57カ国、15歳の生徒さんが40万人参加した調査結果を、報告書PISA2006を斜め読みしつつ、何回かに分けてご報告します。私は、某県の学校教育に関する委員会の委員を引き受けているので、興味深く分析しているところです。 第6回目に、PISA2006の第3章にある「各国の生徒が理科・科学をどう把握しているか」に関する分析結果を紹介しました。テストに付随したアンケート形式で行われた設問の答えを分析しています。 テストではなく、生徒が科学をどう捉えているか、という一般的な設問になると、日本の生徒の態度は若干弱気になっていることがわかります。逆にアメリカの生徒たちが科学に大いに積極的になっていることが対照的です。前回に言いましたが、アメリカの科学・技術の強さの一端がここにあるとの思いを強くしました。 今日は、「自分にとって科学とは何か」というアンケート結果を紹介しましょう。 それでは上の表を見てください。5項目の設問は、 A)科学は私の身の回りのことを理解するのに役立つ。 B)大人になったらいろいろな仕方で科学を使う。 C)科学のある考えは私が他人とどう関係しているかを知るのに役立つ。 D)卒業してから科学を使う機会が多くなると思う。 E)科学は私にとって大いに関係がある。 です。 上のA)~E)に賛成か、大いに賛成する生徒のパーセンテージを、例によって成熟した工業大国の、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、日本、ロシアで比較したものです。 PISA2006では、アンケート結果に必ずしも順位をつけていません。ここでは、A)~E)のパーセンテージの和(表のSum)を使って57カ国の順位をつけてみました。1位はタイ、続いてコロンビア、メキシコ、ヨルダン、アゼルバイジャン、キルギス、インドネシアと続きます。学力ではトンと上位に顔を出さない途上国の生徒さんが、科学に強い意識を持っていることがわかります。 翻って7カ国の順位を見ると、アメリカが23位でトップ、日本、ドイツは53位、55位と最低ランクのグループに入ります。前回のアンケート結果と同じような順位です。ここでもアメリカの子供たちのはっきりした態度が印象的です。 アメリカと日本のパーセンテージを見てください。明らかに有意な違いが見えます。私は、ここにきて、初めて日本の子供たち(大人も)に懸念を持ちました。 日本の子供たちは、欧米の子供たちと比べてシャイでシニカルなところがあり、あえて自分の意見を低く評価する傾向があります。仕事上では欧米の研究者を怒鳴りつけてきた私でさえ、その態度が残っています。 しかし、自分の考えを素直に表すことが、グローバルな環境の中で生きていくためにますます重要になってきています。このような態度を家庭で訓練することは難しく、グループで活動する学校で訓練するのがもっとも効果的でしょう。学校教育におけるひとつの課題です。 by FewMoreMonths | 2008-01-23 10:04 | 教育
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