ある大腸がんの報告-5
(エヴリン。ちょっとグロテスクですが美しいバラです。5月15日撮影。)

抗がん剤治療に関する患者からのコメント
 ある抗がん剤投与を開始したとき、その投与をいつ終了するかは、もう少し研究が必要と思われる。投与終了に使われる指標として、薬の効果がなくなったときを、腫瘍サイズの増大(CTデータより)、および腫瘍マーカーの増大を過去のデータと比較して中止時期を判断した。
 本大腸がんに関しては、化学療法を行っている期間に、腫瘍サイズの時間変化はかなりゆっくりであり、ある抗がん剤をもう少し長い期間(どの程度の長さかは実際に実行して決めなければならないが)使用することができたかな、という印象を思った。
 抗がん剤投与以降、マーカー値が正常値まで下がることはなかった。種々の理由(副作用の日常生活への影響等)により抗がん剤投与を継続的に行うことができなかったことが大きな理由と思われる。
 また、抗がん剤の使用を中止する別の指標として副作用のひどさを使う。本大腸がんでは、FORFIRIおよびTS-1の中止時にこの指標を使った。

標準治療と休眠療法へのコメント
 これらの治療に関しては、高橋豊著「がん休眠療法」(参考書A)及び高橋豊、岡本正人著「がんを狙い撃つ「樹状細胞療法」」(参考書B)を参照のこと。
 化学療法は、いわゆる標準治療では、毎回投与する抗がん剤の量は、第二相試験で「効果」を基準として決められる。基準量は、単位体表面積あたりで表されていて、それに患者の体表面積をかけることにより求めることができる。基準量は強い副作用を引き起こすときがある(参考書Aには何%の患者に強すぎるかの数値は示されていない)。
 休眠療法では、抗がん剤の判定に使われている「効果」がベストな指標かどうかを考えようというものである。新たな指標として「骨髄抑制(白血球、血小板の減少)」を使うことにより、基準量は、患者に依存することになるが、標準治療と比較するとその量は少なくなることが多く、多くの患者が適切な化学療法を受けることができる、つまり、延命期間の延長を図ることができる、と考えるものである。
 本大腸がんの化学療法においては、標準治療における抗がん剤の基準量が使われた。ただし、TS-1においては副作用(視力への影響等)が強く出たので、約20%程度標準治療よりも低めの量が使われた。本大腸がんにおいては、標準治療による薬の基準量が多すぎることはほとんどなかった。
 問題は、休眠療法の場合、抗がん剤の量をさらに減らせ、さらに長期に化学療法を継続できたかどうか、の判定になるが、無論、本大腸がんに関して、ここでその答えを出すことはできない。
 現在休眠療法の第三相試験が行われていると聞いているので、標準値量との対比の結果が近々得られるものと思われる(参考書Bページ168)。休眠療法は標準治療の変わりに考える療法であって、標準治療が行った後に行う療法と捕らえるべきではない。
 全国の医師がすべて化学療法の深い知識を持っているわけではない。そのとき、恣意的な指標を使って化学療法を行うことはきわめて危険なことである。化学療法をマニュアル化し、それに沿って治療を行うことは事故を防ぐのに重要である。現在の標準療法と比較してよいマニュアルがあるか、そのマニュアルを各病院の医師がある程度簡単にかつ間違いなく行うことができるかどうかである。今後その方向に向けて標準治療のマニュアルを整備していく必要はあると思われる。

by fewmoremonths | 2008-06-18 17:47 | 大腸ガン治療経過


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