大学の情報には、いろいろなものがあります。学部や研究所の情報、学生数や教官数など人の情報、研究成果などの成果の情報、施設の情報、財部の情報、などです。これらのほとんどはインターネットで調べることができます。
私は、特に財務の情報を見て、いくつかの大学に関する感想を述べてみたいと思います。 まず東京大学の情報を調べてみます(2005年度)。東京大学は、研究でも教育でも日本を代表する大学です。アメリカでいうところのResearch Universityにあたります。それでは、東京大学のウェブサイトから手に入れた数値を下の表に示します。(表をクリックすると大きくなります。) 特徴をいくつかあげると、 ・大学院生が大勢いて、その数は学部生の数と同じくらい。 ・教官や職員数も学生数と比較して非常に多い。 財務関係でいろいろな言葉が出てきますので説明しておきます。 ・運営費交付金: 大学を運営するために必要なお金で、国が支出する。 ・授業料等: 授業料や入学料などで、大学の収入として使える。 ・病院収入: 医学部附属病院があると、そこから収入を上げることができ、大学の収入として使える。 ・受託研究(収入の部): 国が科学技術予算として計上した経費(競争的資金や科学技術振興調整費など)がある。大学や大学の研究者は、研究計画書を作って国に応募し、採択されれば計画に必要なお金が下りる。また企業との共同研究で企業からお金が入ることもある。これらを総称して受託研究等という。 ・寄付: 民間からの寄付金。 ・人件費: 教官と職員の給料や退職金など。 ・教育研究費: 教育や研究に必要な光熱水料、消耗品、電話などの通信費、教室などの修繕費。 ・病院経費: 病院の運営に必要な経費。 ・受託研究(支出の部): 受託研究を行うのに大学が使うお金。 主な収入の中で、運営費交付金が877億円で51%を占め、受託研究が290億円で17%になります。合計すると約68%になりますが、このほとんどが国から来るお金です。国立大学といわれる所以です。授業料等は10%、病院からの上がりが18%になります。大学の経営の中で病院がうまく儲けを上げているかどうかは大変重要で、大学執行部の腕の見せ所です。主要な収入の合計は約1700億円。すごい額です。 次に使い道を見てみます。主要支出は約17000億円ですが、そのうち人件費が半分の48%を占めます。教育研究費は人件費の半分以下の21%ですが、受託研究も入れると37%になります。あとは、病院に14%かかります。 東京大学の財務は、ほかの大学と比較してもっとも健全な状況にあります。それでも人件費が支出の半分を占め、教育研究費は人件費の半分にも満たない額です。 よく大学の教授さんたちが、大学から来る研究費は年間たったの数十万円だ、もっと増やしてくれ、という悲鳴のような声をよく聞きます。教育研究費はほとんど教室の整備や図書費などに使われて、教官に研究費として下りてくる額は数十万円程度になってしまいます。特に、国立大学が法人化されたので、役員給与、産業医、保険などの余分な経費がかかるようになりました。また、学長が大学の特徴を出そうとして余分なことを行うことがままあります(失礼)。そのため、教官に行く研究費は、法人化のあと、さらに減ったのです。 受託研究費が結構あるじゃないか、と思われるでしょう。しかし、受託研究費のほとんどは教官が努力して取ってきた、外部資金または競争的資金(科学研究費補助金は入っていません)と呼ばれるものです。事前に研究計画書を出しているので、この経費は計画書の通りに使う必要があり、夢のある、卵をかえすような、萌芽となる研究には使えません。そこで、教官は大学からの研究費をもっとよこせと訴えるわけです。 大学を今後どうすべきかは、各大学の教官が考えることです。僭越ですが、もし私が学長なら、まず職員の大幅な削減をして、施設部関係を含む事務の大胆なリストラを断行します。次に教官もそのままにしておくわけにいきません。成果主義を導入して、教育に成果を出したものや研究に成果を出したものを給与や研究費の面で優遇し、できの悪い教官には辞めて頂きます。さらに浮いたお金を何に使うかというと、大学の顔になるような教官を高給で世界からリクルートします。顔の見える教官が増えることで、さらに大学の成果が上がるという、よいフィードバックがかかるでしょう。 年金生活者が余分なことをいいました。 (続く) by FewMoreMonths | 2007-08-21 11:16 | 教育
|