牧太郎の大きな声では言えないが…

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牧太郎の大きな声では言えないが…:平成の「蔦屋重三郎」

 韓流ドラマばかり放送するテレビ局はけしからん!という議論があるらしいが……当方も、(かなり“時代遅れ”ではあるが)「韓流」にはまっている。

 去年の秋、初代高句麗の王・東明聖王の波瀾(はらん)万丈の人生を描いた「朱蒙」を見て、韓国時代劇に目覚めた。それからというもの……「風の国」「善徳女王」……今週は「妻の誘惑」。

 出生の秘密、不倫、記憶喪失、復讐(ふくしゅう)……どれも同じような展開で、とても「不朽の名作」とは言えないが……。

 今回の騒動は7月下旬、タレントの高岡蒼甫さんが「8は今マジで見ない。韓国のTV局かと思う事もしばしば」とフジテレビの“韓流ベッタリ”を批判したのがキッカケ。「反韓流」のデモまで起こった。

 でも、これは“好き嫌い”の問題。テレビ局は安い放映料で、それなりの視聴率を稼げば良いと思っているのだろう。

 当方などはテレビだけでは物足りないから、DVDをレンタルする。料金は店によって差はあるが、1週間に10本借りれば(1本250円なら)2500円だ。

 ビデオレンタルチェーン「TSUTAYA」をフランチャイズ展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)は約1400店舗。会員が約3700万人。社長の増田宗昭さんが1982年、大阪府枚方市に貸しレコード店を開いたのが始まりだが、奇跡の急成長ではないか?

 屋号の「蔦屋」は、昭和初め、祖父が営んでいた置き屋の名前。裸一貫から土建業を起こし、置き屋まで手がけた祖父の起業家精神にあやかったものだが、もう一つ「秘密」がある。

 江戸時代初の総合出版プロデューサー・蔦屋重三郎をイメージしている。寛延3(1750)年、江戸吉原に生まれた重三郎は妓楼(ぎろう)や茶屋を一軒一軒訪ね歩く“訪問貸本屋”を始めた。吉原大門の前に書店を開き「吉原細見(店ごとの遊女ガイド)」を出版。これが大ヒット。浮世絵の歌麿を世に送ったのも彼である。

 「現代の蔦屋重三郎」を狙ったのだろう。「文化はいつでも、どこでも、だれでも、手に入る」が目標。

 当方、今週は新潟に出張中。新潟市の「蔦屋書店南万代店」で借りて、TSUTAYA独特の「全国どこでも、料金100円のDVD郵便返送サービス」で東京に戻ったら、郵便ポストにポンと入れるだけ。韓流に負けない「和流」の工夫である。(専門編集委員)

毎日新聞 2011年8月30日 東京夕刊

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