(Figure 3.5, Chapter 3, PISA2006 reportを利用して作表。クリックすると大きくなります。) 57カ国、15歳の生徒さんが40万人参加した調査結果を、報告書PISA2006を斜め読みしつつ、何回かに分けてご報告します。私は、某県の学校教育に関する委員会の委員を引き受けているので、興味深く分析しているところです。 第6回目、第7回目に、PISA2006の第3章にある「各国の生徒が理科・科学をどう把握しているか」と「自分にとって科学とは何か」に関する分析結果を紹介しました。 もう一度前回申し上げた事を書きます。テストではなく、生徒が科学をどう捉えているか、という一般的な設問になると、日本の生徒の態度は若干弱気になっていることがわかります。逆にアメリカの生徒たちが科学に大いに積極的になっていることが対照的です。アメリカの科学・技術の強さの一端がここにあるとの思いを強くしました。 今日は、「授業以外、自分で科学を学んでいるか」というアンケート結果を紹介しましょう。 それでは上の表を見てください。8項目の設問は、 A)地震は他よりも頻繁に起きる地域があることを説明せよ。 B)健康関係の新聞報道の基礎となる科学的問題が理解できるか。 C)食品ラベルに書かれている科学情報を説明せよ。 D)環境変化が将来ある生物種にどのような影響があるか予想せよ。 E)家庭ごみの処理に関係した科学問題を同定せよ。 F)病気の治療に果たす抗生物質の役割を述べよ。 G)2つある酸性雨の説明でよいほうを選べ。 H)火星に生物のいる可能性について、新しい事実は君の考えを変えるかどうか述べよ。 です。今日的な、また授業では学べない事柄ですので、自分で興味を持って調べた効果がてきめんに現れる設問になっています。 上のA)~H)の設問に、簡単にまたはちょっとした努力で解答できる生徒のパーセンテージを、例によって成熟した工業大国の、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、日本、ロシアで比較しました。 A)~H)のパーセンテージの和(表のSum)を使って57カ国の順位をつけてみました。1位はタイ、続いてポーランド、ノルウェー、ポルトガル、アメリカ(!)、クロアチア、カナダ、台北、ヨルダン、スロバキア、イギリスと続きます。アメリカとイギリスが、小国や途上国に混じって初めて上位に顔を出してきました。 7カ国の順位を見ると、アメリカとイギリスがトップクラス、日本はダントツの最下位、それも57か国中の最下位なのです。 もし、この設問を大人にしたらどうでしょうか。日本はきっと最下位に来ることでしょう。 アメリカと日本のパーセンテージを見てください。日本の子供たちが科学への興味を失っていることに、愕然とする思いです。もう、懸念という状況ではなく、危機感を持ってしまうのは、私だけではありますまい。 21世紀は知の世紀といわれます。とりわけ、科学・技術の知識が、気候変動への取り組みも含めて、死活的に重要になります。もし、子供たちが科学・技術に興味を持たず背を向けるようになれば、今世紀中に日本は完全に沈没するでしょう。 この状況を改善するためにはどうすればよいのか。もう少しPISA2006の分析結果を見る必要があります。 by FewMoreMonths | 2008-01-24 09:47 | 教育
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