ハーバード・早・慶・東大などのインターネットデータ、まとめ、その1の続
 昨日10月13日のブログ「ハーバード・早・慶・東大などのインターネットデータ、まとめ、その1」で書き足りないことがありました。追加します。
 そのため、10月13日のブログに戻って頂き、そこにある総表をクリックして下さい。新しいウィンドウに表が出たと思いますので、それを見ながら議論したいと思います。
 
 今日お話ししたいのは、教官数の中に占める非常勤教官の割合です。早稲田、同志社大学のデータが見えると思います。慶応大学のデータは見つかりませんでした。ハーバード大学の非常勤に関するデータもありませんでした。

 非常勤の定義はよくわかりませんが、8月20日朝日新聞に出た杉本記者による「大学非常勤講師、厳しい実態  突然クビ経験あり・年収300万円未満  組合調査」が参考になります。組合のホームページに戻って調べる気力もありませんので新聞の記述をちょっと引用します。

 「首都圏大学非常勤講師組合と関西圏大学非常勤講師組合が05年度に実施したアンケートに1011人が解答。」
 「非常勤講師が専業は595人(59%)、平均年齢45.3歳、就いてから平均11年、語学担当7割強。」
 「平均講義数9.2コマ、平均年収306万円、200万円未満30%、300万円未満53%。」
 「講義や研究に使う費用は平均27万円だが、公費が出ている人は16%、平均では1人あたり1.4万円に過ぎず、ほとんどが自腹。」
 「突然解雇された経験者50%。」

 生活に欠かせない社会保険に関する記事がないので仕方なく組合のホームページに入って探すと、ありました。
 「自分の職場の社会保険加入者は、専業非常勤で3%、非常勤兼職で12%。」

 上のデータからあたってみると、1コマあたりの月収は平均2.8万円です。私も5年ほど前に知人に頼まれて、某私立大学で1コマ・1セメスターだけ学部の講義をしたことがありますが月収3万円でしたから、現在も変わっていないようです。

 問題は、日本の看板私立大学である早稲田大学で、全教官5487人のうち、このような低賃金であえいでいる非常勤教員が3492人、実に64%を占めることです。同志社大学の数値を見ても、全教員1788人のうち1121人(63%)が非常勤教員です。慶応大学の数値はありませんが事態は似たようなものでしょう。東大の数値を見て下さい。全教員4538人のうち非常勤はたったの356人(8%)です。

 大学における教育と研究は一体でなければなりません。優れた研究をやっている教官のところには優れた学生が集まります。
 東大と早・同志社等の一流私立大学を比較するとき、この非常勤教官の多さは、教育の質の差、及び研究レベルの差に必ず直結しているはずです。

 非常勤教員には非情なことをいいますが、自分の研究室もなく研究もままならない方に教育を任せるのは学生にとって気の毒ですし、社会にとってもよいことではありません。

 現在のジレンマは何かというと、社会問題になっているニートと同じように、非常勤教官は、非常勤という境遇にいたため研究・教育能力にいささか物足りない点があり、安易に常勤にするわけにいかない、という点です。

 私立大学は、国や企業からの研究委託を増やし、運用資産を増やして、その利益を教育の質、すなわち教官の質、を高める努力をぜひともしなければなりません。優秀な常勤教官を増やさなくてはなりません。そのためには長い時間が必要です。

 非常勤問題を一気に解決する手段は残念ながらありません。

by FewMoreMonths | 2007-10-14 16:14 | 教育


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