日本の政治は昨日から大変です。しかし、我が国の政治は政治資金の問題や閣僚の失言問題に終始していて、常に政治空白の中にあるようなものです。本ブログでは、我が国にとってもっともっと重要な高等教育と科学・技術の話題を進めたいと思います。
　ローマ字やグラフが出てきますが我慢しておつきあいください。

　昨日９月１２日に高等教育と科学・技術に対する日米両政府の投資額を比較しました。
　今日は２００７会計年度のアメリカ科学技術予算の対前年度比を紹介します。２００８会計年度予算は議会でまだ審議中ですが現在検討されている案を次回にでもお見せしましょう。
　アメリカでも各省庁や独立政府機関がいろいろな科学・技術を推進しています。これから図を示しますが、その中に出てくる略語をまず紹介しておきます。

　　　DOE: Department of Energy
　　　NIST: National Institute of Standards and Technology
　　　NSF: National Science Foundation
　　　DOD: Department of Defense
　　　NASA: National Aeronautics and Space Administration
　　　NIH: National Institutes of Health
　　　EPA: Environmental Protection Agency
　　　VA: US Department of Veterans Affairs　（訳あやしい）
　　　USGS: US Geological Survey
　　　NOAA: National Oceanic and Atmospheric Administration
　　　DOT: Department of Transportation
　　　USDA: US Department of Agriculture
　　　DHS: Department of Homeland Security

　この中で、ＤＯＥ、ＮＩＳＴ、ＮＳＦ、ＤＯＤ、ＮＡＳＡが物理科学の研究を主にやっているところです。ＮＩＨは生命科学研究の牙城で、日本の１０倍以上のお金を生命科学に投入しています。
　下の図はアメリカ物理学会誌Ｐｈｙｓｉｃｓ　Ｔｏｄａｙから引用したもので、２００７年会計年度の、政府研究開発投資額が２００６会計年度と比べて何％増減したかを示したものです（クリックすると大きくなります）。

　エネルギー省のエネルギー（ＤＯＥ　ｅｎｅｒｇｙ）予算や国家標準技術局（ＮＩＳＴ）の予算が大きく増えています。アメリカは、国家戦略として将来のエネルギー開発に力を注いでいることがわかります（エネルギー研究はもちろん物理科学の一種です）。一方、国防省の武器開発関係は６％の伸びです（これも科学・技術の一部です！）
　注目すべきなのは、エネルギー省科学局（ＤＯＥ　ｓｃｉｅｎｃｅ）と国家科学財団（ＮＳＦ）も６～７％伸びていることです。
　ＤＯＥ　ｓｃｉｅｎｃｅは大型研究施設を作って科学研究の基盤を支えます。たとえば物質科学や生命科学の精密分析になくてはならない放射光や中性子発生のための大型加速器を建設しています。国際熱核融合実験炉ＩＴＥＲもＤＯＥ　ｓｃｉｅｎｃｅが扱っています。素粒子や原子核研究のための大型加速器や素粒子を宇宙で研究するために使う人工衛星の建設にも予算を出しています。
　ＮＳＦは競争的資金でもって主に大学の研究者の研究を支えています。我が国の独立行政法人日本学術振興会を３倍くらい大きくした組織です。ＮＳＦは主に物理科学を支援し生物学も一部支援しています。ＮＳＦの予算が今後１０年間７％ずつ伸びると１０年後にちょうど２倍になります。これは日本にとって大きな脅威です。

　比較のために日本の競争的資金の年次変化を下の図に示します。平成１６年と比べると平成１７年度予算が急に増えているようにみえますが、今まで競争的資金の費目になっていなかったものを付け替えたためです。予算が純増しているわけではないのでごまかされないで下さい。我が国の競争的資金は年率１％以下の伸びに過ぎません（クリックすると大きくなります）。

　我が国の競争的資金をＮＳＦ並みに何とか増やさないと、大学の研究ひいては国の科学・技術を担う若者の質がアメリカと比較してますます劣化することになります。　　　（続く）