抗がん剤治療その2、大腸がん再々発
 8月6日に私が現在受けている抗がん剤治療の記事を書きましたが、何かの参考になるかも知れないので、私の再々発大腸がんの経過を記録しておきます。
 2年前の2005年9月、半年に1回行っているCT検査で大腸がんの再々発が見つかりました。右肺に、1センチ以下の大きさですが、10個以上の腫瘍が散在しています。素人目にも、これは手術や放射線では手に負えないな、ということがわかりました。大腸外科の大先生であられる主治医からの紹介で消化器内科のほうに直ちに移動し、化学療法の説明を受けるべく、新しい主治医の先生のところに伺いました。
 当時、私の仕事はまだ3年半の任期を残していましたし、ちょっと大きな仕事をやりたいと思っていましたので、最大の関心事は、どのくらいの期間働けるのか、余命はどのくらいか、の2点でした。先生によれば、化学療法を行わなければ1年程度の余命か、しかし化学療法を行えばもっと延ばせる、とのことでした。当時話題になっていた抗がん剤はオキサリプラチンという白金系の薬で、副作用も少ないということから、その薬を使うことを希望しました。アメリカの国立がん研究所のホームページに入って、オキサリプラチンの項を見ると、当該薬による平均余命は約19ヶ月とありました。
 私の友人にたまたまがんの大御所がいますので、CT写真を見ながら彼にお伺いを立てたところ、仕事はあきらめるべしとのご託宣でした。自分が推進し今若手が頑張っている仕事もあるので、2009年までは生きてその完成状況も見たいのだけれど、と質問すると、そりゃ無理でしょう、とのつれない返事でした。いささかショックを受けましたけれど、覚悟していたことなので、平常心を装っていました。
 次の問題は、いつから化学療法を始めるか、という点です。8月6日にも書きましたが、オキサリプラチンによる治療といっても、5FUという従来の抗がん剤に上乗せしますから、副作用はかなりのものと思われ、仕事に支障をきたす可能性が大いにあります。そこで、主治医の先生に、仕事を直ちにやめて、腫瘍の小さい今、抗がん剤治療をすぐに始めたほうが効果的か、または、腫瘍は大きくなるだろうけれど、仕事の区切りがつけやすい来年4月からの治療でもよいだろうかと、お伺いしました。先生によると、腫瘍の大小による抗がん剤効果の差異に関してデータがない(当時)。平均余命は、抗がん剤投与開始時点からの数値である。したがって、抗がん剤の投与を遅らせて、4月から開始すれば、今すぐ始めるよりも余命が稼げるかもしれない、という、大変説得力のある説明でしたので、直ちに、抗がん剤投与開始は半年後の2006年4月からと決定しました。
 2006年2月に入ると、がんの自覚症状でしょうか、咳が頻発してとまりません。2月には、仕事の区切りを付けるためヨーロッパへの忙しい出張が入っていました。どのくらいの忙しさかちょっと紹介しましょう。イタリアはベニスでの講演、翌日ジュネーブに飛んで2日間の会議、それからミュンヘンに飛んでそのままガルヒンにおられる大先輩のご自宅訪問、翌日はガルヒンにあるミュンヘン工科大学での打ち合わせ、見学、皆との夕食、その次の日はミュンヘンのマックスプランク物理研究所での講演、見学、皆との夕食(ミュンヘン大学の友人も来てくれた)。翌日パリに飛び、その日の夜にVIPへの陳情と夕食会、次の日にパリをたって帰国しました。咳をしながらの出張で、皆さんに大変迷惑をかけました。

 2006年3月も終わり近くなって仕事の引継ぎもようやく一区切りがつき、3月31日職場を後にしました。
 当日、アメリカのある研究所のホームページを覗くと、プレス発表の記事が載っていました。「我々は、日本の研究結果を完全に独立な実験で検証した、本実験は今後も継続し、研究結果の精度を画期的に高めることを目指す」とありました。日本の研究とは、私も絡んでいた実験です。よいプレゼントをもらって研究生活に終止符を打つことができました。  (続く)

by FewMoreMonths | 2007-08-12 10:05 | 大腸ガン治療経過


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