2月16日朝日新聞社説「新指導要領・教師力の育成が必要だ」、論説委員はもっと勉強せよ

(日本の公立学校教員が教科指導以外にやっていること(複数回答)、日教組調べ(再掲)。http://fewmonths.exblog.jp/8104454参照。)

 文科省から小中学校の学習指導要領改定案が2月15日発表されました。ということで本日の朝日新聞には大量の関連記事が載っています。

 佐々木先生の「犀の角」のご紹介は明日に延期して、この社説にちょっとコメントをします。

 2月16日の社説を要約(括弧書き)してみましょう。私のコメントをその下に書いてみます。

 「新指導要領の心は、『学力低下が批判される中で、ゆとり教育などと悠長なことは言っていられない。授業時間を増やすしかない。知識を活用する力が足りないといわれているから、知識の量を増やしつつ、知識を活用できる授業時間をひねり出したい。』」

 まず、学力低下が本当かどうか、朝日新聞は議論すべきです。論説委員はPISAの報告書など読んでいないようですね。
http://fewmonths.exblog.jp/8134820の記事、その前にも10以上の紹介記事を書きました。お時間のある方はお読みください。)日本の15歳の生徒は、テストで数学・読解力・理科の「落ちこぼれ率」が新興国や小国に抜かれただけです。工業国の中では常にトップクラスだ、ということを知らないようです。まず基本であるこの辺をもっと議論してほしいと思います。

 「授業の質は教師の量と質にかかっている。文科省もそうした条件整備が必要だと認めているのに、指導要領を変えただけで、手をこまねいているように見えるのはどうしたことか。」

 問題は教師の仕事の内容を精査することです。上の表を見てください(再掲)。(http://fewmonths.exblog.jp/8104454)日本の教師は、諸外国と比べて教育以外の雑用に追いまくられています。そのため、日本の教師が授業に割いている時間数は、OECD諸国の中で最低レベルです。業務形態として、教師が教育に専念できる体制を築くことが何よりも求められているのです。論説委員はこの点をしっかり勉強して、間違った論点を安易に主張してほしくないと思います。

 「時間数も内容も幅を持たせて現場のくふうに任せたほうがいい。指導要領から逸脱しているなどと文科省が口を挟むことは出来るだけやめてほしい。」

 理解不能な文章ですね。教育が指導要領から逸脱していたら当然指摘すべきでしょう。でなければ指導要領などいらないはずです。この社説の文章はどういう意味だろう??
 
 社説にこのように書くのなら、「愛国心条項」などに無駄な紙面を割かずに、現場が時間数と内容どのように使ったらよいのか、朝日新聞の見識をかけて、具体例を何例か示すべきでしょう。それが読者に指導要領を理解させるベストな方法だと思いますがいかがでしょうか。

 他のページに識者の意見が載っています。本田由紀東大教育学部准教授は、「子供がどうすれば面白く、楽しく、意義を見出して勉強できるかという具体的な提案はない。」と、社説とは反対に具体的提案がないと文句を言っています。論説委員は、同じ紙面にあるのに、この意見を読んでいないのでしょうか。この記事と社説は整合性があるのかどうか、紙面で議論すべきです。

 私は、本田准教授の意見はおかしいと思います。「子供が面白く、楽しく、意義を見出して勉強出来る具体的行動」は、まさに教師が工夫して行うべきもので、指導要領が指導することではないでしょう。もし日本の教師にそれが出来ないというのなら、大学の教官が教育学部で行っている教育に重大な欠陥があるといわざるをえません。まず大学における自分の学生教育を猛反省すべきでしょう。

 昔大学に在籍したものとして、なんだか情けなくなってきました。 

「愛国心・・」  重要でないので省略。

by FewMoreMonths | 2008-02-16 18:20 | 教育


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