菅首相が朝鮮高校に高校無償化を適用する指示を置き土産にして去った。
国連人種差別撤回委員会が勧告しているように、適用除外そのものが反人権的な差別措置であり、まともになったということである。
しかるに、それに筋違いのいちゃもんをつけるグループがいる。
拉致被害者家族会がそれで、かねてから同会との癒着が指摘されている産経新聞によると、家族会代表の飯塚繁雄は「北朝鮮に制裁している中で国費で朝鮮学校を支援することになれば、日本は折れてきたと北朝鮮に受け止められかねない」と非難し、家族会は29日、審査再開に抗議する声明を出した。
「江戸の敵を長崎で」との言葉があるが、家族会はまさにそれで、北朝鮮への腹いせに拉致とは何の関係もない朝鮮学校を迫害する常軌を逸した思考方式と言わねばならない。
産経は「朝鮮学校の教育内容が反日的」といちゃもんをつけるが、国際常識に欠けているのではないか。
同じことを中国、韓国などの日本人学校に適用すれば、A級戦犯を祀る靖国を批判せず、過去のアジア侵略の歴史を正しく教えない教科書は使えなくなり、産経系列の「つくる会」の教科書は論外となる。
それもわからない産経の独りよがりの論調は、日本と周辺国との摩擦をいたずらに拡大し、子供たちまで巻き込む、百害あって一利なきものである。
そもそも拉致問題をこじらせたうえで、安明進・元北朝鮮工作員の捏造情報を垂れ流してきた産経らの責任はきわめて大きい。
『証言北ビジネス裏外交』などでも指摘したように、安元工作員は実は韓国情報機関員であり、日朝離間を策する諜報活動に日本側がうまく乗せられたことが拉致問題をいたずらに複雑化し、解決を妨げてきた。
家族会も産経もそうした反省の上に立って、理性と謙虚さを取り戻すべきであり、それが拉致問題を真に解決する道につながる。
さらにもう一つ。産経は「朝鮮学校問題に詳しい李英和(リヨンファ)関西大教授は『北朝鮮は砲撃事件で韓国が求める謝罪もしておらず、何ら状況が変わったわけではない・・・』と指摘する」と紹介するが、李なる人物も安工作員と一緒になって捏造情報を撒き散らしてきた問題人物で、ある種の工作員とも言える。
福島原発事故を引き起こした遠因は自民党政治家、経産省官僚、東電役員、メデイアが一体となって流布させた「原発安全神話」にあるが、拉致問題にもその種の馴れ合い意識がすくっている。
それを打破しないと、拉致問題解決どころか、この国は排外主義が蔓延する特殊な国になってしまいかねない。
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