地球温暖化対策、社説、論説委員は気楽な稼業
 本日8月11日の朝日新聞に、温室効果ガスの排出を減らす記事が出ていました。また関連する社説も横にあります。
 わが国が国際的に約束している、2012年までに温室効果ガスの排出量を1990年度比で6%削減するためには、政府計画の見直しが必要だそうです。そのため政府は、環境・経産審議会を立ち上げ、昨日その中間報告がでた、という記事です。記事は分かりやすく書かれていて、私は、削減目標の達成がほとんど不可能との印象を受けました。
 記事によると、製造業界自体だけを考えれば目標の達成は可能であるが、企業のオフィス、家庭、運輸関係の温室効果ガスの排出は今後さらに増え、総合的に見て、2010年度では4%の達成にとどまる、とのことです。朝日新聞の特徴ですが、政府の無策を非難する結論で締めくくっています。
 今日も関東は35度Cを超える猛暑日になるそうで、我が家でもエアコンが既に2台稼動していて、発電所による温室効果ガスの排出に間接的に関わっています。まことに申し訳ないとは思いますが、エアコンなしでは仕事もできません。
 日本では、そのため気温上昇がさらに進み、室温を下げるためさらに大型のエアコンを導入しなければならない、という悪循環が既に始まっているのでしょう。この悪循環を回避するよいアイデアは、私は思いつきませんし、審議会中間報告にも、画期的な案はない、とのことです。

 そこで、社説には何か参考になるアイデアがあるのかと期待して目を通しました。「エアコン、冷蔵庫、照明を、買い替えを促す助成を誘導策として行えば、1人1日あたり0.3キログラムの節減になる」という提案が書いてあります。社説では、これが何%の温室効果ガスの排出減に相当するのか書いてないので、計算をちょっとしなくてはなりません。直前の記事に1人1日CO2を1キログラム減らすとCO2排出を数%減らせる、と出ています。0.3キログラムですと数%の3分の1ですから1%くらいの効果でしょうか。この値が十分かどうか社説はコメントしていません。
 私個人的には、助成があっても買い替えはしないでしょう。朝日新聞も最近まで、「もったいない」運動を賞賛していたはずです。今立派に動いている電化製品を買い替えるなど、もったいなくてできませんし、お金もありません。また、買い替えを推し進めた場合、その廃棄物処理による温室効果ガス排出量の増加をぜひ見積もって、社説に併記してもらいたいと思います。
 「原発頼みの政策を思い切って転換し、太陽光など新エネルギー利用を推し進めるための支援を充実させたい」という提案がありました。なるほど。しかし、2012年までに、具体的に太陽光利用をどのように進めるのでしょうか。またそのコストは。きっと、朝日新聞は近々特集を組んで、その辺の具体的提案をされるでしょう。大いに期待しています。そもそも私は原発推進派ですので、「原発頼み」の記述には賛成しません。
 こういっては申し訳ないのですが、数値を扱う仕事をしてきた私にとって、このような定性的な記事は、読んでもあまり役に立ちませんね。数値を検討せずにお書きになっているとすれば、論説委員の仕事は気楽でうらやましい限りです。

 私は、1970年代の6年半、ドイツのハンブルクで生活していました。私の家族は、100年以上たった旧家の2階を間借りして住んでいました。そこで経験したドイツ人の生活は、現在の我々にも少しは参考になるかもしれません。
 まず彼らは、照明を極端に減らした生活をしています。夜は、読書のためのスタンドがついているだけで部屋の中はほとんど真っ暗な生活をしていました。ただし、彼らは蛍光灯の光が大嫌いで、ローソクの明かりに近い白熱灯を使っていましたが。
 ドイツの民家の多くは、レンガ造りで厚い壁を持っています。冬の寒さを考えれば当然のことです。民家は冬への対策を考えて作られています。壁が厚いことは夏にも利点があって、高い断熱効果があるため、結構涼しく住むことができました。もっとも最近のヨーロッパは酷暑続きで、エアコンがないと、さすがの厚い壁もあまり役に立っていないようです。
 1970年代は、確か第2次オイルショックのあった時期です。わがアパートの大家さんは、さらに家の断熱効果を上げて暖房用オイルを節約すべく、壁のレンガの間にあった隙間をセメントで全部埋める工事をしました。どのくらい効果があったかは聞き忘れましたが。
 ドイツ、一般的にヨーロッパの民家は、レンガ壁や石壁でできており、さらに壁が厚いおかげで、耐久年数が100年以上、あるいは200年以上あるようです。このため、一度家が建てられると、後の数世代は、ちょっとした改良工事を行うだけで住み続けることができます。つまり、住居にお金をかけなくてよいのです。
 日本の民家は、逆に夏への対策を考えて作られています。窓は大きく、換気がよくできて湿気を逃がすことができます。壁は薄く、雨露をしのげばよいという思想です。しかし、そのような作りのため、民家の寿命は30年程度で建て替えか、大幅な改造工事が必要です。そのため、家を苦労して建てても、次の世代はまた新しい家を建てるか、大金を投じて家の修理をしなければなりません。現在の若者の最大関心事は、自分の家を建てるお金の工面ではないでしょうか。
 ヨーロッパの皆さんは、それほど給料も高くないし、休暇も多くとって豊かに暮らしているのは、実は、住居費がわが国と比較して圧倒的に少ないのではないか、と最近疑っています。まだ証明できていませんが。
 ヨーロッパにおける温暖化対策も、家庭やオフィスに関する限り、既に十分な断熱効果を持った建屋ですから、比較的対策が取りやすいと思います。

 わが国でも、断熱効果が非常に優れ、かつ200年以上の耐久年数の民家やオフィスの建設を考えるべきではないでしょうか。もちろん、そのような建屋は大変高価なものになるでしょう。それこそ、国の助成や、超長期のローンのような知恵が必要と思います。しかし、数世代以上の将来まで考えたとき、結局そのほうが豊かな生活を送れるような気がします。

by FewMoreMonths | 2007-08-11 11:55 | 環境・災害


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