(2月26日朝日新聞記事のコピー。クリックすると大きくなります。) 昨日は病院に行ってきました。新薬の第2回投与です。看護士さんやお医者さんたちから、第1回投与以後、熱は出たか、アレルギー反応は出たか、湿疹はどうか、爪は、吐き気は、下痢は、と多くの質問を受け、大変興味を持って頂きました。幸いすべて無しと言ったら、皆さんがっかりしたような顔をしていました。この病院では、治験以外でこの薬を通常の患者に初めて使ったということで、データ提供にも貢献できているようです。今日は薬投与から1日後ですが異常は見えません。ただ、右肩の痛みが抗がん剤のTS-1を止めてから急にひどくなりました。この件については後日報告したいと思います。 さて、今日の話題に入ります。今まで4回にわたってGXロケットのスキャンダルに関して議論してきました。私が目に留めた朝日新聞の記事を上に掲げました。 注目して頂きたいのは、この記事は、紙面の都合上GXロケット開発の困難な事態をかいつまんで紹介したものになっています。事実を的確に貴社の予見を要れずに報道することは大切で、この記事もそういう面から評価できます。 しかし、記者はこの記事の続編をぜひ書くべきだと思います。 よく言われることですが、国が大きな事業を行うとき、いったい誰が責任を持ってやっているのか分からないことがほとんどです。新聞社は責任者不在を非難します。通常非難はそこで終わってしまいます。 責任者不在を非難するだけでは駄目で、失敗がなぜ起きたのかを徹底的に分析し、今後の教訓を引き出すことが大変重要です。新聞社の科学部は、単に科学の内容を記事にするだけでなく、社会に影響を及ぼす科学政策の失敗をもっと徹底的に追及すべきです。 たとえば、宇宙ステーションに打ち上げる「きぼう」の記事が10回にわたって紹介されていましたが、やはり科学政策としての分析がまったくなされておらず、ただ凄いすごいという単なる紹介と礼賛の記事になっていました。 •日本の宇宙開発の中で本当にこの経験がノウハウとなって生き残るのか。 •宇宙空間で行う実験の数は使った経費に見合うのか。記事によれば、「設置が順調に進めば」2010年までに22のテーマを達成する予定という。 •実験の期待される成果は何か。その評価を行う体制はどうなっているのか。新聞は、実験結果が出た時点でその成果を必ず分析すべきである。 •アメリカでは宇宙実験の評価が大変低いという。それと日本の宇宙開発委員会の評価との比較はどうか。 特に、1番目のノウハウの蓄積が可能かどうかはしっかり評価してほしいと思います。 日本人はすでに何人もの宇宙飛行士を養成しました。彼らは宇宙から帰還した後、宇宙飛行と関係のない仕事についていますね。彼らのノウハウはどのように継承されているのでしょうか。ノウハウは、数値データの蓄積も大変重要ですが、本人が得た「暗黙のノウハウ」を継承することが最も重要な点です。このためには、宇宙飛行士は常に現場にとどまり、最新の技術を吸収するとともに、後輩への教育に当たる必要があります。これはかなり大変な仕事であって、非常勤で出来るようなことではないでしょう。 このノウハウの継承の体制がわが国にはないのではないか。新聞社にはこのあたりの突っ込んだ分析もぜひお願いしたいと思います。 もうひとつ、科学記事の欠点は、フォローアップが皆無だという点です。よく、何々の医学的知見が得られた、今後何々の病気に効く薬の開発が期待される、という記事を目にします。しかし、その後本当に薬の開発に進んだのかどうか、フォローアップのニュースを見たことがありません。記者さんたちは、一度取材をすると、別のテーマの取材にかかるために、前の取材のことをすぐ忘れてしまうかも知れません。もしそうなら、この態度は改めるべきです。 ターゲットを絞りやすい「新銀行東京」の問題では、新聞社は石原都知事の責任を追及するに急です。新聞は、GXロケットの失敗に伴う経費は新銀行東京に匹敵することを国民に知らしめるべきです。 by FewMoreMonths | 2008-03-04 09:21 | 科学政策
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