朝日新聞記事「柏崎原発。閉鎖視野に処理を」、地震学者の怠慢
 今日は久しぶりに東京に出かけます。午後6時から8時までの会議です。その前に人と会う約束があるので午後一番に出発です。明日も午前中会議があり、午後人と会うので、一日中東京にいます。関係者には失礼ですが、週に1,2日外出するのは気晴らしになり精神衛生上よい効果があります。
 現役時代研究者として国から多くの支援を受けましたので、微力ながら少しでも恩返しができたらと、体力が続くまで努力したいと思います。

 今日は昨日の朝日新聞夕刊に載った記事「柏崎原発。閉鎖視野に処理を」について簡単な意見を書きたいと思います。早めに投稿します。
 内容は、「柏崎刈羽原発の閉鎖を考える科学者・技術者の会」なるグループが、「今後も原発周辺で再び大地震が起きる可能性がある」と指摘、「重要機器の安全性を検証するには、地震の揺れをもとにシミュレーションするほかなく、安全解析は不十分だ」といった、というものです。
この記事に関する、私の意見を箇条書きにしておきましょう。

•このグループの所属する科学者・研究者のレベルが世界的に見てどの程度かの記述がなく、したがって記事に値する内容を含んでいるのかどうかがはっきりしません。
•この記事は朝日新聞の科学記事ではなく(asahi.comサイエンス欄にない)、たぶん社会部関連の記事かと思います。朝日新聞が原発推進に批判的なことはよく知られており、それに合致する記事を重点的に取り上げる作業の一環という印象を持ちます。8月18日のブログにちょっと書きましたが、いわゆるバイアスをかけて記事を選択する一例です。
•「今後も原発周辺で再び大地震が起きる可能性がある」は、その根拠が明白に書かれていないので、いわゆる「人心を惑わす」意見の一種と思われます。この「指摘」をみて、かつて科学者の片隅にいた私は、ちょっと怒りを覚えます。
•地震学者を名乗るならは、「可能性がある」は科学的言葉でないことが分かるはずです。もし発言するのなら、「何年以内にxx程度の規模の地震が起きる確率はyy%である」と、いくつかのxxに対してyyの値を提供すべきです。もしそこまで言えないのなら、地震学者の努力不足のために地震学はそこまで進歩していない、発言すべきでしょう。
•そもそも、地震学の一番重要なミッションは「地震を事前に予知する」ことです。「もし24時間以内にxx規模の地震が起きる」と科学的に予言できれば、原発を地震の来る前に停止させることができ、少しくらい周辺が壊れてもまったく安全のはずです。地震予知が、原発の安全に対する最善の手段なのです。いやしくもプロの地震学者なら、なぜそういう発言をしないのでしょうか。
•地震予知に関する研究は衰退の一途をたどっています。「科学研究費補助金」という、研究者が最もよく利用する研究費があります。そこに登録されているキーワードを検索してみても「地震予知」または関連するキーワードは見つかりません。一部の地震学者、特に東大の一教官は「地震予知は不可能だ」と公言しているそうです。優秀な科学者は、自分の専門分野で「不可能」という言葉は絶対に使いません。何か重要な課題があったら、何としてでもやり遂げるという意思がなければ、一流の科学者ではないのです。
•私は、地震予知の研究を怠るという地震学者の怠慢を、声を大にして糾弾せざるを得ません。
•「地震の揺れをもとにシミュレーションするほかなく、安全解析は不十分だ」は理解不能です。シミュレーションで安全解析をするのです。「地震動の定量的な情報を地震学者が提供できない」ので、シミュレーションにインプットする信頼できるデータがないと、言いたいのでしょうか。もしそうなら、地震学者の怠慢をここでも自ら晒しているのです。

 ちょっと興奮してしまいました。情けないことをいう研究者を見ると、つい昔の癖が出て怒鳴りつけたくなります。

by FewMoreMonths | 2007-08-23 09:42 | 環境・災害


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