ホテルニューオータニから帰って昼寝をし、体力をある程度回復しました。あさっての抗ガン剤注射を控えて明日は十分休養を取ろうと思いますので、9月2日分の記事を早めに投稿します。
8月24日に、インターネットからの情報を元に、山形大学を紹介しました。附属病院を持つ地方大学の代表として登場していただきました。 今日はその第3弾、附属病院を持たない地方大学として、茨城大学にご登場願いましょう。私は昨年3月まで仕事の関係で茨城大学の先生方にいろいろお世話になりました。親近感からここに登場していただきました。 早速茨城大学のウェブサイトから財務関係の情報を引き出します(2005年度)。東京大学と比較するため、各項目の値を東大の値で割った比も掲げています。下の表がそれです(表をクリックすると大きくなります。) 特徴をいくつかあげると、 ・学部学生が圧倒的に多く、大学院生数は学部生数の7分の1くらい。 ・東大と比較すると、学部生数は東大の51%と結構多いが、大学院生数は東大の12分の1。 ・教官は学部生の15%弱。東大ではこの比が30%以上になる。つまり、茨城大学の教官一人は、東大に比べて2倍の学部生の教育を行わなければならない。事態は、前回の山形大と似ています。 ・職員の数は教官数に比べて40%くらい。東大や山形大では、職員数は教官数と大体同じでした。このことから、東大や山形大では、職員の半数近くは附属病院に取られていると思われます。 ・病院収入がないので、自己収入が少ない。 主要な収入の合計は約133億円。東大の8%くらいです。 主な収入の中で、運営費交付金が75億円で56%を占め、受託研究が3億円でたったの2%です。東大と比較すると、運営費交付金は12分の1、受託研究は実に100分の1です。教官の研究費の源はほとんど受託研究ですから、東大と比べて研究の格差がさらにひどいですね。 病院からの上がりはもちろんありません。この影響は甚大です。 次に使い道を見てみます。主要支出は約128億円ですが、そのうち人件費が何と82%を占めます!病院収入がないためです。さらに、運営費交付金は年々1%ずつ減らされていることにご注意。財政は完全に硬直化していることが分かります。 教育研究費は人件費の6分の1でたったの21億円。これで7500人の学部生と1100人の大学院生の教育研究さらに教官の研究費もまかなえと、大学執行部は命令しているわけです。しかし128億円の業務費からよく21億円を捻出していると思います。 21億円の教育研究費は光熱水代や修繕代諸雑費にみな消えてしまいますから、1103名いる教官の研究を支えているのは、受託研究の3億円です(ただし科研費は別)。一人当たり30万円!もちろんこの額は平均値ですけど、30万円でどんな研究ができるんでしょうか。 山形大学と茨城大学を例として、地方大学の財務状況を見てきました。教官は研究をやる環境にほとんどないことが分かると思います。 茨城大学の近くには大手企業や大規模な独立行政法人・大学共同利用機関があります。これらと密接な連携をとることにより、特徴のある教育研究を推進すべきです。 山形大学はより深刻ですね。将来の人口減少や高齢化が病院経営に打撃を与える可能性があります。大企業や独立行政法人もないので、山林や農業の研究に重点を移して他大学にない特徴を出すことが肝要です。そして、わが国の農業に貢献できる研究成果を出すことが可能でしょう。 またまた年金生活者が余分なことを書きました。 (続く) stochiaiという方のブログ(8月31日投稿記事)に以下の表現が出てきました。 「―前略― まず政府・文科省が個々の大学が自ら稼いだり巨額の寄付を受け入れたとしても運営交付金を削減したりという、懲罰的な資金管理をやめることと、―後略-」 とあります。この記述は正しくないと思います(少なくとも去年までは)。 政府も馬鹿じゃありませんから、法人化後、自己収入を奨励し、その使途は大学の独自判断で決めることができます。自己収入の増加は中期計画の評価にポジティブに働きます。また、運営費交付金は所定の公式でもって算定しますが、自己収入によって減少させる項目はありません。ぜひご自分の大学の中期目標、中期計画を熟読することをお勧めします。 現文科大臣は、運営費交付金を2%増やすための概算要求を財務省に送ったはずです。文科省をけなすのはストレス解消によいですが、大学の教官はぜひ文科省の努力を評価し応援することも時にはして下さい。 またまた年金生活者が偉そうなことをいい、失礼しました。 by FewMoreMonths | 2007-09-01 17:29 | 教育
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