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受動喫煙が健康にもたらす影響:米国公衆衛生長官報告
はじめに
いまだに30年近く昔の平山論文のあら探しをして「受動喫煙の健康被害なんていい加減なものだ」などと言いたがる人がいますね。はっきりいって、そんな理屈は世界では一切通用しません。
1981年に発表された平山論文は受動喫煙と肺がんの関係を見出した先駆的な論文でした。とはいえ当時の限られた調査結果から因果関係を推定した論文は、現在からみれば大雑把な面が多々あることも事実でしょう。
受動喫煙が健康にもたらす影響については、その後30年近くにわたる世界中の膨大な研究結果によって疑いようのない事実として結論づけられました。結果的に、平山雄博士が提示した方向性の正しさが認められたといえます。
このテーマにおける最新の成果としては、米国公衆衛生長官による2006年の報告が挙げられます。これは膨大な数の論文を総括した現時点でもっとも信頼性の高い情報のひとつです。
以下に、米国公衆衛生長官のサイトの、受動喫煙が健康にもたらす影響に関する「6つの主要な結論」の全訳を掲載します。ぜひ、この問題を考える際の資料としてお役立てください。(2008年9月1日 ワイネフ)
米公衆衛生長官報告による6つの主要な結論
疾病と死亡についていえば、喫煙は単独要因としては最大の予防可能な要因です。この報告「受動喫煙が健康にもたらす影響」において、米国公衆衛生長官は以下のように結論づけています。
1.
タバコ規制が大きく進歩したにもかかわらず、今もなお、子供と成人あわせて何百万人ものアメリカ人が家庭や職場で副流煙にさらされています。
補足となる証拠
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受動喫煙のバイオマーカーである化学物質「コチニン」のレベルは、1988年〜91年と2001年〜02年を比べると70%減少しました。それにもかかわらず、全国的な調査によれば、今もなお米国の非喫煙者の43%からコチニンが検出されています。
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3〜11歳の子供の60%近く、または2,200万人近くの子供がタバコ副流煙にさらされています。
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職場禁煙の政策があるにもかかわらず、屋内で働く人のほぼ30%にかんしては、それが守られていません。
2.
受動喫煙はタバコを吸わない子供と大人にとって、病気や早死にの原因になります。
補足となる証拠
- 副流煙にはホルムアルデヒド、ベンゼン、塩化ビニル、ヒ素、アンモニア、シアン化水素など、有毒な、あるいは発がん性のある化学物質が何百種類も含まれています。
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副流煙は米国環境保護庁(EPA)、国家毒性プログラム(NTP)、国際がん研究機関(IARC)によって、ヒト発がん性物質として認定されています。米国国立労働安全衛生研究所(NIOSH)は副流煙を職業的な発がん物質であると結論付けました。
3.
子供が副流煙にさらされると、乳幼児突然死症候群(SIDS)、急性呼吸器感染症、耳の疾患、重度の喘息になるリスクが高まります。両親の喫煙は子供の呼吸器症状の原因となります。また子供の肺の成長を遅らせます。
補足となる証拠
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副流煙にさらされる子供は喫煙者と同じ多くの発がん物質や有毒物質を吸いこみます。子供の体は成長途中なので、特に副流煙に含まれる有害物質の影響を受けやすくなっています。
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妊娠中に喫煙していた母親から生まれた赤ちゃん、生まれてから副流煙にさらされる赤ちゃんのいずれも、タバコの煙を吸わない赤ちゃんに比べて、乳幼児突然死症候群(SIDS)で死亡しやすくなります。
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乳幼児と子供、どちらにとっても受動喫煙は気管支炎、肺炎、耳の感染症のリスクを高めます。
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喘息の持病をもつ子供が副流煙にさらされると、より頻繁に、また重度の発作を起こすようになります。
4.
成人でも副流煙にさらされると、ただちに心臓血管系への悪影響が生じます。また冠状動脈性心臓病(CHD)や肺がんの原因にもなります。
補足となる証拠
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多くの発がん性物質・有害物質は喫煙者が吸いこむ煙よりも副流煙に、より凝縮して含まれています。
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短時間でも副流煙を吸いこむと、すぐさま心臓血管系への悪影響が生じます。心臓、血液、血管系の正常な働きが妨げられ、心臓発作のリスクが高まります。
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家庭や職場で副流煙にさらされる非喫煙者は心臓病のリスクが25〜30%高まります。
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家庭や職場で副流煙にさらされる非喫煙者は肺がんのリスクが20〜30%高まります。
5.
科学的証拠にしたがうなら、副流煙には安全だといえるレベルはありません。
補足となる証拠
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副流煙に短時間さらされるだけでも、血小板の粘度が増し、血管の内側がダメージを受け、一定の速度が保たれていた冠状動脈の流れが弱まり、心拍変動が減退します。つまり心臓発作のリスクが高まります。
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副流煙には多くの化学物質が含まれていて、それらは気道を刺激してダメージを与えます。ほんの短いあいだ副流煙にさらされるだけでも、健康な人の上気道に変化が生じます。また喘息の持病をもつ子供は、頻繁に、また重度の喘息発作を起こすようになります。
6.
屋内スペースを完全禁煙にすれば、非喫煙者を副流煙から守ることができます。喫煙者と非喫煙者の分煙、空気清浄機、ビルの換気では、非喫煙者の受動喫煙をなくすことはできません。
補足となる証拠
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従来型の空気清浄システムでは、副流煙の大きな粒子を取り除くことはできても、微細な粒子やガス成分を取り除くことはできません。
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暖房、換気、空調システムが日常的に働いていると副流煙が建物のいたるところに拡散してしまいます。
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空調問題における最も優れた組織である米国暖房冷凍空調学会(ASHRAE)は、空調技術に頼って受動喫煙の健康リスクをコントロールすることは不可能であると結論づけています。
「受動喫煙が健康にもたらす影響:米国公衆衛生長官報告」は喫煙と健康対策室(OSH)、国立慢性病予防センター、疾病対策予防センター(CDC)によって作成されました。報告書の作成にあたったのは、最も優れた執筆者として選ばれた米国人専門家22人です。報告の各章について、さらに40人の専門家が検討をくわえました。また報告書全体にかんしては、各分野で活躍する30人の科学者、およびCDCと保健社会福祉省(HHS)に所属する第一線の科学者たちが再検討しました。この検討プロセスをつうじて各専門家の意見が取り入れられ、適宜修正が加えられました。
引用
米国保健社会福祉省「受動喫煙が健康にもたらす影響:米国公衆衛生長官報告」
米国保健社会福祉省(HHS)、疾病対策予防センター(CDC)、国立慢性病予防センター、喫煙と健康対策室(OSH)、2006年。
(原文)The Health Consequences of Involuntary Exposure to Tobacco Smoke: A Report of the Surgeon General, U.S. Department of Health and Human Services
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WINEF PALM Original: 2008-Sep-1;
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