8月19日に「奥飛騨の山歩き、木々の名前その2」を書きました。今日はその第3弾です。
奥飛騨の仕事場から国道41号線を横切って集落を2,3分で抜けると、もう茂住峠へ向かう林道の入り口です。 最初のヘアピンカーブを曲がってしばらく歩くと、左は急峻な登り勾配の山肌になります。道路際には、アブラチャンやキブシの卓越した低木が生えています。時々サワシバも目にします。右は逆に急峻な下り勾配の山肌で、オニグルミの大木がしばらく続きます。オニグルミの根は、山肌のだいぶ下にありますから、手の届くところに花がつき実もなります。秋には、この実を手で取ることができます。 低木は背が低いので、手の届くところに葉、花、実がありますから、観察は容易です。高木は、高いところに枝が張り出すので、木々の名前を同定するには下に落ちた枯葉や枯れ枝を持ち帰って観察する必要があり、結構難しいですね。 さて、道路の左側に、下の写真のような、何の変哲もない木ですがちょっと変わった葉のつき方をした低木がところどころに生えていました。 葉の説明をすると、「対生、葉身は長楕円形、基部は円形または浅心形、尖頭、縁に重鋸歯」と難しい表現になりますが、サワシバに似た葉です。サワシバの葉は互生で、基部ははっきりとした心形ですので、サワシバではありません。家に帰って葉の形から検索すると、この木の名前は、「チドリノキ」と出ました。参考までに、チドリノキとサワシバの葉を比較した図を示します(吉山寛、石川恵美子、『落葉図鑑』、文一総合出版より)。 ロマンチックな名前で、仕事場近くで最も印象的な木のひとつです。 驚くのはこれからです。この一見普通の低木に見えるチドリノキは、カエデ科、つまりモミジの仲間です。モミジの葉は、手のひらの形をした、いわゆる分裂した単葉ですが、チドリノキの葉は、見ての通り普通の葉っぱの形をしています。同じ仲間なのに、この多様性には驚かされました。 なぜチドリノキがカエデ科と分かるのか、という疑問ですが、実を観察ししてみます。モミジとそっくりな翼のついた特徴的な実をつけるのです。これで納得。 カエデ科には、ヒトツバカエデという、やはり分裂していない普通の葉をしたカエデがありますが、こちらの葉はかなり大きく、簡単に区別できます。 生物はなぜこのような多様性を持っているのか。リンネに始まる生物の分類学から今日の分子生物学まで300年間の生物学の歴史をもってしても、この疑問に納得のできる答えは得られていません。 by FewMoreMonths | 2007-08-26 09:55 | 奥飛騨
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