私は平均すると週2回都心に出かけています。病身の身なのでタクシーの利用が欠かせません。そのため、アルバイト代の半分以上がタクシー代で消えていきますが、それでも広い世界に触れることができ、家にこもっているよりずっと体調に良い効果をもたらしています。アルバイト先には感謝しているところです。
昨日も都内に入る駅から仕事場まで例によって往復ともタクシーを利用しました。朝は若い方、夕方は年配の方の運転手さんでした。やはり、年配の運転手さんとは話がはずみますね。 昨日の運転手さんは68歳で、年金生活に入った後、週2回、1回24時間の運転をこなしているそうです。休憩時間を考えると、等価的に週4,5日の労働になるということで、年金と合わせてゆうゆう暮らしている印象を受けました。年配の方のいいところは、昔取った杵柄を生かしつつ運転を楽しんでいるところです。昨日の運転手さんもそうで、楽しそうに運転しつつも都内の道は知り尽くしていて自信とプライドを持って運転していました。カーナビは必要ないのか聞いてみると、道を知っているのでそんなものはいらないし、カーナビを使うと融通が効かなくなってかえって時間が余分にかかるようになると聞いて、さすがプロと感銘を受けました。 聞くところによると、タクシー会社は積極的に年配の運転手さんを非正規で雇っていて、昨日の運転手さんの所属する会社では、そのような方の割合が3,4割になっているとのことです。これからその割合はさらに増えるでしょう。ユーザーの私は、彼らの安全運転を歓迎したいと思います。 しかし、年配の方だけになると後継者が育ちません。だから何割かは後継者養成を積極的に進めるべく、優遇した待遇で若手を雇用する必要があります。さもなければ、欧米のように、タクシーの運転手さんは外国人労働者で賄わなければなりません。わが国のような単一民族国家では、それは当分無理な話でしょう。 しかし、中央公論今月号を見ると; 若年非正規雇用者の半分ほどは、正規社員を希望していない。正規社員を 横目で見ていて、その苛酷な労働条件に恐れをなしている。 バブル崩壊後の新規採用を手控えたことにより、企業や役所は慢性的な人不足、 それに景気回復が重なって、正規社員は大変な過重労働になっている。 とのことでした。 経済のグローバル化のために、企業、特に製造業は、中国やインドなどの低賃金国との直接的な競争にさらされています。そのため、正規雇用者の給与を上げることはできず、また労働条件を緩和することもできません。 同じ業種を続けるなかで中国やインドと対抗するためには、正規雇用者の賃金をさらに下げ、そのお金で正規雇用者を増やして全体として労働条件を改善するしか手はないのでしょう。 実際、アメリカのエコノミストは、中国やインドの発展は、アメリカの労働者の賃金低下をもたらす良い効果があると広言しています。 昨日の運転手さんとのもう一つの会話は以下のようでした。抜粋を紹介します。 運転手:昨年大腸がんの手術をした。この年になって初めて大腸検査をやったのだけれど、その時ポリープが見つかった次第。病院の見立てで本格的な手術となり、15cm腸を切り取った。 私:あなたは早期で運がよかった。私は7年前自慢じゃないけど30cm切り取った。 運転手:ところが手術は大変。腸の縫合がうまくいかず、縫合不全で腹膜炎を発症。夜中の1時に再手術。再び縫合不全!再再手術。おかげで肛門使用をあきらめて現在ストーマ着用。入院2ヵ月半。 私:それはお疲れで大変だった。私の場合は、内皮の縫合部分が感染、毎日傷口の消毒が死ぬ思いだった。そのあと尿のチューブを早く抜きすぎて膀胱炎発症。結局4週間入院したが、運転手さんほど大変じゃなかった。 運転手:今後状況を見て肛門を使う手術を行うが。 私:肛門を使うのは良いが、直腸、結腸を取ってしまうと、お漏らしが多い。個人個人でお漏らしの対策を考えなければならない。(具体的かつ尾籠な話をしたが省略。)運転手さんは早期発見なので再発はないでしょう。うらやましい。 運転手:再発はないでしょうか。 私:リンパに転移していないのだから安心していいでしょう。残念だが、私は再発して抗がん剤治療。あとどのくらい持つか。 運転手:それは大変。再発に注意することは。 私:定期的検査しか方法がない。 こんな調子であっという間に駅に到着。運転手さんは停車してもう少し話したそうだったけれど、お別れして家路につきました。 by FewMoreMonths | 2007-11-10 10:48 | その他
|