44)は、特産の危機に悲鳴を上げる。「農園も放射能を浴びた。長年肥料を与えて育てた土壌は農家の財産だ」と訴え、早急な除染方針の提示を求める。 原発の影響を受ける肥育農家も苦悩の日々が続く。宮城県産牛は今月18日まで、約1カ月の出荷停止措置が取られた。登米市南方町で牛約80頭を肥育する梅津宗男さん(63)は、対応が後手に回った菅政権への不満を背景に「経済補償を早くやってほしい」と語った。 大津波で壊滅的な被害を受けた水産業。漁業再開に向けた課題も大きい。気仙沼市唐桑町の養殖業熊谷和郎さん(55)は、80センチ近く地盤沈下した漁港のかさ上げを望む。「満潮になると水浸しになり、水揚げができない。早く手を打ってほしい」と訴える。 大船渡市でも、養殖施設や船の復旧といった問題が横たわったままだ。同市の漁業佐々木謙一さん(63)は「国の支援がなければ何も進まず、漁業から人が離れていく」と不安を口にした。 農業、水産業の各団体代表は新首相の強いリーダーシップを切望した。 宮城県漁協の菊地伸悦会長は、新首相を「地に足がしっかりついている印象だ」と評価する一方で、「第3次補正予算案を早く通してほしい。予算成立が遅れるほど、漁業者が立ち直るのにも時間がかかる」と指導力の発揮を促した。 宮城県農協中央会の菅原章夫会長は「復興はスピード感が大事。農地再生のため、がれきの撤去を急いでほしい」と農家の悲鳴を代弁。「現場の目線で政治をやってほしい」とくぎを刺した。
2011年08月31日水曜日
|
|