(科学技術政策の重点、(4)。クリックして大きくしてください。) 今日はよい天気ですね。久しぶりに東大の柏キャンパス内にあるユニバーシティ・グリーンを散歩しました。小さな緑地ですが新緑が美しく生命力を少しもらいました。イボタノキはつぼみがたくさんついています。普通のサクラは既に葉桜ですが、これからウワミズザクラやイヌザクラそれにカマツカなどが咲きます。楽しみです。まだ体力が戻らず足がふらふらしますが、娘がたまたま来てつっかえ棒になってくれました。 それにしても、柏キャンパスを立ち上げたころに比べると、敷地内もだいぶ落ち着きが出て、アカデミックな雰囲気がちょっと出てきました。うれしいことです。 さて本題に入りましょう。 総合科学技術会議の資料には、科学技術政策の具体的な重点施策がいくつか選ばれています。 上の図を見てください。 まず、「基礎研究の推進」です。科学研究費補助金1932億円のみが計上されています。基礎研究に該当するのが科研費のみでしょうか。第3期科学技術基本計画を見ると、基礎研究の推進に割かれているのはたったの半ページです。基礎研究はボトムアップということで、なかなか具体的なことをかけないこともあります。しかし、科学技術の根幹にあるのは、研究者の重要な発想に基づくボトムアップ的な基礎研究です。このような研究からブレークスルーが生まれるわけです。第4期科学技術基本計画にはもっともっと基礎研究に関する記述を増やさなければなりません。 アメリカは基礎研究を今後さらに推進しようとしています。2008年度会計は議会の調整が下手で基礎研究に逆風が吹きましたが、それでもその伸びは日本のそれの数倍です! 次の「戦略重点科学技術(国家基幹技術など)等の多様な研究開発の推進」です。昨年の研究成果を取り上げて「iPS研究の推進、iPS細胞研究開発及び再生医療関係研究費」62億円となっています。iPS細胞研究関係は、競争的資金で20億円強、後は世界トップ拠点への経費です。世界トップ拠点経費がここに入っているかどうか定かでありません。 私が嫌いな項目はスパコン145億円、自由電子レーザー110億円などの国家基幹技術関係予算です。予算額自体の大きさに注目してください。このほとんどは新規増額で、他の経費を節減してここにまわしています。 私がなぜこの計画が嫌いかというと、事前の評価がなっていなかったことです。私は自由電子レーザー関係を横で見る立場に昔あり、それを推進している研究者をよく知っています。彼らは能力も高く大きな努力を払ってやっていて、成功を祈らずに入られません。自由電子レーザーはアメリカSLAC研究所とドイツDESY研究所が進めています。それを推進しているトップの皆さんも私の友人ですので、研究計画もよく知っています。 アメリカとドイツの計画では、長年自由電子レーザーのための基礎研究が行われてきました。その実績に立って実機計画が認められてきたのです。当然のことですね。 日本の計画に一般的な問題があることはすでに時々触れています。2月28日から3月4日までのブログでGXロケット開発も問題点を指摘しました。「基礎研究によるノウハウの蓄積なしに実機政策に突き進んだ」が、いくつもある大きな問題点のひとつでした。まさに同じ間違いを自由電子レーザー計画がはらんでいるのです。 ①基礎研究のための小型自由電子レーザー(プロトタイプ)を担当者は製作していたが、その完成を待たずに実機製作が承認された。 ②そもそも本計画を審議する部会がなぜ実機製作のゴ-サインを出したのかまったく理解に苦しむ。 ③専門家による秘密の評価が文科省で行われきわめて厳しい評価報告が出された。文科省はその報告書を一切利用しなかった。(この文書を見ましたがここで公表できません。) ④加速器専門研究者が不足していたので、某加速器専門機関に研究者を出すよう要請した。当該機関は進行中の計画と独自の将来計画に人員が必要で自由電子レーザーに組織的に関与できないと答えた。当時の文科省担当審議官は、それでは機関の予算を切るとまで恫喝をかけたが、その話をジャーナリズムに公表するぞとの逆恫喝を受けて引っ込んだと、聞いたことがある。 部外者はこういうことが役所で行われていることをご存じないでしょう。科学技術研究は、期待されるまた予想外の研究成果を目指し、またあくまでもその実施可能性に基づいて遂行し、よい成果を出すことがもっとも大切なことです。 再度強調しますが、第三期科学技術基本計画のキーワードは「ものからヒトへ」です!これを絶対に忘れてはいけません。 by fewmoremonths | 2008-04-23 14:32
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