スメタナ「わが祖国」を聴く
 最近、スメタナの「わが祖国」のCDを時々聴いています。ご存じのように、交響詩「わが祖国」はボヘミヤ(チュコ)の作曲家ベドルジハ・スメタナの作曲で、6つの交響詩からなります。2番目の交響詩「モルダウ」はもっともポピュラーな曲ですね。

 最近嗜好が変わったのか、第5番の「ターボル」と第6番の「ブラニーク」がなぜか好きになり繰り返し聴いています。「ターボル」には、ボヘミヤの使徒ヤン・フスの騎士団が行進しているような単調ですが重厚なメロディーが繰り返し演奏されていて気に入っています。同じメロディーは第6番のブラニークでも使われています。

 音楽にはほとんど知識がないのですが、私はマーラーやブリュックナー、ブラームスの重厚な交響曲が好きです。「わが祖国」第5、6番目の曲は無論ボヘミヤ臭が色濃く残る曲ですが、ドラマチックな雰囲気が好きです。

 ちょっと気になったので、まったく知識のなかったヤン・フスをウィキペディアで調べてみました。フスはどうやら万能の学者・活動家だったらしく、1400年に僧職を得たのち、1402年にプラハ・カレル大学長になっています。その後「ウィクリフ主義」(私はこの主義を勉強していない)をボヘミヤに広め、教会改革に乗り出したようです。しかし、1414年コンスタンツ公会議に招集され、ウィクリフ主義とフスの思想は異端と審問されたが、自己の主張を撤回せず、結局火あぶりの刑に処せられました。

 (教皇のヨハネ・パウロ二世は1999年、フスに加えられた残酷な刑に遺憾の意を表したと書いてありました。ガリレオのことといい、ヨハネ・パウロ二世は非常に特徴のある教皇でしたね。)

 その後、ヤン・フスを崇拝する一派は、1420から1434年ころカトリック勢力と、いわゆるフス戦争を展開しています。この事件は、1500年代のマルティン・ルターに始まる宗教改革や1600年代の30年戦争に続くのでしょうか、よくわかりません。

 いずれにせよ、ヤン・フスの殉教精神は生き残り、ボヘミヤの使徒・英雄として現在でもボヘミアの人々の心の中に生きているようです。

 ところで、「わが祖国」のCDの表には、ドイツ語のタイトルで、「Mein Vaterland」(父国)と書かれています。日本語では祖国とか母国とか言いますが父国とは言いませんね。もう一つの違いは、「国」という言葉ではなく「Land」という語が使われていることです。

 英語の辞書にあたってみると、Motherlandという単語とFatherlandという単語の両方がありました。単語の意味は、両方とも父祖の出た土地を意味しているようです。とくにアメリカは移民の国ですから、自分のルーツのある地域(国)のことを指すようです。

 それでは、彼らが現在住んでいるアメリカ自身を何と呼んでいるかというと、「Homeland」という語を使っています。

 日本の「祖国」は、建国以来単一民族からなる日本「国」を無意識に「Land」と同じ意味に取ったととらえることができ、国という語を使っても自然なような気がします。

 しかし、わが国では「祖国」という語は死語になったようで、最近聞いたことがありません。また、わが日本という祖国に、ヤン・フスのような国民の精神的支えとなる使徒や英雄もすぐに思い当たりません。
 
 フランスのナポレオン・ボナパルト、トイツのフリードリッヒ大王(二世)、アメリカのジョージ・ワシントン等々、各国にはよく知られた英雄がいます。これらの偉人たちがでた国で、子供たちが彼らの伝記を読むことは、子供たちに祖国を愛しさらに発展させようという気持ちを起こさせ、良い影響を与えるような気がします。

 スメタナのCD「Main Vaterland」からだいぶ脇道にそれました。

by FewMoreMonths | 2007-10-27 11:46 | 人生


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