ハーバード・早・慶・東大などのインターネットデータ、まとめ、その2続
 前回10月15日のブログ「ハーバード・早・慶・東大などのインターネットデータ、まとめ、その2」が未完に終わったので、国立大学の経営について引き続き愚見を述べたいと思います。

 前回のブログはいわば国立大学に関する序論でした。国立大学が法人化されてから、大学の裁量が大幅に増えて、逆に文科省のそれは大幅に減少した、という趣旨の記述をしました。
 また、文科省の裁量は主に競争的資金のメニューの発明、審査、経費配分だということもお話ししました。競争的資金で重要な点は、国公私立大学の区別なく応募でき、さらに研究型独法や研究型民間機関も応募が可能なことです。

 それでは再び大学情報の総表を添付します(クリックすると大きくなります)。国立大学の東京、山形、茨城大学の項を見て下さい。

各大学のところで十分議論しましたが、もう一度特徴をかいつまんで示しますと、
・各大学の学生数は私立大学よりずっと少ない。つまり授業料等の教育手数料収入は相対的に少ない。
・東大を代表とする旧帝大は研究大学院大学を目指しているが、ハーバード大学ほどではない。大学院生の需要が社会的にあまりないからだろう。
・地方大学はで学部学生の教育が主で、私立大学と差がない。
・教官が面倒を見る学部生数は私立大学の半分程度で、研究に使う時間を比較的多く取ることができる。
・全教官に占める非常勤教官の割合は、地方大学では約40%で私立大学より少ないが、それでも非常勤教員が教育に重要な位置を占めている。
・地方大学は人件費に支出の大部分を食われており、教育研究経費は主要私立大学の10分の1程度であって、教育研究にお金を回すことができず、国立大学法人法の目的を達成することは既に困難になっている。つまり、地方国立大学は既に破綻状態にあるといってよい。
・職員の数が私立大学と比べて相対的に多い(例えば職員一人あたりの学部学生数を見よ)。まだまだスリム化が可能である。
・運営費交付金は主要な収入源であり、事業収入や資産運用に対する努力はようやく始まったところである。
・東大は事業収入獲得に多くの努力をしており、また学友会組織等の活性化で寄付金収入の大幅な獲得を目指している。
・附属病院が赤字体質になりつつある(10月11日朝日新聞「国立大附属病院4割が実質赤字」)。この赤字が他の部局を圧迫する懸念がある。

 今後の国立大学は、破綻状態を回避するため、私立大学のように、事業収入と寄付金収入を大幅にアップしなければなりません。

 東大は、小宮山総長の号令一下、私立大学以上になりふり構わず事業収入と寄付金集めに走り始めています。

 そうすると、「国立大学って必要なの?」という素朴な疑問がすぐわきます。

 国立大学における、危機感のないのんびりした教官や不都合なことがあるとすぐに他人のせいにする教官等の存在、インセンティブを起こさない一律給与規定の保持、つまりいい仕事をやった教官とだめ教官で給与その他に何の差異も設けないこと、等を考えると、「段階的(50年程度)に国立大学を私立大学化する」という案に、私は賛成です。

 また、一法人一国立大学は地方国立大学の破綻を救えないので、民営化とともに、一法人が複数大学を運営して効率化を目指すことが必要です。

 運営費交付金は現在年1%ずつ減額されていますが、そのスピードをアップして毎年数%減額し、その分以上を競争的資金に回します(間接経費を50%以上にアップ)。競争的資金の一部は無論、国公私立大学、大学共同利用機関、研究独法に公平に開放されなければなりません。
 残された時間で、繰り返しますが、国立大学は国からの事業を主体とする事業収入と寄付金収入を大幅にアップしなければなりません。

 今回のシリーズの議論で見たように、私立大学も地方国立大学も非常勤教員に依存する劣悪な経営状況にあります。これを克服し、大学の活性化を図ために、国は、
・学部教育のための競争的資金のメニューを発明してその大幅な経費を要求する必要があります。
 さらに、
・競争的研究資金の大幅なアップ、
・先端的共同利用研究施設の整備
をアメリカに競合するほどの覚悟で行わなければなりません。

 また、産業界は、大学に存在する高度知識を有効に積極的に活用しなければなりません。

 9月12日のブログ「高等教育と科学・技術に日米の政府はどのくらい投資しているか」に日米の高等教育への投資に関する大きな格差を示しました。下の図にOECD加盟国の教育に関する投資額を示します(クリックすると大きくなります。tertiary educationの図を見て下さい)。

 我が国の、国や地方自治体(パブリックセクター)による教育投資が情けないほど少ないかがわかると思います。教育の質は対GDP比で測れるものではありませんが、各国がいかに教育に熱心かのよい指標にはなります。

 もう一つ大切な視点を忘れていました。国立大学と私立大学の改革のみならず、研究型独立行政法人の改革、廃止・共同利用研究機関化を進めなければなりません。9月15日のブログ「高等教育と科学・技術に日米の政府はどのくらい投資しているか、その4」をもう一度見て下さい。参考のためにもう一度2005年2月23日総合科学技術会議の資料を添付します(クリックすると大きくなります)。私立大学も含めた大学と研究型独法への政府投資額は同程度なことを忘れてはいけません。

 そこに書いた文章をもう一度繰り返します。この件に関しては、稿を改めて議論したいと思います。
 「近頃とみに顕著になっているところですが、研究型独立行政法人は、大学や大学共同利用機関が活発に行ってきた研究分野へ、ノウハウもなしに侵略している感があります。つまり、独法が行ってきた従来の研究で成果が出なくなってきたのに加えて研究の継続が難しくなってきたため、独立行政法人の組織(つまり人員の雇用及び天下り先の確保『独立行政法人の役員の出身を見て下さい』)を存続させるために、なりふり構わず他分野、特に基礎研究分野へ進出しているのです。
 具体的には、理化学研究所の多くの部分、物質・材料研究機構、産業技術総合研究所、日本原子力研究開発機構の一部、宇宙航空研究開発機構の一部などが行っている仕事は、大学のほうががもっともっと効率よく行うことができると思います。また、アメリカのエネルギー省が行っている仕事に似ていますが、放射光のスプリング8、中性子源のJ-PARCなどは、40年の伝統を持つ大学共同利用機関のノウハウによってずっと研究成果をあげることが可能です。」

 また、概算要求の重要な事項である国家基幹技術なるものは大きな問題をはらんでいますし、研究型独法の存続と密接に絡んでいます。これも稿を改めて議論したいと思います。

 これらの施策を早急に進めなければ、我が国は、地球温暖化、エネルギー危機、グローバル化の競争において、生き残ることは難しいでしょう。

by FewMoreMonths | 2007-10-16 15:00 | 教育


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