高血圧性脳出血は脳卒中全体の15%を占める病気です。高血圧が関係し、減塩の食事指導と高血圧の治療によって減少してきました。しかしながら、未だ、高血圧に無関心な方も多く存在し、また高齢者が増加したため1988年以降は減少はみられていません(
図1,
図2)。最近は若年者にも多くみられる傾向にあります。機能的回復もあまり良くなく、6ヶ月後に自立できる割合は20% 程度であり、30日以内の死亡が52%にも達します。(American Heart Association 2007 Guideline)
代表的な出血例を
図3に示しました。
部位別では脳幹出血ではサイズが2cmでも重篤な状態となり、致命的になります。脳幹出血は特に40代、50代の若年者に多くみられ、高血圧を治療しない、多量に毎日飲酒する、喫煙は 40-80本程度といったことが背景にあります。
基本的には出血をまず止めることです。現在の治療としてはこの点は受け身の状態であり、血圧をさげるのが治療の中心になっています。血圧は当初は 200mmHg以上に収縮期が上昇するので、二カルジピン持続静注などでさげるのですが、高血圧性脳出血のさいにはカテコールアミンの分泌も大幅に増加していることも多くなかなか下がりません。数日後ようやく下がることも多いのが現状です。米国では血液凝固に関与する活性化第VII因子の急性期投与が注目されています。これは、脳血管閉塞に対するTPA静注の逆の発想で、止血機能を急速に上げる方法で、臨床試験段階です。
手術に関しては未だ明確なガイドラインはありません。個々に手術を行うと機能予後も改善し、また生命も救われるケースが存在します。2005年のLancetにSTICHという最初の大規模ランダム化試験の結果が発表されました(
図4)。1033例を無作為に503例の手術例と530例の保存的治療例に分けて6ヶ月後の予後を比較したもので、手術例の26%が経過良好で、保存的治療例の24%が経過良好となり、やや手術例が優ったものの有意な結果は得られませんでした。この結果は高血圧性脳出血に対する手術適応をすべて否定するものではありません。STICHは脳神経外科医が手術すべきかどうか迷う症例を対象にしており、最初から救命のため手術を要する症例は除外されています。サブグループ解析では脳表面から1cm以内の浅い血腫の手術成績は良好で、2007年のAmerican Heart Associationでは浅い血腫で3cm以上のものは手術が推奨されています。また救命すべき症例はやはり手術が是非ともすべきグレードIで推奨されています。
- 頭開血腫除去
- 内視鏡的血腫除去
- 定位的血腫除去
の3通りがあります。
手術選択はどの方法が有利というものはないのですが、比較的深部にある血腫は2.や3.が侵襲は少なくまた創部も小さくてすむという利点があります。特に小脳出血は2.の内視鏡手術があとの創部のことを考えると有利です。
内視鏡の手術を
図5に示します。