平成20年度科学技術政府予算案の紹介―1、総額とアメリカとの比較

(科学技術関係予算案の総額。総合科学技術会議より。クリックして大きくしてください。)

 アメリカの科学技術政策への積極的投資に関して、科学技術政策局長官ジョーン・マーバーガー氏が議会公聴会で行った積極的発言を紹介し、うらやましく感じました。 

 平成20年度高等教育関係予算はすでに、その1その2、の2回に分けて紹介しました。国立大学の運営費交付金が1.9%減と大幅に削られました。私学助成金は既定どおり1%減でした。残念ながら、それに見合うだけの競争的資金の伸びはありません。大学人にとって最も重要な科学研究費補助金の伸びは1%弱でした。

 この厳しい予算に関して、少なくとも私の耳には、国立大学はクレームも発しませんでした。のんびりしたものです。(大学経営に関して興味のある方は私のブログカテゴリー「教育」をご覧ください。)

 今日から、平成20年度科学技術関係政府予算案を紹介しましょう。

 上の図にあるように、平成20年度予算は、19年度と比べて1.7%増の3兆5708億円となっています。つまり新規増額は607億円ということになります。厳しい財政事情の中、昨年の水準を維持できたのは少し安心します。

(アメリカは、2009会計年度に、エネルギー省科学局、国家科学財団、国立標準技術研究所のみで20%増を目標としている!)

 しかし、この伸びでは、第3期科学技術基本計画に謳った、政府は5年間で総額25兆円を研究開発予算に投資すべし、という記述は達成がまったく不可能です。

 上の図には2点の特徴が書かれています。

「社会還元加速プロジェクト(計166億円)の開始」とあります。新規にこれだけ獲得した、と自慢しているわけです。

「総合科学技術会議が政策誘導し、府省の枠を超え、産学官の連携を図る」とあります。率直に言って総合科学技術会議の指導力は非常に弱く、府省の要求をほとんどそのまま認めているに過ぎません。

 産学官の連携とあります。産はなかなか強いのですが、学が圧倒的にひ弱です。私の嘆き節はすでに上に書きました。

 有識者議員がたった数人では、日本の科学技術の司令塔を担えといってもそれはまったく不可能でしょう。こう言っては申し訳ありませんが、有識者議員の出来ることは、事務方が作った案の微修正を図るのが関の山です。その事務方も、スタッフは経産、文科等からの寄せ集めで、自分の所属する府省の利益代表に過ぎないのです。それも当然で、彼らは2,3年たつと、もとの府省に帰るのですから、下手に高邁な理想で動くと後の出世に差し支えます。

 私見ですが、第4期科学技術基本計画でなすべきことの第1,2は、総合科学技術会議の抜本的改革、学術会議の解体的出直し、でしょう。しかし、大学などから声が上がらないとそのようなことは難しいです。

 アメリカの2009年度政府予算案が発表されました。科学技術関係を紹介します(某機関による文書の一部を引用。)

 総額14.7兆円、前年度比+3%。

 内訳は、
 基礎研究2.9兆円、前年度比3%増。
 応用研究2.7兆円、前年度比4%減。
 開発  8.4兆円、前年度比2%増。
 (ただし、為替レートとして¥100/$をとった。)

 アメリカの研究者は、科学技術予算が全然伸びないと、この世の終わりのようなことを言いますが、それでも前年度比3%の伸びを示しているのです!

 アメリカは、産業の基盤として基礎研究を重視しています。「学」の弱い日本が行っていることとは大違いです。

 日本の科学技術総予算はアメリカの基礎研究予算と同じ程度です。これで、アメリカと競争するのですよ。 

 ちょっと注意しておきますが、アメリカの政府予算案は議会で大幅に修正を受けます。日本の民主党は政局ばかり熱心で科学技術にまったく興味がありません。

by fewmoremonths | 2008-04-16 10:37 | 科学政策


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