前連邦準備制度理事会議長アラン・グリーンスパン氏の本を予約
 1987年8月から2006年1月までの約18年半、アメリカの金融行政の責任を負ってきた前連邦準備制度理事会(FRBまたはFed)議長アラン・グリーンスパン氏の本が発売されたというニュースが先日朝日新聞に載っていました。記事を保存していませんが、確か「ブッシュ大統領の悪口が書いてある」との趣旨だったかと思います。四代の大統領の下でFedを仕切ってきた大人物が一大統領の悪口を書くために本を出版するとも思えません。

 9月24日のニューズウィークにグリーンスパン氏とその本に関する詳しい記事が載っていました。  本のタイトルは「The Age of Turbulence」。本の趣旨は、ニューズウィークの記事によれば、2030年における世界、とりわけアメリカの将来を予言した本です。
 前日の朝日新聞の社説ブログと対比させるとおもしろいかもしれませんが、極めて論理的に書かれているようです。

 自然科学系の研究者にはグリーンスパン氏は遠い異次元の存在ですが、年金生活に入り時間がとれるようになると、異次元の世界にも興味がわくようになります。
 予言とその検証は自然系科学者にとって最も重要な作業です。予言は英語でpredictionという単語を使います。グリーンスパン氏の予言にはoracle(神託)という単語を使っています。科学者の予言とは桁外れの尊敬を勝ち得ているようです。

 ニューズウィークの記事はまず、簡単にグリーンスパン氏を紹介しています。

 「冷戦の終結・グローバル化・中国の台頭・ITの急速な普及は長期にわたって持続した経済成長・高い生産効率・低インフレ・投資ブームをもたらした。」
 「四代の大統領に仕え、20年に及ぶ持続的経済発展を指導してきたグリーンスパン氏は、過去30年でもっとも成功を収めた官僚そしてマエストロであった。」

 
 役に立ちそうな至言が二つ載っていますので紹介しましょう。
 「If you try to preserve the past, you will not be able to produce the future.」
訳は不要かもしれませんが、「過去にしがみつけば未来を生めない。」郵政民営化で民主党に聞かせたい言葉ですね。
 ウィンストン・チャーチルの言葉として、
 「The further backward you look, the further forward you can see.」
「近い過去だけでなく昔に遡って過去を理解すればするほど、さらに遠い将来を見据えることができる。」
 第二次大戦のみを思い反省を繰り返す人々は近視眼的である、ということかな?

 さて、本の要約が出ていますので一部を引用しますと、
 「2030年のアメリカの経済を予測するにはどうしたらよいか?まず、種々の仮定に対する解答を用意する必要がある(仮定の議論はニューズウィーク参照)」
 「失業率予測: 4~10%」
 「アメリカが今まで同様技術開発のトップを維持できれば、生産効率の長期予測は0~3%」
 「現在から2030年までのGDP平均伸び率は2.5%をちょっと下回る」
 「中国経済が成熟するに従って、中国からの輸入品の価格が上昇。そのためインフレの懸念が高まる。(インフレ対策が書いてあるが理解不能)」
 「インフレ率予測: 4~5%」
 「競争状態にあるグローバル化した市場経済では常に一歩進んだ技術開発が必要」
 「つまり、進歩のためには過去の膨大な知識遺産の上にさらに新たなものを積み上げなければならない」
 「この知識主導社会では、必然的に高度技能を持ったものに富が集中する」
 「現在のアメリカ初中等教育は高度技能者の欠乏と低技能者の増大をもたらした」
 「教育システムを改革して高度技能者を増やさない限り、富は少数の高度技能者にますます集中する」
 「教育システムの改革には時間がかかる。直近の方策は、技能労働者の移民を促すことにより、それによって全体的な技能レベルを向上させるとともに、高度技術者の給与の抑制をもたらすことができる」
 
 上にも書きましたが、科学者にとって予言とその検証は最も重要な作業です。私は残念ながら、この本の予言が検証されるのを見物することはできませんが、自然系科学者にとってもおもしろそうな本じゃありませんか。
 2,3日前、Amazon.comにこの本を予約しました。3842円也。値段は日本の経済ジャーナリストの書いた本ととんとんです。10月10日頃納品。

by FewMoreMonths | 2007-09-24 11:58 | その他


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