8月21日、8月24日、9月1日、10月3日、10月4日、10月5日、10月12日に、インターネットからの情報を元に、東大、山形大、茨城大、早大、慶応大、同志社大、ハーバード大の現状を紹介しました。
あと数回でこのシリーズを終えたいと思います。今日は「まとめ、その1」として、私立大学の経営について愚見を述べたいと思います。 文部科学省は「私立大学は建学の精神に則って大学の運営を行い・・・」というような趣旨の文書をよく配布します。重要なポイントは何かというと、国の指導・監督が当該大学には及ばない、従って「私立」大学といわれる、という点です。 大学も多数の人員とインフラを抱えた一つの組織(機関)ですから、その最も大切な経営目的は組織の永続的な存続にあります。 私立大学と民間の企業では目的を達成する方法が異なるのみです。企業では、ハード・ソフトの製品やサービスを売って資金を獲得し組織の存続を図ります。 私立大学は、第一に、学生の教育を行うことによって手数料(授業料や検定料)を徴収し利益を確保します。各大学は優秀な学生を確保しようと努力しますが、優秀な学生であれば教育が楽だし、卒業後の就職でも有利だからです。学生の就職が有利なら、その評判を聞いて少々授業料を上げても優秀な学生が集まるというポジティブフィードバックがかかり、大学経営が安定します。 優れた教育のためには優れた教官が必要ですから、世界に目を向けて優秀な教官を高額で(無論経営に響かない程度で)引き抜きます。特にアメリカの大学は仁義なしに引き抜きを行います。 また、10月12日にハーバード大学紹介のブログで示した通り、アメリカの大学は、優秀な学生を社会の枢要な地位に送り込むことによって、彼ら及び彼らの組織体から多額の寄付を得る努力をします。優秀な学生の必要性、従って優秀な教官の必要性はここにもあるのです。 私立大学は、第二に、大学の持っている知識と研究能力を最大限に使った共同研究や受託研究を国や産業界と行い、大きな利益を確保します。 そして、第三に、余剰利益(及び寄付金)を資産として蓄積し、大学の持っている知識でもってその有効な運用を図り、さらに利益を上げます。 共同研究や資産運用にも優秀な研究者が必要ですから、彼らの引き抜きにも仁義なき戦いが行われます。 つまり、私立大学は、教育手数料・研究手数料・資産運用で利益を確保し組織の安泰を図っているのです。 残念ながら日本の私立大学の経営はそれほど順調ではなく、政治家に泣きついて国から「私立大学経常費補助等」という費目で文部科学省から多額の補助(平成19年度3461億円)を受け取っています。早・慶・同志社大学の紹介ブログで示した「国庫補助等」の主要な部分はこの経費に該当します。 日本の私立大学は「一部国立大学」という性格を持っていて、その分だけ国の監督・指導を受けます。多くの文科省の役人が私立大学の事務局に天下りするのは国の影響の一例です。 それでは、今までのシリーズのブログでお示ししたデータの総表を作りましたので早速お見せします。いくつか注意事項を述べます。 ・日本の大学と整合性を取るために、私の理解できる範囲で、ハーバード大学の一般管理費の一部を教育研究経費に移しました(総表の下に示した表参照)。 ・国立大学の「補助金等」は私立大学の事業収入と同等と考えて下さい。 ・科学研究費補助金など教官が応募して取得した研究費は含まれません。ただし、大学に入る間接経費は含まれます(クリックすると大きくなります)。 この総表を見てハーバード大学と日本の大学の違いが明瞭になると思います。 ・日本の私立大学は、多数の学部学生を受け入れて彼らからの教育手数料を主要収入源としています。 ・ハーバード大学などの研究大学院大学(Research University)では大学院教育が主な収入源です。 ・日本は学部に重点を置きアメリカは大学院に重点を置いています。これは大学の方針ではなく、社会の要望を反映しているからです。 あえて失礼な言い方を許して頂けるなら、日本の官庁や企業の人事部は大学で遊んでいた学部上がりの人物が仕切っていますから、大学院卒という高等教育を受けた人物の評価ができないのです。これから地球温暖化、エネルギー危機やグローバル化した競争など高度知識が必要な社会になっていくわけですが、高等教育を軽視する我が国は、アメリカや急速に発展しているインド・中国に対抗して、本当に国を支えていけるのでしょうか。 ・ハーバード大学が国から受け取る経費は受託研究や教官のグラントから得られる間接経費(オーバーヘッド)です。国からの研究依頼は民間からのそれを大きく上回っていることがわかります。日本では(国の指導・監督の紐が少し付いている)補助金を国から受け取っています。 ・日本の私立大学は同窓会組織等を強化して運用資産を外国並みにし、運用益を大幅に増やす必要があります。国の指導・監督から独立するためにも必要なことです。 大学経営もグローバル化が急速に進んでいます。早・慶・同志社大学等がハーバード大学「早・慶・同志社分校」等にならないよう切に望みます。 この点は極めて大切で、我が国に必要な重要人物は我が国で最適化された教育方針で育てるべきです。アメリカ方式が蟠踞すれば、我が国は人材の面でも常にアメリカの後塵を拝することになるからです。 (続く) by FewMoreMonths | 2007-10-13 16:03 | 教育
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