(旧7帝大と早稲田・慶応大学とのデータの比較表。クリックして大きくしてから見てください。) 各大学は、情報公開を積極的に進めるため、事業報告、財務状況、中期目標、中期計画など、大学経営に関する基本的な情報を、各大学のホームページにて公開しています。それらの情報を元に、旧7帝大と早稲田・慶応大学のデータを比較してお見せしたいと思います。 使用した情報は、財務諸表の中でも特に損益計算書を用いました。また事業報告書から、学生数や教職員数(常勤・非常勤の別も含む)を求めました。これらはいずれも平成17年度(2005年度)の情報です(慶応大のデータには若干最新のデータが含まれている)。 国立大学と私立大学では損益計算書の内容が若干異なっています。私立大学では事業収入や資産運用収入が重要な収入源になっていますが、国立大学は、国庫補助(運営費交付金)が主要な収入ですから、各国立大学は事業を行ったり基金を保有したりしていません。そこで、旧7帝大の収入では、国庫補助等、授業料等、病院収入、他の補助金等、寄付金を考えました。早・慶では、それらに加えて、事業収入、資産運用収入、雑収入の項目を加えました。他にも収入に関する項目がありますが本稿では考えないことにします。 支出の部は、旧7帝大・早慶ともに、人件費、教育研究費、病院経費、受託研究費、管理経費を考え、他の項目は無視しました。 一部の項目を考えていないため、収入と支出の総額は一致しないことに注意しましょう。 この表から見えてくるコメントを硬い文章で書いて見ましょう。最後は、国立大民営化に行ってしまいますが、個人的意見ですのでご勘弁願います。 ①早・慶の予算規模は旧帝大と同規模である。 ②早・慶は学部学生数が非常に多い。 学生の検定料や授業料を大学の収入にするためである。「授業料等」の収入を見よ。早・慶は旧帝大の数倍の授業料等を稼いでいる。 ③早・慶は大学院生数が学部学生数に比して少ない。 これは大学院生の需要が少ないため、社会に「売れない」ためであろう。社会を変えて大学院生を受け入れなければ、早晩、日本の科学技術および産業の地盤沈下は避けられないであろう。 ④早・慶は常勤教官数と常勤職員数が学生数に比して少ない。 常勤教官1人当たり、常勤職員1人あたりの学部学生数を比較せよ。旧帝大の10倍近くの学生の面倒を見ている。逆にいえば、旧帝大は教官・職員の合理化が進んでいないことを示している。 ⑤早・慶が支出している教育研究経費は、東大を除けば旧帝大よりも多い。 早・慶は、大学の最も重要なミッションである教育(および研究)に、旧帝大よりも大きな努力を傾けているのである。 ⑥早・慶・一部の旧帝大は、教官の中に占める非常勤の割合が多すぎる。 早稲田64%、京都53%、北海道52%、九州47%と、明らかに不健全である。集中講義等で来る非常勤教官も含まれていると思われるが、非常勤の割合は20%以下に抑えるべきである。 ⑦旧帝大は職員の中に占める非常勤の割合が多すぎる。 早稲田の割合と比較してみよ。旧帝大、一般的に言って国立大学における事務系の効率がひどく悪いことを示している。各国立大学は、事務系の定員を死守しているからである。この部分の人件費を削減した国立大学には、その剰余分を教育研究経費に回すよう、財政当局は指導すべきである。国立大学だけに関して言えば、職員人件費の1%削減は甘すぎる。 ⑧早・慶の事業収入および資産運用収入は、外国の有名大学に比して非常に貧弱である。 ⑨旧帝大は、潤沢な運営費交付金を国家から得ているが、今後は私立大学同様、事業および資産運用収入の抜本的増加を図らなければならない。 ⑩早・慶・旧帝大間のフェアな競争を促進するため、また、一般的に国・公・私立大学間のフェアな競争を促すため、国立大学の事業・資産運用収入の増加を見つつ、運営費交付金を順次競争的な資金に換えていき、国・公・私立大学がよいアイディアを競う環境を整えなければならない。 by FewMoreMonths | 2008-01-09 13:22 | 教育
|