4月26日に、「私は大腸癌が腹膜転移したステージ4大腸癌患者で、これからの事を考えると明るい材料は何一つありません。FewMoreMonthsさんは、大腸癌から肺転移、骨転移、脳転移となり、抗癌剤も使い切った状態で、結構厳しい状態とご自身もいわれていますね。しかし、まるで自分という存在を超越し、冷静に、これまでご自身が行ってきた研究の将来像を慮っておられます。私は正直、今後の事も恐れるばかりで、中々考えられません。その前向きな考え、行動は、一体どういう心の持ち方をしたらできるのか、ご教示頂けませんでしょうか。失礼を承知の上、お頼み申し上げます」とのコメントをいただきました。 ステージ4大腸癌患者さん。Aさんと呼ばせてください。Aさん、毎日さぞかしおつらいことと存じます。同じ境遇として共感します。4月26日に上のようなコメントをわがブログにいただき、精神状態がいつ崩壊するかを心配している者としてとても答える資格はないな、と悩んでいました。 しかし、自分の精神状態を記録するのも一興かなと思い、まったく個人的な精神の葛藤を少しずつ書くのにいい機会を頂いたと考えるようになりました。 それでは、今日の分をはじめます。 私ももちろん「今後の事も恐れるばかり」の時期があり、今も無論あります。この「恐れ」に自分なりの対処することに必死になって努力しています。 まず、根底にある考えは、「恥ずかしい死に方をしたくない」が出発点でした。 弱い人間ですから、やることは簡単です(難しいですが)。 ①「恐れ」の考えを徹底的に避ける。ちょっとでも恐れが浮かんだら他の考えに強制的に変える。 ②「自己の死」の考えが浮かんだら他の考えに強制的に変える。死は自分だけに来るのではない。すべての人間にくる。年齢にもよるが、死の訪れは、高々10~20年の差だ。その間の世界がどうしても生きて見なければならない価値があるとは思わない。 ③自分が「がん」になった理由はすべて自分にある(私の場合は)。自分以外を決して恨まない。 ④まだできなくて困っていることが一つ。妻につい愚痴を言ってしまい、彼女を精神的に追い詰めてしまう。これを克服しなければ。 以上です。あとは、各項目について具体的に何をするか、です。実は私にとってこれらの具体的行動は修行の一種です(ちょっと非科学的臭いがしますが)。 人によってやるべきことはまったく違うと思います。後日から細々と書きたいのは、私の個人的アクションです。ご参考になるかどうか。 今日は定例のセツキシマブ抗体薬の投与日です。4月9日に退院後、疲れがひどく体力の回復がほとんどありません。しかし、がんとの闘争を休むわけにもいかず、病院に出かけました。採血の後、主治医との面談。 主治医から「血小板の値が低すぎます。今日は休止しましょう。」とのお言葉でした。何か大変残念ですが、一面ほっとする複雑な気持ちで家に戻りました。5月1日に再挑戦ですが、血小板が回復しているかどうか。 家に帰ると、ナニワイバラがすでに数10個咲いています。その横にはコデマリが満開。下のほうを見るとヒメウツギがひっそりと咲いています。あるひとつの生命が縮んでいくとき、爆発的に拡張していく生命を見ることができるのはすばらしいことです。 これからしばらくバラの季節が続きますね。 がんに戻ります。腫瘍マーカーの値をちょっと書いてみます。セツキシマブは2月26日に開始しました。 腫瘍マーカー CEA CA19/9 2月21日 479.9 274.8 3月24日 794.2 390.6 3月27日 631.8 330.4 4月28日 779.7 393.1 途中散々トラブルや点滴キャンセルがあり、値自体も目を覆うばかりにひどいですが、セツキシマブはマーカーの上昇を止めているようです!私は元科学者としていつもオプティミストですので、ちょっと喜んでいます。 抗がん剤は、セツキシマブでオプションがいよいよ切れます。 今朝知人の先生から、「ただし、闘い続けることも選択肢ではありますが、無理をしないことももうひとつの選択肢です。最後はご本人のお考えが大切と思います。」とのメールをいただきました。専門家が見てもこういう意見が出る状態かな、と確認できたところです。 別の知人が「免疫療法」を推薦してくれました。免疫療法は最近画期的に進歩していますね。がんに特異なたんぱく質の断片ペプチドを抗原として同定し、それをやっつける抗体(樹状細胞?まだ勉強していない)を増殖して親のがん細胞をやっつけようという戦略のようです。某専門家にお話をお伺いしたことがありますが、ペプチドワクチン療法の効果は抗体薬と同等と見受けました。 主治医と今日相談したのですが、ペプチドワクチン療法に関する紹介状を書いていただけるということですので、来週あたりからアクションを起こそうと思っています。 しかし、こうなってくると、生きがいとなっているアルバイトなどを整理する必要が出てくるようです。これは寂しい。 (坂川の土手。4月20日撮影。夕暮れ時。黄色の花はちらほら混じっているナノハナ。) (クローズアップ。2種類の雑草?それとも雌雄異株の株?) 今日は寒い日でしたね。土曜日ですので閑話休題。我が家の庭の草ではなく、散歩道の草のお話です。 今頃、よく散歩する坂川の土手の一部は大きな雑草に覆われています。30年来の散歩道ですが、いやな植物だと思いながらその名前を調べることはありませんでした。冬はまったく枯れてその存在はわかりませんが、春になり、恐ろしい勢いで成長してきます。そして、一大勢力として一面を覆ってしまいます。(上の坂川の土手の写真を見てください。) 先日この植物と対面し、この名前も覚えるべきだと思いました。 しかし、雑草を調べるのは大変ですね。ものすごい種類がありますし、科や属を知りませんので。インターネットで、川の土手、雑草、春、その他キーワードで見つけようとするのですが、ほとんどの皆さんは、珍しくきれいな花の咲く雑草に興味があるらしく、文字通りきれいさも何もない雑草の記述を見つけるのには苦労しました。 図鑑では、牧野日本植物図鑑(学生版)をたまたま持っていたので、それと比較してみました。どうやら2種類に絞られるかな、というところまできました。下の表がそれです。 (クリックすると表はきれいになります。) 牧野図鑑の説明を書いて見ましょう。 アメリカアリタソウ(アカザ科) 熱帯アメリカ原産の1年草。まれに野生化する。包葉はごく小さいかあるいはない。葉のきょ歯は深く、特に下方の葉は浅裂状に切れ込む。茎、葉ともにほとんど無毛で、葉面はあまりしわにならない。 スイバ(タデ科) 雌雄異株の多年草。茎は直立して高さ50~80cm、細長く稜線があり、紅紫色をおびる。根生葉は長い柄があり群がって生え、茎葉は互生で短い柄がある。茎と葉には酸味がある。春から初夏に茎の先が分枝して円錐花序を出し、淡緑色あるいは緑紫色の花を花軸の周りに多数輪生する。スカンポとも呼ぶ。 毒だと困るので葉や茎をなめませんでした。上の2番目のクローズアップ写真を見てください。円錐花序を持った植物と大きな葉の草がありますね。この2種類は、雌雄異株のスカンポと思われませんか?またアメリカアリタソウとスカンポの花期はちょっと違います(上表)。 今のところスカンポではないかとほとんど確信しています。アメリカアリタソウとスカンポの種子はちょっと違いがあるようで、秋になったら妻に調べてもらうことにします。 しかし、坂川の土手はすごい速さで変化しています。一昨日行ってみたら、イネ科の雑草がこの雑草を飲みつくそうとしています。時間的に、卓越した種類を変えながら植物の多様性を確保しているようです。 (iPS細胞研究に対するこれまでの支援額および投入予定額。) 昨日今日と都心に出かけます。今日も天気がちょっと悪いのですが、ビルにこもるのでちょうど諦めがつきます。でも一雨ひとあめ緑もきれいになり、春の雨のよさを始めて実感する今日この頃です。わが庭のナニワイバラ数輪咲き始めました。今週はめちゃめちゃ回りが真っ白になるほど咲くと思います。あと、コデマリが気が狂ったように咲き始めました。すごい。 さて、また科学技術予算のお話です。 昨年、山中教授がiPS細胞を人の皮膚細胞から作ったということで大きな話題になりました。福田首相の指示があり、総合科学技術会議にiPS細胞研究WGが作られ、鋭意議論が行われています。 久しぶりのグッドニュースということで、政府は大変な熱の入れようです。研究支援額は上の表をご覧ください。平成20~24年度で約100億円、平成20年度だけで約22億円です。 こういうお金の額はエイヤット決めてしまうものですが、全国的に見て、何人くらいの方がiPS細胞関係の研究に参入するのでしょうか。興味があります。どんどんこの新しい領域にチャレンジして欲しいと切に望みます。 科学研究というのは、研究予算がちょっと欠乏しているくらいが成果を出す適切な環境です。お金がないと仕方なく頭を使いますから(失礼!) またこれとは別にWPI(世界トップレベル研究拠点プログラム)関係で、平成20~24年度で約70億円が、人件費等の研究環境整備に投入されます。 WPIは研究拠点整備ですので、競争的資金ではありません。上の支援研究費総額は競争的資金のはずですが、今ひとつその審査等に透明性が見られませんね。ちょっと注目していきたいと思います。 (科学技術政策の重点、(4)。クリックして大きくしてください。) 今日はよい天気ですね。久しぶりに東大の柏キャンパス内にあるユニバーシティ・グリーンを散歩しました。小さな緑地ですが新緑が美しく生命力を少しもらいました。イボタノキはつぼみがたくさんついています。普通のサクラは既に葉桜ですが、これからウワミズザクラやイヌザクラそれにカマツカなどが咲きます。楽しみです。まだ体力が戻らず足がふらふらしますが、娘がたまたま来てつっかえ棒になってくれました。 それにしても、柏キャンパスを立ち上げたころに比べると、敷地内もだいぶ落ち着きが出て、アカデミックな雰囲気がちょっと出てきました。うれしいことです。 さて本題に入りましょう。 総合科学技術会議の資料には、科学技術政策の具体的な重点施策がいくつか選ばれています。 上の図を見てください。 まず、「基礎研究の推進」です。科学研究費補助金1932億円のみが計上されています。基礎研究に該当するのが科研費のみでしょうか。第3期科学技術基本計画を見ると、基礎研究の推進に割かれているのはたったの半ページです。基礎研究はボトムアップということで、なかなか具体的なことをかけないこともあります。しかし、科学技術の根幹にあるのは、研究者の重要な発想に基づくボトムアップ的な基礎研究です。このような研究からブレークスルーが生まれるわけです。第4期科学技術基本計画にはもっともっと基礎研究に関する記述を増やさなければなりません。 アメリカは基礎研究を今後さらに推進しようとしています。2008年度会計は議会の調整が下手で基礎研究に逆風が吹きましたが、それでもその伸びは日本のそれの数倍です! 次の「戦略重点科学技術(国家基幹技術など)等の多様な研究開発の推進」です。昨年の研究成果を取り上げて「iPS研究の推進、iPS細胞研究開発及び再生医療関係研究費」62億円となっています。iPS細胞研究関係は、競争的資金で20億円強、後は世界トップ拠点への経費です。世界トップ拠点経費がここに入っているかどうか定かでありません。 私が嫌いな項目はスパコン145億円、自由電子レーザー110億円などの国家基幹技術関係予算です。予算額自体の大きさに注目してください。このほとんどは新規増額で、他の経費を節減してここにまわしています。 私がなぜこの計画が嫌いかというと、事前の評価がなっていなかったことです。私は自由電子レーザー関係を横で見る立場に昔あり、それを推進している研究者をよく知っています。彼らは能力も高く大きな努力を払ってやっていて、成功を祈らずに入られません。自由電子レーザーはアメリカSLAC研究所とドイツDESY研究所が進めています。それを推進しているトップの皆さんも私の友人ですので、研究計画もよく知っています。 アメリカとドイツの計画では、長年自由電子レーザーのための基礎研究が行われてきました。その実績に立って実機計画が認められてきたのです。当然のことですね。 日本の計画に一般的な問題があることはすでに時々触れています。2月28日から3月4日までのブログでGXロケット開発も問題点を指摘しました。「基礎研究によるノウハウの蓄積なしに実機政策に突き進んだ」が、いくつもある大きな問題点のひとつでした。まさに同じ間違いを自由電子レーザー計画がはらんでいるのです。 ①基礎研究のための小型自由電子レーザー(プロトタイプ)を担当者は製作していたが、その完成を待たずに実機製作が承認された。 ②そもそも本計画を審議する部会がなぜ実機製作のゴ-サインを出したのかまったく理解に苦しむ。 ③専門家による秘密の評価が文科省で行われきわめて厳しい評価報告が出された。文科省はその報告書を一切利用しなかった。(この文書を見ましたがここで公表できません。) ④加速器専門研究者が不足していたので、某加速器専門機関に研究者を出すよう要請した。当該機関は進行中の計画と独自の将来計画に人員が必要で自由電子レーザーに組織的に関与できないと答えた。当時の文科省担当審議官は、それでは機関の予算を切るとまで恫喝をかけたが、その話をジャーナリズムに公表するぞとの逆恫喝を受けて引っ込んだと、聞いたことがある。 部外者はこういうことが役所で行われていることをご存じないでしょう。科学技術研究は、期待されるまた予想外の研究成果を目指し、またあくまでもその実施可能性に基づいて遂行し、よい成果を出すことがもっとも大切なことです。 再度強調しますが、第三期科学技術基本計画のキーワードは「ものからヒトへ」です!これを絶対に忘れてはいけません。 ▲ by fewmoremonths | 2008-04-23 14:32
(科学技術政策の重点、(1)~(3)。クリックして大きくしてください。) 総合科学技術会議の資料には、科学技術政策の具体的な重点施策がいくつか選ばれています。(今までの施策はカテゴリー「科学政策」を参照してください。) 上の図を見てください。 まず、「未来を担う若手研究者の育成」です。これには誰も異存がないと思います。第3期科学技術基本計画の最も重要な理念は、「ものからヒトへ」です。中でも若手研究者の育成はその柱となるべきです。 平成20年度経費として計上されているのは、大学が応募して獲得を目指すグローバルCOEプログラム340億円、大学院生やポスドクを支援する特別研究員事業として158億円となっています。何かすごく増えたように書いてありますが、昨年度並みの手当てでしかありません。 大学院生やポスドクの皆さんにとって死活的に重要な項目です。ただ、総合科学技術会議はポスドクへの支援をこれ以上伸ばさない方針を持っていることに注意すべきです。 次が、「科学技術で地球規模の問題を解決」です。64億円の経費ですから総科学技術予算の中では微々たる額です。この項目はむしろ科学技術外交のための経費で、洞爺湖サミットをにらんだ経費です。これは急遽出てきた項目です。 気候変動などの地球環境への投資は、エネルギー安全保障と切り離せない形で、今後最も重要な国の施策になるでしょう。この施策の重要性は、私にまったく異存はありません。 3番目が、「科学技術で地域に活力と輝きを」で、752億円が措置されています。イノベーションによる産業の振興が眼目です。産業を興すのは民間がやるべきことですが、そのシーズとなるイノベーションを国が支援しようということです。(まさに、ここに博士レベルの知識を持った人材が必要なのです。ここが産業界はまったく理解できていない。) この地域活性化策は「科学技術予算」に入るべき項目なのでしょうか。産業育成ですから、本来は経産省独自の予算を使うべきでしょう。この件で文科省がやるべきことは、地方大学の活性と人材育成、地方産業界との共同関係の構築です。 科学技術予算の中に、あまり科学技術と関係のない事項まで入れ込み、いかにも科学技術予算が増えているかのような誤解を与えている節があります。総合科学技術会議常勤議員は、このあたりを徹底的に洗い出すべきです。 またまた閑話休題です。 昨日、佐々木閑先生の朝日新聞エッセイ「日々是修行」を久しぶりに読み、その内容を紹介しました。関連した内容は2月19日のブログにも出ています。 気楽にチューリップの写真をご覧になって、「多世界宇宙論」をイメージしていただけたら、と思います。 2月9日に、「多宇宙論では、たとえ一般相対性理論や素粒子理論の基本法則が同じであっても(多宇宙論自体が一般相対性理論と素粒子理論を使って導出された)、その中にある基本的パラメータは自由な値をとることが出来ます。そのため、ほとんどの宇宙はビッグバン後直ちにつぶれてしまうでしょう。我々の宇宙の特殊性は何なのか、というのが議論されてきました。「人間原理、Anthropic Principle」に逃げ込むというのが現在の考えです。つまり、我々が生存できるちょうど適当なパラメータを持った宇宙が我々の宇宙である、ということです。」と書きました。 われわれが住んでいる宇宙は、10の100乗個以上の可能性がある宇宙の中でたった一つのものだ。たまたまそこにわれわれの生命を育むちょうどよいパラメータが存在した、われわれは幸いなるかな、と言うのが人間原理です。 異なった宇宙と情報を交換することはできないので(現在は。下手にできるようになると、両方の宇宙は相互の反応で崩壊してしまう。)、この議論は形而上学・神学議論となんら変わりません。しかし無限にイメージを膨らますことはお遊びとしてよいのではないでしょうか。 上の写真は、我が家のチューリップの写真です。上向きに時間が走っているとします。チューリップのつぼみが膨らみ始めた場所が宇宙のビッグバンです。つぼみが咲かずにしぼんでしまうということは、残念ながら宇宙がつぶれたことを示します。咲き始めた宇宙は、めでたくわれわれがすむことのできる世界です。この写真では可住世界が多すぎますが花のイメージですから。可住世界は、先ほど言いましたように、10の100乗個以上あるうちのひとつです。 (昨年春友人に頂いたコチョウランが越年して数日前開花。どうもありがとう。4月19日撮影。クリックすると大きくなります。) 閑話休題です。 昨日、一昨日と2日連続して都心に行ったらさすがに疲れてしまい、今日午前中はずっとベッドの中でした。よく散歩する坂川に出かけたかったのですが、今日も天気が悪いので、家にいてゆっくり休むことにします。 コチョウランですが、年を越してめでたく咲きました。よかった、よかった。10個以上咲くようなので楽しみです。友人のTさん、ありがとう。 さて、入院などトラブル続きだったので、新聞を見る余裕もなく、今日4月17日朝日新聞夕刊に出た佐々木閑先生の記事を久しぶりに読み、いつもながら学ぶところがありました。 簡単に紹介します。 「この世界は、時々刻々と分裂を繰り返していて、あなた自身も次々と分裂している。今ここにいるあなたは、そういった平行世界の中に大勢いるあなたの中の一人にすぎない。他の世界には別のあなたが存在しているのだ」 「この説は、れっきとした物理学の理論である。『多世界解釈』という。正しい理屈と、精密な計算の結果得られる、正当な理論であって、多くの科学者が認めている(私も支持者だ)。」 「釈迦は「合理的に考えよ」と言ったが、実践するのは難しい。だからこそ、そこに、修行という、独自の精神鍛錬が必要となるのである。」 昨日のブログで、「4月7日の朝日新聞に載った記事をもう一度読み返す。表題は、クロストーク:柄谷行人さんに分子生物学者福岡伸一さんが聞く:科学者の課題は何ですか、「未来の他者」との対話が必要、温暖化論議の陰に原発推進論」をもう一度読み返した、と書きました。この佐々木先生のエッセイに関して、柄谷、福岡両氏がどうレスポンスするのか、ぜひ聞きたいと思いました。(朝日新聞さん、聞いてくれませんか)。 しかし、佐々木先生は、途方もない仏教学者ですね。私も一応宇宙物理学をかじっていますが、多世界宇宙論は勉強していないので、佐々木先生とお話しすることもできません。恥ずかしい限りです。 恥の重ねになりますが、1,2コメントしたいと思います。 ①上に「多くの科学者が認めている(私も支持者だ)」とありますが、『認めている』とは、実際科学者が何を認めていると言おうとしているのか。 ②「合理的」と書かれているが、私にとってむしろ「論理的」というほうがしっくりする。多世界宇宙論は論理的に誤謬がない理論だからです。まあ、同じことかもしれませんが。 ③論理的に整合の取れた理論構造は、天才の頭脳の中で無限に作ることができます。しかし、その理論を自然が採用しているかどうかは、まったく別問題です。 ④そのため、自然がどの理論を実際に採用しているのかを観察等で調べることは、理論構築と同じかそれ以上に重要な科学作業だと考えているのです。 (アカシデ若葉の成長力を見よ。4月15日撮影。) 閑話休題です。 ひどい雨です。天気が不順ですが、気温は案外高めです。植物には最適な天気です。今日も東京へ向かっています。雨なので道路は大変混んでいます。 昨日久しぶりに東京の仕事場に出かけました。ちょっと無理くさかったのですが、幸い短時間でたどり着き一安心しました。違った都会の景色を見るのも元気の糧になります。 仕事場では、大変ご迷惑をかけているにもかかわらず、皆さん何事もなかったように迎えてくれました。感謝感激です。 もともと人付き合いが苦手なので科学を職業にしました。管理職なぞやらされると否応なく対人相手が最も重要な仕事となり気苦労の多い日が続きました。 致死の病にかかると考えも変わりますね。ヒトを相手することは、素粒子という無機体やものを言わない植物を相手するのと同じくらい楽しく興味深くなりました。(失礼な発言をどうぞお許しください!)今頃気がついても手遅れですが。 今日は、2つ会議に出ます。久しぶりに皆さんと会えることが楽しみです。 ちょっと昔の記事ですか、4月7日の朝日新聞に載った記事をもう一度読み返しています。 表題は、 クロストーク 柄谷行人さんに分子生物学者福岡伸一さんが聞く 科学者の課題は何ですか 「未来の他者」との対話が必要 温暖化論議の陰に原発推進論 このトークは、当たり前のことが多く自明ですが、ペシミスティックなところが気になります。科学は常にオプティミスティックでなければなりません。私見ですが、ペシミスティックな態度は、理解できていない科学を対話や報告で無理して使おうとするときに起きるようです。自信のなさの表れですね。 ヒトの頭脳は、進化し続ける科学を理解できなくなりつつある、いや、ほとんどの人たちはすでにそうなっているかもしれない、というニュアンスが臭ってきます。このことは後日もう少し考えて書いてみたいと思います。 (科学技術関係予算案の重点化に伴う大項目。総合科学技術会議より。クリックして大きくしてください。) 大学等の基盤的経費、科研費等の基礎研究 1兆4720億円 (△134億円、△0.91%) 重点推進等8分野 1兆7465億円 (+467億円、+2.7%) 人材育成、理解増進、産学官連携、知財、地域イノベーション、等 3523億円 (+262億円、+7.4%) です。大学等という項目が基礎研究(すべてではない)に当たります。基礎研究を0.91%減らして産業界に貢献するイノベーション等を2.7%増やしています。人材育成等は7.4%の伸びと大きいのですが、絶対学は他の大項目の4分の1程度です。 いつも思うのですが、この大項目には違和感があります。私学助成、国大運交金は、ほとんどが教育に関する経費に使われているのが現状です。それを科学技術としてくくるのはおかしいですね。この項目には、科研費、そして、グローバルCOE等、いわゆる「拠点形成等補助金予算」が入るべきです。 科研費 1932億円 (+19億円、+1%) 研究拠点形成等 430億円 (+4.6億円、+1.1%) 世界トップ拠点 71億円 (+36億円) 合計 2433億円 となります。研究拠点形成等の半分以上は教育用ですので注意が必要です。また、この中の一部の経費は、大項目の人材育成等に該当します。細かいことを言っても切りがありませんから、このくらいにします。 該当するアメリカの基礎研究経費(2009年度政府提案)は2.9兆円でした(¥100/$)。日本と比較して10倍以上の開きがあります。 総合科学技術会議の基本計画推進専門調査会で一部の委員が口を酸っぱくして大学のサポートをしても、肝心の大学がうんともすんとも言わないので、大学無視の議論がそのまま通ってしまいます。 また、学術学会は、政治的なものを言わないのが偉いと思っているらしく、学術行政にものを言ったのを聞いたことがありません。 < 前のページ次のページ >
|