(Figure 3.15, Chapter 3, PISA2006 reportを利用して作表。日本字は筆者が挿入。クリックすると大きくなります。) 57カ国、15歳の生徒さんが40万人参加した調査結果を、報告書PISA2006を斜め読みしつつ、何回かに分けてご報告しています。私は、某県の学校教育に関する委員会の委員を引き受けているので、興味深く分析しているところです。 「授業以外、自分で科学を学んでいるか」、「自分で科学を学ぶ、その手段は」というアンケート結果を紹介しました。日本の子どもたちが授業以外で科学に関する情報にアクセスしたり、それから自分で興味のある科学を学ぶ興味と意欲を持っているかという設問に、そうだと答えた子供のパーセンテージを見ると、日本の子供たちは57か国中最下位で、私は危機感を覚えました。 今日は、最後のデータを示します。「30歳になったとき科学に関係した職業についていると思うか」という設問です。どんな職業かは、図のブルーの囲みを見てください(英語)。「ついていると思う」と答えた生徒のパーセンテージを横軸に、縦軸には各国の理科の平均得点を示しています。 図の解像度が悪くて見にくいですが、日本は57か国中、圧倒的なビリに位置しています。アメリカはトップクラス、イタリアやフランスも上位に来ています。ドイツやロシアはちょっと低いですが、日本ほどひどいことはありません。 皆さん、日本の将来に危機感を覚えませんか! すでに世界は「Japan is irrelevant. Japan passing」という意見が定着し、世界の主要プレーヤーから落ちていることはご存知のとおりです。その理由は、今回のPISA2006の分析からも明らかです。 どうすればよいか。まず大人が態度を変えなければなりません。教育と科学の大切さを見直さなければなりません。 教育方法も改善の要ありです。「杉並区立和田中学校の「夜間塾」に賛成-2」の最後に私の意見の一部を書きました。 アメリカの子供たちは科学に大きな希望を抱いています。大人たちも例外ではありません(といっても、議会が作り上げた2008年度会計年度の予算は科学・技術になかなか厳しいものがありましたが)。 インテルの会長クレイグ・バレット氏がサンフランシスコ・クロニクルへ投稿した記事の一部を紹介します。 “The United States stands at a pivotal point in our history. Competition is heating up around the world with millions of industrious, highly educated workers who are willing to compete at salaries far below those paid here. The only way we can hope to compete is with brains and ideas that set us above the competition – and that only comes from investments in education and R&D. Practically everyone who has traveled outside the United States in the last decade has seen this dynamic at work…It may already be too late; but I genuinely think the citizenry of this country wants the United States to compete.” 抄訳すると、 「アメリカは歴史上大変な時期に差し掛かっています。世界では競争が激化しており、何百万人の工業家や高等教育を受けた労働者がアメリカの給与よりずっと低い給料で懸命に働こうとしています。われわれは、頭脳とアイディアによって勝負し、彼らとぶつかり合う以外にありません。つまり、教育および研究・開発に投資をしなければならないのです。アメリカの外に旅した人のほとんどはこのダイナミックな動きを実感したはずです。もう遅すぎるかもしれません。しかし、わが国の人々はアメリカが敢然と戦うことを望んでいると、私は確信しています。」 この文の前には、アメリカ政界に大きな衝撃を与えたロッキードマーチン元会長のノーマン・オーガスティン氏の報告書 (http://www.nap.edu/catalog.php?record_id=11463)に言及しています。 日本の産業界の名だたる方は、なぜ長期的な教育・研究開発を推進するよう政界関係者に訴えないのでしょうか。総合科学技術会基本計画推進専門調査会でも、産業界の委員は、短期的な儲けにつながるイノベーションの話しかしません。嘆かわしい限りです。アメリカ産業人のように、世界を見渡した発言をしてください。 なんだか力が抜けてきましたので、PISA2006の分析の紹介は今回で終了します。お疲れ様でした。 by FewMoreMonths | 2008-02-02 10:31 | 教育
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