(我が家のコデマリ。4月30日撮影。) ゴールデンウイークで「平成20年度科学技術政府予算案」の紹介がまだ終わっていませんでした。後2回で終わりましょう。 福田首相の指示があり、総合科学技術会議にが作られ、鋭意議論が行われていることも紹介し、当WG3月19日の議事録で基礎科学関係に部分を5月1日のブログに紹介しました。私は楽しみましたが。 今日は議事録の続きをお話します。臨床応用分野に関するディスカッションの部分です。 残念ながら、議論が発散してしまい、チンプンカンプン。もちろん私の知識がないためもありますが、WGの非専門家の委員はわかったのでしょうか。大いに疑問です。 私のつかめた文章のみを書いてみます。 •遷移芽細胞からこのiPS細胞を作るのにもっとも頻度が高くて0.5%、一般的には0.1~0.01以下だと言われています。 •細胞治療というときに、ABと書きましたが、幹細胞を移植して、そして置換する。だから、入れた細胞が置換されて、取って代わって再生する。これは骨髄移植だとか臍帯血移植はその例です。しかし、もう1つの再生医療として幹細胞からいろいろな栄養因子、これは薬でもいいわけですが、そういうものが出てきて、そして自己回復する。例えば骨髄細胞移植による血管新生、これは我々の研究も含めてどうも幹細胞で置き替えているのではなくて、そこから出てくる因子によって自己再生しているのではないかと思われます。 •Aのタイプの自己再生が期待できる治療というのはどれぐらいあるかと考えると、あまり多くないのではないかと私は思います。骨髄移植が成功例ですが、そのほかにはおそらく一部の糖尿病とかパーキンソン病ぐらいで、脳梗塞や脊髄損傷の場合に全部入れた細胞に取って代わるということは期待しにくいのではないか。そういう意味では実現性の高い病気を先に考えていかなけれはいけない。 •分化誘導した細胞による治療ということで、最近、赤血球を作れます。血小板を入れるという話がありますが、このとき欠落しているのは安全面、コスト面からのハードルが高いということです。すなわち培養するときにまだ異種の細胞とかタンパクを使っています。これはおそらく実際にその赤血球を使おうとするときに問題になります。化学組成の分かった培地を必要としますが、これは極めて通常の培地の100倍以上高価であろうと考えると、実現可能かどうかという問題になります。 •厚生労働省のお話があると思いますが、医療特区のような考え方でコンパートメントを作って、その中で了解を得ながらやっていくというのは非常にいい考え方だなと思います。 •一番不得意なところで日本は細胞治療、細胞治療とやっているような気がしないでもありません。技術の共有・権利化・戦略的活用もアメリカなどに比べれば弱い。不得意だからやらないというのではなくて、そこは頑張らなければいけないのですが、そういう意味でもどこに力を入れて、どこでリードするかというのは戦略的に考えられてもいいのではないかと思いました。 誰でも持つ素朴な質問・期待は、 •まず、iPS細胞でどんな病気を治そうとしたいのか、可能性のある具体例をなるべく多く挙げて欲しい。 •各疾病に取り組むことを考えるのは時期が早すぎることはよくわかったが、取り組みの戦略はいつごろの時期に立てることができるのか。 •または、iPS細胞の治療への応用は民間企業が行うべきか。無論、大学等との共同研究は本質的に重要になろうが。 •この議事録を読むと、この時期、患者さんに過度の期待を抱かせることはいかがなものか。 ちょっと長くなってしまいました。議事録の最後のほうは学者の放談会になって収拾がつかなくなっていますが、本庶座長のご意見が面白いです。ご参考までに。 •(本庶座長)これまで革新的な医療というのはほとんどギャンブルで進んできたんですよ。例えば骨髄移植など、うまくいくとは思っていなかったことをやったわけです。それでうまくいくようになってきた。こういうことはいっぱいありまして、先ほど言ったワクチンもあんなものをやったら天然痘になるのではないか。実際にある確率でなるんですけれども。それを乗り越えてきたのが医療でありまして、これが全くゼロのパーフェクトなものにならないと使えないという形になると、これは全く進まない。そこはある一定のバランスで考えられる範囲でのリスクテイクをする、こういうことがない限り医療の進歩はない。 ・・・・・・・・ •(本庶座長)議論があまりにも細かいことになるけれども、今のES細胞の規制の状況を考えたらなぜES細胞にこだわる必要があるのか、僕には理解できなくて、iPS細胞のほうがはるかに使いやすいし、企業一般にとっては大きなメリットがあると私は思います。 それいけドンドンですな。 by fewmoremonths | 2008-05-12 10:49 | 科学政策
|