(GXロケットの構造。http://www.galaxy-express.co.jp/aboutGXrocket_final.pdf より引用。) (GX2段LNGロケットの諸元:見直し前・後。 http://www.galaxy-express.co.jp/aboutGXrocket_final.pdf より引用。) GXロケットの続きです。 朝日新聞の記事にある開発費当初の3倍というのは、主にこのLNGを使う2段ロケットの開発製造がまったくうまくいっていないことをさしています。(上のポンチ絵を参考にしてください。) 上に示した表は、GX2段LNGロケットの開発で当初の諸元(この値は最初の値ではなく、いくつかの失敗の後再定義した改定案らしい)を、2006年に見直しを行った諸元と比較したものです。私のような非専門家から見ると、違いが少ないように見えます。 非専門家でも気がつく点を書いてみましょう。 •見直し案には全備質量が書いてない。 •真空中比推力の値が323から316に減少。(ただし、松浦氏のレポートには、「当初予定の345から328に低下することが判明した」とある。つまり、「本当」の比推力の当初値は345だった可能性がある。 •開口比が71から42に減少。 以上の変更が、800kmの極軌道に打ち上げる衛星の重量にどのような影響を与えるか、で評価すべきです。松浦氏の結論は、見直しのパラメータで、計画の2トンの打ち上げが0.7トンになってしまった、というものです。松浦氏の結論は、レポートを読むと比推力の値が328のときの値らしい。そうすると衛星の打ち上げ能力はさらに低下します。 さらに、この見直し案でさえ、技術的に達成可能かどうかおぼつかないのです。 松浦氏は、2002年の開発開始から2007年までに投入された450億円を超える(多分大幅に超えている)開発費で、何一つ完成させることができなかった、新しいLNGエンジンも、複合材料性タンクも完成しなかった、と結論しています。 ようやく朝日新聞記事の紹介ができます。ウィキペディアと朝日新聞の記事を総合して書いてみましょう。 •2002年に開発を開始したときの予算は96億円を予想(ウィキペディア)。 •2006年ころには、開発予算は347億円に上るといわれていた(ウィキペディア)。 •2003年時点での計画では試験機を除く開発費は既に450億円。 •それを民間、経産省、JAXAが3分の1の150億円ずつ負担。 •民間は既に400億円余を投じ、事業後の採算を考えると500億円程度しか出せない。 •JAXAが試験機も含めて700億円以上負担することを求めた。 •費用を抑えても総開発費は1500億円に達する。 ということになります。 昨日の報告も見ながら考えてください。宇宙開発のいい加減さに慄然としませんか。 これは明らかにスキャンダルです。 また紙数がつきました。 by FewMoreMonths | 2008-03-01 16:39 | 科学政策
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